BIBLIOMANIAX内検索 / 「その後」で検索した結果
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その後
【噂のあの人-その後-】 今日あった事を桜花に話すと 「………はぁ?」 と呆れたような声を出された。 「うー……」 シュンと頭を下げる牙裂紅に桜花は更に言葉を続ける 「この弟子が行き成り何を言い出すのかと思えば……」 「すみません…。」 「あのねぇ……それは…」 「それは…?」 「なんでもないよ。 それにしても、良く怖がりもしないで話し掛けたものだね」 「? フランベルクの人たちはいい人ですよ?」 「いや、それよりも…よくあの人たちが弟子の話を聞いてやったという事の方が驚きだよ。」 「……。」 「よほど暇だったんだろうね」 「とにかく、サクの『それ』は大した事じゃないから。そんなの気にしてないでさっさとそこの掃除しなさい。」 「はいっ!師匠…あの、変な事聞いてしまってすみませんでした…。ありがとうございました!」 ◆◇◆◇◆ みんなキャラクターが解らないです……。
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その5、開始1時間15分
...げたでしょう?」 「その後、がれきで半分埋まってるエレベーターの中に押し込もうとしたくせに」 「動くかもしれないと思ったんですよ」 「動く時があるとしたら、落下するときだろ。あれは」 喚きながらも高速で廊下を走り抜ける。夏羽が踏んだ罠で飛んできた矢が、陽狩の髪をかすめて壁に突き刺さる。直後、陽狩が作動させた警備システムで、飛びのいた夏羽の前髪がレーザーで焼け落ちる。協力しているように見せかけて、相手に向けて罠を作動させているあたり、色々と間違っている。つい先ほどまでは纏もいたのだが、終わらないいさかいに嫌気がさしたのか、別ルートに行ってしまった。 「何を言ってるんですか。私は貴方が大嫌いなんですから、機会があれば見殺しにするか止めを刺すにきまっているでしょう」 「ああ、俺もお前が大嫌いだよ。機会があればばらばらにしてやりたい……って、おい、こら。さっき大好きとか言ってなかったか?」...
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巫 牙裂紅
...ンデー 噂のあの人 その後
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あだ名2
...は少し出かけるから、その後でも構わないかな?」 へ? 「ん…? 違う?」 あれ、何だろこれ。 エレベーターが到着したら、スー君会長が目の前にいて、私のことサヤヤって呼んでる。 なんかっ親しみ込めてっサヤヤって呼ばれたぁっ意味は分からないけど多分あだ名で、親愛を感じたっ! …………。 桜夜楽がふらりと傾く。その体を宿彌が優しく抱き止める。 「うわっ、どうした? 過労かな?? 無理したらダメだろ。 今日はもう帰って…えぇ!?」 桜夜楽はニヤついたまま気絶した。 宿彌は大慌てで救護班を呼ぶ。 救護班に運ばれる桜夜楽を見て宿彌は考える。 「…サヤヤって言うの、気絶する程イヤだったのかな? うーん…嫌われてるのかね、僕」 後日、呼び名が元に戻ってしまい。 桜夜楽があれは一時の夢だったか...
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Amicone
...誘う。 そして、その後ろを当たり前のように付き従う丈之助の腕を徐に掴んで引き止めた。 「ねぇ、丈……?」 そっと顔を近づけ、吐息を込めて甘く囁きかける。 店内の一部で小さな悲鳴のようなものが上がったのには、気付かなかったフリをして。 「……」 対する丈之助は難問を投げかけられた時と同じように、銃を藤司朗の額に押し当てた。 「死ね」 と、同時に引き金を引くも、一瞬早く藤司朗が軌道から逸れる。 「物騒だなぁ。サービス精神が足りないんじゃない? 客商売の基本でしょ?」 「口を閉じて手を上げて後ろを向け。以後、一切動くな。手元が滑らなければ一撃で終わる」 「仕方ないなぁ。そんなにお兄ちゃんと遊びたい? 丈はいつまでたっても甘えん坊だね」 隙をついて懐へ入り込み、頬にキスをする。 ぶらっくあうと。 「まだまだだなぁ」 その言葉で我に返った丈之助は、...
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Meglio
...う少し後でだよ。……その後でなら、どんな手を使ってでもお前だけは自由にしてあげるから。だから、もう少しだけ、ごめん」 その顔を見ただけで、頭の悪い俺でも理解する。 俺の選択は間違っていなかった。 「俺で良かった」 強張った頬を無理やり働かし、笑みを作る。 こんな思いをするのが、俺で良かった。 こんな思いをさせずに済んで良かった。 途端、沙鳥ごと抱き締められる。 あぁ、これで沙鳥も温かくなる。 もう寒さを感じなくて済む。 「ごめん、丈」 もう良いのに。 シロが傷付く必要なんかないのに。
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早良のわくわく潜入日記~四十物谷調査事務所の飲み会編~
...カクテルだからねぃ。その後はどうあれ、ね」「なるなる。で、おいらは泡盛サンライズ飲むっス~♪」 早良と伝狗郎は仲がいい。さわさん伝ちゃんと呼び合う仲で、今日も潜入というよりは伝狗郎が「だいじょぶっスよ~、さわさん紛れても絶対わかんないっス~。一緒に飲むっスよ」というので紛れた次第だ。何とも軽いノリである。 早良が飲み会好きというのも一因としてある。この何やら良くわからない楽しそうな雰囲気、皆が仲良く和気あいあいと卓を囲っている様、そして大好きな酒。それに加えてのお誘いだ。紛れ込まないわけがなかった。 早良はふと室内を見渡して面白いものを見つけた。【シャハラザート(物語を紡ぐ姫君)】ファヒマ・エルサムニーが柱の影で、恥らう乙女のようにもじもじと上座の様子をうかがっている。正直に言おう、可憐な美少女がそんなことをしている様は非常に可愛らしかった。あくまで“様子”が、であるが。 ...
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学園都市前奏ダーククロニクル迷走編/序章 『上海暗躍』
...告げた。 その後も、技術より安全、そして経済復興を求める人々の叫びは、開発競争に突入した各国の上層部の前に踏み躙られる。他国に遅れることを恐れ、国々が技術躍進に邁進した時代であった。 事ここに至って、民衆の怒りは限界に達そうとしていたが、ついに彼らの願いを聞き届ける者たちが現れる。 それこそが、当時、自国家解体や国内情勢の悪化を鑑みて、国という枠組みに早々の見切りを付け始めてた〝企業〟という存在であった。 各国に存在した巨大企業は、未だ世界に残る中小企業を統合し、戦後の経済復興の立役者となる。 これより四年の後、企業体は国家体制を旧暦の体制とし、国という存在自体の排斥を決定した。 国とは果たしてなにか。それは人の集合体のことだ。企業と国、どちらに帰属するかを選択できるのなら、この時代の人間たちは、確実に企業を選ぶだろう。 間違っても、各々の利権のため...
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After Day
...二重はああ、と頷いてその後を受けた。 「というわけだ。この件に関して現時点で分かっていることは以上。おそらくその内学園やユグドラシルの方からも関係者に接触があるだろうが……。あぁ、アルフレッドと法華堂はそれがなくとも学園方に申請することを薦めておく。多少のポイントにはなるだろう」 「後始末まで任せてしまう形になって申し訳ないね、二重」 軽く頭を下げた宿彌に二重は首を振って答えた。 「何、どうせ自分の管轄化で起こった捕り物だ。むしろ後始末をつけるのが当然だろう? それはそうと、わざわざ西まで足を運んでもらって悪かったな。どうしても外せない所用があった」 「あぁ、それじゃあ僕たちは帰るとしよう。僕も僕でメリーや法華堂に事情を訊く必要があるからね」 短いやり取りの後、宿彌はエドワードを伴って二重の執務室を出て行った。アルフレッドもそれに続いて下がる。後には二重と、いまだ壁により...
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...告げた。 その後も、技術より安全、そして経済復興を求める人々の叫びは、開発競争に突入した各国の上層部の前に踏み躙られる。他国に遅れることを恐れ、国々が技術躍進に邁進した時代であった。 事ここに至って、民衆の怒りは限界に達そうとしていたが、ついに彼らの願いを聞き届ける者たちが現れる。 それこそが、当時、自国家解体や国内情勢の悪化を鑑みて、国という枠組みに早々の見切りを付け始めてた〝企業〟という存在であった。 各国に存在した巨大企業は、未だ世界に残る中小企業を統合し、戦後の経済復興の立役者となる。 これより四年の後、企業体は国家体制を旧暦の体制とし、国という存在自体の排斥を決定した。 国とは果たしてなにか。それは人の集合体のことだ。企業と国、どちらに帰属するかを選択できるのなら、この時代の人間たちは、確実に企業についただろう。 間違っても、各々の利権のた...
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Mitragliare
...アイスピックで惨殺。その後もジェイソンの殺戮は続いていたが、被害者の少年によって顔面に鉈を叩き込まれて死亡。のはずが、10年後に雷が落ちて復活。以降は不死身の身体になって、倒されては復活。倒されては復活。の繰り返し。バラバラになって心臓だけになったり、その状態で人に寄生したり、操られたり大変だったらしいけど、科学者に冷凍保存されてしばらくお休みなさい。最終的に宇宙船に乗ってサイボーグになって、大気圏に突き落とされて消息不明。今も宇宙を漂っているかもね。ちなみに、チェーンソーを好んでるとよく言われているけど、実際に作中で使ったことはなく、多いのは鉈。他には怪力とか。自分の醜い容姿を気にしていて、湖に落とされた後はしばらく布袋を、それ以降も他の人から奪ったホッケーマスクとかを被っていたけれど、人を脅かすために外した事もあるくらいだから、心の傷になるほど気にしてた訳じゃないんじゃない? そ...
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羊の日常 其の二
...。舌打ちをして、迷はその後を追った。迷の能力は相手の方向感覚を狂わせるものだが、流石に扉越しには使えない。エドワードもそれを見越して迷が扉から離れた隙を狙ったのだろう。 廊下に出ると、すでにエドワードの姿はない。 「くそっ、また隠し通路増やしやがったのか!?」 ブラックシープ商会本社ビルの内部には、同社に所属する天才建築士であるミヒャエル・バッハの手で作られた隠し金庫や隠し通路、隠し部屋などが大量に存在する。大部分は社員だけが知っているものだが、中には社長と作った本人であるミヒャエルしか知らないものもある。 舌打ちをして迷は一番近い階段に走った。 「くそ、社長が行ってしまったら、せっかくアルマ君と副社長を二人きりにした意味がなくなってしまうじゃないですか!」 その頃、休憩室では会話が盛り上がっていた。 「それで、不死原さんと不死川さんに会ったんですけど、なぜか頭撫でら...
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Generico
...様の仰せのままに――その後は腹ごしらえにオペラ座?」 「うむ。苦しゅうないw 今度のは何だっけ?」 「さあ。その辺でチラシでも配ってるんじゃないか?」 「ギャチャピンは風船くれるから好きーw」 「はいはい。そのまま素直について行かないようにね」 軽やかな笑い声と、ドアの閉まる音が響く。 馬鹿な話だ。 あの程度のガキが粋がって。 神の加護がなければ、この学園で空気を吸う事すら叶わないというのに。 震える手を叱咤し、部下を呼び寄せる。“女王騎士団を殲滅せよ”と命じるために。 しかし、その命令が下る事はなかった。永久に。
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Psychic and Witch
...。今モニカを振って、その後彼女が例の誘拐犯に襲われたりしたら自分が責任を追及されるのだろうか?それならば彼女を連れて行った方が得策かもしれない。それに、彼女の弁舌が何かの役に立つかもしれない、と。ただ、 「別にそれはかまわないですよ。一人より二人のほうが心強いですから」 「やったー! 実は私も結構困ってたのよね。実際に誘拐犯が出てきて襲われたらどうしようって……」 「さっきの頭突きを謝ってくれるなら、ですが」 ぴょこぴょこ喜んでいたカボチャが止まった。そして「ぐぬぬ……」と唸り始める。自分のプライドを守るか、自分の身を守るか考えあぐねているようだ。 「まぁ嫌なら結構ですがね。でも、あなたが誘拐犯に襲われているときに都合よく助けてくれる人が出てくるかはわからないですよ?」 「わ……わかったわよ。謝ればいいんでしょ? 謝れば……」 「もちろん、土下座ですけどね?」 再び「...
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その2、訓練開始
2、訓練開始 『はーい、まもなく開始時間だよ★ ここからはファンキーレディオ放送局の一二三愛が中継しちゃうよ★ コメンテーターは、本日の訓練で使用される色々な機器を用意してくれた、オフィス・フォートランから【LOGO777 (喪失言語)】ユリア・パパラートちゃん、ブラックシープ商会からは建築とデザインの専門家【マジックボックス(驚異的空間)】ミヒャエル・バッハさんが搭乗だ★』 いや、そこは「登場」だろう。聞いていた全員が思ったが、愛の変換ミスはいつものことなので誰もあえて口をはさむことはしない。 『それにしても、何かの陰謀としか思えないくらいにいい別れ方になったね★ これじゃあ、絶対に協力プレイなんてできないと思うよ』 『そうですね……こんなことは言いたくないですが、心配です。今回の訓練には、我がオフィス・フォートランが新しく開発した警備システムを投入しているのですが……あれは単独で...
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四十物谷調査事務所調査ファイル №3
...谷は苦笑を浮かべる。その後ろでは、桔梗が顔を完全にこわばらせている。少しずつ動いて相手との間合いを計るが、ほとんど崩れかけた地下道では移動できる空間も限られている。どう動いても、安全といえるほどの距離は取れない。 だが、宗谷は平然としている。 「おい、宗谷。お前、よく普通にしゃべれるな」 「だって、この二人は一応、言葉通じるし」 どこが通じてるっていうんだ!? 桔梗は思ったが口には出さず、代わりに煙草に火をつけた。うっすらと煙が上る。それに気づいて、二人の殺人鬼は同時に視線を宗谷から桔梗に移した。 「おい、ミスタトゥ。あんまり吸うと肺ガンになるぜ」 「そうですよ。女性は子どもを生むんですから、禁煙したほうがいいですよ」 「……殺人鬼に健康の心配されるとは、驚きだな」 嫌味をこめて、桔梗は返した。心外だとばかりに、ふるふると二人の殺人鬼は首を横に振る。 「だって...
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少女と推理小説
...うなったんですか? その後」「私が出てくるんだよ」 のほほんとしたゆき子の言葉に、神無が口を開いた。 「あの日は社会科学の試験に合格して少し余裕があったから、好きな本でも読もうと思って図書館に行ったんだ。電子ブックだと読んでるって感じがしないから、本が好きで。それで――――」 「…………何あれ?」 図書館を歩いていた神無は、図書館の中でも比較的人が少ない物語の棚の一角で足を止めた。視線の先には一冊の本の端と端とそれぞれ持って対峙する少女が二人。本の取り合いでもしているのだろうか。 迂回しようとして、神無は二人が自分が目指す本棚の丁度前で対峙していることに気づいた。すごくすごく迷惑な位置だ。喧嘩ならどこか別の場所でやってほしい。だが、近付くと様子がおかしいことに気づいた。 「だ・か・ら、お先にどうぞって言ってるじゃん!」 「いやいや、おねえちゃんが先に読んでください。お願い...
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First contact/望月遡羅&篭森珠月
...…一応聞いておくが、その後どうなったんだ?」 「えーと、50人くらいいた連中の足をそれぞれワイヤーで繋いで50人50脚状態にして川に放り込んだ」 東の川は汚染度は低いが、急な流れや深みが多い場所が多く油断できない。 「…………新手の処刑法か?」 「互いに協力し合う美しい心を忘れていなければ、生き残れてるはずだよ。まあ、その後姿を見ていないから詳しいことは分からないけどね」 さらりと怖いことを言って、珠月は紅茶の注がれたカップを配る。そのなにかがずれた思考は確かに、『狂』の文字が相応しい。 飄々としている珠月に対して、遡羅は困ったような顔をしている。 「一応お止めしたんですが……まあ、そういうこともありますよね。自業自得といえばそれまでですが、かといって無傷でお返しするわけにもいきませんから」 「それでその後、甘味を食べに行ってアドレス交換して別れて、後日再会して」「もういい」 ...
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Knife and Fork
...見届けて、戒はさらにその後を追った。 「っと、マリアの奴、どこ行った?」 路地を飛び出した戒は、急な明るさの変化に目を細めながらも、先に路地を出たマリアの姿を探す。傍の標識を確認すると、どうやら先の路地は北と西を繋ぐものだったらしく、表示は西区画となっていた。と、戒の目が妙なものを見つけて見開かれた。 彼が凝視する視線の先には、地下街へと通じる入り口があった。風雨にさらされ大分外観を損ねているその様子から、いわゆるアンダーヤードへと続く地下道であることが分かる。そして、その周りをまるで侵入者を見張るかのように囲む少女たち。いずれも、ボロボロの布切れを頭から被っていて、顔も鼻から下が見える程度だった。 そして、そんな少女たちの姿などには目もくれず、地下街の入り口へと進んでいくマリア。しかしマリアが一メートル、また一メートルと近づいても、少女たちは下がりもしなければ出もしない...
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白雪姫と五人の守人
...く頷きます。しかし、その後悲しそうに俯いて言いました。 「でも、もうあのお城には戻れないの……」 白雪姫は継母の事、先程の従者の事を二人に話しました。白雪姫が話している間、二人の青年はじっと静かに耳を傾けて聞いていました。 「……だから、私はここに来たの。でも、私のせいで、従者さん達が殺されてしまうのは嫌。誰にも死んで欲しくない」 白雪姫は白い着物を握り締め、唇を噛み締めます。その瞳には再び、大粒の涙が溜まり始めました。 すると、それまで黙って話を聞いていた青のバンダナの青年が静かに歩み寄り、ゆっくりとした動作で白雪姫の頭を優しく撫でました。 その手は温かく、とても心地の良いものでした。 「……大丈夫」 そこで初めて、青いバンダナの青年は口を開きました。やはり紫のバンダナの青年よりも声音は高く、凛としていました。 白雪姫がその言葉にどう反応したらよいか戸惑っていると、紫の...
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その4、開始1時間
4、開始1時間 卵大の物体が、床に着弾すると同時に爆発する。視界が戻る前に跳び出す。 あちらこちらから銃声と爆発音がする。上の階からも下の階からも音がすることから、自分が今、真ん中あたりの進度なのだと珠月は確認する。 流れるような動きで太もものフォルダーからナイフを抜き出し、そのまま投げつける。拳銃を持ったマネキン人形は、足を切断されて無様に倒れた。遠隔操作型のミスティクなのだろう。だが、どうやらこちらを確認する手段はないらしい。カメラを噴煙で覆った瞬間、動きが鈍くなった。 「意外と面倒くさいな。けど、いい訓練になる」 久々のナイフや銃の感触に、珠月はほほ笑んだ。リスクが大きくあまり多様できない珠月の能力の性質上、射撃やナイフの腕を磨いておくにこしたことはない。実際、隠れて努力はしている。クラスこそミスティックの単独履修だが、並みのスカラーやソルジャーに負ける気はしない。 時計...
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First contact/冷泉神無&法華堂戒
...と来るか」 しかしその後、彼は何か高いものが壊れる度にここに派遣されることになり、その後数年にわたってこの店に通い続けることになる。 おわり
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その7、開始2時間
その7、開始2時間 観客席は変なテンションで盛り上がっていた。賭けをしている者は自分の札を握りしめて固唾をのんで勝敗の行方を見つめ、そうでないものはのんびりと菓子や弁当を食べながら観戦モードに突入している。競馬場と映画館を足して二で割ったような感じだ。 「あ、繍ちゃんだ」 ル・クルーゼの弁当を買いそこなった代わりに、ブラックシープ商会が販売していた弁当を購入してモニターを見つめていた、序列189位【スコーレ(暇人の学問)】矯邑繍(ためむら しゅう)は、気だるそうに顔をあげた。その目に手を振りながらこちらに歩いてくる、序列249位【アルヴィース(賢きもの)】冷泉神無(れいぜい かんな)の姿がうつる。繍は片手をあげて挨拶をした。 「観戦、来てたんだ」 「たった今ね。さっきまでブラックシープ商会で商談しててさぁ。まだ終わってなくてよかった」 「終わってないどころか、混戦してるよ。みんな仲悪...
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その8、開始2時間30分
...た。私が先行でいく。その後ろ緋葬架で、藤司朗、翔ね。後ろ二人は監視カメラを狙って。多分それと連動してロボも動いているから。緋葬架はロボ本体のカメラとロボの足場を崩すことに専念。他の連中も捕まえられればよかったんだけど……おかしいな。殺人鬼コンビとか契ちゃんとかはちょっとのことでリタイアするような可愛い根性してないはずなんだけど」 「まだ上の階にいるんじゃありませんの?」 珠月は納得いかなそうな顔をしたが、深くは追求しなかった。 「じゃあ、棚をどかすか」 攻撃がないことを確認しながら、非常階段を塞いでいた棚をゆっくりとずらす。防火用の分厚いドアのせいで、むこうの様子はほとんど分からない。緋葬架はドアに耳をつけた。 「機械音がしますわ。ドアを破壊しようとしています」 「相変わらず耳良いね」 「お褒めにあずかりまして。で、どうします」 「当然」 珠月はドアに手をかけた。素早く援護の位...
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時夜夜神は浮かばない
...た相手が悪人ならば、その後で諭すなり裁かせるなりすればいい。間違った道へ行こうとするなら助言を与えればいい。殺されるだけの理由があるとしても、殺されないだけの道理もあるかもしれない。 そういった考えを正しく行動し、実行するだけの実力を持つからこそ"正義の味方”なのだ。悪人だから助けないなど、そんな道理を持ってはいない。 「それに、何かを守ろうとしている人を守れなくて、何が正義の味方でしょうか」 言って笑う青年は、どこか幼さが見え隠れする。ただ、それは無知ゆえのものとは違い、真っ直ぐさから来るものという印象を強く受ける。 「だから、安心してください。あなた方が命を賭けて守ろうとしたものは、私の命と名を賭けて守ってみせましょう」 その背に、彼らは間違いなくヒーローを見た。幼い頃、旧暦の時代に流されていたというヒーロー映像。その姿を、望月楚羅嗚に重ねて見た。 「さぁ……止め...
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そのチカラ
うーん、皆出払ってるとは…現場は久しぶりだねー、デスクワークばかりだったけど、腕は鈍ってないかな? そう思いながら宿彌は石壁を掴む指に少し力を込める。石壁は土くれを砕くように簡単に、ぽしゅと気の抜けた音をたてて崩れ落ちた。 「どうやら力は落ちてないみたいだね、勘はどうだろうか。 どうだと思う? 君たち」 そう、宿彌は対峙する男たちに告げる。 男たちと言っても、実際に無事に対峙しているのは後一人。 残りは壁や地面に体を埋め込まれ、異様なアートができあがっていた。 「どうかな、これ結構シュールな映像だと思うんだけど、笑えない?」 男の顔が強張る。宿彌はにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべる。 「笑わないなー、また間違ったかな? まぁさ、君たちにも色んな事情があったと思うんだけど。 僕も依頼主は護らなくちゃいけないし」 男が狂ったよ...
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2、参加者集結
...試にパスすることで、その後六年以内に本科に進めない生徒(百人中九十九人)は即退学となるため、年齢層が上がりようがないのである。 それはともかくとして、司会進行はぴくりとも動かない。上位ランカーすらまともにくらったらただでは済まない一撃を受けたのだ。無理もない。 慌てて現れたスタッフが少年を運んでいく。入れ替わりにマイクを持った少女がステージ上に現れた。金髪碧眼の、あきらかに欧米系の少女。少女はマイクを口元に持っていくと、 「ぎゃはははははは」 豪快に笑った。 「えーと、うっかりハプニングで司会は強制退場! ってことで、ここからは俺様、ヘイゼル・ラインがお伝えするぜ!」 「ヘイゼルだったんだ!?」 客席からは、悲鳴とも感嘆ともつかない声が上がる。 ランキング400位。エンジェルエッグ社員ヘイゼル・ライン。学園最高峰の変装技術を持つ女性――らしい。らしいというの...
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Fratricidio
...かなければ痛くない。その後の事はその時に考えれば良い事だ」 「流石は単細胞。相変わらず単純に出来てるね、羨ましい。良いよ、おいで。俺は薄情なお前と違って、とても優しいからね。もう少しだけなら相手してあげよう」 全く余裕を失わずに嘲笑う男へと再び駆け出す。先ほどより速度は落ちるが。 「バカの一つ覚え……でもないか。考えたね」 目を瞑り、気配だけを頼りに別のナイフで斬りかかる俺を、男は拍手で賞賛する。 何となく男の目から嫌な感じがしたというだけだったのだが、正解だったらしい。 向こうは足。こちらはそれに加えて目。それでも、力の差で言うと五分五分みたいなものだ。不利ではない。 「どうだろう。こちらにはまだ策がある」 俺の耳に相手の口元が近付いたのが気配で感じ取れた。 反射的に避けるより先に男の声が聞こえてくる。 「π=3.1415926535897932384626433832...
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四十物谷調査事務所調査ファイル №6
...に失敗。除籍となる。その後、学園内の飲食店当で働いたのち、畜殺の仕事につく。仕事ぶりは真面目そのものだが、周囲との交流は少ない。きわめて高い解体技術を持つ。あまり物事の裏を考えるのが得意ではなく、そのことがスキルの高さにも関わらず、本科進学への妨げになった」 淡々と、機械のように正確に、宗谷は菱谷の経歴を語る。まるで片手に見えない原稿を持っているかのように、迷いなく話す。 「現在、予科時代からの恋人、相沢樹里(あいざわ・じゅり)と同棲中。相沢樹里は、サイキッカーで、手を触れずものを動かしたり、捻じ曲げることができる念力系の高い能力を持っていた。だが、三ヶ月前にサイキック能力の負荷により、PTSDを発症。現在、治療中。のはずだけど、治療はうまくいっていないようだね」 「何の話だ!」 菱谷は叫んだ。振り回した刃物から血が飛び散り、周囲に飛び散る。だが、宗谷のいる位置までは届か...
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マリアのお料理教室
...か雷か。運が良い時はその後に大概なんかあるからな」 「非科学的デスヨ。なべてこの世は確率で成り立っていますカラネ、こうなる日もあると言う事デス」 気付けば日が登っていた。ラピスは先程からずっと寝息を立てている。 「そろそろお開きかな」 「ですね。今日はレイチェルや雛菊から必ず戻るよう言われてますし」 「なんや、そうやったんかいな? 言ってくれりゃ早めにあがったのに」 「いえ、それが、早くは戻って来るなと難しい事を言われてまして。昨日は人を追い出しておいて、随分なものです」 「オヤ、ソチラもデスカ? 俺も幽那と霧戒から同じような事を言われていマシテネ。珍しい事もアルと思ってイタのデスガ」 「そういえば、僕も今日だけは戻って来るように篭から言われてたっけ。いてもいなくても混雑するから、いた方がマシだって。何のことだろう?」 「あ、俺もとぐまから言われとったな……。すっかり忘れとったわ」 ...
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その1、訓練当日
1、訓練当日 『避難訓練』実施日。 問題の建物の周囲には、異様な数の生徒が集まっていた。ただし、九割は見物人である。 「……物見高い方々ですこと」 朧寺緋葬架はため息をついた。思ったより多くのランカーが集まっている。同じ四十物谷調査事務所からは、揺蘭李が参加だ。普段寝てばかりいる彼女がどうやって脱出する気なのか、緋葬架には想像もつかない。 野次馬の間をライカナール新聞社の記者や、野次馬に弁当を売り付けに来たブラックシープ商会のスタッフが歩き回っている。ちょっとしたお祭り騒ぎだ。 トランキライザーにおいては、予科より本科のほうが暇――もちろん進学できた場合だが――特にほとんどポイントをためてしまっているランカーと呼ばれる成績上位者は、多少さぼっても卒業できるため余裕があるのだ。そうでない下位ランカーであっても一日二日さぼっただけで生活がやばくなるような生徒は、全体で見れば多くな...
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その3、開始30分
3、開始30分 某チョコレート中毒者の場合 『えーと、予想通りというかなんというか、結構みなさんばらばらに動いてるね★ そんんなワンマンプレイヤーのみなさんには、強調と強力と言う言葉を贈りたいね』 『協調と協力ですね。すでに強調と強力は、十分存在すると思います』 『十分というか、むしろそれしかないというか』 観戦席は異様な盛り上がりを見せていた。ランカーを中心に快進撃が進んでいる――からではない。全員が苦戦しているからこそ、会場は盛り上がっている。誰であっても、普段は頭が上がらない人間が苦労しているところというのは、見ていて気分のいいものだ。 『現在トップは、9階にいる翔さん&揺蘭李さんチーム★ それを追うのが、移動中の篭森さんと篭森さんを物理的な意味で追っているジェイルさん。やや遅れて、緋葬架さんと契さん。そのかなり後ろをガエクワットさん。ゆったり移動してるのが藤司朗さん+αで、不死...
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花落ちず水はなし
...の装甲車が疾走する。その後ろで騒いでいるのは銀行員の制服を着た男女。分かりやすい強盗風景に、目撃者全員が治安維持部隊への連絡を入れようとした瞬間、その装甲車の進行方向に人影が飛び出した。 「――――――」 黒い人影は何を呟いた。しかし、それは装甲車の駆動音にかき消される。そのまま、装甲車は飛び出した人影を引き殺そうと突っ込み、その直前で空高く舞い上がった。 「……………………え?」 目を見開いて自体を見守っていた通行人や、助けようと飛び込もうとした人々の口から間の抜けた声がこぼれる。やや遅れて、凄まじい音を立ててひっくりかえった装甲車が道路に落ちる。 「――まったく、馬鹿が馬鹿なのは仕方ないとして、そういう馬鹿は私に関係のないところで生きて死ね」 ふわりと切りそろえられた髪が風になびく。重なり合った黒いレースのスカートが、日光を浴びて複雑な影を落とした。 「ああ、...
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Sister & brother
...一年前のことである。その後、学園は世界中から生徒を受け入れ、多くの傑物を生み出し続けている。 すぐ近くで銃声が聞こえたと思った瞬間、狭い路地に影が差した。細身の青年の身体が中を舞う。そのまま彼は地上十メートル近い高さで建物から建物へ跳び移った。だが、その先は大きな道。跳び移ることはできない。通行人から感嘆とも悲鳴ともつかない声が上がった。だが、青年は電線の上を綱渡りのように駆けわたるという荒技でそれを乗り切った。直後、 「ああもう! 何で私の言うことが聞けませんの? お兄様!」 頭の上で動くツインテールとかなりきわどい位置まで足が見える衣装が特徴の眼帯の少女が、青年を追うように建物から飛び出してきた。その手には拳銃がある。すでに電線を渡り切っていた青年は振り向きもせずにそれに答える。 「いくら愛しい妹の言葉でも聞けることと聞けないことがある!」 「なっ、まるで私が無理難題を押し付...
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兵士のケジメ
...わせる事も出来たが、その後で全ての犠牲者の墓を造り涙するような、そんな男だった。 だからこそ、彼は元帥となって、その命令に兵士たちは従ったのだ。例えその先が死であったとしても。 それが変わったのは、いつからだったろうか。元帥として、自分に都合のいい事ばかりに目をむけるようになったのはいつからだったろうか。刃向かう忠臣を遠ざけ、諂う叛臣を近づけるようになったのはいつからだったろうか。自分を第一に考え、兵士を見なくなったのはいつからだったろうか。 「そう、そうだ、大佐。彼らは責任を取らなくてはならない。戦友の死に、報いなければならない。だからもう一度だけ、もう一度だけ言おう大佐。これが最後通牒だ。……そこを、退いてくれ」 マッカーサーの体から生えた武器が、サンダースを狙う。 それでも、サンダースは微笑で首を振る。 「…………ファイア!」 マッカーサーの体という体に生えた銃口が一斉に火を噴...
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訓練風景
...ードは中世に登場し、その後長い間兵士の作業用ナイフとして利用された片手剣である。柄頭から鍔の形状が歪んだ「I」の形になっているのが特徴である。全長は50センチほどで、作業用とはいえ威力はけして低くない。ぶちぶちと肉が切れる音がして、激しく竜が暴れる。だが、打ち込まれた鋏を視点に半分ほど切り裂いたところで、耐えきれず刃が折れた。ジェイルは目を細める。 「あと少しなんですけど……これも運命の女神の気まぐれでしょうか。黒雫君!」 「はい、先輩」 ジェイルは飛び降りた。直後、自らの首を天井に叩きつけるように竜が暴れる。空中で勢いを殺しながら、ジェイルは二重のそばに着地した。 「お気に入りだったんですが、壊れてしまいましたよ」 「貴様……ナイフも使うのか?」 「銃も刃物も爆薬も、人という悲しい生き物が戦うために長い歴史の中で編み出したものです。使わなくては、遥かなる先達に申し訳が立ちません。...
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講談「とら侍」その壱
【※ ●は張り扇で釈台を叩く音を、_は少しの間、―は_よりも多めの間を表してます。なお( )内に行動などが記してある場合はト書きです】 (早良、スススッと高座に上がり、正座) ●_●_本日はまことにありがとうございます。お相手は崇道院早良が務めさせていただきます。(一礼) 旧世紀の頃にはどうであったのか、とんと存じ上げないのでございますが善だの悪だのさほど騒がれなくなりました昨今におきましてはぁ●“勧善懲悪”なる事象はその絶滅を危惧されている次第、というのは皆様ご存知の通りでぇございます●● 胸中より爽やかなる薫風が吹きますような、スッ―とするお話はそうそう現実にはないわけでぇございますな_●しかしながらいつ如何なる時代におきましても“時代劇”というのは趣が異なる●●“勧善懲悪”それこそルール、善は栄えて悪は滅びる、愉快・痛快・爽快な、胸のすくような物語なのだとわたくしなんぞは捉...
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First contact/篭森珠月&ジェイル・クロムウェル
...した。 実はその後も数回にわたって、珠月は駅のホームや飲食店でジェイルと顔を合わせることになる。ストーカーという可能性に思い当たったのは、それから数年後のことだった。だがそのころには、度重なるジェイルの出現で、珠月はすっかり彼が苦手になっていた。 「うわあああああああ!!」 珠月は跳び起きた。そして、そこが自分の住んでいる予科生の学生寮だと気づく。 随分と昔の夢を見ていた。あれからもう何年もたっているのに、妙に生々しい夢だった。いまだにあれ以上苦手な相手に珠月はあったことがない。冷静に考えると何が苦手なのかよくわからないが、苦手というのはそういうものだ。ごきぶり嫌いのひとが嫌いな理由を考えないのと同じ。言ってしまえば、脊髄反射だ。 「…………縁起が悪い。悪すぎる」 眠ったのに寝た気がしない。それでも授業はある。珠月はのろのろと着替えると、学校に行く準備を始めた。...
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見極める音楽家たち ――第六管弦楽団・ルリヤ=ルルーシェ
...チェスカは社長室へ、その後階を下りながら時間までは好きに暴れて結構です。蟻塚様と三角様は工作の方をよろしくお願いします」 ルリヤはそこで一息吐いて、真剣な面持ちで目の前の――今回殲滅対象となるビルを見据えた。しかしその表情もすぐに悪戯めいたものへと崩れ、 「うふふ、一回言ってみたかったんですよね。それでは――」 彼女の上司が口にする決め台詞を、高らかに宣言した。 「――澪漂を、開演いたします」 ♪ ルリヤ=ルルーシェは独立学園都市トランキライザーに所属する生徒の一人である。 広大な敷地を持つ――およそ旧東京丸ごと――学園都市は、中央と東西南北の大きく五つの区画に分かれており、それぞれを優秀な生徒達が管理するシステムを取っている。 ルリヤはその中でも西区画を管理する【エターナルコンダクター(悠久...
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絡み合う音楽家たち ――第九管弦楽団・澪漂鍵重
... ♪ その後も順調に各階の人間を殲滅し、鍵重と縛重の二人は五階のフロアへと到達した。 と、階段を上り終えてフロアに踏み出した途端。 左右から銃口を突きつけられた。 並んで立っている鍵重と縛重を両側から挟み込むような形で、二人の男が銃を向けている。既に撃鉄が起こされ、いつでも発砲できる状態だ。 「武器を置け。黙って手を挙げろ」 鍵重の側にいた男が無愛想にそう言った。一瞬の内にあらゆる手を考えてみたが、リスクを考えると素直に従った方がよさそうだ。鍵重は手にしていた斧を床に放ると、ゆっくりと手を上に挙げた。 「ククク、何者か知らんが、随分派手にやってくれたものよ」 いつの間にか側のドアから現れていた恰幅のいい中年男が、憎らしげな目を二人に向けていた。資料にあった、取締役の男の顔と一致する。その両隣にもさらに二人のボディガードが付き従って...
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学園都市前奏ダーククロニクル迷走編/一章 A『DETECTIVE office 乱』
...発ほど仕舞う。 その後は手早く寝癖箇所を確認すると、洗面所に直行して水道の蛇口を捻り、手を水で湿らせてから寝癖を直した。寝癖直しや整髪料は使用したことがない。 軽く撫で付ければ五分と掛からず準備は完了だ。なんとも気のないことである。 「さあ、準備ができましたよ」 寝室に戻ると、ラピスも自分で着替えを完了させたところだった。百五十センチに満たない身長では、立ち上がっても頭髪が地面を擦りそうで怖かったが、それ以外は完璧だ。 わずかにフリルの付いた白基調のチュニックを身に纏い、フェミニンな雰囲気を振りまいている。 とはいえ、ラピスの服は彼女自身にとって着替え易い物が多く用意され、――チュニックやワンピースなど――無駄に可愛らしいデザインばかりである。更に選んでいるのもラピスではなく自称探偵助手だった。 そういった背景から、ラピスの服飾に関しては選択肢が存在しない実...
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Baa,Baa,Black sheep Ⅳ
...成功します。ところがその後、彼は幸せにはなれませんでした。色々あってイアソンは王位をあきらめ、しかもメディアも捨ててしまいます。怒りにかられたメディアは、イアソンとその花嫁、自分とイアソンの間の子供、花嫁の父親を殺して逃げてしまいました。富と幸運の羊は何の役にも立たないどころか、まるで呪のように死と不幸をばら撒いたのでした」 「それが、なに?」 ふふと天使のような笑みでメリーは笑った。 「私たちに手を出すからには、この羊くらいの呪は覚悟してもらわないと」 「まあ、そういうことだね」 羊たちは笑う。愚かな狐をあざ笑う。 「もういいな」 戒がトライデントを構えた。三又の凶悪な武器が、窓から差し込む日光できらりと光る。 「元仲間への情けだ。一撃で殺してやるよ」 未織の視界は真っ赤にそまった。
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8ave
...を叩き壊す。しかし、その後ろにこれもまた最後となるべき少女の姿はなかった。 「…………一人逃げた、ムカつく。どっちへ行った?潰してやる」 いらいらとした言葉の割りに無表情な視線を彷徨わせ、逃げた気配を追う。水面に浮かぶ岩の上を飛び跳ねながら、ウルスラはウォーターストリートを駆け抜けた。ようやく安定した足場にたどり着いたウルスラの視線は、崩落した岩に埋まる、地上への出入り口を見止めた。一見通ることのできない通路であるが、よく見れば人が一人通れるほどの隙間がある。覗き込むウルスラの真っ赤な前髪を、地上から吹き込む風が小さく撫でた。 「こっちだ。ここから逃げた。ムカつく。殺してやる」 ここにきて、ウルスラは初めて表情らしい表情を見せた。それは、言葉とは裏腹の無邪気で壮絶な笑みだった。まるでかくれんぼの鬼をしていた子どもが、隠れた他の子どもを見つけたときのような笑み。しかし、それは間...
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授業風景 一時限目動物学
...ミヒャエルが呟いた。その後続けて「死ねばいいのに」という物騒な台詞も聞こえたがそれは全員が無視する。ちなみにこの死ねばいいのにはおそらくピーターに向かう言葉だろう。 「じゃ、また用事がある時は頼むよ。私は学校に行くから」 「わたくしも午後は授業でございます。朧寺先生の動物戦闘学」 ぴたりと珠月は足を止めた。そして、嫌そうに振り向く。 「そういえば同級生だったね。同じ学年同じクラス。なんて運がない。ミヒャエル、かばん取ってきて」 すぐさまミヒャエルの姿が消え、すぐに黒いレースのついたかばんを持って現れる。基礎的な形は学生鞄やビジネスバックにちかく、硬い作りで中の書類や本が曲がらないようになっている。だが、見た目は珠月らしく黒くてひらひらしている。 「ありがと。貴方の午後の予定は?」 「氷室先生の数学の講義を少し。その後事務所に寄るため、帰りは夜中になります。夕食は先にお済ませくださ...
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その6、開始1時間50分
6、開始1時間50分 アサルトライフルの鋭い銃撃音が響く。力任せに警備ロボを突破して、朧寺緋葬架は息を吐いた。慎重に残りの銃弾を確認する。12階から4階まで一緒にやってきたアサルトライフルにはもうほとんど銃弾が残っていない。 訓練を受けていない者ならば男でもよろめくほどの銃を片手で担いで、緋葬架は周囲を警戒する。普段は使わない軍用の銃は、初めのうちこそ使いなれない感じがしたものの今ではすっかりに手になじんでいる。 アサルトライフルは、素人が『ライフル』と聞いて思い浮かぶような銃よりややごつい外見をしている。当たり前だ。通常、緋葬架が狙撃に使うスナイパー・ライフルが、遠距離からの単発狙撃を前提として精密射撃にこだわっているのに対し、アサルトライフルは戦場において兵士が使うための銃だ。日本語ではそれぞれ、狙撃銃と突撃銃というように分けられ、おなじライフルでも用途がまったく違うものであ...
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illness
...はぶつぶつと呟いた。その後ろで紳士的に燕尾服を纏った『骸骨』が同意するように頷く。 東区の魔女、“人類最強”の愛娘――【イノセントカルバニア】篭森珠月。そのエイリアスの由来は異能で操る成人の白骨。それが本物かそれとも精巧な作りものなのかは誰も知らない。物体操作という珍しくもない能力の持ち主である彼女のエイリアスが能力に沿ったものになったのは、ひとえにこの普段から操る対象の異様さによるだろう。これがただの人形や戦闘時に使う銃弾や鋼糸の操作だけならここまで能力で有名にはなっていないに違いない。 そんな世界の有名人で、社交界に顔を出せばその派手な言動で注目を集めるセレブは食料と雑貨の入った買い物袋を自分も従者たる白骨も持ちきれないほどかかえた状態で、東区の住宅街にいた。 両手がふさがっていたので、足元の小石を蹴飛ばす。それはうまく飛んでインターフォンにぶち当たった。ベルの音が響く。見...
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First Contact/三島広光字&望月遡羅
...を歩き出した。慌ててその後姿を追いかける遡羅に、光路は苦笑しながら答えた。 「いや……俺達が初めて出会ったときも、こんな雨の日だったよなあって、思い出してね」 「ああ……そういえばそうですね」 彼の言葉に、遡羅も泣き出した空を見上げて昔に思いを馳せる―― ♪ 六年前―― 「やっべえ、傘なんか持ってきてねえぞ?」 光路は今日と同じように突然の雨に降られ、しかしそんな彼に傘を差し出してくれる同僚は当時はおらず、仕方なく雨の中を足早に九龍城砦へ向かっている途中だった。 「ふへ、日ごろの行いは良いつもりだったんだがねえ……」 友人である二重に聞かれたら、「【無能】が。サボり魔の貴様が言えた言葉ではないな」と馬鹿にされるだろう。しかしそんな言葉を掛けてくれる友人の姿も側にはなく、さらに強まった雨足に、どこか雨...
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第四楽章 終演時間
...器を発射させてくれ。その後速やかに破壊じゃ』 「了解」 いやに自信たっぷりな万重に対して一片の疑問ももつことなく、数重は衛星電話の通話ボタンを切った。 ♪ 澪漂陣営。テントの中には万重と、そして【マリアスコール】のドームシティから舞い戻った二十重、十重、そして光路の姿があった。 万重は黙って手にした衛星電話を卓上に置くと、数瞬何事かを思案した。 「おい、爺さん。何があったんだ?」 「まさか……作戦…………に、失敗……した……とか?」 問い詰める二十重と十重に対し、万重は薄く笑って言った。 「ふむ、どうやら誤算があったようでな。兵器の発射装置を作動されてしまったそうじゃ。破壊もできん。発射まで、あと十分……」 「おいおい!? ってこたぁ、あと十分以内にどうにかしねぇと俺たちまで灰になっちまうってこ...
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First contact/ミヒャエル・バッハ&篭森珠月
...のだという。しかし、その後も珠月の住む屋敷に憧れたミヒャエルは侵入を繰り返し、その度に珠月に叩きだされていた。そして、出会いから数カ月がたった頃、 「出てこい」 有無を言わせない支配者の声に、ミヒャエルは恐る恐る隠れ場所から姿を現した。いつもと同じように珠月は足を組んで椅子に座っていた。今日はかなり大きな木製の椅子に腰かけている。その椅子は、小柄な珠月が座ると足が微妙に床から浮き上がる程度のものなのだが、不思議と不格好な感じはない。むしろ、そう意図して作られたかのように見える。それはきっと、彼女があまりにも堂々と椅子に座っているからだ。隣のテーブルでは紅茶が湯気を立てている。 初めてあった日と変わらぬ光景。違うのはその顔に諦めの色がにじんでいることか。 「懲りろ」 命令系だった。「懲りないな」という感想ではなく、ミヒャエルへの命令。だが、勿論聞く気もなければ聞かなくてはな...
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序章、アフタヌーンティ
...らもいい神経だ。 その後も交わされる会話。雑談。談義。謀議。 お茶会が社交の場であり、情報交換の場であるのは、今も昔も変わらない。やがて日が沈み、お茶会の時間も終わりに近づいたころ、思い出したようにアルシアが言った。 「社長、私そろそろ帰るですけど……耳に入れておきたいことがある忘れてましたですよ」 「何?」 珠月は小首を傾げる。 「あの、『天使の粉』って知ってるですか?」 「知らない」 間を置かずに珠月は答えた。他の顔ぶれもぴんとこなかったらしく、小首を傾げる。 「えー、何それ? 新しいの化粧品?」 「エンジェルエッグとかが好みそうな名前ですわね」 聞きなれない単語に、全員が興味深そうに身を乗り出す。 「お薬だそうです」 対するアルシアの返答に、空気が緊張をはらんだ。 この場合の薬とは、普通の薬局や病院で扱っているものではない。麻薬のことだ。 「新種らしいです。こ...
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