<おまけ:マスカテールフレーバー>
シン 「伊織がくれたのはダージリンだっけ。今が旬のものっていうとどんなやつかな? とにかく
淹れてみるか」
――ガチャッ。
シン 「? 誰だ?」
伊織 「ひゃっ!? な、なによ! いるならいるってちゃんと言いなさいよね!?」
シン 「いや、ノックもしてないし答えようがないだろ。どうした、忘れ物か?」
伊織 「え、えぇ。そんなところよ」
シン 「そっか。もう暗いし、急いで見つけて帰ったほうがいいぞ」
伊織 「平気よ、新堂を迎えに来させてるから」
シン 「……それは別の意味で急いだ方がいいんじゃないのか?」
伊織 「別にアンタが私のことでどうこう言う必要なんてないでしょ?」
シン 「それはそうだけど……はぁ、まぁいいか。これ以上疲れを溜めたくないし」
伊織 「なんか引っかかる言い方ね……あっ、それって」
シン 「ん? あぁ、せっかくなんで早速淹れてみたんだ。これからまた残業だしな」
伊織 「へ、へぇ~。けっこう上手に淹れてるじゃないの」
シン 「そりゃ毎日のように誰かが俺に淹れさせてるからな……ん? けっこう香りが強いんだな」
伊織 「当然よ、そのマスカテールフレーバーが夏摘みのダージリンの特徴なんだから」
シン 「マスカ、何?」
伊織 「マスカテールフレーバー。簡単に言うならマスカットの香りね。しっとりとした渋みの中にたっぷり
マスカットの芳醇な風味があるって言えば分かるかしら?」
シン 「へぇ、そんなのがあるんだな……ん、うまい」
伊織 「ほ、ホント!?」
シン 「ウソ言ってどうするんだよこんなときに。なんかお茶請けが欲しくなってくるな」
伊織 「それなら……えっと、あぁもう! どこにしまったのよ」
シン 「?」
伊織 「あった! そ、そんなにお菓子が欲しいならこれをあげるわ」
シン 「なんだこれ……クッキー?」
伊織 「ダックワーズよ。いつも私が用意させてるじゃない」
シン 「いや、それにしては形も不揃いだしところどころ焦げて……」
伊織 「も、文句ある!? お菓子なんてあまり作ったことないんだから仕方ないでしょ!?」
シン 「え? これって伊織が作ったのか?」
伊織 「~~~~~~!! 帰る!」
シン 「あ、おい! 忘れ物は!?」
伊織 「もう済ませたわよ! じゃあね、風邪とかひくんじゃないわよ!」
――バタンッ!
シン 「……なんだったんだいったい。しかし伊織の手作りか」
……サクッ。
シン 「ん、見た目はともかくうまいな。紅茶ともよく合うし」
――その後、シンはメールで伊織に『紅茶も菓子もうまかった。できればまた作ってくれないか?』と
送った。
一時間ほど経ってから、ただ一言『馬鹿!』とだけ書かれた返事がきた。
最終更新:2008年10月25日 09:43