スタスタ
垣根(気配は減っていない。標的は麦野じゃなかったようだな)
垣根(今すぐにでもブッ飛ばしてえが……ここじゃ目立ち過ぎるか)
垣根(廃ビルの方まで行くとしよう)
垣根「にしても腹減った……」
垣根「お腹と背中がー」
垣根「くっつくぞ!」
垣根「……ハァ」
スタスタ
麦野「ついて来ない、か」
麦野(標的は垣根の方だったみたいね)
麦野(ま、殺されることもないでしょ)
麦野(順位から外れたっていってもアイツは未元物質だもんね)
麦野「……」
麦野「……さっき借りを作ったばっかりだったわね」
麦野(……)イライラ
麦野「……」コツコツ
麦野「ああああーもう!!」ドガッ
ナ、ナンダ!?
アノトシゴロノジョセイハオコリッポインダヨ!
ヒゴロストレスガタマッテイルンデショウネ…
麦野「行くわよ、行けばいいんでしょ!」
麦野「これでチャラにしてやるわ!」カツカツ
オンナッテコエー
ナンデコッチヲチラミスルノカナ!?
OLモタイヘンナンデスネー
学園都市某所。とある区画。
かつてはそこそこに繁栄していたが、開発工事の凍結により現在はほとんど人の住んでいない区画。
都心とは真逆と言っていい程に寂れており、ここに足を踏み入れると世界から隔絶されてしまったかのような錯覚すらしてしまうほど。
その中を一人足早に歩く。
背後の四つの気配は消えないまま、付かず離れずの距離を保ち尚も着いて来ている。
人気のない場所にくれば姿を現すかと思っていたが、そうでもないようだ。
果たして何が目的なのか。ハッキリしない追跡者の行動に垣根帝督は溜息を零す。
そんなことをしている間に視界が拓け、パッと見ただけでは数え切れない程のビルが現れた。
発展の表と裏。
寂しさを感じさせる裏の景色をただ歩いていく。
その中央にある廃ビルへと足を踏み入れると、ついて来ていた気配が幾つか消えた。
このビルの両隣にはこれに寄り添うようにして建つ二つのビルがある。
右隣のビルに入ったか。
左右で二対二で挟み撃ちにするつもりなのだろう。
残りは前を通り過ぎて行ったようだ。
静まり返る屋内の階段を登る。
一歩を踏み出す度に、カンカンと音が響く。
いつ頃から使われていないのだろう、所々は錆び、所々は朽ち、埃が積もりゴミが散乱している。
それらにまるでこの都市の闇を見ているかのような気分にさせられる。
「きったねぇな」
その光景に、都市の闇に、同じく闇である自分に
一言だけ吐き捨てるように言い、屋上へと向かう。
…………
立て付けの悪い扉をこじ開け、屋上に出て僅か数秒。
風を感じる間もなく。
空気の流れが変わった、そんな気がした。
ここに留まっていれば死ぬ、そう直感して左方へと飛ぶ。
直後、大きな音が静寂を裂く。
「良い度胸してんなあ……おい」
屋上へ上がってから実に十数秒
突然壁から「生えた」三本の鉄骨。
身体からは僅か十数cm。
咄嗟に身体をずらしていなければ……等とは考える必要も暇もなく。
すぐさま態勢を低くし、周りへと視線を向ける。
鉄骨の刺さっている方向、角度から敵の位置を予測。
右のビルか。
地を蹴り、くそったれな第一位にメルヘンなどと言われた翼を広げ
飛翔――――
「感知させる間もなく攻撃をすれば……」
「殺れると思ったか?俺を、垣根帝督を、未元物質を……!」
舞い上がり、屋上の遥か上空から見下ろす。
先程居たビル同様、煤けたビル。
高さは僅かにこちらのビルより低く、屋上には鉄骨の山。
発射地点はここか。
その影に、一つの人影を発見。
身体を傾け、急降下。
「甘ぇ……甘えよてめえらぁぁああああっ!」
視界に捉えた、鉄骨を操作し攻撃態勢へと入っていた敵。
空力使いか?
……ああ、それはもうどうでもいいか。
その側にある山積みの鉄骨を烈風で薙ぎ倒す。
面白さすら感じさせる程に転がっていく鉄と鉄が奏でる、ここからでもうるさいくらいに鳴り響く音。
能力使用を中断し、咄嗟に回避に移るその男。
相討ち覚悟で飛ばしていたとしても俺には触れることすら叶わない。
賢明な判断だ。
だが、
――遅い。
そいつの懐へと潜り込み、翼による斬撃。
衣服が裂け、肉が裂け、コンクリートに鮮やかな赤を散らす。
痛みに呻く暇すら与えずに、すかさず通信機と思わしき機器を奪い取り、蹴り飛ばす。
……この程度で死にゃしねーだろう。
最終更新:2010年06月03日 17:29