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悠久幻想曲ネタ 番外編-03

<三馬鹿娘の日常~のらガイア~>

 ――カップを手に取り、顔に近づける。
 ほのかな香りを楽しんだ後、ゆっくりと縁に口をつけて一口だけ含む。ほとんど味のしないそれをさもおいし
そうに飲みながら、カオスは満足げに頷いた。

「やはり三時のティータイムは欠かせませんわね。最低でも一日一回は紅茶を飲まないと調子が出ないのは困り
ものですけど」
「やっすいティーバッグでも調子がよくなるならなんでもいいんじゃねーの?」

 バスケッドボールを指先で回すアビスをキッと睨みつけたが、すぐに咳払いひとつで――ついでに傍に置いて

いた使用済みのティーバッグを捨てつつ――気を落ち着ける。

「お、おほほ……貴方のような体力バカには分からないんでしょうね。そんな球遊びに夢中になるようですから
仕方ないのかもしれませんけど」
「あ? 何やるつもり? ケンカなら誰からのでも買うけど?」
「そういうところが下品と言ってるんです」

 フッと勝ち誇ったように笑うカオスだったが、すぐにアビスから恨みがましい視線を向けられた。

「だったらよぉ、さっさと攻めちまえばいいじゃん。早いとこ暴れてーのに今はダメだって言ったのはどこのど
いつだってーの」
「仕方ないでしょう? 自警団にまで私たちの敵がいると知った今、迂闊に動くのは危険なのは分かるでしょうに」
「あー、セイバーともう一人だっけ? なんかやたら言動が危ない奴だったけど」

 ボールを天井すれすれまで投げてはキャッチを繰り返しながらアビスは眉間に皺を寄せる。カオスもまた顔を
険しくしながら歯を噛み締めていた。

 ――バンッ!

「アナタたち! こんなところにいたのですか!」

 そう叫びながら入ってきた仮面の男に、アビスはやる気のない瞳を向けた。

「なんだよハメットのおっさん? 用心棒の出番か?」
「そうではありませんが、いくらなんでもだらけすぎでしょう!? 少しは働く意欲というものを……」
「私達に関係があるのはシン・アスカとその取り巻きどもだけ。そういう約束でしょうに」

 カオスに至っては視線も向けないまま拒絶の姿勢を取った。ハメットは「ここは私の屋敷でありますのに……」
だのと呟きながら凹んでいたが、ふと思い出したように顔を上げて部屋の中を見渡した。

「そういえば今日は一人足りないのですね。いったい何処に?」
「あ? ガイアならそこに寝てて……って、いねぇ」

 二人が目を向けた先の大きなクッションの上には、何も乗っていなかった。

「いつの間に……?」
「んー、まぁ夕メシ時になりゃ帰ってくんだろ」
「夕食を作るのも私でありますのに……」

 仮面を被っているというのに分かるほどの落胆の表情を見せて、ハメットは小さくため息をついた。

 ――ガチャリ。

「ただいまー」
「あ、シンさんおかえりなさいッス!」

 テディの出迎えに片手を上げて答えつつシンは店の奥に入り椅子に座りこんだ。

「大変だったみたいッスね」
「あぁ……さくら亭に団体で客が入ってさ」
「それはあんまり想像したくないッスね……」

 身体を震わせるテディの言うように、さくら亭は時折戦場と化すことがある。
 特に観光シーズンとなるとその規模は跳ね上がり、ホールも厨房も地獄のような状況へと変わるのだ。
 今回はシンは完全に厨房に籠りきりになり、絶えず飛び交うオーダーを捌いていかなければならなかった。半
ば叫ぶようにソードがオーダーを告げるようになったのはいつ頃からなのか思い出そうとして、一気に疲れが倍
増したのでやめた。

「よく頑張ってるよ、あいつら本当に……悪いテディ、コーヒーくれ」
「デス子さん迎えに行かなくていいッスか?」
「教会に遊びに行ってるだけだから自分で戻ってくるだろ。今はゆっくり休みたい……」
「ウイッス。すぐ淹れてくるッス!」

 ぺたぺたと足音を立ててキッチンに向かうテディを見送って、シンはテーブルの上に置いてあったクッキーに
目を向ける。

 ――昨日作ったやつの残りか。

 卵白が余ったからということで昨晩作ったのだ。デスティニーから「なんか食感が軽すぎて食べた感じがしな
いです」と切り捨てられて少し凹んだのを思い出す。

「結構残ったんだな……」

 疲れていると無性に甘いものを食べたくなるのは人間の本能である。
 軽く意識が薄れてきたシンもまた、その本能に従って皿に手を伸ばし……

 ――のそり。

「…………」
「…………」

 突然向かいの椅子の下から這い出てきた少女と、目が合った。
 テーブルに顎を乗せ、眠たげに目をこする少女。ショートブロンドからわずかに覗く無機質な耳も無気力に
垂れ下がっていた。
 いつかどこかで見た顔、それを思い出してシンはようやく我に返った。

「お前……ガイア!?」

 名前を呼ばれ、少女は耳をピクンと跳ねさせて再びシンに目を向ける。
 数秒間の沈黙。その瞳から何の感情も読み取れないことにシンは知らず息を呑む。
 そして少女は……そのまま寝た。

「って、寝るなーーーーーーーーー!!」

 叫びながらテーブルを叩くと、ビクッと跳ねあがるようにガイアは顔を上げた。
 何が起こったのか分からないというように目を見開いて瞬きを数度。そしてすぐに気だるそうな目に戻った。

「うるさい。眠れない」
「だから寝るなっ! だいたい何でお前がここにいるんだよ!?」
「……天気がいいから?」
「なんで疑問形なんだ!? っていうかそもそも理由になってない!」

 最早ツッコミどころしか存在しない言動に反射的にすべて突っ込むシンだったが、一瞬身体の力が抜けて倒れ
そうになる。疲弊しきった身体でこれだけ叫び続ければ無理もないことだが。

「まぁゆっくり休めよ」
「お前が……いや、もういい」

 背もたれに身体を預けて顔に手を当てる。何のつもりかは知らないが、危害を加える気がないのならわざわざ
相手をする必要もないだろう。

「……?」

 静かになったなと思い目を向けてみると、ガイアはじっとクッキーを見つめていた。
 チラリ、と目線だけがシンの方へと向く。

「あぁ、昨日作ってみたんだ」
「そう」

 そしてまたクッキーを見つめる。数秒後またシンの顔を見る。
 クッキーを見る。シンの顔を見る。
 クッキーを見る。シンの顔を見る。
 クッキー、シン、クッキー、シン、クッキー、シン、クッk……

「あぁもう分かったよ! 好きなだけ食えよいいから!」
「うん」

 頷くや否や早速ひとつを手に取ってサクッとかじる。

「――――!」

 目が大きく開かれ、耳がピンと立った。

「……うまかったか?」

 コクン、と首を縦に振ると残りを一口で平らげ、早々と次の一個に手を伸ばす。

 ――なんというか、犬っていうか猫っていうか……

 呆れながらも、無表情に次々とクッキーを頬張るガイアを見てシンは小さく笑みをこぼした。

「シンさん、コーヒー入ったッスよー……って、だだだ誰ッスかこの子は!?」

 危うくコーヒーをひっくり返しそうになるテディに説明するのも面倒だったので、シンは無言のままカップを
受け取った。

「――う、ん?」

 いつの間に寝てしまったのか、まどろみから抜け出して目を開けると、寝入る前と変わらず目の前にガイアがいた。

「なんだよ、まだいたのか」

 目をこすりながら窓の外に目を向ける。
 すでに辺りは黄昏色に染まっており、遠くで鐘が鳴っていた。

「……あなたは、」
「ん?」
「私に、何もするつもりはないの?」
「何もって……何の危険もないようなら別にどうしようとかは考えてないだけだ」

 質問の意味がよくわからなかったが、とにかく今素直に思っていることを言うことにした。

「……そう」

 何か納得したように二度三度頷くと、ガイアは椅子から飛び降りた。

「これ、全部もらってもいい?」
「あ? まぁ、別にいいけど……」

 黙々とクッキーをどこからか取り出した袋に詰めるガイアをただ見つめる。すべてを仕舞うとそのまま店の
入り口まで向かい、扉を開けた。
 そこで振り返り、小さな手を振る。

「ばいばい」
「うん」
「次会う時は……」
「え?」

 何かを言いかけて口をつぐみ、そのままガイアは出ていった。

 ――なんだ? あの顔……

 見えなくなる間際のさみしげな表情に何か引っかかるものを感じながらも、シンは追いかけることもできず
そのまま椅子に座っていた。

「ただいまですマスター! なんかまた無性にあのクッキー食べたくなっちゃったんで文字通り飛んで戻って
来まし……あ、あああああああ! ない! クッキーが一枚もないぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 そんな引っ掛かりも、泣きながらポカポカと叩いてくるデスティニーをなだめるのと別の菓子を用意する中に
埋もれていった。
「おぁ、なんだこりゃウメーじゃん。どっから持ってきたんだガイア?」
「……もらってきた」
「いや、だからどこからって聞いてんだけど……まぁいいけどな、もう一枚」
「これは中々美味ですわね。ハメット、私にお茶をお入れなさい」
「だから! なんで私が給仕のごとき扱いを受けねばならないのですか~~~~~~!」

 仮面の男の虚しい叫びが、夜闇に溶けて消えていった。



<おまけ:MGソードインパ発売記念>

 参考元:ttp://www8.uploader.jp/dl/jyonan/jyonan_uljp00062.jpg.html
 ※またも都合によりインパルスが三人に別れてます

Sインパ「いよッ――――――しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
Fインパ「あはは……おめでとう、ソードちゃん」
シン  「フォースに次いでソードもか……やっぱりなんかうれしいよな、こういうのって」
デス子 「むぐ? なんかいろいろ変わってるみたいです。ごくん」
Sインパ「あいかわらず何か食ってんなお前……まぁ今日は許す! それじゃあソードシルエットver MGの
     初披露といくぜ!」

 ――わー、パチパチ!

Sインパ「これが新しいアタシの武器だ!」
デス子 「おー!……って、見た目そんなに変化がないような」
Sインパ「だぁっ! てめえの目は節穴か!? このエクスカリバーを見てみろ!」
シン  「これは……伸縮式になってるのか?」
Fインパ「わたしに付いてたのとは違うんだね」
Sインパ「へへっ、これで一本だけでもデス子のやつのアロンダイト並の長さになるぜ!」
デス子 「むう……むぐむぐ」
Sインパ「(まだ食ってやがる)そして! 今度はコイツだっ!」
シン  「おおっ!?」
Fインパ「ブーメランが連結して……!」
Sインパ「これがアタシの新しい武器! これが……」

Bインパ「――オールウェポン、フルバースト」

 ――ズバァッ!

全員  『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
Bインパ「ふん、どいつもこいつも浮かれて……」
Bインパ「………………」
Bインパ「ぐすん」

 ――ポン。

Bインパ「!?」
レジェンド「――付き合うよ」
Bインパ「あぁ……お互い最近出番がないしな」
レジェンド「それは言うな」

 ――奇妙な友情が生まれた。





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最終更新:2009年03月02日 12:08
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