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ツンつん×デレでれ 8話

私は今凄い自己嫌悪の中にいる。
自己嫌悪の更にどん底という感じ。
私の生涯の中でダントツの1位に入る自己嫌悪度を誇っている。
自己嫌悪・オブ・ジ・イヤーだ。

カタカナで書くと馬鹿っぽいわね。

私は走って帰るなりシャワーを浴びてさっさとベッドに潜り込んだ。
別に眠かったからというわけではない。
寧ろ目は冴えてしまっている。
でも、スバルとも話したくないから、スバルに会わない内に眠ってしまいたかった。
布団を引っかぶり、枕を抱き締めながら回想する。
ガチッという歯と歯がぶつかる音と、シンの吃驚した顔がフラッシュバックする。
私はそれを思い出す度に叫びだしたい衝動に駆られる。
何であんな事をしちゃったのだろうか。
自己嫌悪の理由の一つはそれだ。



けれど一番の自己嫌悪の理由は私がそれでも『嬉しいと思っている』事にある。


この期に及んで、私はシンに、あんな形でしておきながら、尚且つ、私は………嬉しいと思ってしまっている。
思い切り唇を重ねて……というかぶつけて、私の中には一瞬してやったりという感情が芽生えた。

それはアイツに対してでもあるし

アイツの事を思っているであろう親友や上官に対してでもあるし

何より今はいないアイツの『想い人』に対してでもある。



我ながら呆れてしまう。
自分の浅ましさとか、狡さとか、単純さに。
だから自己嫌悪。

スバルの顔を見れないのは後ろめたさから。

あの子はきっとまだ気付いてない。
自分の気持ちに。でも私にはわかる。
だから顔を合わせられない。
顔を合わせたら後ろめたさ以上に優越感を持ってしまいそうだったから。
親友にそんな事をしてしまいそうで、それが嫌で私は顔を合わせられなかった。
私はシンに大馬鹿と言ったが、ホントの大馬鹿は私だ。
ホントに馬鹿。
シンも馬鹿だけど、私はもっと馬鹿。
そして、ズルイ。
でも、でもアイツだって悪い。
あんな顔をするのだから、そりゃキスをされても文句は言えない。
誰の前でそんな表情をするのだと言ってやりたくなる。
よりにもよって私の目の前で。
アイツを………アイツを好きな私の目の前で。
だから、責任はアイツにだってある。


私はさっさと眠気が帳を下ろしてくれるのを待ち侘びていた。
そして、何でも無いようにアイツの前に行こう。
目を丸くするのか、それとも怒ってくるのだろうか。
それはわからない。

でも、もし、もし私の顔を見て、照れて顔を赤くしてくれるのだとしたら……


その時はハッキリ宣戦布告してやろう。




                               ◇






ティアとシン君がキスしてた。

そう、キスだ。
唇と唇を合わせるあの。
私はそれを偶然見てしまった。
シン君が夕涼みに行く屋上で、もしかしたらお話が出来るかなと思っていたら、小走りに駆けて行くティアを見つけた。
何故だろうか、そこで私は微かな胸騒ぎを覚えた。
今から思えば予感だったんだと思う。
そして見てしまった。
つい隠れるようにして見ていた私の横をティアは真っ赤になりながら駆けて行った。
シン君は呆然として、本当、正に『呆ける』という言葉がぴったりなくらいに突っ立っていた。
まるでティアに心を奪われてしまったかのように、立ったままの姿が何故か面白くなくて、私はわざと声をかけた。



「シーン君、何してるの?」

「スバル……」

「何かボーっとしてるみたいだけど?」

「い、いや、別に何でもない」



嘘。

嘘吐き。

そんな言葉がふと浮かんだ。
何故こうも隠されて私はムッと来たのだろう。
別にシン君とティアが付き合っても、それはそれで構わないのに。
それでも二人が私の友達で在る事には変わり無いのに。
どうして胸がこんなに痛いのだろう。
どうして胸の奥から熱い衝動が込み上げてくるんだろう。


「スバル?」
「なぁに?」
「何か元気無いぞ?」
「あはははは、そうかな」


シン君のせいだよ、そういっそ言ってしまいたかった。
けれど、その言葉をグッと飲み込む。


「じゃあ、元気付けるつもりでご飯でも食べに行こうか?」
「何が『じゃあ』なんだか…まぁ良いけど」
「勿論シン君の奢りでね♪」
「オイッ!!お前とティアナに奢ってるせいでどれだけ俺の財政が圧迫されてると思ってるんだよ!!」
「あはははは、良いじゃん、良いじゃん」
「ったくしょうがねぇな…お前といいティアナといい…」



シン君の口からティアの名が出た瞬間、また痛みが走る。


きっと私は寂しいのだ。
友達を取られたみたいで。
うん、そうだ、きっとそうだ。


「優しい~だからシン君大好き~」

「おい、引っ張るなって!!」


大好きと言う時に少し胸がきゅんとした。
耳が熱い。
そうだ、シン君もティアも友達なんだ。
それだけであって、他には特に意味なんて無い。
二人が付き合ったら構ってもらえなくなるような気がして寂しいだけなんだ。



だから、この胸の痛みなんてきっと気のせいだ。


私はそう思う事にした。






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最終更新:2009年04月06日 02:37
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