アットウィキロゴ

ツンつん×デレでれ 1話

俺は酷い激痛と、朦朧とする意識の中にいた。

頬には冷たい感触。

その冷たさが辛うじて俺の意識を保つのに貢献していた。



                              ◇




もう、今となっては語るのも億劫だ。



何がって?

俺がこの世界にいる理由……っていうか来た原因。

聞かせろって?

アンタ嫌な奴だな。
人のトラウマスイッチを押したがるなんて碌なやつじゃねぇぞ?
前世はきっとピンクの髪した教祖様か、甘ったるいボイスで電波な事を正当化しちゃうチートなニートなんじゃないのか?


アスランの問いかけに、心乱された俺の刃は曇りきっていた。

そう言うと何だかカッコ良いが、要はアスランのワケのわからない、だけどやたらと神経を逆撫でる言葉の数々にぶち切れ、うろたえて、テンパッたというのが真実なわけで。

っていうか言葉攻めって汚くないか?まぁいいや続きを言おう。

アスラ…もう凸で十分だ。

凸に見事なまでにブッ飛ばされた俺が魔法等という眉唾なものが闊歩する世界に飛ばされた。


ハイ、そこ。

可愛そうな子を見る目で見ない。

傷付くから。


とにかく、俺は凸にブッ飛ばされて、核融合炉がいい塩梅に暴走してこの今いる世界に飛ばされた。

乗っていたデスティニーは飛ばされた時には何処かへと消え失せていた。
特に機体に思い入れをする方ではなかったので、消えてしまったデスティニーの核が何処かで大変な災害をもたらしていなければいいな、程度にしか思わなかった。とにかく、俺は戦いを共にした相棒を失った。

そして、ついでに服も失った。

そう、俺は発見された時はスッポンポンだったらしい。
生まれたままの姿で、母なる海辺に倒れていたという。
フム、死にたくなるほど恥かしい気がしないでもない。
そういえば、「モンティパイソン、イエァア~~」等とわけのわからない事をのたまったのはヘリの操縦者の男。
何処かハイネを髣髴とさせる軽妙さと安心感を漂わせてくる男だった。
名前は聞いたけど忘れた。



モンティパイソンって何だよ。


余談だが、後で聞いた話だと、次元漂流者というのは得てして三通りあるらしい。



一つ目は持ち物が、その世界に適応した形に変化する事で共に来るというもの。
例を出すなら、デスティニーが魔法の道具に変化するとかそんなところだ。


二つ目は俺のように身一つとなってやってくるというもの。
極端な話、異世界の物というものは時計一つとってみても重大な異物に当たるそうだ。
血管の中に小さな空気が入ったらそれだけで大事になる事を思い浮かべてくれ。





そして三つ目は、融合。



これについては聞かない方が良いと言われた。どうしても知りたければ『ザ・フライ』を観てみろ、だそうだ。




それはともかく、俺は機動六課というところに検査の後回された。

結果から言えば、異世界から来たという俺の存在はすんなりと受け入れられた。

思わず俺が「オイオイ」と言いたくなるくらいにだ。
もう少し此処の連中は疑う事を学ぶべきだと言ったら栗色のボブカットの何処か胡散臭い喋り方をする女(どうやらお偉いさんらしい)に「ここの連中はクセ者ぞろいやからなぁ~ちょっとやそっとじゃおどろかへんよ」とあっさりと流されてしまった。
寧ろ次元を漂流してきたという俺自身の方が胡散臭いと思っているのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
その後は六課の連中に自己紹介をする羽目になった。

最初に挨拶をしてきたのはにこやかだけど、何か腹黒いというか、笑顔で大技をかましてきそうな………そうだ、アイツだ、キラ・ヤマト的なえげつなさを匂わせる女だった。
けれども、アイツほどアブナイ感じはしなく、不快感といったものはなかった。

次に紹介されたのが金髪の女。
正直、『金髪』というだけで俺のトラウマ回路やノスタルジー回路はグワングワンに揺さぶられる。
そこに『女』が付いて、しかも『デンジャラスバディ』という特典まで付いてくるともう脳裏に該当者が一名浮かんでしまう。
金髪の女は知的さを漂わせるけれども、冷たさは感じさせない雰囲気で俺に握手を求めてきた。
やはり、この女からも嫌な感じはしない。

そして、次々と目まぐるしく六課のメンツを紹介されて俺が最初に思ったことは一つだった。



『濃いなしかし』



キャラが立ち過ぎているにも程がある。
マンガじゃないんだから。
いやマンガより性質が悪い。
魔法なんてあるのだから。

ただ、俺の目を引いたのは、最後に挨拶をしてきたヤツだった。

目も眩むような橙色の髪は太陽のようで、勝気な瞳の中に秘められた好奇心の強さや、それと同じくらいの脆さは俺に『彼女』を少しだけ髣髴とさせた。その少女はティアナ・ランスターというらしい。

友人のスバル・ナカジマは『ティアって言うんだよ!!』とご丁寧にあだ名まで教えてくれた。


ほうほう、ティアね。ティア ――― 『涙』か……案外コイツにピッタリかもしれない。


何故か、頬を紅潮させ、俺を睨み付けてくるこのティアという奴が俺の心にざわりと触れた。


けれど、俺はソレを無理矢理押し殺した。

その時、俺はこの世界に来て虚無感と喪失感が綯い交ぜになった末に常に心の中に掬う事になった厭世的な心持でいた。
後から思えば、これは似たような傷を持っているという点に、俺の唾棄すべき卑しい同属意識が反応したというか野良犬根性が匂いをかぎつけただけなのだが、俺はこの時はもう、すっかりと全てに綺麗サッパリやる気を無くしていたわけで。
それに、俺は異世界から来た異邦者。きっといつかお別れが来る。
だから、いらない期待などしてはいけない。


俺は深く心に牢記した。


そう牢記したのだが………




「シ~~ン!!明日のオフの日はウチと一緒に夜景の綺麗なレストr「「ダブル魔法少女キィィィーーーーック!!」」はぐわぁッ」

日課の自主トレを終えてシャワーを浴びようとしていた俺のところにスゴイ速度で八神隊長がやってきた。
そして、ダブルライダーキックもとい、ダブル魔法少女キックによって吹っ飛んだ。
19歳って少女なのかな。

壁に分断された超○神みたいに八神隊長は即座にボゴッと壁から抜け出る。
八神隊長は炎竜か氷竜かで言えば氷竜なんだろうが、暑苦しさから言えば炎竜だろうか。
そして、二人の魔法少女(自称)と対峙する。


「何すんのやなのはちゃん、フェイトちゃん。親友同士のスキンシップにしては度が過ぎるで~~?」

「そっちこそ少し頭冷やそうか?」
「貧相な二人は仲良く涙酒でも飲んでて。シンは金髪グラマラス好きなんだから、私がゆっくりいやしてあげるんだから」

フェイト隊長、あらぬ噂はマジで勘弁です。
ホント、そういう即物的な好みだって誤解されたら俺キャロ(異世界妹その一)とヴィヴィオ(異世界妹その二)に嫌われちゃう。
そう俺の心の叫び等、当然聞こえるはずもなく。
というか、リアルでの叫びだって聞く耳を持たない人たちはガチのバトルを始めようとしていた。


「またやってる…」
「ティアナ…」
呆れた声に振り返ると、溜息を付いたオレンジ頭が視界に飛び込んできた。
先程まで一緒に自主トレに付き合ってくれてたティアナだ。
こう見えて付き合いが良いのか、コイツは俺が自主トレをすると必ず付き合ってくれる。
そこでふと、俺はある事を思い出した。

「なぁ、ティアナ」
「何よ?」
「お前明日暇か?暇なら何処か遊びに行かねぇ?」

いつも自主トレに付き合ってくれているお礼だ。
飯ぐらいなら奢っても良いかなと考えていると、ティアナは何故か顔を林檎のように染め上げてしまった。
風邪だろうかと思ってみていると、何か「これってデート?」だとか「遂に積み重ねが実った」だとかブツブツ言っている。
大丈夫か?コイツ。
少し俺の視線が生温かくなった事に気付いたのか、ティアナはハッとなって我に返る。

「ま、まぁ、べ、べべべ、別に構わないわよ?どうせアンタ一緒に過ごす相手もいないんだろうし」

いやまぁ、ヴィヴィオとかエリオ(異世界弟)とかいるんだけどなぁと思ったが、生物的直感(すなわち本能)がそれは言うなと俺に告げるので言わない事にした。

「じゃあ決まりだな」
「う、うん!!」

ティアナは頬を真っ赤にしたまま頷いた。
その表情は初めて会った時のものに似ていて、俺は不意に聞きたかった事を聞くことにした。


「なぁ、ところでお前初めて会った時何で顔赤かったんだ?」

別に一目惚れでも無いだろうに。
俺じゃなかったらウッカリ勘違いするところだぜ?と言うと、何故かティアナは一層顔を赤らめる。

「どうしたんだ?なぁ、オイ?」


「―――――― からよ……」
「え?」

「――― 私だったからよ…」
「いや、悪い。もっと大きな声で言ってくれ」



「アンタを最初に見つけたのは私だったからよ!!!!!!」


顔をこれ以上無いくらいに真っ赤にしてティアナは叫んだ。
一瞬、その気迫に呆気に取られるが、暫らくしてようやく合点が行った。
俺の裸をコイツは見ていたのだ。
きっと、だから決まりが悪かったのだろう。
俺は、人の心の機微に敏感なとこを見せようと「気にすんな。俺は気にしない」と気軽に言ってやる。
セリフは親友のパクリだが、アイツはきっと許してくれるだろう。

ところが、ティアナの奴は何故か青春の握りこぶしを作る。
何故だ?お前はノア信者か?
プルプル震える拳が、次の瞬間風を切り裂いた。

「少しは気にしろ!!バカァァァァーーーーーー!!!」

的確な顎へのピンポイントナックル。
俺は『車田ぶっ飛び』をして床に顔面から落っこちた。
そして、加害者Tはというと「責任取れ馬鹿ーーー!!!」と言って何と逃走してしまった。

俺は床に沈んでいる。


                             ◇


俺は酷い激痛と、朦朧とする意識の中にいた。

頬には冷たい感触。

その冷たさが辛うじて俺の意識を保つのに貢献していた。




朦朧とした意識の中で色々と考えた。


ティアナは何故怒ったのだろうか。

責任とは何だろうか。


そして、いつの間にか俺とティアナの遣り取りを見ていた三人の破壊神相手に、明日という日が拝めるのか。



今はそう、俺が異世界に来てから八ヶ月が過ぎようとしていた。
依然として元の世界に帰るような展開は来そうに無い。



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年04月06日 02:14
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。