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タピオカ丼氏の擬人化ネタその1

※なのは的BJ設定です。シンは多分20~22歳?



禍々しい光が奔った後には、辛うじて存在していた残滓とも言える焼け焦げた手足が転がっていた。
腰から掲げていた大砲を、背中にマウントしシンは一つ大きく息を吐く。
背中から怖気のする程に鮮やかな真っ赤なアゲハ蝶のような、悪魔のような翼が消える。
彼が纏っている衣は本来は青と白を基調としたはずが、出力の限界を超えた魔力の放出に次ぐ放出。
戦闘に次ぐ戦闘により、裾は擦り切れ、色は赤黒く変色していた。その事をシンは特に嘆こうとは思わない。
ベルトのバックルを取り外すと、神秘的とも捉えられる光に包まれ、シンの纏っていた衣は武装と共に消え、彼の傍らに小柄な少女が現れる。
その姿は衣装は青いワンピースに黒いブーツ、髪の色こそ金色であるものの、今は亡き彼の妹そのものであった。
もっとも、その表情はコロコロと絶えず表情を変えていた彼の妹とは異なり、精巧な人形のように無表情なものであった。

「クソ……また逃がした…」

足元に転がっていた腕であったであろう炭と化したモノを苛立ち紛れに踏みつけると、乾き、腐った枝のように乾いた音を立てて崩れ去り風に溶けていく。
傍らに佇む少女は、シンと揃いのその紅い瞳にかすかに気遣う色を浮かべると駆け寄る。

「マスター……あまりご無理を ――― 」


少女の言葉はそこまでで途切れた。


白い細首を、幾度も繰り返され硬く無骨になったシンの手が掴み上げていた。


呼吸を必要としない少女は、微かに苦悶の表情を浮かべるが、その手から逃れようとはしない。

「黙れ……下らない事を喋るな、紛い物が」

紅蓮の瞳が少女を忌々しげに睨み付ける。

青い色とたおやかな物腰、金色の髪、妹の面影、シンの弱さと後悔を全て詰め込んだこの少女がシンは堪らなく目障りだった。
嫌いだと言い切ることも、邪魔だと言い切る事も出来ない事が苛立ちに拍車を掛ける。
万力のように、一切の容赦無く力の込められていた手を離すと、少女の白い首に真っ赤な手形が残る。

それを一瞥すると、シンはしゃがみこみ、消し炭にした軌跡の土に計測器を突き立てる。
数字の示す座標に、シンは小さく舌打ちをした。


「また異世界に逃げやがったのかよ……」


計測器を引き抜くと腰に差し、少女に向き直る。


「アサキムの奴が逃げた先がわかった。追うぞ ――――――― デスティニー」

「かしこまりました、マスター」

フードを被り、消し飛ばした躯達を見ようともせずにシン・アスカは歩き出す。
何処までも追いかけてやる、決して逃がしはしない、どれだけの犠牲を払おうとも必ず縊り■してやる。
シンは渇き、ひび割れた唇から流れ出る血を拭おうともせずに、三日月のような笑みを浮かべる。
その数歩後を付き従いながら、数年前の、嘗て自分が冷たい鋼鉄の巨人として
少年だったこの主に仕えていた頃を思い出す。

鉄の揺り篭の中で、いつも独りで泣いていた少年。

冷たい籠の中でだけ弱音を吐いていた主を何度抱き締めてあげたいと思ったことだろうか。


しかし少年は戦いの中で弱さを、脆さを曝け出し、抱き締めてくれる女性と出会った。

それから少年は籠の中で、少女の子宮で蹲り涙を流す事を止めた。

その女性が少年の全てであり、安らぐ場所に変わったからである。

少女は物言わぬ鋼鉄の己が肉体を憎んだ。



そして、太極の呪縛に捕われし悲しみの乙女を憎んだ。


全てを失い、人間ではなくなる乙女もまた少年をいつしか心の支えとするようになっている事を憎んだ。

そして、宿命から逃れられずに乙女が消失した時、少女は哂った。
そして、まるで交代するように人としての肉体を持ち得た時、歓喜に震えた。

そして復讐が少年の空洞を埋め始めた。

一切の救いと癒しを拒み、休息を厭い、ただ進み続けるようになった。
まるで、一度でも羽根を休めればそれで全てが崩れ去ってしまうのを知っていて恐れるように。

少女は主が自分を忌々しく思っているのを知っている。
彼の心の最も弱く、痛む象徴。

無力の象徴としての妹、愚かの象徴としての少女、そして喪失の象徴としての恋人であった女性。

すべて自分が意図的に組み合わせ形作ったのだから。
主の自分を見つめる複雑に組み合わさった紅の瞳がただ好きだった。
自分が仇を追う手段であり、道具に過ぎない事など百も承知だ。

少年は青年となり、目まぐるしく変化していた表情は仮面のように時を止めた。
心は凍りつき、仇の漆黒を纏った男への憎悪のみを糧に次元を彷徨う彼に寄り添えるのは自分だけである、それで十分すぎるほどの幸福だ。


「セツコさん……」

仇の名を除き、この数年主の口から唯一漏れ出る名。

少年の全てであり、それ故消失と共に少年から全てを奪い去った女の名前。

何も無い主に残された唯一で在る事に目眩すら覚えながら、少女は主に付き従う。

主と同様に、歪で、禍々しく、美しい愛を胸に抱きながら。


FIN

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最終更新:2009年02月06日 22:03
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