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2026年10月14日、SofTalk(ソフトーク)は20周年を迎えました。
これもひとえに皆様のお陰です。
ありがとうございます。
いろんな思いを抱えている方も、この日だけは祝ってやってください。
そして、こういう機会なので昔語りをさせてください。

20年以上前、私は体調を崩して会社を辞め、子供部屋で30歳を迎えました。
外出することも難しくなり、オンラインゲームをして毎日過ごしていましたが、ネット越しでも人と関わるのが辛くて、何もやることがなくなった私はフリーソフトを開発することにしました。

当時フリーで公開されていた音声合成ライブラリ(AquesTalk)のフロントエンドを作り、公開したのがSofTalkでした。
辞書機能を付け、でたらめな日本語を入れても読み上げるようにし、引数呼び出しも可能にしました。
SofTalkは公開当初から注目を集めたわけではありませんでした。
ファミコン世代の自分にとって、コンピュータが喋ることはとても魅力的でしたが、世間の人々にとってはそうではなかったのでしょう。

SofTalkの具体的な使い方を利用者に示す必要があると考え、WEBブラウザ機能を持たせることにしました。
気になったWEBの記事をソフトに読み上げさせればラジオのようにして使える、といった具合です。
とはいえ、当時のブラウザはNetscapeとInternet Explorerがシェアの大半を占め、個人が作ったブラウザを使ってもらえるはずもありません。
そこで2ちゃんねる(SNSの前身のようなサイト)を便利に見るための2chブラウザとしても機能するソフトを作ることにしました。
ソフトはSofTalk WEBと名付けました。

その頃、パソコンではWindows Mediaエンコーダという動画配信のできるソフトが無料で提供されていて、ゲーム配信をするのが流行っていました。
配信者が2chにスレッドを立てて、そこに視聴者からコメントをもらうという形式でした。
難点なのは、配信者はプレイ中はゲームに専念しているので、コメントをリアルタイムに読んでもらえないことでした。
アドバイスを読んでもらえるのはゲームオーバーになった後、などというのはしょっちゅうでした。

私のお気に入りの配信者の配信中に「これ使ってみたら?」とSofTalk WEBを勧めてみました。
私が作者であることはすぐにバレましたが、ゲーム配信とSofTalk WEBのテキスト読み上げ機能の相性は良好でした。
ゲーム進行中にアドバイスを聞いてもらえるし、雑談もできるし、自分が直接ゲーム配信者に話しかけているような感覚でした。
後にライバルソフトが誕生しだしたことは、ゲーム実況とテキスト読み上げの相性の良さを証明しているようでした。
やがてSofTalkにも注目が集まるようになりました。

「これに使っていいですか?」「こんな使い方していいですか?」といった問い合わせが来るようになりました。
その中にキャラの声に使いたいといった問い合わせもありました。
後に知ったのですが、それがゆっくり動画の元ネタとなった動画だったのでしょうね。
やがてSofTalkにもライバルソフトが現れだしました。

当時の私は動画サイトをあまり見なかったのですが、たまに見てもSofTalkの声が聞こえるとすぐに見るのを止めていました。
SofTalkのデバッグをしているみたいで精神的に疲れるからです。
たまに向き合って視聴しようとしても「ゆっくり」というコメントが出ると、やはり見るのを止めていました。
「ゆっくり」とはライバルソフトの名前か何かだと思っていたからです。
今にして思えば、当時の私は自分の影に怯えていたようです。
エゴサをせず、自分はフリーソフトを作っているということ、きっと世界で5人くらいは使ってくれているという根拠のない思いを支えに開発を続けました。

東方がどう、みたいなコメントを見かけることもありましたが、東方で調べてもガンダムかジョジョか弾幕シューティングしか出てきません。
ゆっくり≒東方=弾幕シューティングだと知るのは何年も後のことです。
「ゆっくり魔理沙に対応してください」と言われたとき、ググっても「ゆっくり魔理沙はSofTalkの女性1、速度110である」みたいな回答しか出てこず、なぜSofTalkの作者である私が知らない概念が存在するのか不思議でした。

SofTalkの操作をシンプルにしたかったので、あまり多機能にすることは控えていました。
音声記号も、でたらめな日本語でも読み上げるという仕様と相性が悪かったので、当初は対応していませんでした。
(音声合成に人気が出て「音声記号を自分で設定したい」という要望が出てくるまで数年はかかると思っていました。)
その一方でSofTalk WEBは2chブラウザとして備えなければならない機能がたくさんあり、私はSofTalk WEBのブラウザ機能のバージョンアップに傾倒していくようになりました。
当時monazilla.orgという2chブラウザを応援するサイトがあり、SofTalk WEBを宣伝するにはもってこいのサイトだったのですが、開店休業状態だったので、
りさりさという名前で管理人代行になり、サイトを更新して、集客に努めました。
monazilla.orgの宣伝効果がどれほどあったのかはわかりませんが、新人の2chブラウザ作者からお礼の言葉が届くようになりました。
この活動は7年ほど続きましたが、2ch乗っ取り騒動の影響によりmonazilla.orgは閉鎖することになり、同時にSofTalk WEBの開発も終了しました。

会社を辞めてからずっと家に引きこもっていましたが、外出せざるを得ない出来事が起こりました。
母が白血病になったり、父が脳梗塞で倒れ、認知症になったり…
週に何度か病院を訪れました。
ある日、入院中の母から「あなたは病院に行きなさい」と言われました。
「なんで俺が?」と思いましたが、母の遺言になるかもしれないと思い、素直に従うことにしました。
行った先の病院でメンタルの病気だと診断され、私は通院することになりました。
母の白血病は寛解せず、病状が落ち着いたタイミングで退院することになりましたが、5年後の生存率が50%と言われる中、母は一人で何でもできるほど回復し、発症から9年生きました。
亡くなった理由は白血病とは別の病気を患ったからでした。
父は認知症になった後、家の中で事故を起こすようになったため施設に預け、施設で亡くなりました。

SofTalkについて、企業からご連絡をいただくこともありました。
「番組でSofTalkを使いたい」等のお問い合わせには「SofTalkに関しては無償ですが、AQUEST社には別途問い合わせて欲しい」と伝えました。
「パッケージソフトを販売したい」というご依頼もありました。
SofTalkをそのまま販売するのではなく、私がパッケージソフト用に作り直して企業が販売するというものでした。
第一弾・第二弾を合わせて2,300本ほど販売されました。
10年間の職歴の空白は、パッケージソフトが販売された実績でカバーすることができました。
私は特例子会社の障がい者枠で採用されました。

2022年にゆっくり茶番劇騒動が起きたとき、TLがZUNさんとSofTalkの名前であふれて、みんなの中でSofTalkとゆっくり動画は結びついていたんだな、と初めて実感しました。
2ch乗っ取り騒動の中で知り合った友人が東方シリーズのファンで「SofTalkはゆっくり動画が生まれるきっかけを作った」と熱く語ってくれましたが、そのときはピンと来ていませんでした。
SofTalkは、2014年よりライブラリを有償版のAquesTalkに切り替えたのですが、このライブラリを使い続けることは私の思うフリーウェアの定義に当てはまらないと考えるようになり、この年にAquesTalkへの対応を止めることにしました。
SofTalkからゆっくりボイスは無くなりましたが、自分の陰に怯えながら開発を続けた日々から、そしてフリーウェアの定義を考える日々から解放されたような、そんな気分でした。
付け加えるならば、当時の私の心境を一言二言で正確に言語化することはできません。

対応中止を発表した前後で、感謝の言葉をたくさんいただきました。
オンラインゲームでSofTalkを使うことで性別を明かさずにプレイできたという話や、障がい者が自分の声を使わずにゲーム動画を作れたという話を聞いたときに、
私の勤める会社では言葉だけが独り歩きしている「ダイバーシティ&インクルージョン」や「イノベーション」が、SofTalkでは実現できていたように感じました。
SofTalk WEBはネットのテキスト情報を耳から受信するソフトでしたが、SofTalkは動画サイトで情報を発信するソフトになったようでした。

私は子供のころから辛い人生を送ってきて、それは性格のせいでもあり、環境のせいでもあり、昔から障がいもあったのかもしれません。
いじめを受け、性的虐待を受けて育った私は、人と触れ合う術を知らず、就職してからも人間関係に悩み、周りに迷惑をかけ、居場所を失って会社を辞めました。
アラフィフになってから、収入はわずかですが、ようやく人並みの人生が送れるようになりました。
SofTalkは人生を変えるきっかけの一つでした。
あの時こうしていれば、と後悔しない日はないですが、私なりにベストを尽くしてきました。
努力すれば必ず報われるとは思いませんが、全ての創作活動は未来に繋がっていると思います。

長々と個人の思い出を綴らせていただきましたが、記憶違いなどございましたらご了承ください。

私はSofTalkを開発しているときにはcnccを、動画サイトではゴメスを、monazilola.orgの管理人代行の時にはりさりさを名乗ってきました。
趣味垢では零茶を名乗っています。
それは不幸から距離を置くための隠れ蓑のつもりでしたが、同時に自分の実績を有耶無耶にもしている、と前途の友人に注意されました。
残りの人生で何かを遺すには、不幸を避けるためでも遠回りをせず、一人の人間として全部賭けて生きていくしかありません。

名前を統一することはできませんでしたが、どうかこのタイミングで自己紹介をさせてください。
改めまして、cnccゴメス a.k.a. 零茶と申します。

今後ともよろしくお願いいたします。
最終更新:2026年10月16日 20:03