「・・・よし、やろう」
今私が目の前に建てているのは、そう。計画書である。
計画書の名前は「ぬいぐるみをぷれぜんとしよう」。時はまさにクリスマス。
シンと付き合ってから分かった事だが、今の時代はクリスマスというものがあるらしい。
そしてサンタというものが人々に贈り物をする。
冗談のつもりだったのだろうが、シンは以前
「大人になってもくれるサンタさんとか居るのかなぁ」と言っていた。
冗談なのは分かるが、私はこう考えた。
私がサンタになってあげればいいのではないか、と。
そしてシンを驚かせてしてやれば良い気分になれるのではないかと。
そして嬉しい顔を見て私も幸せになれるのではないかと。
だからこうして計画書を書いた。作るものは二つ。一つはこのはにあげる用に作る犬のぬいぐるみ。
そしてシンにあげるのは――鳥。これは、鳥が子供を運んでくるという、子供に話す嘘の話を元に考えたものだ。
それを幸せを運んでくれる鳥に変えて作るつもりだ。
普段はシンが助教授という役目を担っているなか、私の為だけに時間を作ってくれているのだ。
これぐらいの恩返しくらいは当然しなければいけない。
というよりはしたいと言ったほうがいいだろう。シンが喜ぶ顔を見たいからだ。
という訳で、さっそく作ろうと思う。まずは青色の生地を作らなければ。
―――
「・・・む」
ちくっとした痛みが神依の指を襲う。
今こうして計画書の通りにやってから1時間。指に絆創膏が3つ、4つとどんどん増えていった。
彼女は人に物を贈る行為には慣れてない。自らでぬいぐるみを作る事もだ。
だからこそ考え事をしてしまい、そして指に針を当ててしまうのは当然のことだった。
だがしかし彼女はくじけない。思い人が居るから。
「むう・・・上手くいかない、ものだな」
と、またぷちっと指に針を刺してしまっていた。そして彼女は結びとめのところに入る
指に3回糸を巻き、そして――
「・・・よし、上手く出来た」
彼女は小さく喜んだ。成功である。こういう小さな喜びが彼女の作る意思を高めてくれる。
そして何時間か経った後だろうか。神衣はちょっとした違和感を覚えた。
「・・・む、これは・・・縫い間違えか?」
そう。縫い間違えである。鳥の青色の生地の裏側が本来くっつかないところにある茶色のところまで
縫ってしまっていた。
「これは・・・確かはさみで切って糸を抜く・・・と」
と、糸を切って抜いてみたりしていた。
―――
そして、計画の完成時間より1時間ぐらいかかった後。
「できた・・・。これで完成だ」
神衣は人形を二つ完成させた。製作時間は計ってないので分からないが相当長い時間がかかったはずだ。
少しぼろぼろ気味かもしれないが細かいところを見れば良く出来ている初めて作った割りには
中々出来ている中ぐらいの大きさのぬいぐるみだった。
「後は・・・渡すだけだな。このは、居るか」
「神依さまー!出来たのでござりますかー!」
「ああ、出来たぞ。これだ」
と、言ってこのはに犬のぬいぐるみを渡す神衣。と、その時このはの目に鳥のぬいぐるみが目に止まった。
「神依様ー、これは誰のものでござりますか?」
「ああ、これはだな・・・シンにあげる為に作ったものだ」
と、その時、このはは少し顔を赤らめた
「神依さまー、シンどのとは・・・その、付き合ってる仲でござりますよね」
「む、そうだな・・・」
神衣がそういってから、もっと顔を赤らめた、でも嬉しそうな顔で呟いた。
「このはは・・・その、シン殿との交友を応援してるでござりまする」
「このは・・・」
このはも主が幸せになってほしいから、応援してくれているのだろうと神衣は察する。
「私も頑張るからな」
「このははそう言ってくださって嬉しいでござりまするー。もふもふしてくださいませー」
と、膝の上に頭を乗せるこのは
「ははは・・・こやつめ」
といじったらしく頭を撫でる神依であった。
―――
そして、次の日。
私はプレゼントをする為に、ついでにシンを驚かすために大きめのかばんにぬいぐるみを隠し、
待ち合わせ場所で待っていた。
待ち合わせ場所は少し人が多いクリスマスムードの公園。
円形の広場に大きめなクリスマスの模様を飾った大きめの木。そこが私とシンの待ち合わせ場所だ。
そして時間になる少し前、シンがやってきてくれた
「ごめんごめん!神依さん待った?」
「む、私は少し待ったがたいした事はないぞ」
彼の服は大きめの茶色のジャンパー。少し厚めの生地で作られた青色のジーンズ。
そして大きな英語を荒々しく筆で書かれたTシャツがお洒落な雰囲気を醸し出している。
そして、私は今のうちにプレゼントを渡そうとする―が
何故か脚が震えてるような気がして仕方がない。これは寒さからくるものなのか?
と思ったが私の身は比較的厚めの服を着ていることを思い出してそれは無いと思った。
だがしかし何故か脚が震える。心臓の鼓動が大きくなる。
私は――緊張しているのだろうか。
「神衣さん、行きますよ」
シンが私を呼ぶ。贈り物をしたいがああしかし贈れない。
私はそのまま流されるかのようにシンについていった。
私は贈り物が出来るだろうか。
それに不安を感じ始めた。
結論から言えば、私は緊張しているから贈り物が出来ないと思う。
何故ならいざ渡そうとすると体全体が震えてるように感じるからだ。
渡せるならすぐ渡したい。そう思っている。
「神依さん、どうしたんですか?顔が少し赤いですよ」
「・・・む、そうなのか?」
「熱でもあるんじゃないですか?」
と、おでこに手を当てるシン。私にはそれが凄く、恥ずかしく、そして嬉しく感じる。
でも恥ずかしい部分が大きいの―だろうか。顔に熱が溜まる。
私には、とても恥ずかしくて――渡せない。
そう思ってその時間をすごしていた。そして、夜が近くなってきた。
―――
「神依さん、話があるんです」
「む――どうした」
夜の、川原の近くで二人ッきりになった時だ。いつもこういう二人っきりの時はとても緊張する。
「神依さん、クリスマスプレゼントですよ」
「なっ・・・」
驚いた。まさかシンから贈り物を貰うとは思わなかったからだ。私から、贈り物を贈ろうとしていた時に
これは―なんて、偶然。
彼が贈り物をしてくれてるんだ。私にも―出来る。
「シ、シン・・・私、からも、その、贈り物があるんだ」
と、かばんからぬいぐるみを出す。丁寧に作り上げた。彼の為に作った、鳥のぬいぐるみを。
「神依さん・・・」
「シン・・・」
と、そのままシンと見つめ合う。私は―シンが、好きなんだ。
そういう思いが再確認が出来た。
そして、シンは珍しく、私を囲むように抱きしめる。暖かい体で。
いつもは私から抱きしめているが、こういうのもいいかもしれない。と思った。
最終更新:2009年02月07日 23:01