『こちら01!状況を報告しろ!』
耳に当てたそれから聞こえる慌てた声。
反響している。室内と判断。
成る程、01はこちらの状況がすぐには確認出来ない場所にいやがる訳か。
『こちら03、確認に向かう!』
続いて01よりも少し若い男の声。こちらに来てくれるようだ。
02と03がこっちにいるっつーことは01、04は反対側、だな。
ここに来る方法だが、飛行出来るのであれば最初から全て見渡せる場所にいるだろうし、空間移動にしては遅すぎる。
つーことは階段から。
そう思い、扉の前で待ち構えたところでカンカンと階段を上がる音が耳に入る。
全く以て馬鹿としか言いようがない
「タ!ターゲ「遅ぇ」
律儀に扉を開けて突入してきた03と呼ばれた男を烈風にて出迎え、死なない程度に切り刻み、吹き飛ばし、お引き取り願う。
分かったことは
敵に探索系及び空間移動能力者はいないということ。
戦い方が素人同然。統率も取れていない。恐らくこいつらはスキルアウト。
この程度で俺に勝とうなんざ百年早い。
『03!03!応答しろ!』
これは01の声。
03とやらの通信機は切り刻んでやった為にもう機能していない。
チカチカと明滅するその僅かな光を最後に踵を返して反対側のビルへ向かうべく、最初にいた廃ビル側のフェンスの向こう側に降り立つ。
吹き付ける風が少し寒く感じる。
明日からはもう少し厚着するとしよう。
こいつら相手では身体が暖まる前にケリがついてしまいそうだ。
そんなことを考えながら左手に持っていた通信機を口元へ。
「今から潰しに行くからよろしくな」
それだけ言うと、通信機を眼下に広がる暗闇の中へと投げ捨てて空中へと身体を投げ出して垂直落下。
翼を広げて姿勢制御。
右からぐるりと旋回し、反対側のビルへと向かう。
…くそ、寒い。
それにしても何故命を狙われたのか。
スキルアウトとは然程絡んでねぇし、喧嘩を売られるような覚えも無い。
誰かに依頼されたとみる方が正しいだろう、クライアントは俺が生きているということを知っている人物だということだろうか。
……何にせよ表沙汰に出来るような仕事じゃねえことは明白。
「ったく、人気者は辛いねー。……くそが」
裏手に回り急上昇、本日最大の溜め息の後に舌打ちを一つ。
悪態を吐いてビルを見下ろす。
適当に見たが屋上、入り口に敵影無し。
もう既に逃げる算段を立てているのだろうか。
ならば中層辺りか。
……俺があいつらならどうする。
相手は超能力者。
遥か雲の上の存在。
まともに戦って勝てる相手ではない。
だからこその不意討ち。
しかし仕留め損ない、仲間を失い位置も大体は把握されてしまった。
どうする?
考えるまでもなく答えは一つ。
俺がとる行動も一つ。
潰す。
それだけだ。
「1日の〆がこれかよ」
今更ながら呟く。
最悪な気分である。
新鮮な空気を吸い込む。
張り詰めた空気。ったく、少し前までとは大違いだ。
さて、周囲には居住者もいない。
周りへの被害を気にする必要も無く。
多少、音が鳴っても騒音にもならないだろう。
それに生憎だが俺にかくれんぼをする趣味はない。
翼で月の光を回折、変換。降下。
その光の束でビルの中層を薙ぎ払う。
綺麗に切断された箇所から滑り落ちる上層部。
周囲を埋め尽くすのは砂煙と轟音と、地響き。
何とも心地よい音か。
何人もの人が、幾つもの機械が、月日をかけて建築した建造物も。
垣根帝督の前では玩具、否。それ以下であった。
…………
上空より、辺りを埋め尽くす瓦礫の山と残った下層部を眺め、奴らが出てくるのを待つ。
形を留めているのはそこだけではあるが、上、中層部にいたとしても能力者ならば死にはしないだろう。
「さて」
入り口から逃げようとしている人影を発見、見逃がす理由はない。
姿勢制御、発進。
その人物の数m先に降り立つ。
「こ……この、化け物が……!」
「そいつはどうも」
こいつが01。恐らくは最後の一人、足を震わせ立ち竦みながら精一杯の悪態を吐くその人物を見据え
垣根帝督は笑う。
「さて……お前らの所属、その詳細と目的を教えて貰おうか」
六枚の羽を生やした眼前に立つ男が冷笑を浮かべながら問い掛けてくる。
最終更新:2010年06月03日 17:31