アットウィキロゴ

新アンカー氏の作品-04

 洗面所の鏡をじっと見つめている男――シン・アスカ。
断っておくが彼は決してナルシストではない。 そもそも外見とかはあまり気にしない人物である。 
 シンが鏡を使って見ているのは自分の顔……というよりは口の中である。
異変に気づいたのはついさっき、歯を磨いてる時である。
歯ブラシである一ヵ所を擦った瞬間、まるで電撃が走るような痛みを感じたのだ。
それが示すのはただ一つ、虫歯である。

「……やっぱり虫歯か。コーディネイターでもエナメル質は強化されてないんだな。」
 右側の下の奥歯が一本、虫に喰われていた。 見た限りはそれほど大きくない虫歯だが、
歯ブラシで刺激したせいか痛みが波打つように襲ってきている。
我慢できないことはないのだが、これでは仕事に集中できないかもしれない。
「こうなったらシャマル先生にお世話になるしかないか。この歳で虫歯になったなんて言うのは恥ずかしいけど……」

「シーン、おっはよ~♪」
「おわっ!? ってスバルか……あ、ギンガさんもおはようございます。」
 後ろを向くと寝癖で髪の毛をボサボサにしたスバルと、彼が危うく挨拶をし忘れそうになったギンガがいた。
「シン君、私への“おはよう”はついでって感じ満々だったんだけど、気のせいよね?」
「も、もちろん気のせいですよ。ちゃんと2人に挨拶しましたから……。」
 微笑みを浮かべながらいつもと変わらぬ声色でにじり寄られると恐いですハイ。
なのはさんに頭を冷やされるのと同じくらい恐いです。
「それなら良いんだけどね。ところで鏡見ながら何してたの?」
「うっ、特に何もしてないですよ。」
 いつから見られていたのだろう? 食い入るように鏡を見つめていた俺の姿を。
「何かブツブツつぶやいてたよね?」
「あらスバル、相変わらず地獄耳なのね。」
「ギン姉だって聞こえてたはずだよ?」
 シンは何か言おうとするが、ナカジマ姉妹は自分達でどんどん話を進めていってしまい、
いつしかシンは置いてきぼりになっていた。
このままここに居ると詳しい事情を聞かれることは確実だろう。
もちろん虫歯の事なんて言いたくない、恥ずかしい。
(2人で話に夢中になってるし今の内に……)

 こっそりと退散することにした。

「あ、そろそろ歯磨かないとな~」

 歯磨き粉のチューブを取ろうとスバルが手を伸ばしたのと、シンがスバルの横を通り過ぎようとしたのはほぼ同じタイミングだった。

数秒後

「……」
「え、えっと……大丈夫?」

 右の頬を手で押さえうずくまるシンと、オロオロと心配するスバルの姿があった。

「その様子を見る限りシン君は虫歯だったみたいね……。」
「はい……だからシャマル先生に見てもらお∑もががっ!?」
 喋ってる最中にいきなりスバルに指を突っ込まれた――口の中にだ。
結果として口を大きく開くことになってしまい、スバルに奥を覗き込まれてしまった。
「あー奥歯に小さい虫歯があるね。痛いっしょ?」
 いや、聞かれても口が開きっ放しでは喋れないんだけどな。 つーかいい加減離して欲しい。
顎が痛くなってきた。

「ん~……そのくらいなら私に治せないこともないかな。」
 ギンガが呟いたのと、スバルがシンを解放したのはほぼ同時だった。
「ふぅ……治すって言っても一体どうやっ……て?」
 シンは異変に気付く。今、自分とギンガは正面きって向かい合っているのだが、なぜかギンガの左手がシンからは見えない。
いや、見えないというよりは意図的に左手を隠しているのだろう。 そういえばギンガさんって左利きだったような……。
「ふふ♪虫歯の効果的な治療法。それは……削ることよ!」
 ノリノリでまくし立てながら左手をシンの目の前にかざす――リボルバーナックル装着済みの左手を。
「ちょっ!そんなもの持ち出してどうす……∑ってスバルお前っ!」
「ゴメンねシン。多分そんなに痛くはないから平気だよ♪」
「“多分そんなに”ってなんだよ!?つーか離せっての!」
 今のシンの状況は、背後からスバルに羽交い締めされている状態。 振り解こうにも
スバルの力が強過ぎてビクともしない。
そうこうしてる内にギンガがシンに近寄る。 凶器の左手は人差し指を立てながら。
「リボルバーギムレット・1/5」
 どこか軽快なギンガの声と同時に人差し指が音を立てながら高速で回転を始める。
見紛うこともない、どうみてもドリルです本当にありがとうございました。
「スバル、補助頼むわね♪」
「りょーかい!」
「了解ってお前な……姉さん止めろよ!」
「まぁまぁ、後でアイス奢ってあげるから許してよ。」
「嫌がらせか!?∑むごっ!」
 抗議も虚しく再び口を開かされてしまう。 もはやドリルと歯の間に遮るものは何もない。

「は~い、痛いのちょっと我慢してね~」

シンが最後に見たのは眩しいばかりのギンガの笑顔だった。

 ギンガ・ナカジマによるドリル治療は虫歯はおろか喰われてた歯の大部分を削ってしまった。
大方の予想通りである。
シンは激痛のあまり気絶してしまったが、歯のほうは眠っている間にシャマルの治療で無事に完治したとのこと。

 結果としてシンが虫歯だったことは六課中に知れ渡ることになったのだが。
だが、今のシンにはそんな事を気にする余裕がなかった。 簡単に言えばナカジマ姉妹(とドリル)に
トラウマを持ってしまったのだ。
 この日以降しばらくの間、シンはナカジマ姉妹を見るだけで歯の痛みを感じるようになってしまったとのこと。

「あの恐怖、あの痛み。あいつらはまさしく“地上のスターライトブレイカーだ……」

 ちなみにナカジマ姉妹ははやてにこっぴどく叱られた上、本家のSLBを味わったりしたのだが、それはまた別のお話。





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月12日 17:57
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。