「少し頭冷やそうか?」
その声は優しく俺を天に召そうとする天使の声………ではなくて、
煉獄に叩き落そうとする悪魔の笑い声………やっぱりなくて、
首に鋸を当ててスインバムンと引く音………では当然なくて、
カラカラ空鍋をからんと回す音なんかで……もなくて、
単純に魔法をぶっ放す声だったりする。
何とも頭の湧いた理由だ。
光の奔流が俺を飲み込み、したたかに焼き付ける感触。
もうこのオチにいい加減慣れてきた。
だから最初にオチを持ってくることにする。
刑事コロンボでド初っ端に殺人の現場をやるのと一緒だ。
あれって、最初と最後見ればとりあえずすっきりするよね。
しかし、このオチって一体どれだけ使われてきてるんだろう。
ここまで使われてくると最早……
『もうルーチンワークだな』
『やっぱりそう思うかい?ジョージ』
『はっははは、けど安心しなボーイ、ルーチンワークを越えた先にお約束が存在するのさ』
『お約束とな、一体どんな特典があるんだい?』
『コレがなきゃ落ち着かないってことだよボーイ』
『…………それはこれから先もずっと魔法でブッ飛ばされるっていうことかいジョージ?』
『はっはっは、そうなるなぁボーイ』
『何で笑顔なんだいジョージ?』
『何故かって?愚問だぜボーイ。そんなの他人事だからに決まってるからさ』
『はっはっはっはっは』
『HAHAHAHAHAHAHA』
『ジョージ、ちょっと面貸せや』
『それはゴメン被るよボーイ。それに良いのかい?もうすぐ床だぜボーイ』
『へ?』
脳内マイコーディネイター:ジョージ・ジョナサンとの脳内会話は唐突に向こうから打ち切られた。
主に物理的な要因に寄るところである。
ドグシャァァァァァァァと耳を塞ぎたくなるような音と共に、俺の顔面は床に落下し、空中を錐揉みしながら3回バウンドしてようやく止まった。これでも死なないって結構凄いと思う。『スゴイね、人体』とニッコリ笑うボクシングのチャンピオンの顔がチラつく。
そして、どうして俺がこんな目に遭っているのかというと、まぁ理由は簡単だ。
ヴィヴィオ俺の部屋にお泊り→翌日高町隊長、俺を起しに部屋へ→ヴィヴィオとティアナと眠ってるのを発見→冒頭に至る。
一行でこの非人道的な仕打ちの説明が付いた。
俺が一回車田ぶっ飛びする理由なんてこんなもんだ。
ああ、視界の隅に見えるエリオとキャロの気遣わしげな視線。
止められなかった事を悔やむ視線。
いいんだ、気にするな。
お前たちの存在は、この悪鬼羅刹達のずくしの中でスッゴく爽やかな存在だ。
そして、きっと問題があったとすればティアナの格好も問題があったのだろう。
俺の部屋着を着ていたのが、高町教官の何か踏んではいけない地雷を踏み抜いたらしい。
俺はコレを教官の潔癖なまでの生真面目な正確に由来するのではないかと推測する。
俺の中のマイコーディネイターその2、ロジャー・ボンゴレスもパイプをスパスパ吸いながら鷹揚に頷いている。
女性の中では時として、きちんとしたお付き合いの形式をとっていない男女が二人で出掛けたり食事に行ったりする事を嫌う人がいる。
高町教官もきっとその類なのだろう。
気にしない女性はとことんルーズなんだが。
「シンお兄ちゃ~ん」
ああ、俺のエンジェル、俺のリトルプリンセス、ヴィヴィオ。
高町ヴィヴィオがやってくる。男だと『ちょっと腐女子受け狙い過ぎ……っていうか腐女子あんま舐めんなよ』なオッドアイも、幼女だと途端に愛くるしいチャームポイントの一つになるのが最高だ。
幼女はジャスティス。
いや、ジャスティスすなわち幼女?なら凸のガンダムも擬人化すれば幼女?
いけない、痛みと理不尽と孤独な脳内会話に思考が上手く纏らない。
このままでは豚肉の炒め物と豚汁という組み合わせで豚が被ってしまいそうだ。
そうそう、ジャスティスが幼女だったら、俺は少しどころじゃなく許せそうな気がする。
だって可愛いし。誰だってそうだろ?8歳や9歳の幼女は可愛い。
大体世間では俺の事をシスコンシスコンと言うが、6歳も離れてる妹を可愛くない奴が何処にいるっていうんだ。
そんな事を思っていると、ヴィヴィオが俺の傍に座って小首を傾げる。
けしからん、実にけしからんぞ、その可愛らしさ。
うん、流石は異世界における俺の紫の上。
「ヴィヴィオ、君に決めた!!」ってやつだ。
その隣りには俺のジャケットを簡単に羽織ったティアナ。その顔は普段の強気から一変して心配そうなものになっている。
髪型は…ああ……ちゃんとツインテールにしてるな。うん、よしよし。
正直高町教官とかフェイト隊長みたいな19歳だとツインテールはキツイ。
本当は高校生でもキツイが、可愛さでカバーできる。
ホント、可愛いは正義だ。どこかのモテない女なんてツインテールなんざ中学で止めている。
それくらいする人を選ぶ髪型だ。
しかし、ティアナは違う。ツンデレとツインテールのコンボの威力を知り尽くしている。
ああ……流石はティアナ、自分がどうすれば、どう磨けば、どう魅せれば輝くかを熟知してる。
畜生可愛いな。
と、そこまで考えていると、何故かティアナの顔が赤い。
ヴィヴィオは不思議そうに首をかしげている。
一体どうしたのかと思っているとヴィヴィオは、その蕾の如き可憐な口を開く。
「シンお兄ちゃん、紫の上ってなぁに?ヴィヴィオはお兄ちゃんの紫の上なの?」
そうだよ、俺のマイフェアレディ……ってあれ?もしかして声に出てた?
「うん」
そこで、ようやくティアナの方を見ると、忙しなく、モジモジとツインテールを弄っている。
何だその萌え仕草は!!
「ば、馬鹿……何を急に言い出すのよ……それに、言ってくれればいつだってツインテールにくらいしてあげるわよ」
ソレは何たる僥倖!!じゃなくて、俺はいつから声に出していた?
「へぇ……私みたいな19歳でツインテールはキツイんだぁ……」
「そうなの?シンはそんな事を思ってたの?でも魔法少女の宿命でしょ?私何か間違っているかな?」
はははは、やばいよ、ジョージ。
二人とも勝負服だよ。めっさ勝負服だよ。ごっさ勝負服だよ。
色っぽい意味じゃなくて、ガチンコの意味でだよ。BJだよ。
どうやら俺にも必要みたいだよBJ。
ただし、俺に必要なのはバリアジャケットじゃなくてブラックジャック先生だけど。
ドリフの爆発オチの如く、俺の肉体は再び爆風に煽られることとなった。
非殺傷設定?何それ、おいしいの?
最終更新:2009年04月06日 02:21