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ちぇりーぶろっさむ・ですてぃにー 春季特別編

『お花見にいこう!』

「いやー。今日はお花見日和だねー」
「一年中咲いてるんだから日和も何もあったもんじゃないだろ」
「情緒ゼロの発言禁止ー!」
 俺の言葉に対し、さくらがぷくーと頬を膨らませて抗議する。
 相変わらず仕草が一々子供っぽい。とはいえそれを指摘すると家賃が跳ね上がりかねな
いので黙っておく。
「まあ。たまにはいいんじゃないか」
「ですね。外で食べると新鮮味がありますし」
「つうかお前らどっから沸いたんだよ」
 さくらの急な思いつきで弁当作って花見に来たら、当然のように朝倉兄妹が付いて来た。
何でこの兄妹はこと食事に関することにこうも敏感なのか。いい加減食費を徴収してもい
いんじゃなかろうか。
「まあたまになら……はいそこのさくらと朝倉! から揚げばっか狩るな!」
「マズイばれた! さくら頼むっ!」
「家主権限発動っ! これ以上ボクとお兄ちゃんの食の道に文句をつけるとシン君の家賃
が倍に――」
「明日ピーマンのフルコースな」
「駄目だよお兄ちゃん! 野菜も食べないと!」
「裏切ったなさくらあぁ――!!」
 何故か朝倉の分を強奪し始めるさくらと、させまいと応戦する朝倉、それを見ながらた
め息を吐く朝倉妹。
 なんというか、実に平和だ。

「あ、兄さん。もし足りないんだったら私が作ってきた分が――」

 前言撤回。ここはもうすぐ地獄になる。
「俺ジュース買ってくるな。俺の分もなんだったら食っていいから」
「うにゃ。ボクも喉渇いたからシン君に付いてくね!」
 しゅたと立ち上がり、朝倉に向けて親指を立ててグッドラックのサイン。
 続いてさくらも俺の横に並び、朝倉に向けてグッドラックのサイン。
 俺もさくらも朝倉へと送る意味は同じ。

『死ぬな』

「ちょ、俺一人に謎物質に挑めと!?」
「兄さん? 謎物質って何のことですか?」
「ま、待て音夢! は、話せばわか――――!!」
 朝倉の断末魔を聞きながら、俺とさくらは戦線を離脱した。


 向こうの騒ぎが収まるまで数十分はかかるだろうというのが俺とさくらの共通見解。  なので、自販機で飲み物を購入して適当に時間を潰すことにした。
「で? 何で急に花見なんて言い出したんだ?」
 缶コーヒーの空き缶をゴミ箱に投げ入れつつ、気になっていたことをさくらに聞いてみ
ることにした。
「うーん……」
「何だ、もしかしてただの気まぐれか?」
「確かに気まぐれだけど、楽しかったでしょ?」
「え?」
「そろそろ戻ろうか。お兄ちゃんを救助しないとね」
 はてな顔の俺に返答せず、さくらは駈け出した。少しだけ離れてから、さくらはくるり
と振り返り

「シン君は、もっと楽しく生きてもいいと思うよ」

 次は振り返らずにさくらは駆けて行った。
「……心配、されたんだろうなぁ」
 空を見上げる。塞ぎ込んでいたつもりはないが、気分が沈んでいたのは事実だ。
 どうもこの世界の――この島の空気は穏やか過ぎて、色々な事を思い出して、考えてし
まう。
「…………そうだな。たまには、いいのかもな」
 歩き出した。今晩は特別豪華にしてやろう。手間は惜しまない全員の嗜好に合わせてや
る。平和なこの世界では俺に出来るのはその程度だ。でも、それでアイツらが笑顔になる
なら、その程度でも十分なんだろう。

「シン君シン君――ッ! お兄ちゃんが魂抜けてる――!!」
「うわあああ――!? 逝くな朝倉帰って来い――!!」





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最終更新:2008年07月21日 00:23
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