Papera - (2008/11/20 (木) 15:00:58) の1つ前との変更点
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【Papera】
「丈乃助」
誰もいない薄暗い部屋で、少女が小さく名を呼んだ。
「……?」
訝しげに何処からか気配もなく現れた少年は、無言で少女を見つめる。
「剣道を教えて!」
唐突な願い。それ自体はいつもの事だが、この少女が自ら進んで疲れる行為をするというのは不自然すぎる。
が、少年は何の疑いもなく受諾した。
「剣道なら別に難しくない。何でも良いから棒っぽいモノを持って、相手を叩いたり突いたり斬ったりすれば良いだけだ」
しばしの沈黙。
「なるほど」
少女は納得して差し出された刀剣を受け取る。
「とりあえず、問答無用で攻撃すれば良いんだね★」
だが、少女にとってその剣は重すぎた。
「うにゃあ」
持ち上げられなかった刃は、コンクリートであるはずの地面を抉るだけ。
「……何で?」
「私が聞きたいよー……」
少女は膨れ面で地面に座り込む。
少年が平然と腰に差していたはずの刀剣なのに、たったの1センチも持ち上げられない。
「んー……剣なんて振り回せば終わりなのに……」
「振り回せないもん」
「何で?」
「分かんないけど、持てない」
「んー……」
二人は地面に腰を下ろしたまま唸った。
重い物を持つために鍛えるとか、軽い物に変えるという事に意識が向かないのだ。
「あ、そうだ!」
少年はさも名案だとでも言うように笑みを浮かべると、少女を軽々と立ち上がらせた。
そしてそのまま後ろから抱き締めるような格好で剣を握らせる。
「こうやって俺が持てば良い」
しばし思案。
「ホントだ! 持てた!」
わーいw と大喜びで振り回そうとする少女に合わせて少年が剣を動かす。
「でも、戦うのには向かないね」
「それは心配ないよ。沙鳥が何かするより先に相手死んでるから」
「そっかーじゃあ、問題ないね」
少女は満足そうに剣を振り回し、始終和やかな空気で殺人兵器による殺人講習は終わった。
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