トリステイン魔法学院 ヴェストリの広場
シンが決闘の場所に指定されたそこに到着したときには、ギーシュを取り囲むかのように学生達の壁が出来ていた。
集まった理由はたったの一つ「馬鹿な平民が貴族に決闘をうった」と言う情報を聞いて、暇つぶしにということである。
「逃げずに良く来たね、その事だけは褒めてあげよう!! だが、逃げた方がよかったとすぐに思う事になるよ」
シンの姿を認めたギーシュは、芝居がかった態度を取りながらその手に持った薔薇の形をした杖をシンへと向ける。
「これで最後だ、シエスタに謝れ、そうすれば俺も謝ってやる」
しかし、シンはそんな事は意に介さぬ様子でギーシュに向かってもう一度そう通達する。
「…フフフ、どうやら、本気で一度死んで見なければわからない様だね、ミス・タバサには申し訳ないが、躾けが出来ていなかったと言う事で
チャラにして貰おうか!!」
シンの言葉に余計に激怒したギーシュはその杖を振るい、青銅でできた戦乙女のゴーレム―ワルキューレ―を召喚する。
「僕は青銅のギーシュという二つ名を持つメイジだ、だからこのワルキューレで君の相手をさせてもらう、否とは言わないだろうね?」
「別にいいさ、俺だって武器を使うからな」
そんなギーシュの言葉に呼応するかのようにシンもナイフを抜刀して戦闘態勢にはいる。
「鉄のナイフか… 確かに鉄は青銅よりは上だ、だが、平民風情が持てる鉄で僕のワルキューレに勝てると思うな!!」
シンのナイフを見て一瞬目を細めたギーシュだったが、そう叫びながら素手のワルキューレを動かしシンに攻撃を仕掛ける。
ガキィィーーーン!!
「クッ…!!」
シンはその一撃をナイフを盾にするようにして防ぎ、その勢いを利用してワルキューレとの距離をとる。
「耐えたか、少しは出来るようだね」
そう言うとギーシュはまたワルキューレを動かし、ギーシュの指示通りにワルキューレはその拳を振るいシンへと襲い掛かる。
しかし、シンも伊達にエースの証である赤服を着ていたわけではない、ワルキューレの攻撃をギリギリのラインで見切り、回避する。
そしてワルキューレもそんなシンに次々と追撃を仕掛け、反撃の隙を与えないようにと襲い掛かり続ける。
だが、シンは慌てず冷静にワルキューレの攻撃の間合いを読み、その一撃の速度を肌で覚え始め、段々と回避行動にも余裕が出来始めていた。
「えぇい、早くしとめるんだ、ワルキューレ!!」
その事をギーシュも理解したのか、段々とワルキューレを操る動きに焦りの色が見え始め、其れを反映するかのように攻撃だ段々と大振りになってくる。
「貰った!!」
当然、実戦慣れしているシンがその大振りの攻撃によって生じる決定的な隙を見逃すはずは無く。
正面からナイフを深くワルキューレの足の関節に突き入れるとそのまま半円を描くように背後へと抜け、行き掛けの駄賃と言わんばかりにその足に蹴りをいれて離れる。
「フッ、残念だったね、その程度のキックで倒れるほど僕のワルキューレはもろく…」
ズッドォォォン!!
勝ち誇ったようなギーシュの言葉は、皮肉にもワルキューレが地面へと倒れ、自重によって崩壊する音で遮られた。
そう、ナイフによって間接を大きく切り開かれ、そこを蹴られる事で大きく体重を傾けさせられ、其れを支えきれず崩壊したワルキューレの音で。
もしも、ギーシュの言うとおりにシンのナイフが唯の鉄製なら如何に青銅とはいえワルキューレを切り裂くことは出来なかっただろう。
だが、シンの持つサバイバルナイフは唯の鉄ではない、プラントが誇るレアメタルによって作られた特注品のサバイバルナイフだったのだ。
これはシンが特別に持っている訳ではない、アカデミー卒業時に赤服だった学生達に与えられたエースの証という意味での逸品である。
赤服はプラントの誇りをあらわす鎧、レアメタルのナイフはプラントを守り、敵をなぎ払う剣をイメージして渡されるという事である。
そして、そのレアメタルで作られたナイフは並みの硬度と切れ味ではない、MSサイズの刀を用意すれば戦艦さえも切り裂ける程の逸品である。
だからこそ、本来切り裂く事に特化していない筈のナイフですら、鋼鉄ならまだしも、青銅や鉄位ならば十分に切り裂く事が出来るのであった。
そして、ワルキューレがナイフ一本で倒されたという現実を受け入れきれないのか、ギーシュも、周りの貴族たちも呆然と立ち尽くしていたのだが。
「まだ、やるのか?」
シンのそんな言葉により我を取り戻すと、ギーシュは憎悪の、他の貴族たちは畏怖の目でシンへと視線を戻す。
「…フウッ、確かに、ワルキューレが倒された事は認めよう、いささか遊びすぎたようだね、ここからは本気でいかせて貰おうか」
ギーシュはそういうと杖を六度振るい、其れに反応するかのようにワルキューレが六体、新しくシンの目の前に召喚される。
そして、そのワルキューレたちは先ほどのように素手ではなく、接近戦を警戒しているのか全員が槍の様な武器を持っていた。
「僕は最高七体のワルキューレを召喚できる、先ほど君に一体倒されたから残り六体が限界、そして素手では君に無礼だろうから武器も持たせ
た…」
ギーシュはそこまで言うと薔薇の杖を顔の真ん前まで持ち上げ、一度その匂い嗅ぐ素振りを見せると、シンへと向かって突き出すように振るう。
「……本気なんだな?」
そのワルキューレ達が持っている武器を見て、シンは冷めた瞳でギーシュをにらみつける。
「勿論さ、使い魔君、勝負再会といこうか!!」
だが、ギーシュはその瞳が表す言葉の意味に気付けないまま、シンに対してそう返した。
そして、その言葉とともにワルキューレ達は各々が持つ槍でシンへと攻撃を開始し、シンも流石に多勢に無勢という様子で必死に回避行動を開始し始めた。
「ふふふ、流石にこの数相手では勝ち目は無いようだね、今なら、土下座して謝れば許してあげても良いよ?」
そう言いながらもギーシュはワルキューレを操り、段々とシンの逃げ場をつぶすようにして包囲し始めていく。
だが、ギーシュは気付くべきであった、ほぼ包囲し終わったというのに、シンが不敵な笑みを浮かべていたという事実に。
それに気付けないままギーシュはシンを包囲し、それでも降伏しようとしないシンに向かって一斉に攻撃を仕掛けたその時だった。
シンは姿勢を低くするとほぼ同時に自分の正面に居るワルキューレの足元へと逃げ込んだのだ。
最初のワルキューレを切り裂いたナイフの切れ味を恐れたギーシュは、必死にシンを倒そうとワルキューレ達を動かす。
足元にもぐりこまれたワルキューレがシンを蹴りだそうと、そして残るワルキューレが槍でシンを攻撃しようとするのだが。
其れこそがシンの狙いだった、即座にシンは自分を蹴りだそうとするワルキューレの背後に回り、槍の攻撃の盾にする。
そして槍もワルキューレも同じ青銅である、その結果攻撃の盾にされたワルキューレと、それに攻撃した青銅の槍全てが破壊される。
その結果ワルキューレの残りは五体、そして槍は破壊されたワルキューレが持っていた一本だけになってしまったのであった。
「ば、馬鹿な… 僕のワルキューレが、同士討ちをするなんて……」
ギーシュは自分のワルキューレが命令をしたわけでもないのに同士討ちしたという事実を認識しきれずに愕然としていた。
何故同士討ちしたのかという説明するならば、其れはたった一言で終わる、ワルキューレがセミオート操縦だったからという事だ。
セミオートは目標を指示してどんな行動をするという命令は出来るが、その後の行動自体はワルキューレ自体の判断で行われる。
そしてセミオートの最大の欠点は、急に出現した障害物等に柔軟に対応しきれないという事と急停止がほぼ不可能であるという事。
その結果「シン」を「槍で攻撃する」という命令を受けたワルキューレは、突然現れた「盾にされた」ワルキューレに反応しきれず攻撃してしまった、という事である。
「之で終わりか? なら、シエスタに謝れ」
淡々とした、だが鋭い視線でギーシュを睨み付けながらのシンの台詞に、ギーシュは完全に恐怖を覚えた。
謝ってしまおうと、元々悪いのは二股をしていた自分だったのだからと恐怖に怯えるギーシュの理性が再び訴えかける。
だが、其れを受け入れる事は出来なかった、ギーシュには、その訴えが正しいものだと理解しながらも、受け入れる事は許されなかった。
「馬鹿に、馬鹿にするな…!! 平民風情が、使い魔風情がこの貴族である僕を馬鹿にするな!!」
そう、彼の歪んだ―ハルケギニアではある意味当然の―貴族としてのプライドが、平民に謝る事など許さなかったのだ。
だが、冷静さを欠いた指揮で倒せるほどシンは易しい相手ではない、じわじわと削り取られるように一体、また一体とワルキューレが撃破されていく。
しかし、シンとて生身の人間である、いくらコーディネイターとはいえ戦闘のための特別な調整を受けていたわけではない。
勢いよく動き回れば息切れもするし疲労もたまる、そしていくら強く握り締めていても掌に汗もかけば衝撃で麻痺だってする。
幾らワルキューレを斬れるとはいえしょせんはナイフ、一度に切り裂ける限界などたかが知れているため何度も何度もきりつける必要がでる。
まして、ギーシュとて馬鹿ではない、最初のワルキューレの撃破された原因をよく理解し足の関節部分をしっかりと守っている。
その結果、一体のワルキューレを倒す為の時間が長くなり、それに比例するようにシンの疲労はどんどんと溜まっていく。
その疲労が極地に達したその時、六体目のワルキューレの間接を切り落とし、戦闘不能にしたのとほぼ同時に足を縺れさせ、その手に握り締めていたナイフを落としてしまう。
シンは急ぎ体勢を立て直してナイフを拾おうとするが、既に限界に近い肉体は言う事を素直には聞いてくれない、そしてその油断を見逃してくれるはずもなく…
ドスゥン!! ベキッ、ゴキリィッッッ……!!
「ウッ…クアァアアアアアアアアッッ!!」
「ふぅ… まったく、手間を取らせてくれるね、本当に」
ナイフを掴もうとした左手をワルキューレに強く踏み込まれ、シンの左手の骨は激しい悲鳴をあげる、恐らくは骨が折れ砕けたのだろう。
だが、ギーシュはそんなことは意に介さぬ様子で、憎悪の炎を宿した瞳でシンをにらみつけている。
「平民風情が、この誇り高きトリステイン王家の元帥を父に持つこのギーシュ=ド=グラモンをここまで梃子摺らせるとはね、いっそ賞賛に値す
るよ」
ギーシュはそういいながらもワルキューレの足をシンの左手から動かす様子はなく、寧ろその手に持たせた槍をシンの頭に向けようとしている。
だが、シンにはそんなことはどうでもよかった、それ以上に聞き逃せない言葉があったのだ……
「お前、今、なんて言った… お前の父親が、何だって……?」
「やれやれ、平民は学がないとは思っていたがつい先ほどの言葉まで忘れているのかい?僕の父親は王家に仕える元帥だ、それがどうかしたか
い?」
その言葉を聴き、その意味を正確に理解したその時、シンの脳裏で、今までの様な赤い種子ではなく、闇の様な真っ黒な種子が弾けた。
そしてギーシュはシンが「恐怖」を感じていると思い、勝ち誇った顔をしながらそう呟く、だからこそ気づいていなかった、気づく事ができなかった。
急激にシンの瞳から光が失われ、まるで漆黒の虚無の様な色に染まっていく様子を、そして、右手がすばやく動き、ハンドガンを手にしていたという事実を。
パンッッ!!
「う、うわぁああああああああああ!?ぼ、僕の左手が、じ、銃!?」
乾いた音が一度、シンの持つハンドガンから響き、発射された弾丸がギーシュの左手を正確に撃ち抜いた。
「軍人の息子が奪うのかよ、罪もない人達から、力ない人達から…… 全てを奪うのかよ!!!」
動揺しているギーシュを射殺さんばかりに睨み付けながらシンは右手一本でワルキューレを押し返し、その足元から自分の左手を抜き、ギーシュに向かって歩み始める。
「ヒイィッッ!? わ、ワルキューレ!!」
完全に動転したギーシュはワルキューレを操り恐怖を排除しようとし、そしてその主の意を汲んだワルキューレが槍をシンの脇腹に突き刺す。
しかし、脇腹を突き刺されたというのにシンは致命傷以外には興味がないとでもいいたげにその傷を一瞥し、鬱陶しげに槍を引き抜くと再び銃を構え。
自分がワルキューレに刺された所とまったく同じ場所を、ギーシュの脇腹に狙いを定めると引き金を引き、撃ち抜いた事を確認するとゆっくりと歩き始める。
「痛いか?痛いよな、でもな、シエスタにした事に比べたら、お前達が「平民」に与えてきた痛みと比べたらそれくらいなんて事ないだろ?」
まるで周囲全ての貴族に言い聞かせるかのようにシンはそう呟くと痛みで蹲っていたギーシュの頭を傷ついた左手で掴み、右手でハンドガンを突きつける。
「俺はさ、子供のころ戦争に、「強い力」に大切な人達を全部奪われて、それが悲しくて、それが悔しくて軍人になったんだ。
自分みたいな人間をもう作りたくなかったから、一人でも多くの、「罪も無い、力も無い」人達を守りたくて……
だから、だから俺はお前を、軍人の、力ない人を守るべき人間の息子なのに、逆に力ない人を虐げて、全てを奪おうとしているお前のことが許
せない!!」
シンがそう叫び、ハンドガンの引き金を引こうとしたその瞬間、周囲で見ていた貴族達が惨劇を覚悟したその瞬間、唯一動いていた少女がいた。
「空気の鎚よ、彼の者を強く打ち据えよ、エアハンマー!!」
少女のその呪文が響くとほぼ同時にシンは空気の鎚によって激しく殴りつけられ、勢いよく地面へと叩きつけられる。
「タバサ…… あんたも、こいつらとおなじ、かよ……」
シンはその魔法を詠唱した少女を、使い魔であるシンの主人のタバサに向かって憎悪を宿した瞳で睨みつけていたのだが。
「…あなたは、命の重みを知っているはず、だから止めた……それだけ」
シンから一切視線をそらさず、真摯な音色を含んだそのタバサの声を聞くと何故か嬉しそうな顔をし。
「そっか… 俺、また繰り返す所だったのか……… サンキュー、タバサ」
そう呟くと、そのまま倒れたシンの体に襲い掛かってくる疲労の誘いに乗るように、ゆっくりと意識を手放していった。
タバサはそんなシンの横まで歩いていくと、シンを起こさないように左手と脇腹の怪我を癒すために治癒魔法を唱え始める。
「ギーシュ!!」
多くの貴族がタバサとシンが織り成す空気に呑まれ、ただ魅入っていたのだが、金髪ロールの少女がただ一人ギーシュへと走りよった。
「あぁ、モンモランシー」
ギーシュにモンモランシーと呼ばれた少女は即座に自分の持つ秘薬を使いギーシュの傷を癒すと、タバサをキッと睨みつける。
「ミスタバサ!!その使い魔を早く処分して頂戴!!」
「……何故?」
「ギーシュにあれだけのことをした使い魔なんて危険すぎるわ!! 今回はまだよかったものの何時また貴族に牙を向くかわかったものじゃないわ!!」
「大丈夫、彼は獣じゃない」
怒髪天を突く勢いのモンモランシーとそれを流水のように受け流しているタバサ、そして当然そんなやりとりでモンモランシーが納得するはずはなく。
「いいえ、獣以下よ!! 貴族に暴言どころか殺そうとするなんて… いいわ、貴方が処分しないというなら私が処分するわよ!!」
そう宣言すると同時にシンにトドメをささんとその手の杖をシンへと向けたのだが……
「やめるんだモンモランシー!! これは僕が挑んだ決闘で、僕は負けたんだ、これ以上僕の誇りを、そして彼の誇りを辱めないでくれないか?」
「ギーシュ……」
治療を受け終わったギーシュがそれを静止し、ゆっくりとタバサの方へと歩み寄っていく。
「ミスタバサ、彼のことでひとつだけ聞きたいことがあるんだが…」
「……私にわかることなら」
タバサはギーシュの言葉に反応こそしているが顔はシンに向けたままで、治癒魔法を発動し続けている状態で対応する。
モンモランシーがそんなタバサの態度に激昂しかけるがギーシュは手でそれを制して言葉をつむぎ始める。
「銃を使い、メイジを相手にする場合は治癒が間に合わない心臓か頭を狙うのが基本、そうでなければ魔法で回復されるだけで意味は無い…
そして彼のあの腕なら一撃で僕の頭を撃ちぬくこともできたはずだ、だからこそ気になるんだ、なぜ彼は態々僕が攻撃した場所だけを狙って狙撃したのか」
ギーシュの言葉に少し考えるそぶりを見せたタバサだったが、「これは私の意見でしかない」と呟いた後にギーシュの顔を見ながらこう答えた。
「彼は、奪われる痛みを知っている、そして人が一方的に虐げられるのを極度に嫌っている、むしろ虐げる人物を憎んでいる。
だからその痛みを知らない貴方に教えようとした、そして貴方が軍人の息子と知り、憎しみを抑えきれなくなって貴方を殺そうとしていた。」
普段無口な少女にしては珍しいほどの長文の言葉に彼女の親友であるキュルケという少女が激しく驚いていたがそれは今回は特に関係は無く。
その言葉を聴き、シンに投げ掛けられた言葉を吟味していたギーシュだったが、ゆっくりとタバサに向かって言葉をつむぎ始める。
「ミスタバサ、彼が起きたら伝えていただきたい、ギーシュと言う名の男が君に強く謝罪したいと思っていると言うことを」
「わかった… でも、それは貴方がするべきことをしてから」
「あぁ、わかっているよ、シエスタと言うんだったかな? あの少女にしっかり謝罪しないといけないね……」
ギーシュはタバサの言葉に頷きながらそう答えると、ゆっくりと貴族達が集まっている方向へと歩き出した。
自らの敗北と、これから先、シンに使い魔だから、平民だからと言う理由で手を出すことは自分が許さないと言う宣言を行うために……
それから三日後、シンは完全復活し食堂へと戻り「我等が勇者」として料理長マルトー率いる食堂従業員一同に大歓迎を受けることとなる。
シンはそういう特別扱いを嫌って今までどおりでいいと言っていたのだが、逆にそこがいいとマルトーに気に入られてしまった。
そしてそんな光景を見て段々とシンに対する敵意を募らせている少年、サイトの姿があったのだが、それには誰も気づく事ができなかった。
そしてその事が後に大きな引き金となるのだが、そのことを知る人物は今はどこにもいなかった………
おまけのおはなし
実は、シンの傷は一日で完治しており、三日も病床に臥している必要性は無かったのだが……
シン「ん……ここ、は、俺は……」
シエスタ「シンさん!! おきたんですか?もう大丈夫なんですか!!」
意識が覚醒したのかゆっくりと目を開き、顔を上げようとするシンに凄い勢いで駆け寄っていくシエスタ。
しかしシンはシエスタの接近に気づくことは無く、手で目を押さえながら頭を上げていき……
ポ ヨ ン ♪
シン「………ん?」
ムニュウゥッ♪
突然頭にぶつかった柔らかい感触を疑問に思いながら、一体何なのかとそれを思わず触ってしまったシン。
その脳裏にはシルフィードにヨウカンと呼ばれた少年の「このラッキースケベ」と言う言葉がエンドレスに響いていた。
そう、その言葉が意味するシンの頭にぶつかり、思わず手で触ってしまったものとは……!!
シエスタ「そ、その、私、シンさんなら寧ろ望んで御相手しますけど、まだ日も高いですし、い、いえ、いやと言うわけではないんですけど…」
オーバーヒートして暴走寸前のシエスタのたわわに実った胸を鷲づかみのように触っているシンという光景がそこには広がっていた。
100人中99人が見れば絶対に誤解するこの光景を見たとある少女が、当然その例外である一人に入るはずは無く……
タバサ「………シン」
その冷たい氷のような声を聞いたシンはその少女、タバサの方を振り向くと、そこには杖を構えて呪文を詠唱し始めているタバサの姿が……!!
タバサ「…病床だから、絶対安静」
そう呟くとタバサはスリープクラウドの魔法を唱え―流石に病人相手に攻撃魔法は控えたらしい― シンの意識を深い眠りへと誘ったのであった。
そして再び眠りだしたシンの姿を見て、シエスタがとても残念そうな顔をしていたのが実に印象的であった。
之だけならまだよかったのだが、実はタバサが唱えたスリープクラウドの威力が本人の想像以上に強かったらしく昏睡状態になってしまったのだ。
その結果、シンの世話を自分がすると狂信的な勢いで迫るシエスタに、それを解除魔法を探すための本を読みながらも即効却下するタバサ。
そして暇なのかシンを時々甘噛みしようとしたり、そのまま飛行しようとするシルフィードと言うとんでもない状態になっていたのだが。
空気が読めなかったギーシュが「自分がシンの世話をする、せめてもの侘びの一つだから」とシンの世話役を買って出てそれをタバサが承認したのだった。
その事でギーシュはシエスタに酷く恨まれたが、目覚めた後、その事実を聞いたシンには泣きながら感謝され、親友と言えるほどに仲良くなったと言う。
最終更新:2008年08月31日 23:02