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ツンつん×デレでれ 4話

一見派手なイメージの第六課。
でも、それは違う。
派手なのはあくまでテレビだからである。
刑事もののドラマのように毎日大捕り物があるのかと言われるとそんなわけが無いのと同じである。
つまり派手な非日常が流れるのであり、日常は地味なものなのである。

そして、シン・アスカは今、その日常をこなしている。

コーディネイターならではのブラインドタッチは唸る唸る。
具体的に言うならば、魔法で破壊された始末書、報告書。
そして、壊された機械類の修理の手伝い。
コンピューターの調整。
まさしく忙殺。
忙しさに殺されると書いて忙殺。


「シ……シンさん……こちらの報告書…終わりました……」

「ご苦労さん…エリオ…」

よろよろと駆け寄って報告書の束を持って来る弟分に涙が出そうになる。
多分、訴えたら勝てるんじゃないかなぁ…とシンはエリオの年齢と労働時間を思い描きながらそれでも指先はキーボードを叩く。
そこにふらりとチョイワルなお兄さんが現れる。

「おうおう、見事な指捌きだねぇ~~こりゃ女泣かせな指だ♪」

そういってケラケラ笑うのは、「俺には事務仕事はむかねぇや」と言って一向に手伝う気配を見せないヴァイス。
シンの兄貴分である。
ヴァイスは暢気にコーヒーを啜りながらシンの頭に手を乗せる。
口元にはニンマリとした笑み。


「で?どうなのよティアナとの進展は?それともフェイトか?お前金髪で胸でかいの好きだもんなぁ~かぁ~あの身体は犯罪だぜ、なぁ?」


ぽんぽんと頭を叩くヴァイスに、徹夜四日目のシンの紅の瞳がどんよりと光る。
ゆっくりと立ち上がり、ヴァイスをそっとイスに座らせるとシンはその後ろに回る。




「せいッ」



チョークスリーパー。
裸絞めとも言う。
人間は一定時間脳に血流がいかないと意識が無くなる。
ヴァイスの身体が糸の切れたマリオネットのようにずしゃりと、生々しい重みを伝える音と共に崩れ落ちる。
エリオも既に三日目の徹夜を迎えており、特にそれを責め立てるような事はしない。
ただ、シンと同じく床に崩れ落ちたヴァイスをでろりとした瞳で見下ろす。
シンはそっとエリオの肩に兄が弟にするように手を乗せる。


「エリオは脚を持って。俺は頭の方を持つから」
「わかりました」

息もぴったりに、ヴァイスの身体を持ち上げると、シンとエリオはこの崩れ落ちている『ズダ袋』を無かったことにするべくゆっくりと持ち上げていき、窓から放り投げた。
ちなみに仕事をしているのは五階の空いている………というか頼み込んで貸してもらった、だって瓦礫が酷いんだもん。……会議室だ。
ゆっくりと、まるでスローモーションの様に落下していくヴァイスをシンとエリオはどんよりとした瞳で見下ろす。

大丈夫。
きっと大丈夫。
だって非殺傷設定だもん。
でも念のためヴァイスの飲みかけのコーヒーは流しに捨てて、手袋を嵌めた手で窓の外に紙コップは破って捨てることにする。
一連の証拠隠滅を終えると、シンとエリオは頷きあって仕事を再開する。
今さっきようやく魔王の破壊した諸々の物品に関する始末書、及び必要な機材の発注、陳情書、報告書を終えたのだ。
そしてこれから取り掛からなければならないのは夜天の王に関する始末書等だ。


「これって女難になるのかなぁ?」
「少なくともアイドルの面倒をみたりよくわからない世界で女の子とイチャイチャするよりは確実に女難ですよ……」


気分を紛らわせる為に言った言葉にエリオは熱くなる目頭を抑えながら呟く。
その言葉にシンはふっと遠くを見つめる。


それにしては女っ気無くね?


男しか出てね?


ていうか世知辛くね?


声にならない叫びを上げる。


「なぁ、このポジションって俺じゃなくても良くないか?」

「いえ、そんなメタな事言われても……」

「だって最近俺結構空気じゃん?」

「ストップです。それ以上は色々な人に怒られますから…」


それは事実なだけに言ってはいけないことだとエリオは目で訴える。
シンはそれに黙って頷く。
少なくとも、こうして真面目に働いてくれる、それだけでシンは無くてはならない存在だ。
そうエリオは感じる。
しかし、それが一体何の慰めになると言うのだろうか。
それを言えばきっとシンはこう答える。



「ラブコメが……平和なラブコメがしたいです……安○先生……」


とエセサイコガンの虎ボイスで切々と訴えかけるだろう。
例えシンが空気であっても。
シンにかこつけて、他のキャラが書きたいんだろうとしても。
平和に勝るものはない。




「ほら……シンさん…見てください…とっても良い天気ですよ…」


シンもエリオにつられて窓の外を見る。
ヴァイスを放り投げた窓の外だ。



「ああ……そうだ、仕事が今週中に終わったらさ、ピクニックにでも行くか。俺車出すよ」
「免許取ったんでしたっけ、そういえば」
「ああ、こっちの世界でバイクの免許取り直しになったからさ、ついでにと思って」
「じゃあキャロとヴィヴィオと……あとティアナさんも誘いませんと」
「そ、そうだな、ティアナも、その必要だよな。保護者が俺一人じゃ心許無いだろうし/////」


テンプレ的ツンデレ台詞に苦笑しつつ「シンさん…バレバレですよ」そう言おうとしてエリオは言葉を呑み込んだ。
今、もしこの場で「やっぱティアナさんが本命すか?三馬鹿スルーとかシンさんマジぱねぇっす」
とでも言おうものならフラグが立つ。
具体的には彼の保護者である便乗とか、その友達の喫茶店の魔王とか夜天の王yagamiとか。



たまには穏やかな日々を彼にプレゼントしても良いだろう。


ほのぼのでいったって、それでシンが幸せならいいじゃないか。



エリオは少し大人になった顔でそっと頷いた。
その後に更にぱねぇ女難が待ち受けていたとしても。


「ホント、風も暖かくなってきたな…」

「そうですね」



その時はせめて自分も巻き込まれよう。
止める事の出来ない女難であるなら、あえて巻き込まれよう。
シンはそれを望まないだろうが、せめて兄のように慕うこの青年に自分がしてやれる事はそんな事くらいだ。


暖かくなった風に、春の足音が近付くのを感じつつ、エリオはそっと微笑んだ。



二人とも既にヴァイスの事は頭になかった。





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最終更新:2009年04月06日 02:25
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