○○はシンの嫁シリーズ ◆LZI2Anj6qo-1

シンがミッドチルダに来てから数年。
自宅にて管理局への報告書を書いていたシンは一息入れようと軽く体を伸ばした。
その顔は月日の流れを感じさせるように精悍になり、かつてでは考えられない落ち着きを感じさせた。
ぶっちゃけて言えば老けていた。 まだギリ10代なのに20代半ばに見られる位には。
「……ふう、もう5時か、そろそろみんな帰ってくるな」
壁掛け時計を見据え、呟くシン。
今日は同居人ではなく、シンが夕食当番だ。
(下拵えはしてあるから、あとは揚げるだけだな)
「シン君、お腹空きました~!」 
「私も~♪」
そんなことを考えていたシンの背に一気に体重が掛かる。
振り向くと二人の女性がシンの背に寄り掛かっていた
すぐ後ろは彼もよく知る、輝く様な長い金色の髪の元隊長殿。
更に後ろに白いワンピースを着て、青いストールを羽織った少女。
シンと同じ赤い目を持ち、シンより頭一つほど小さい中学生位の背で幼児体型、そして彼女と同じ金色の髪を肩まで伸ばした女の子。
目の色と髪色のせいで三人で出かけると『親子ですか? よく似ていらっしゃいますね』
と聞かれるのを思い出し、少し欝になった。 ……あながち間違いではないのだが。
まだ10代なのに、そんなに老けてて見えるんだろうか?
「……重いから退いてくれないか? ディスティー」 
軽い欝な気分のままシンは自らの愛機(の成れの果て)で、相棒に投げやりな言葉を浴びせ。
「それと便乗しないでくれ………隊、じゃなかった、あー、その、フェイト」 
便乗した金髪の女性の名を、照れ臭そうに呼んだ。
ちなみに顔を見た瞬間にシンの欝は吹き飛んでいる。
「いいじゃない、夫婦なんだし」
そう言うとフェイト・テスタロッサ・ハラオウン、今はフェイト・アスカは愛しい伴侶の肩に腕を回した。
その左手を自らの左手で握るシン。
二人の左手の薬指には夫婦の契りを交わした証が煌いていた。

突発的思いつき企画
○○はシンの嫁シリーズ第一弾
フェイトはシンの嫁
運命と宿命

「シン君、お腹減ったよ~!」
「私もお腹減った~♪」
「エリオもキャロも帰ってきてないんだ、少しは自重しろ腹ペコ娘!」
「ううー、だって……」
「今日はフライだから、二人が帰って来たらすぐに揚げてやるから我慢しろ、な」
「我慢だよ♪」
「わかりました」
「……あっ、中濃ソースがない! ま、いいか醤油で」
「なっ、なんですって!」
「シン君! 味覚音痴のシン君は味がついていれば、何でも良いのかもしれません!」
「でもですね! 揚げられた、食べられるフライの気持ちはどうでしょうか?  彼ら?は思うはずです!」
  長いので中略
「……俺達は醤油で食われる為に揚げられたんじゃないと」
「つまり、フライを醤油で食べるなんて行為。 ……これはもう、フライに対する冒涜です!」
身振り手振りを交え、いかにフライに中濃ソースが必要か、熱く語るディスティー。
その飽くなき食へのこだわり(執着心ともいう)はフェイトが便乗する隙さえないほどだった。
(冒涜ときたか)
シンはそんな様子を唸りながらみていた。
因みにその心の内訳は、呆れ半分、感心半分といったところだ。
それにどうせ裏があるに違いないのだ、ディスティーの嘘がつけないところはシンによく似ていた。
「お前の気持ちはよくわかったから落ち着け。 ……ほら、中濃ソースでも何でも買ってこい」
そういうとシン(フェイトはくっ付いたまま)は立ち上がり、財布をディスティーに投げた。
「ありがとうございます。…………えへへそれで、ですね」
ほら来た。
「わかってるよ、 加減はしろよ?」
「もちろんです!  不肖ディスティー! 一命を賭して、中濃ソースを買ってまいります。」
光の翼をはためかせ家を飛び出すディスティー。
「車に気を付けろよ~(車が壊れるから)……まったく」
デスティニーを見送ったシンは溜息をつき、
「それで? 君は何時までデスティニーに便乗しているつもりだい? ……それに、その、当たってるんだが」
未だ背にしがみついているフェイトに首を向け、問いかける。
「これは便乗じゃなくて、私がやりたくてやってるんだし、『当たってる』んじゃ無くて『当ててる』んだよ」
悪びれもせず言うと、したり顔でフェイトは言った。
「……じゃあ、とりあえず離れてくれないか」
顔を正面に戻し、右手でフェイトの両手を握り締める。
「え~」 
不満そうに頬を膨らませフェイトは言う。
その仕草にシンは心が揺れ動いたが、ここで引いてはならぬと己を奮い立たせ反撃に出る。
「えー、じゃない!」
握り締めていたフェイトの両手に力を込め、自らの体から引き剥がす。
「だってさ、この頃ちっとも私に構ってくれないんだもん」
ようやく諦めたのかフェイトはシンの正面に回る。
そしてシンを見つめ、未だ頬を膨らせたまま腕を組みシンににじり寄った。
「…………仕事が忙しかったんだ」
シンはフェイトから目をそむけると言いにくそうに呟いた。

そう現在のシンの管理局における地位は、本局の特務士官なのである。
魔法の殆ど使えないシンが、今の立場に登り詰めるまでは文字通り血が滲む努力が必要だった。
しかし本人いわく『身寄りも知り合いもいない、オーブの難民が、アカデミーのトップクラスになるよりは楽』らしい。
激しく基準が間違っている気がするが、実際はっきり言えば、周りからの応援と手回しが無ければ不可能であっただろう。
具体的にいえば、聖王教会からの援助。 地上本部、というよりレジアス中将の海に対しての対抗心、
そして自らの後継者にシンを見込んだ個人的希望。
レジアス中将に加え、ゲンヤ・ナカジマ三佐を初めとする管理局内部の魔法を使えない人員の応援。
海からは伝説の三提督、ハラオウン家、八神はやて二佐をはじめとする旧機動六課の後押し。
そして何より大きいのは、近年増加傾向の、管理世界におけるオーバーAランク魔道士でも対処の難しい
ロストギアが原因と思われる未確認巨大生物、犯罪者の持ち出す大型機動兵器の出現に頭を抱えた本局、地上本部上層部が
対抗手段として優れたパイロットであるシンと、強力な機体であるデスティニーガンダムに目を付けたことだ。
シンの現在の役職を正確に言えば、

聖王教会公認、時空管理局本局直属、地上本部身柄預かり、
未確認巨大生物及び大型機動兵器特務遊撃対策班、同教導班、隊長兼指導教官、シン・アスカ特尉(特務一尉)となる。 

やたら長いのは前述した管理局内部の政治的問題によるものである。
ちなみにこの名前が決まるまでに1週間の時間を使っている。
これに伴い、レジアス中将が推し進めていたアインヘリアル計画はデスティニーを基に、
質量兵器を排除し、魔法技術を使った機動兵器開発計画へと切り替わっている。
ちなみに主任技術者はジェイド・スカリエッティ。
デスティニーを見て感動したスカリエッティとレジアスと管理局高官が一晩中語り合い、
結果和解をしたらしいが真相は闇の中である。
(関係者によれば「ス・・エッ・ィどうせ作るならやっぱスーパーロボットだろ!」
「・・・・中将は分かってらっしゃる! やっぱりロボは男のロマンですよ!」等という会話が聞こえたとか聞えなかったとか)
最も技術力、ノウハウの不足から現在開発中の兵器は大型パワードスーツ程度のものである。
自らの力不足に管理局技術陣およびレの字とスの字は血の涙を流したとか流さなかったとか。
現在の隊員はナンバーズ(スの字により強化改造+PS装甲のアーマーを装備)
およびシンが使えそうだと判断した魔道士(試作型パワードスーツ着用)数名の小規模の部隊である。
実際目標を制圧する場合、隊員たちは補佐に周り、隊長であるシン自身の手で制圧する手法が主だった。
管理局の技術で強化されたデスティニーガンダムと言う体、ユニゾンデバイスであるディスティーという心
さらにエースパイロットであるシンの技術。
それらがまさしく三位一体となったデスティニーガンダムは無敵であった。
『管理局のエース』ならぬ『管理局のジョーカー─切り札─』それが現在のシンの呼び名だった。
そう呼ばれるからには仕事は多忙を極め、愛妻であるフェイトと会える時間も激減していた。

「ふふふ」
「何が可笑しいんだい?」
いきなり笑い始めたフェイトにシンは問いかける。
「夢みたいだなって……」
「なにがさ?」
「シンが、愛する旦那様がいて。 エリオが、キャロが、ディスティーちゃんがかわいい子ども達がいる」
デスティニーのOSがユニゾンデバイスとなった時、名前の無かった彼女に名前をつけたのはシンではなくフェイトだったのだ。
「そんな暖かい家庭を、私が持つことが出来るなんて夢みたい」
「実は俺もさ、もう一度家族が出来るなんて思わなかった」
「でもフェイト。そんな事言うなよ……」
「シン?」
後ろからフェイトを抱きしめるシン。
「暖かいだろ? 夢じゃない」
「うん」 頬を朱色に染めフェイトは頷く。
「確かに、みんな幸せじゃなかったかもしれない、でもこれから幸せになればいいじゃないか」
「うん、じゃあ、シンはまずディスティーちゃんに謝らないとね」
「ああ」


それはシンがミッドチルダに転移をして、数日がたったときの事だった。
あの月での戦いでアスラン・ザラに敗れ、全てが終わった後。
自らの命を預け、共に戦った愛機を敵に渡し、
惨めな姿を晒させないためデスティニーのデータを消去(より正確に言えば自爆)しようとしたシンとデスティニーは光に包まれた。
目を覚ましたシンが見聞きしたのは今までの常識からかけ離れた世界。
魔法の存在する異世界。
原因不明の現象により機体とOSが分離したデスティニーガンダム。
なぜか女の子(ユニゾンデバイス)になってシンをマスターと呼ぶデスティニーのOS。
しかもシンとOSがユニゾンしなければデスティニーガンダムは起動しなかった。
OSをもう一度インストールしてもデスティニーガンダムは起動しなかった。
技術部の話ではユニゾンデバイスとなったOSがロックキーのような役割になっているのではないかという話だった。
そんな状況の変化と自分が敗北し、全てを失ったことに衝撃を受け、シンは与えられた自室に閉じ篭っていた。

「マスター、出てきてください。 みんな待ってますよ」
心配したディスティーとフェイトがシンの部屋を幾度となく訪ねるも返事は無かった。
「……………と…ぶな」
「えっ……?」
久しく聞いたシンの声にディスティーは喜びの声を上げる。
「俺をッ、マスターなんて呼ぶなッ!」 
それはあまりにも哀れな慟哭。
「俺は、お前に、デスティニーガンダムに、ガンダムのパイロットである資格がない………」
「そんなことはッ!」 
「俺は負けたッ! 守れなかったッ! そして失った!」
否定しきれぬ真実。
「負けてはならない場面で、敗北の許されない局面で、そしてあの世界から逃げて、今も生きている」
「異世界で、生き恥を晒し続けている! 俺はあの世で、あの場で死んだレイや、議長になんていえばいい?」
「あなた方の見込み違いです。 シン・アスカは生きてきたことが間違いだった。とでも言えばいいのか!?」
そのとき乾いた音が部屋に鳴り響いた。
「そんな事、軽々しく口にしないで!」
彼の親友と守りたかった少女二人と同じ髪色の女性がそこにはいた。
「生きてきたことが、生まれたことが間違いだなんてこと、絶対にない!」
『生きられるなら誰だって生きたいだろう?』『シンはステラに明日をくれたよ』
「ステラ、レイ…………俺は、俺はッ! ぅぅ……う゛わあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ 」
「泣きなさい。 気が晴れるまで、私が側にいてあげるから」

「そうだな」 過去を振り返りシンは声のトーンを落とす。 
「どうしたの、思い出しちゃった? また胸を貸してあげようか?」 フェイトはシンへと振り向きその両手を握り締めた。
「……悪い冗談だ。 大丈夫、泣きはしないよ。 俺が泣いていたら、あいつらは向こうで安心できない」
「シン……」
「俺は今を生きる。 生き抜いてみせる。 何より君がそばにいるし」
「……ねえ、シン。 私、欲しいものがあるんだ」
「なんだい?」
「あのね、赤ちゃん」
「は?」
「だぁから、私とシンの赤ちゃん!」
「えっ、とぉ、……あっディスティーも帰ってくるし、フライ揚げないと……」
「逃がさないよ!」
「ちょっと待てフェイト! こんなところでちょっと、アーーーーー!」

そんな中、玄関の向こうから聞こえる悲鳴とも嬌声とも付かぬ叫びに足を止めている三人がいた。
「どうしよう……」 エリオと
「なんだか入れない雰囲気」キャロと
「シン君の財布がありますから、三人で御寿司でも食べに行きましょう♪」 ディスティーである。
(シン君、心配してくださってありがとうございます。 でも私にとっては貴方の幸せこそが私の幸せなんです)
「だから私は今幸せですよ…………マスター」




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最終更新:2008年09月23日 03:23
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