年越しを控えた街中はドレも煌びやかな市の様相を呈していた。
しかし、その中で金髪の美少女フェイトが市場を奔走していた。
買い求めていたものは「勝栗」「打鮑」「昆布」
これらは杯と合わせる事で四方膳とよばれ、合戦に出陣する際に武将が食するものである。
蒼星石「……
水銀燈」
水銀燈「なぁに、蒼星石?」
蒼星石「なのはさんが御呼びです」
水銀燈「……なのはさんが?」
蒼星石「急を要すること」
水銀燈「蒼星石……之からはアスカ夫人と呼ぶのよぉ?」
地はオーブの慰霊碑前。日本語で書かれたまぬけな墓標が聳えて海を睨んでいる。
此処はシンが軍人を決意した悲劇の地であり、シンを想う者の巡礼地であった。
其処の少し離れた海岸にて縛り上げられる男が一人。
シン「……んーーーーっんーーー!!」
フェイト「鎮痛剤と洗脳魔法を掛けておいたから。じきに人形如きにお熱を入れていたのも治る」
シン「んーー!? んーー!!」
フェイト「シン君をかかる羽目に陥れた水銀燈を……お仕置きつかまつる」
其処に陣取っていたのはフル武装を果たしたなのはさん。
潮風が当たりながらもその銀髪を靡かせながらも現れる水銀燈。
水銀燈「(オーブ慰霊碑。この地に一体何が)水銀燈ただ今参着」
なのは「「水銀燈 本日この日を持って その方に メインヒロインの流儀を 伝授いたす」」
水銀燈「(メインヒロイン! ついにくれるのねぇ。シンに続いてヒロインの座を!)」
フェイト「さすれば、まずは業前をお見せしたその後ね」
対峙する二人。大降りなデバイスに対して、水銀燈はミドルソードを構えていく。
冬の寒い潮風がその空気をより一層冷やしていく中、お互いに空を舞いながらもその近距離型の攻防は続いていく。
威力とトップスピードに置いてはフェイトは水銀燈を圧倒的に上回る。しかし、水銀燈は細かい小回りとドッグファイトを得意としていており
羽の連撃がフェイトの詠唱を悉く中断させていく。そして、その刹那、水銀燈の剣が喉元を捉えて勝負を着いたかに思われた。
水銀燈「勝負アリよぉ」
フェイト「……なのはさんは止めよと申してない」
水銀燈「!!!(私の剣は確かに捉えた筈。女難スレで殺し合いをするつもり!?)」
完全に刃を止めた水銀燈に対してフェイトは容赦なく横のなぎ払いで水銀燈くを海へと叩き落とす。
冷たい冬の海の水が痛みと寒さをより一層強めていく中、海から這い上がった所に立っていたのは蒼星石だった。
そして、その表情には微笑みが刻まれていた。そのありえない事実に対して水銀燈は驚愕を隠していない。
水銀燈「(正気!? こんなガチバトルなんてしたら死人が出てしまうわ。一体何を考えて)なのはさん!」
なのは「……止めにする?」
水銀燈「!?」
なのは「メインヒロインの流儀伝授。止めにする?」
水銀燈「ごめんなさぁい。覚悟ちょっと足りなかったみたい
……水銀燈はこの日の為に今までシンにキレデレをしていたわぁ」
野心がモルヒネの様に体中を駆け巡り、水銀燈に新たな力を与えていく。
そう、シンを貰いうけ、このスレでの人気を獲得しメインヒロインとして彼と幸せな未来を築いて行くと。
かちゃりっとお互いの剣と鋏をぶつけ合って戦いが始まったことを告げる。
水銀燈「蒼星石……アノ日以来ね」
蒼星石「もう、WAWAWAで逃げたりはしない」
目にも留まらぬ斬撃を打ち合いながらも水銀燈は蒼星石へと連撃を繰り出していく。
蒼星石は一回一回の攻撃が重いがその分基本のしっかりとした軌跡を丁寧に描いていく。
水銀燈はそれとは対照的に空中戦を活かしたあらゆる角度からのトリッキーな連撃で翻弄して行った。
しかし、蒼星石の軸はぶれない。ただし、攻撃をする猶予を水銀燈は与えない。
段々と体力を削らせていく水銀燈はついに蒼星石の頭上へと隙を作る事に成功した。
水銀燈「貴女は地で庭の手入れでもしているが良いわぁ。私はシンと言う太陽を手に入れて輝く月になる!」
大きく振り被った其処へ……先に斬撃を繰り出したのは蒼星石だった。
猫科動物が爪を突き立てる様な異様な掴み。それから繰り出される鋏の斬撃は水銀燈の目に留まることなく
彼女の胴体を吹き飛ばしていく。真っ二つになる彼女はそのままどさりっと地面へと顔をたたきつけられた。
水銀燈「……い、いやぁ……また、この姿になるのは……」
なのは「……最近娘が私のことをママと呼んでくれなくなったの」
水銀燈「それ、私と関係ないわぁ!」
なのは「少し……頭冷やそうか……エクセリオンバスターーーー!!」
シーーンーアースカー 女難のまーーとーーー
ぎんぱつのーー人形、さーらさらー シンとキレデレ愉しめば~~~
腹なし ジャンクに なぁーーたーーー
―半年後―
雛苺「あのぉ、女難をぶつけると感触とはいかなるものなのぉ?」
翠星石「……あれですぅ。濡れて手拭いで叩くがごとき音ですぅ」
シグナム「うまくやれば手ごたえが無い」
真紅「雛苺」
雛苺「ハイなのぉ」
真紅「美味しい紅茶ね」
水銀燈仕置きから半年後、シンは拒食に陥ってた。
携帯の画像の中に移るマユの顔を眺めながらも時折、折り紙で女雛を作っては腹をちぎっていた。
伸びてしまった髪を見て思う。この髪が銀髪だったらと。
なのは「……乳酸菌」
シン「!?」
なのは「……ほら、すきなんでしょう?」
この日はビフィールであった。やせ細ったシンに栄養を付けさせようと言う乙女の想いであった。
最終的には関節キス♪と喜んで自分で飲んでしまい、それは確実にシンの心を蝕んでいった。
――初雪の夜
魔法少女と見間違わないばかりの美しい白のワンピースに大きく掲げられたデバイス。
例え、男だとわかっていたとしてもシンはその時ばかりは艶めいてとてもこの世のものとは思えない美しさであった。
なのは「レイジングハートが! 私のレイジングハートが……(れろぉり)コレは逃逃げ隠れようとしている味、シンね!」
蒼星石「なのはさん!」
なのは「……連れ戻すの! レイジングハートを壊してでも連れ戻しなさい!」
女難スレにおいてなのはさんの言う事は絶対である。
ヒロイン達が抜け駆けしようとわれ先にと町を探し回る中、最初に見つけたのは彼女であった。
場所は御仕置がされた場所、オーブの慰霊碑である。
YAGAMI「……シン。危ないで。早くレイジングハートをしまうんや」
シン「……」
R・H「リロード」
YAGAMI「(やばっ、めっっちゃ可愛い)コレは押し倒しても仕方ないんや……ふぐぅ!(ゴスゥッ)」
投げつけられた石はYAGAMIの後頭部へと直撃する。
地面に突っ伏しながらもシンの魔法少女姿が眼福だったのか安らかな顔をしている。
寸の出で凶行に及ぶはやてを対処したのは蒼星石と雛苺であった。
蒼星石「シンさん!」
雛苺「まずいのぉ! 未完全だからすぐうにゅー(暴走)してしまうの!」
蒼星石「落とさせない!」
シンが魔力を解放する刹那、暴走したレイジングハートが思わず手から離れてしまう。
まるで、矢の様に飛んでいくそれを蒼星石は跳躍してそのスピードに合わせる。
鋏がガリガリとけずれながらもその魔力の塊と貸したデバイスを何とか押さえ込みながらもそれを受け止めることに成功した。
シン「蒼星石」
絶対に壊してはならぬデバイスであった。
しかし、例えこれがレイジングハートでなかったとしても蒼星石はこうしただろう。
一言呟いた後、シンは初雪の中倒れていった。
雛苺「しかし、なんでシンは魔法少女でもないのにあんなものをほしがったのぉ?」
蒼星石「さぁ?」
誰が知ろう。レイジング・ハートが気まぐれで出した幻影だけは
かつてシンが女難とも関係ないレイやルナマリアと過ごすミネルバの日々だった。
最終更新:2008年07月16日 02:36