シンと魔理沙 +K

1

「うあ、なんだこれ」

霧雨魔理沙はアリスの家の前にあるそれを見て呟いた。
地面から生えている真っ黒い生首。パッと見はそれである。というかそれ以外の何物でもない。

そしてその生首はブツブツと何かを呟いている。
耳を澄まして聴いて、

「そうか女の敵か」

ものすごく後悔した。その生首は、やれ、おっぱいサイコー、だの、
きょぬーって夢と浪漫と何かがつまってるよねー、だの、貧乳は滅べばいいのにー、だの、
おっぱいおっぱい、だの、ゆかりん可愛いよゆかりん、だの、その少女臭がたまらないよ、だの。

制裁を加えるべきだな。そう魔理沙は思う。この女の敵に女代表として制裁を加えなければならない。

そう、これは自らが女として生まれた以上は必然!
言わばありとあらゆる女達に代わり下す怒りの鉄鎚!
男のエゴをむき出しにしているこの生首への当然の結末!
ついでに少女臭などと明らかな欺瞞をまき散らす生首への修正!


………別に、貧乳に個人的に反応したわけでは断じてない。
断 じ て な い 。

「とー!」
とりあえずげしげしと蹴る。正体も分からないし。なんとなく汚い気もするし。


げしげしげしげしげしげしげし「あふん♪」


―――アリスの家に駆け込んだ。戦略的撤退だ、キモさに負けての敗北ではない。

「うあーん、シンー、アリスー!」
泣きそうな声出してる辺り負けてる気もするが気のせい気のせい。


「ノックぐらいしろよ……で、どうしたんだ魔理沙?」

あきれた声と表情でシンは馴れた応対をする。別段彼女がここにノックも無しで入ることなど珍しくもなんともないからだ。
……まあ、流石に窓を「ちょいと失礼するぜ!」などとのたまいながらブチ破って入ってきたときは飲んでいたお茶を盛大に吹いたが。

だが、それでも泣きつかれながら入られるのは初めてだ。自然シンも心配そうな顔つきに変わる。

「お、おい、どうした? 何があった!?」
「お、おも、おも、おもおももおおもおも」

よほどキモかったのだろう、全く要領を得ない。もはや半泣きだ。

「落ち着け! 何か起こっても俺が守るから! だから落ち着いて何があったのか話せ!」

落ち着かせるために抱きしめて叫んだ言葉は、
「あうあうあうあうあうあ! あうあう!」
事態をさらに悪化させる! それでこそシン・アスカ! そこに痺れねェ憧れねェ!!

………その後、魔理沙を落ち着かせるため更に力をこめて抱きしめたシンに羞恥心のリミットが外れた魔理沙が
ちょっとしたマスタースパークを打ち込んで事態は終息を見せた、やあめでたくなしめでたくなし。

おしまい。


「……いや待て、何一つ始まってない! 結局何があったって言うんだよ?」

幻想郷に来て以来、数多の女難に鍛え上げられたシンにとってパニック状態で放たれたマスタースパークなど、
直撃したところで服がちょっぴり焦げる程度でしかない。

「いや、その、家の前のさ、表、玄関の近くで」

いまだに顔が赤い魔理沙はぽつぽつと話し出す。そこまでで何のことか察したのだろう、シンは納得したように頷く。
………そこには気づけて、なぜ魔理沙の顔が赤いのかについてはこれっぽっちも察してないのだろうかこの男は。

「ああ、あれか。あまり気にするなよ、関わらなきゃ害はないから」

その言葉に魔理沙は何とも言えない顔をする。納得はしかねるのだろうが、確かに害はなかった。ただひたすらキモかっただけで。

「……まあ、いいけどさ。結局何なんだあれ?」
「んー? キラさん。………元」
いい笑顔を向けるシンに、それ以上の追及はできなかった。

―――まあ、「あんたのせいでまたやりあう羽目になったんだよ」、「状況悪くするだけ悪くして一人でさっさと消えやがって」、
「パルマ一発で済んでありがたいと思いやがれ」と疲れ切った眼のシンの呟きでなんとなく何が起こったかは把握したが。

「大体あの人は前っから……っと、悪い。愚痴になったな」
「あー、いや、別にいいんだけど、さ」

そういい魔理沙は気忙しそうにきょろきょろと視線を動かす。シンはその態度にだれか探しているのだろうとまた馬鹿な勘違いをする。

「ああ、アリスならいないぞ。今は人間の里で人形劇やってる」
「あ、や、そうじゃなくて、だな。その」

アリスではない、ならば消去法で。

「上海か? それとも蓬莱? 悪いけどどっちも外に遊びに行ってる」
「いやマジボケかそれ?」
まあシンだしな。

「じゃあ……あ。ダメだぞ、色々世話にはなってるけど魔導書は盗ませない! そんなことされたら俺がアリスに殺される」
「いや、そうじゃなしに! えーと、だな。その……たまたま立ち寄っただけ、じゃなくて、その………あの」

魔理沙は帽子と前髪をもじもじと弄くる。そんな魔理沙を見てシンは、

(魔導書でもない? とすると……紅茶か? いや、魔理沙はホットミルク派。考えにくいな……
まさかトイレ? いや、にしては切羽詰まってないな……むぅ?)

さらにトチ狂った勘違いを重ねていた。もう少し、あれ、もしかしてひょっとするんじゃね?的に自惚れてもいいようなものだが。


ま あ シ ン だ し な 。


「だからぁ、その………お」
「お?」

そのまま固まる。顔は相変わらず赤いままだ。お、お、と繰り返し、そして。



「お前に、会いに来たんだよ!!」



窓をビリビリと揺らしそうな大声にシンはパチパチと眼を何度か瞬かせ、「そうか」と頷く。

「なら上がれよ、なんか出すから。ホットミルクでよかったか?」

顔もまだ赤い。息は肩でしている。真意は伝えられていない。
それでもちゃんと言うべきことを言えた魔理沙は「・・・うん」と答える。


「―――へえ、本気の幽香とやりあったのか、そりゃまたすごいな」

シンが運んできたホットミルク(蜂蜜たっぷりの極甘仕様)をすすりながら魔理沙はなんでもない話を続ける。
好きな人とはそれだけでも楽しいものだ。

「すごいって言ってもな……引き分けだぞ?」
「いやいや、十分すごいもんだぜ? 私だって本気の幽香なんてスペカ戦じゃなきゃごめんこうむるよ」

賞賛の言葉に慣れていないのだろう、シンは困惑の表情で緑茶―――アリスの見てる前では飲めない。
和風はアリスには不評だ―――をすする。

「むぅ・・・そうはいってもなー。デスティニーに変身してだからなぁ、生身でもちゃんと戦えるお前とは比べられないだろ?」
「自分をそうやって卑下するのはよくないぜ? お前の判断力があるからデスティニーは強いんだよ」
「そういうもんかねー」

「キラだって言ってたぞ、自分がデスティニーになっても性能引き出せないであっさりやられるだろうねーって」
「キラさんが?」

その言葉にシンは意外な表情を浮かべる。

「うん。あ、でもその後、まあ僕の超反応をもってすればシンなんて僕の足元にも及ばないけどねHAHAHA☆って言ってた」

その言葉にシンは玄関の方を睨みつける。


「まあまあ、照れ隠しだよ。耳赤かったし」
「分かってても腹立つんだよ! まったく……」

くすくすと魔理沙は笑う。シンも悪い気はしないのだろう、その顔は穏やかだ。

「………なんか、いいなー」
「ん、何が?」

魔理沙の言葉にシンは首をかしげる。

「いや、こういう、なんつーのかな。なんかいいじゃんか、何にもしないでだべってる時間ってさ」
「んー、ああ。そうかも」
「弾幕ごっことか、魔法の研究も楽しいんだけどさ。なんか、さ」

んー、と魔理沙は背伸びをして、ぐてりとテーブルに上半身を預ける。

「あー、これじゃ霊夢の事を笑えんなー。んあー」

仕方ないなぁとシンは微笑む。実際、魔理沙がぐてりとしてなければ自分がそうしていただろう。


……微笑んだまま、魔理沙の頭を撫でる。ん?と魔理沙がシンを上目づかいに見つめる。

「ああ、悪い。つい、な」
「んー、いいけど別に。んぅ・・・むー」

くしゃり、くしゃりとゆっくりと撫でる。そのたびに魔理沙はむずがるような嬉しそうな声を上げる。


(うあー、いかん。なんか頭とけそーだ。なんかこー、にーにー言いそー)


にへら、と顔がゆるむ。好きな人にこんなことをされればこうもなろうというものだ。


くしゃり。うあー。

くしゃり。んにー。

くしゃり。にあー。

くしゃり。うへー。


―――ふと、頭を撫でられてだらしない顔をしている白黒の金髪と目があった。

(うわー、なんだあれだらしねー。男に頭撫でられて顔ゆるめ、す、ぎ……ん?)

ようやく溶けた脳みそが動き始める。……目があったのは、鏡の中の自分だ。つまり、今の状況は。
「…………う、あ」

かああ、と顔が火照っていく。鏡で見なくたってわかる、顔が真赤だ。

「あの、かえ、る。もう、帰る、から」
「え? いや別にもう少しゆっくりしていっても」
「帰るからっ!!」

そのまま立ち上がり帽子を引っ掴んで玄関に駆け出した。

「お、おいちょっと!?」

訳が分からずにシンも立ち上がる。魔理沙は入り口でくるり、とシンに向き合い、

「お前は、もっと乙女心を分かった方がいい! バーカ!!」

べー、と舌を出してそのまま箒に乗って魔理沙は空に消えていった。

「…………????」
首をかしげるシンは実にボンクラっぽかった。やれやれだぜー、と生首が言ったのでとりあえず蹴っておいた。


おまけ1、香霖堂にて。
「――――ってなことがあったんだが、どう思うよ香霖?」
「え、僕も君が何で怒ったのかよくわからないんだけど?」
「うわ、お前もかよ! あれだなー、お前もシンも八雲紫にでも乙女心を学んだほうがいいぞ?」
「ひどい言いようだなぁ…というか」
「ん?」
「八雲紫は乙女心なんて年じゃ、あれ、なんだこの浮いてる青い棒はって魔理沙?どこ行くんだい、ってちょ、あ」
イケメン惨劇中…



おまけ2、アリスの家にて。
「どうかしました、キラさん? キモい笑顔を浮かべて」
「ん?いやなに、ゆかりんからの愛の指令、イケメン死すべしが電波に乗って僕の頭にゆんゆんと届いてきたのSA☆」
「はいはいそうですかーっと。手元が狂ってスコップがあんたの頭にスコッといきそうだからちょっと黙れ」
「そう言いつつ僕をちゃんと掘り出そうとしてくれるシン萌え」
「土食わすから今すぐ口を開けろ!!」

2


魔理沙「シン、ちょっと目をつぶって欲しいんだぜ?」
シン「? ん、まあいいけどね……なんだってお前声震えてるんだ」
魔理沙「い、いいからとっとと目を食いしばれー!」
シン「無茶な。閉じるだけでいいか?」

魔理沙(よ、よーし、後は顔近付けてちょっと唇にちゅっとするだけだぜ。……ちゅっ、と。ちゅっ。……う、うあ。い、いや、やるんだ!)
シン「……」

魔理沙(ふ、ふふん。やってみればなんてことないぜ、あともうちょっとでちゅっと……え、えーと。は、肌白いなぁコイツ、まつ毛も長いし)
シン「(パチッ)おい、まだか…って、うお、顔近いなオイ!?」

魔理沙「――――う、え、あ」
シン「ん、どうした? 顔赤いけど」

魔理沙「………マ」
シン「マ? あれ、なんか急にヤな予感g」
魔理沙「マスタースパーク!!」

ズキューーーーンッ!

アリス「や、やったッ!(心底うれしい)」
霊夢「さすが魔理沙、私たちに(ry(心底楽しい)」
魔理沙「や、やってもーた……!」

シン「何すんだよ、びっくりするだろ!?」
アリス「むしろびっくりで済ますあんたにびっくりよ」

魔理沙「ご、ごめんだぜ。いや、でも、その………ええと。本当はただ、ちゅっ、てするだけで……あー、うん。やっぱいいや、ごめんなさいだぜ」
シン「まあいいけどさ、よくわからんけど………あ。ふと思ったんだけどこの行動は誰に聞いたんだ? 怒んないから正直に」
魔理沙「誰って、そりゃあ……k」
シン「なあんだ、キラさんかぁ。そっかー、あははー。――――――よし、殺そう」
魔理沙「って、ちょ、どこ行くんだよシン……って、行っちゃった」

ぅあんたってひぃとぉはぁぁぁ!!!!
フフフフ、ハッハッハッハ、アーハッハッハッハ!! 何手骨体、どうやら僕はあの子の生娘っぷりを甘く見ていたみたいだよ!
キラさんめ、死ねぇっ!!
君の方こそ全☆滅だっ!!
霊夢「……ドワオ」

アリス「でもよかった、魔理沙がアンチクショウにズキューーーーンなことしてなくて」
魔理沙「全然よくないぜ……私は駄目な奴だよ!」
霊夢「まったくよね、このへっぽこ。ところでアリス、もしズキューーーーンなことしてたらどうするつもりだったの?」
アリス「そりゃもちろん―――奴を地獄に叩っ込んで私が魔理沙を幸せにするに決まってるでしょ」
霊夢「そういうことを真顔で言えるあんたは本当にキモ……なんでもないわ」

魔理沙「でもさー、アリスはいいよな。シンと一緒に住んでるんだからさー。仲が良くて羨ましいよ、ホント」
霊夢(さてアリスの心境は………あ、ダメだこれ、真っ白になってる)

魔理沙「当面は、お前がライバルだな。ま、負けないんだからな!?」
霊夢「魔理沙、それぐらいにしなさい。そろそろアリス泣くから」

アリス「何言ってるのよ霊夢、泣いたりなんかしないわ。むしろ、恋のライバル出現に燃えてる魔理沙を見れただけでも私、幸せ……ハァハァハァハァ」
霊夢「そう、相変わらず筋金入りのHENTAIね………なんで私、コレと友達やってられるんだろう?」

アスカブリーガー! 死ねぇっ!!
ふ、ふふふ、たとえ僕を倒しても、人の心にフリーダムがある限り第二第三の僕と続き、最後の勝利を売るまで戦うだろウボァー



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最終更新:2009年10月22日 14:37
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