BIBLIOMANIAX内検索 / 「南」で検索した結果

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  • ぶらりクリスマスお届けもの巡り/南
    ~ ・紫々森 兎熊さん 「あ…お昼寝中かな……おこしちゃ悪いかな…。紫々森さん…」 お祝いにきたけれども、あまりにも紫々森さん、気持ちよさそうに寝ているし起こす気になれないな…っていうか起こしちゃ悪いよな…。 「どうしよう…」 おいていったら、悪くなっちゃうし…それより、クリスマスプレゼントになっちゃうし、サンタさん戸惑っちゃうかもしれないし……さきに知らない人からプレゼント来てたら吃驚だよぉ…どうしよう… 「よし。保冷剤入ってるしっ少しくらい大丈夫なはず…」 紫々森さんが起きるまでとけないでねっ・・・! 「お誕生日おめでとうございました。めりーくりすます。」 ■おまけ■ 「ぅーん……?」 …え、なんだろう。ケーキ…? 「誰がおいてったんだろう……ふぁ~ふ…」           :           : 「はっ…!!名前かいてくるの忘れた…!!!」 ・黒雫さん 「黒さ...
  • First contact/淮南万珍&三ツ石厳&白亜キャンディ
    ... 一時間前。  淮  万珍(わいなん  ばんちん)は小躍りしていた。美味い豆腐が市場にあるというので、早速買ってきたのだ。  これを食べながら歩く、考えただけでにゃふにゃふものである。いざ一口食べようとした矢先……  三ツ石  厳(みついし  いつき)はふんぞり返っていた。市場を歩いていて偶然引ったくりを捕まえたのだ。  引ったくりを見逃せずに捕らえ、兎にも角にもぶん投げた。あとはふんじばるだけだと思ったのだが……  にゃわー! 人が空を飛んできt……にゃふち。  いたたたた、災難だったにょん。豆腐はどこかにょん?な。まさか、ぐちゃぐちゃに。三秒、三秒ルールだに!  誰がこんなことを……あ、あの人だに。  「ちょっと、どうしてくれるにょん。楽しみにしていた豆腐台無しだに、弁償しろだに」  よし、...
  • Cocco
    ...人。ついでにこっちが王でこっちが東王。……そろそろ覚えてあげないと泣かれるんじゃない?」 「王……東王……あぁ、知ってる!」  ようやく合点がいったとでも言うのか、「この間どっかで見た! 何かしてた!」などと曖昧な「ちゃんと知ってるよ」アピールが続く。 「はいはい。本人の前では言わないようにね。……それより、一位はクロムウェルとワクダネルとエルサムニーさんの三人が同列か。英人勢強いなぁ……」 「やっぱりねードナちゃんもジェイル君もファヒマちゃんも可愛いもんね! 甲乙つけ難し!」 「そうだね。姫宮さんも望月さんも不死川も可愛いし。やっぱり可愛い人は強いんだな」 「二重ちゃんも理事ウサ可愛いもんなー」 「確かに不死原も北王も可愛いけど、俺にとっては沙鳥が一番可愛いよ。ぶっちぎりで一位!」 「けど、可愛いランキング負けてるー……」 「なら、俺以外には気付かれてないんだ...
  • 4、ハーベスト・ストリート
    ...  区の中心部を桜夜楽とアルシアは歩いていた。  あのお茶会からすでに五日が経っている。今のところ、その新種の麻薬が地上で問題を起こしたことはないが、こういうものは早めに処分したほうがいいと判断して桜夜楽とアルシアが動くことになった。 「まったく、そろそろ成果が欲しいね」 「ん。そうね」  これは東王の部下としての仕事ではあっても、ダイナソアオーガンの仕事ではない。成績ポイントの加算にはなるだろうが、金銭や契約が絡んでいない分、桜夜楽たちの士気は低い。 「はあ、スー君会長と一緒のお仕事とかだったらやる気でるのに」 「……まだ諦めてないんですね」 「うるさいな。今月の星占いで、私は絶好調なんだよ。だから頑張るの」 「星のめぐりに頼ってるようじゃ、まだまだだぜ」  アルシアの右手のパペットが言う。桜夜楽はそれを睨みつけた。 「うるさいな。占いとおまじ...
  • 巫 牙裂紅
    ...mas地下 東 西 中央 中枢? 思いつきイメージチェンジ? 炬燵に蜜柑 雪の兄弟とクロい女の子 バレンタインデー 噂のあの人 その後
  • とある恋の物語 ファヒマの場合
    ...「どうしたんだい? 王」 「どうかしてるのはお前のほうや! 武器持って走ってくんな!!」 「これは失礼。王の姿が見えたのでついうっかり」 「お前なぁ……迎撃されても知らんぞ」 「まあ、はじめの一撃くらいなら避けられますよ。きっと」  ゆっくりと足を地面に下ろして、序列62位【ホーンデットアックス(怪奇斧男)】四十物谷宗谷(あいものや そうや)は礼儀正しくお辞儀をした。彼はイーストヤードに本拠地を置く調査事務所の所長である。学園のサウスヤードを仕切る逆襄とは繋がりがなさそうに見えるが、共通の知人を通して顔見知りである。間に7人はさめば間接的に世界中の人と繋がるなどという説もあるが、そうでなくても情報網や道路交通網が発達した現代、世界は確実にせまくなっている。 「で、何の用や?」 「今夜うちの事務所で飲み会するんだよ。契約社員とかアルバイターも含めて。よかったら王も来ないかと思って...
  • First contact
    ...・ブラックシープ 淮万珍&三ツ石厳&白亜キャンディ 澪漂二重&朝霧沙鳥 澪漂二重&澪漂一重 狗刀宿彌&ネモー・ヌスクヮム 狗刀宿彌&牡丹 矯邑繍&にゃんにゃん玉九朗 篭森珠月&ジェイル・クロムウェル 篭森珠月&空多川契
  • ファンキーレディオ放送局2
    ...められる!」 「いや王呼べ王! 轢かれても多分あれなら大丈夫だ!」 ざわめく生徒達。 何人かは手持ちの銃でタイヤを狙い撃つ。それで止めようと言う魂胆だ。 しかし、装甲もタイヤも傷ひとつつかない。恐るべき硬度だ。 『逢ちゃんとみーちゃんとの合作、そう簡単に止めれると思うな……!』 「離せ! 一度あいつは殴らなきゃダメだ! 人として! 人として!」 「気持ちはわかるが落ち着け! アレに立ち向かうのは無茶だ!」 「畜生、無駄に頑丈で凶悪な兵器に乗りやがって……っ!」 幾らトランキライザーの生徒が優秀で、肉体的に優れていると言っても、戦車に勝てる生徒など一握り。 それが最新鋭の兵器技術をふんだんに組み込んだ装甲車、ファンキーレディオ号ならば、トップランカークラスの実力がなければ無理だろう。 無力に嘆く生徒達。膝をついてダンダンと地面を殴っている。 『みゃはは、なんて冗談冗談! ちゃんと止...
  • 早良のわくわく潜入日記~四十物谷調査事務所の飲み会編~
    ...包囲されるかのように区画の王である【キングオブインサニティ(狂気の王)】経世逆襄が何故か座っていて、一桁や二桁をも含むトップランカーの塊という恐ろしいスペースが出来上がっていた。  そんな飲み会の一角に【ジャック・ザ・リバー(闊歩する自由)】崇道院早良はいた。このうごうごと人のひしめく室内でどんな楽しいことが起きるのだろうか、そう考えるだけでわくわくものであった。  早良はこのリンクのメンバーではない。しかしながら無所属である彼は顔を各地で売る必要があったし、仕事をもらえるようなツテを作る必要があった。  嘘。  本当はただ単純に面白いことを求めていただけであり、無所属ではこのような大きな飲み会と無縁であるから多少の無理をしたといったところであった。まぁ面白くなるのなら色々な知人友人をこさえても構わない、そう思っての行動ではあるが。  そんなわけでメンバーでもないのに飲み会に潜入...
  • ファンキーレディオ放送局1
    ...』 どうも彼女は東西北の有名人を名指ししているような気がしているが、きっとそんな事はない。 東と北の会長が休んでいたり、の総代が遊んでいたり、西の団長が演奏していたり、日系リンクの盟主が東の会長をストーキングしていたり、の名探偵が事件を追っていたり、中央の女王がおやつを食べていたり、地下の溝鼠の皇帝が暗躍していたりするなど……全くもってその通りだった。 ただ、陰口や世間話でこういう事を言う生徒は多くとも。学内全土に響く電波放送でそれを言う事ができるのは、学園広しといえども彼女とTLNのキャスターくらいだろう。 『それでは、今日も貴方に強制試聴☆ ファンキーレディオ、はっじまっるよー!』 彼女、一二三逢が、高らかに番組開始を宣言した。 『じゃあ早速開始宣言! 今日はナニから行こうかな☆ 学内の恋バナとか皆興味あるよね! あるよね! 恋バナに興味ない女の子なんていませんもんね!...
  • 住みたい区画
    ...ようだ。 「じゃあ、はどうだ!」  だがすぐに復活して、まだ話題に上がっていない最後の区画をあげる。  は商業施設が多く、若者とワーカーが中心の商業都市である。治安も東区について良い。何より活気があり、道端のストリートミュージシャンや大道芸人が無機質なコンクリートの街に彩りを添えてくれる。静かに暮らすには向かないかもしれないが、にぎやかな暮らしがしたい人間には人気だ。そのにぎわいはかつてのロサンゼルスを彷彿とさせる。 「はある種、逆襄の肩にかかってる部分があるよね」 「確かに彼を中心に人間関係が形成されている部分はあるね。まあ、区は一致団結とは少し違うけど、仲間意識が強いし利害関係が一致してるからそれなりに安定してるんじゃないかな。好戦的な連中も少ないし」 「逆襄さんの周辺は色恋沙汰でいろいろ泥沼ですが、それは個人的な問題ですから無視してかまわないと思いますわ」 「あら、私へ...
  • あの人とおしゃべり お茶会編
    ...が悪かったんですよ。の帝王をごらんなさい。片思いの糸が絡まり合って、複雑なカオス模様を描いているじゃありませんか」 「ああ。私も王の死因は痴情のもつれだと思う」  自分の友人に対して酷い評価を下して、珠月は冷めた紅茶を一気に飲み干した。神無は新たにシュークリームに手を伸ばす。 「ライトノベルの主人公気質だからね。王。そのうち世界の敵とかと戦うじゃないの?」 「世界の敵とか、すごく中二病です」  契は伸びをした。見事なボディラインは女性からみてもかなり羨ましい。 「大丈夫。この学園はそんなやつばっかりだから」  何の慰めにもならない言葉を吐いて、繍は首を振った。ちりんと簪の飾りがぶつかり合って音を立てる。 「あ、そういえばこの前、即売会で弓納持さんにあったのですよ。進化してました」 「進化?」  弓納持はある意味学園最悪の腐女子である。学園内の男同士のコンビを勝手にカップル認定し...
  • 3バカの日常
     ―淮万珍、万珍堂にて(万珍・早良)  「いらっしゃいだに」  「ふに、ここが『豆腐のことなら何でもお任せ、バンチン、バンチン、万珍堂』ですかい?」  「そうだにょん、今日はどうされましたにょん?」  「あぁぼかぁ油揚げに目がなくてねぃ、油揚げ料理を食べに来たんでさぁ。さっき行った麺屋は閉まってたみたいで腹ァぺこぺこで……腹がふくれるように適当に頼みましょうかい」  「わかっただに。少々お待ちを」  「いなり寿司、餅巾着、納豆のあげ包み焼きに油揚げピザ、ジャガイモと枝豆と油揚げの煮物、おすすめどころをお持ちしただに。どうぞ召し上がれ」  「こりゃうまい。このピザってのは何がどうなってるんで」  「それはあげにマヨネーズとニンニク醤油、あと七味をかけて焼いたものだに」  「ふにふに。この煮物のほどよい甘さも油揚げの味の染み込み具合も絶品だねぃ」  「ありがとだに、油揚げ好きな人に悪い人...
  • Baa,Baa,Black sheep Ⅴ
    ...ほどよく陽が差し込む向きの応接間に一人の少年が座っていた。少年といっても十代後半。もう大人の顔に近い。  小さなノックとともに扉が開いて、エドワードが入ってくる。 「お待たせして申し訳ありません。少々帰宅が遅れまして」 「構わないよ。それに敬語もいい。敬意は言葉遣いに宿るものじゃない」 「いえ。私のほうが落ち着きませんので、どうかこのままで」  エドワードは、彼が持ちえる最大の敬意を込めて頭を下げた。少年は表情を変えない。 「まあいい。それより、先日は大変だったみたいだね」 「ありがとう御座います。私事で、ご足労煩わして申し訳ありません」 「いや。僕が勝手に来たんだ」  少年――学園のイーストヤードの頂点に君臨する東王、序列9位【ドラグーンランス(竜騎槍)】狗刀宿彌は軽く首を横にふった。エドワードはもう一度頭を垂れる。 「エドワード、君の腕はよく知っている。今回...
  • 3、審査員席にて
    ...王)】経世逆襄  の王――学園のサウスヤードの管理者であり、たった九人しかいない一桁ナンバーの所持者でもある。その権力と人当たりの良い性格から学園内での人気は高い。同時に、人が良すぎて厄介事やイベントごとをついつい引き受けてしまう貧乏くじタイプでもある。  そんな訳でかなりすごい人のはずなのだが、上位ランカー内での彼の扱いはひどい。 「あー……どうも。頼むから食えるものだけ作ってくれや。うけとか狙わんでええから」  ブーイングが起こった。  耳を澄ますと、挑戦だのゲテモノだの、あきらかにある種の期待を背負った声が上がっているとわかった。三分の一くらいはそれを止めようとしているようだが、火に油を注ぐ結果になっている。 「ぎゃははは! 大人気だな、王」 「勘弁…………」  がっくりと逆襄はうなだれた。よく見るといい男なのだが、持ち前の気質のせいで三枚目に見られがちなの...
  • 第二楽章 交錯する者、あるいはヒーロー見参!(1)
    ...何だぁ……?」  区画にある近未来的なデザインの建物――サイキッカーのリンク【サイキックフォース】の事務所の窓際で、相模・雷都は爆発音と僅かな振動を感じて顔を上げた。同じオフィスには、【サイキックフォース】のメンバーである真鶴・麻奈とその姉である【サイキックマスター】真鶴・理奈(りな)の姿があったが、彼女たちもそれに気が付いて顔を上げたところだった。  しかし、いち早く動き出したのは他でもない雷都だった。  「麻奈、逆兄に連絡してくれ! 俺ちょっと見てくる!」  それだけ言うと、雷都は手近な窓を開け、そこから通りに飛び出した。一応補足しておくと、【サイキックフォース】のオフィスはビルの最上階――五階にある。  「ちょ、ちょっとライト!?」  「あいつまた仕事サボって……」  「お姉、そういう問題じゃないでしょ!?」  のんびりとした理奈の様子に、思わず麻奈は突っ込ん...
  • 恋の噂と嘘新聞
    ...よね」 「おいおい。王周辺の恋模様がすごい修羅場になってるぞ」  二桁近い人間が絡む複雑な関係図が展開している記事を見て、繍は苦笑を浮かべた。 「これはいつ刺されてもおかしくないな。本当なら」 「いい薬なのですよ。あの超絶鈍感男はもっと痛い目を見るべきなのです」  契のコメントは容赦がない。繍は苦笑を深めた。確かに王は女性にもてる。そしてもてていることに気づかず、結果的に修羅場を招く。自業自得といえないこともない。 「確かにたまに絶望的な気持ちになるほど、男女の心の機微に疎いけどね」 「あれだから、自称婚約者や自称彼女が周囲に大量発生したり、掲示板でみんなから罵られたりするのですよ。もっと自重すべき」 「その理屈でいくと北王も刺されないといけないよ。男と女両方に」  現在の区画王の特徴は非常にもてることと、同じくらい恋心に疎いことである。その中でも王の逆襄は誰にでもフレンドリー...
  • 天狗の話。
    ...ったれがァ!! 淮万珍曰く。  こちら『豆腐のことなら何でもお任せ、バンチン、バンチン、万珍堂』だに。  あぁ、あの人は常連さんだにょん。油揚げに目がないからって一度に数十枚の油揚げを買っていくんだに。うちの店で一席打ってくれることもあるんだに、それ目当てのリピーターも増えてるから万々歳だに。  いっきーも姫も仲良くしてもらってるにょん。  あー豆腐ぶっ放したいだにー……あぁ独り言だから逃げなくても……。 里見伝狗郎曰く。  大好きっス!! 九龍のおいらのとこまで遊びに来てくれるし、事務所の仕事もちょくちょく手伝ってもらうし。飲み比べとかもしたり遊びに行ったりするしなでなでしてくれたりして優しいっス、そんけーっスよ。  悪戯好きなのもいいとこのうちだと思って見習っておいらも悪戯するんスけどいつも上手く行かないんスよねぇ。  友達みたいな先輩なんスけどいつかもっと力になって頼られ...
  • 第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(1)
    ...……」  学園都市区画。経済都市として発展しているこの近辺でも特に突出しているのが、飲食店兼ライブハウスである【ロックンロールロックスター】である。  そのカウンターに、三人の男女の姿があった。  一人はカウンターに突っ伏している、少年のような幼さを残した青年だ。別に酔っているわけではなく、ただだらけているだけである。上下とも動きやすそうなジーンズ生地の衣服を纏っていた。  もう一人はそんな青年の肩をばしばしと叩いて――否、殴っている少女。いまどき珍しいセーラー服を着込んでいる。  そしてもう一人、三人の中では一番の年長者と思しき青年が、カウンターの内側でそんな二人を困ったように見ていた。こちらは仕事着か、白のワイシャツにベストとバーテンダーのような格好である。  カウンターに突っ伏している青年は名を相模・雷都(さがみらいと)、隣の少女は真鶴・麻奈(まづるまな)という。...
  • 序章、アフタヌーンティ
    ...思うよ」 「この前、区のハーベストストリートにすごいケーキ屋さんができたんだって。聞いた? パステルカラーのカップケーキ売ってるらしいよ」 「どう見ても毒ね」  おしゃべりにも花が咲く。  日差しは心地よく、お菓子は甘く、紅茶は美味しい。贅沢な時間だ。  おしゃべりの邪魔をしないように、忠実な執事になっているミヒャエルはそっとお茶を継ぎ足し、クリームやミルクを用意する。  その傍らを退屈そうに黒い猫が通って行った。珠月の従者のトリスタンだ。サンルームには見当たらないが、屋敷内には他に、大烏のべディヴィエール、白鼠のガラハド、毒蜘蛛のランスロット、コヨーテのガウェイン、スネアーズペンギンのケイがいる。 「私は、来週からベアトリクスと太平洋ですの。捕鯨調査で」 「まあ、大変。気をつけて行ってくださいね」  溜息をつく緋葬架に、政宗が励ましの言葉をかける。緋葬架は力なくほほ笑んで、ちぎっ...
  • 羊さんの届け物 前編
    ...「ちょっと待て。なぜ王は『おでん缶』なんだ?」 「ああ、王を何にするかはもめたんですよ。せんぶり茶、青汁、ラーメン缶、乾パンなどの意見もあったのですが、それはもっと相応しい人がいるということで」「飲み物じゃねえもの率が高すぎるだろう。あと、相応しいってことは今後登場するのか!?」  どう見ても罰ゲームの類である。 「仕方がありません。逆襄さんですから」 「何故だろうな……やつのイメージとも好物とも全然関係ないチョイスなのに、他の誰よりもやつの存在を現しているのは……」  それがイジメというものです。  興味深そうに、深紅は自販機を見つめる。 「それと、紅茶が多すぎるだろ!? 西王のアールグレイに始まり、佐伯(アッサム)、篭森(オリジナルブレンド)、東華(ジャワティ)、異牙(ダージリン)、ハト(アップルティ)、トモ(ピーチティ)、ハル(レモンティ)、アサト(チャイ)ってどんだけ紅茶...
  • Knife and Fork
    ...」  東区画を出て、から中央、そして北区画をあらかた浚い終えた戒は、北と西の境目付近の貧民窟『グレイハウンドストリート』に差し掛かっていた。ここは戒がまだ本物の殺人鬼として夜な夜な人を襲っていたころ根城にしていたスラムの一つである。  「しかし……いつ来てもここは寂れてるな。むしろ俺がいたころより格差が広がっている一方じゃねぇか……」  やつれた頬の母親、目ばかりがギラギラとした子ども、路傍で死んだように転がる老人。技術や経済の進んだ学園都市においても、一歩内側に入ればまだまだこんな現実が残っているのだ。戒は小さく肩を落とした。と、  「…………?」 戒は奇妙な視線を感じて後ろを振り返る。視線の先には小さな裏路地、そして今まさにその中に引っ込む途中の子どもの足が見えた。おそらく彼に視線を向けていたのは、今の子どもだろう。しかし、と戒は首を捻った。  「視線からなにも感じなかった……...
  • その3、開始30分
    ...登場した警備ロボは、アメリカ製のもので校内でも比較的安価で手に入る。ランカーにさえ傷を負わせるような一品が、今なら一体30万WCでブラックシープ商会より発売中。今日から2週間、ホームセンター黒羊では今回のもようしで使われた武器や警備用品のフェアを開催する。ランカーが使ってる、あるいはランカーに対抗できる一品を手軽に手に入れるチャンスをお見逃しなく』  原稿を見ながら、ミヒェエルが宣伝を入れる。 「……高いのか安いのか分からねえ」 「でも気にはなる。ブラックシープの宣伝策略だと分かっていても!」 「ですよね。ところでお弁当はいかがですか?」  観戦していた少年たちが振り向くと、白い調理服を着た少女が弁当を持って立っていた。 「一つ800WCで、ル・クルーゼの味が楽しめますよ」 「あ、村崎ちゃん」「買う買う!」  レストラン『ル・クルーゼ』オーナーシェフ・村崎ゆき子。ユリア・パパラート...
  • 狗の王
    ...望や諦めの悪さならば王に軍配が上がるでしょうし、水面下の抗争や人海戦術なら地下の鼠の王様に分があります。敵に回したくないという点なら、中央のアイドルですね。情報戦はスナッチと北がいい勝負でしょうか。権力なら間違いなく姫宮の双子です」 「へえ」  宿彌は目を細めた。陽狩は学園でもっとも有名な殺人鬼の一人であるが、同時にどこの組織にも所属しないし交流も持たない珍しいソロプレイヤーのランカーでもある。その彼がそこまで学園内の勢力関係に詳しいというのは意外だ。目が合うと陽狩はにやりと笑った。 「私は案外と顔が広いんです。片っ端から知人を殺しているどこぞの馬鹿と違って」 「酷い言いようだね。相方はもっと大事にしたほうがいいよ。いなくなってから後悔しても知らないよ」  陽狩は目を瞬かせた。予想外のことを言われたというよりは、意味が理解できないというような表情で宿彌を見つめる。 「…………それ、...
  • 3、天使のチョコレート
    ...湿度、道の高低、東西北のむきなど――を無意識のうちに計算し、その膨大な計算結果から回答を得ているのだ。  秋人も同じである。戦闘能力を持たない彼は、代わりに周囲の状況を恐ろしいスピードで計算し、それを勘という形で発揮しているのだ。  桔梗はチョコレートに慎重に鼻を近づいた。彼女の嗅覚では何が入っているかなど分からない。しかし、言われてみれば普通のチョコレートより匂いがくどい。 「つまり……これ、毒?」  チョコレートは匂いや味がきつい為、薬物を入れても気づかれにくい。癖のある薬物で暗殺したいというなら適しているだろう。  秋人はあいまいにうなづいた。 「毒か薬かは知らないけど、薬品入りだね。少しなくなっているってことは、何かに使ったんだと思う」 「ということは、殺人の証拠品の可能性もあるってわけだ」  沈黙が落ちた。  花瓶に活けられた季節外れの牡丹から花びらが落ちた音すら、大きく...
  • ties 1
    ...   **  東アジアの交通都市シェイングレン  空気が濁っているような気がしたとすれば、それはきっと自分の中のどこかに残っている潔癖を愛する子ども心のせいだろう。そうでないなら、最新の空気清浄機が吐き出される紫煙もどこからともなく漂ってくる鉄さびの臭いもたちまち浄化してしまうようなこの空間で、空気に濁りを感じるわけがない。精密機械の工場のようにはいかずとも、ここの空気は浄化されているはずだ。煙草の煙もうっとうしい香水も、呼吸を邪魔しない。 「そのはずなんですが、息苦しいのはなぜでしょうね」 「趣味が合わないんでしょう」  二人の青少年がいた。一人はひどく整った外見を持つ青年、ジェイル・クロムウェル。【ワンダフルポエマー(凍れる詩人)】のエイリアスを持ち、その甘く華やかな外見と中身のえげつなさ、そして読めない性格で一部では非情に恐れられている。  もう一人は、【マルウェス・べ...
  • ties 4
    ...り、後には救助を行う区の関係者が集まっている。瓦礫の下から引きずり出されるのは戦闘服の男たちだ。怪我はしているが死んではいない。  織子は黒雫の姿がないかと目を凝らすが、出てくるのは同じような男たちばかりだ。 「――――多分、あの下にはいないと思いますよ。黒雫君は物語の主人公のように優れた能力を持っていますから。少々性格に矛盾があるのと、性格のせいで能力を使いこなせきっていないところが玉にきずですが。哲学者のように価値観や存在意義なんて考えず、やりたいことをやればいいと思うんですけどねぇ。自分探しも大事ですが、自分を見つめすぎると彼のように死にたくなります」 「え? 自殺志願者?」  織子は顔をしかめた。しかし、ジェイルは首を横に振る。 「いいえ。破滅志願者なんですよ、彼」 「同じだよ!」  むしろさらに性質が悪くなった。ジェイルは大仰に肩をすくめて見せる。 「隙あらば、茨の道を歩...
  • 上にいるひと
    ...の姿がある。 「北やにいくとあの役回りが逆転するんですけどねぇ」 「確かに。ちょっとあれなボスとそれを支える真面目な部下ですからね。あちらは」  他の区画は女性陣がしっかりとしている傾向がある。 「でも、悪くないですよね」  続く部下の言葉に、サムソンは微笑んで見せた。 「ええ、勿論。だからこそここにいるのです」 おわり
  • コトノハ
    ...ます。北風もやがては風に変わり、巨大な氷もいつかは溶けるようにあなたの心もいつかは溶けてくれると!」「地球温暖化を望んでるわけ!?」  珠月は冷たい視線を返した。その先の路地が行き止まりなことに気づいて、すぐに近くの物を踏み台に上への脱出を図る。だが、一足先に手を伸ばしたジェイルが珠月の腕をつかむ。 「嫌っ」「僕は貴女が好きなんですよ。貴女は御自分があまり好きではないようですが」  じたばたと逃げようとする珠月を押さえて、ジェイルは半ば無理に自分の方を向かせる。 「何故でしょう? 貴女は月のように美しいのに」 「七光だって言いたいの?」 「まさか。沼の底の汚泥すら清らかなる光を得れば輝きますが、誰もを引きつけるまでには至りません。人という生き物は天涯を覆う星々と違い、光を集める努力をしなければ光れませんから。それを知らない愚者など放っておけばよろしいのですよ」 「そんな戯言聞きたく...
  • 絡み合う音楽家たち ――第九管弦楽団・澪漂鍵重
    ...かれた鎖を留めている京錠を外し始める。  一つ外す度に、「カチリ」という乾いた音が、煙った部屋に響き渡った。  やがて全ての錠を外し終え、身体を拘束していた鎖が取り除かれると、鍵重は縛重の身体を包んだ白い布に手を掛けた。支えを失った布は、鍵重が軽く手を動かすだけで、彼女の腰の辺りまで落ちる。隠すものを取り除いたことで、縛重の色白の肢体が露わになった。  「うふふ……」  そして鍵重も、半ば脱げた状態だった和服の袖から腕を抜く。縛重と同じように和服が落ちたことで、縛重のそれよりも幾分凹凸のある身体が姿を現した。  「縛重?」  鍵重が両の腕を伸ばすと、縛重はゆっくりと彼女の身体に自分の身を寄せ、そして二人は柔らかく抱き合った。  「…………」  「何をして欲しいのかしら? 黙ってたら分からないわよ?」  拘束するものが無くなってなお無口な縛重に、鍵重は濡れた瞳を向け...
  • 花落ちず水はなし
    ...北や西は言わずとも、もそれなりに仲いいよね。落花流水水魚の交わりなんでもいいけど、楽しげだ」 「うちは花も水もありはしないよ」  早口で珠月は言った。そして、再び寝椅子に寝転がる。高そうな服にしわがつくのも気にしない。しかし、すぐにまた起きあがる。 「それだけ? 説教なら聞いた。明日はもう会社いかない。有給で休む」 「うん、珠月だね」 「しみじみ言うな。もう帰れ。帰りたくないならお茶を出す。チーズケーキとチョコレートムースどっちがいい?」 「追い返したいのか、もてなしたいのかどっちだい?」  聞きながら、宿彌はやっと椅子に座った。慣れた様子で珠月がお茶を入れ始める。 「もてなしてほしいならもてなしてやらないこともない。宿彌だし」 「よく分からないけど、ありがとう。いただくよ」 「どっちを?」「両方」  珠月は小さく肩をすくめると、呼び鈴に手を伸ばした。 ...
  • First Contact/澪漂二重&澪漂一重
    ...ランキライザー、その区画にある飲食店街に、小さな喫茶店がある。まだ本科に進学している生徒が今よりは少ないため、飲食店街とは言っても店舗はまばらだ。  喫茶店のテラス席に陣取る四人――紫々守・兎熊(ししもりとぐま)、篭森・珠月(かごもりみつき)、澪漂・一重、そして候・二重は、それぞれ自分の前に飲み物の入ったカップと、上品な皿に乗ったケーキを確保して与太話に花を咲かせていた。  現在でこそ考えられないが、この四人は予科程時代非常に仲の良いメンバーであった。このように空いた時間を使ってお茶を飲む程度のことはしばしばあったし、アルバイトで一緒にあちこちに出かけたりもしていた。  アールグレイのカップを傾け、アルオンは一重に尋ねる。  「そういえば一重は本科に入ったらどうするんだ? やっぱり、西の澪漂のところに?」  その問いを受け、一重もココアの入ったカップをくるくる回しながら「...
  • 第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(2)
    ...ろから四時の方角――区画の通りを進行中だ」  『ふん、やっと出てきたか。禽重』  「わぁかってるぜぇ? 襲撃、だろ?」  早くも降下体勢に入ろうとしている禽重に、七重が含めるように言う。  『分かってると思うけど、一般市民に被害を出すんじゃないわよ? 賠償額は全額、あんたのポケットマネーから払ってもらうからね?』  「けけけ、ってこたぁ、懐の許す範囲内なら虐殺も可ってことか」  それだけ言うと、禽重は背中のジェットエンジンに点火して、初速からマッハの域にまで加速した。七重がインカムの向こうで何かを言ったような気がしたが、禽重はすでに聞いてはいない。  「けけけ――逃がさないぜぇ、ひよこちゃんどもがぁ! 澪漂の幕を、開けてやるぜぇ!」                     ♪  「……っ! 避けろ!」  とっさに危機を感知した嶽満の声に、他の三人は機...
  • 推理小説にお砂糖一杯 3
    ...人達を見渡し、篭森はの空を指さした。 「一同注目……3・2・1……」  過ぎ去る夕焼けの残りが僅かに紫を滲ませる夜空に、大輪の花が咲いた。  遅れて、大きな破裂音が響く。鮮やかな花火が打ち上がっては宝石のように煌めき、散ったかと思えば次の色が世界を染める。素人目にも解るほどの、素晴らしい芸術品が広がり続けていた。 「鈴木深紅作『ハッピーバースデイ玉九朗』」  篭森の言葉に、矯邑は混乱する。 「え? え? これ玉九朗さんの誕生日祝いの花火なのか?」 「そう。私の個人的なプレゼントだよ。って言っても、私は依頼しただけだから、礼は鈴木深紅に言ってあげて。打ち上げ終わったら顔出しに来るみたいだから」  花火の光に照らされる篭森の顔は、常日頃と同じ無表情だが、仄かに赤く染まっている。降り注ぐ光の色か、それとも照れか。矯邑は後者だといいなと思い、感謝の気持ちを伝える。 「ありがとう、本当に嬉し...
  • First contact/矯邑繍&にゃんにゃん玉九朗
    ...繍と珠月の出会いは、区で開かれたのみの市で一冊の古書をめぐってどっちが買うかで争いになったことだった。その時珠月の顔を知らなかった繍は、後に友人知人から「人類最狂の娘と真っ向から言い争いをした女」として尊敬を集めることになったのだが、それはまた別の話。 「で、何の用だったの? 誰かとトラブルでも起こした?」  その一言で繍は用事を思い出した。かいつまんで事態を説明する。それを聞いた珠月は小首を傾げた。 「うーん、美味しいものでも食べさせてみたらどうかな? でも身体構造が分からないんじゃ、何を食べさせていいのかも分からないよね。猫だったら、ネギとかカフェインはダメなはずだけど。あとは甲殻類とか魚でもあおぜの魚は食べさせすぎるとよくないはず」 「今朝がたお茶を飲んでいたんだけど」  珠月は渋い顔をした。 「具合悪くなってない?」「ない……と思うけど、話してくれないから」  今朝からほと...
  • 踊らされる音楽家たち ――第十二管弦楽団・澪漂爆重
    ...入った二重と光路は、区画での路上ライブによってトラウマに近い羞恥心を植えつけられた。  「今にして思えば、貴様を殺してでも逃げるべきだったな」  「Aow! それは酷すぎじゃないかい?」  「でもお前もまんざらでもなさそうだったよな? あれでファンクラブの会員も増えたって聴くし」  「黙れ【無能】が」  そんな思い出話に花を咲かせながら、三人はオフィス街の中でも頭一つ抜きん出た高層ビルの前に立っていた。  玄関口の前には数名の警備員の死体。いずれも首や胸部に致命傷を負って倒れている。  「俺にも少しは働かせてくれてもいいじゃないか。Shuk Chik」  「入り口で銃撃戦になったら目立つだろうが。安心しろ、中に入ったら好きなだけ暴れさせてやる」  大鋏を血振りするようにクルクルと回しながら、二重は防弾ガラス張りのエントランスを見据えた。  「中に入ったら、...
  • 美食礼賛 中編
    ...ハーブなどを多用したフランスのプロヴァンス地方の料理で」  順に料理の説明がなされる。そこでふと、匠は気付いた。  契のメインは、鴨肉のロースト。  神無のメインは、雄鶏のワイン煮込み。  匠の肉料理は、鳩のロースト。  羊をメインにした繍と魚メインの玉九朗はセーフだが、それ以外は見事に鳥肉料理が続いている。それを給仕するのは、鶏(多分)だ。  匠は緊張した。だが、鳥のほうは慣れた様子で料理の説明を続ける。 「こちらの雄鶏の赤ワイン煮込みはオーベルニュ地方の郷土料理で、赤ワインは地酒を使います。玉ねぎやベーコンも一緒に煮込むのが特徴で――――」  どうみても同族の料理を平然と解説する。自分が料理になるかもしれないという不安はないようだ。すげえ。 「では、ごゆっくり」  鳥がいなくなると、匠は肩の力を抜いた。 「ちょっと、さっきから失礼だよ。そりゃあ、あの人たちは少し人間っぽくないと...
  • 女よりも悪いもの1
    ...ライザーはおよそ東西北中央地下の六つの地区に別れ、学年は予科の六年と本科の十年からなる。入学に年齢制限はあるが、進級に年齢による制限はない。よって学園の生徒は一ケタから二十代まで年齢はばらばら。同じクラスにいても年齢が違うことのほうが多い。加えて本科生は先行によりいくつかのクラスに別れ、さらにその中で習熟度によって細分化される。また独自のシステムにより授業に一度も出なくても卒業が可能であるため、学生だからといっていつでも学園にいるわけではなく、ましてや教室で授業をうけているわけでもない。  というわけで、平日昼間のこの時間帯もトランキライザーの街中はまるで休日のように人であふれている。  イーストヤードの電気街を歩いていたトランキ学園序列225位【ラヴレス(愛を注ぐもの)】空多川契は、ひとの多さに思わずため息をついた。オフィス街の多いイーストヤードでこの状態では、商業地区のサウ...
  • バレンタインデー編
    ...。    区画――ロックンロールロックスターにて 経世・逆襄の場合 ロックハウス兼フランチャイズとして名の売れたロックンロールロックスターのとあるスタジオ。序列六位、【キングオブインサニティ(狂気の王)】経世・逆襄は一人でステレオアンプなどの調整を行っていた。  と、逆襄が黙々と作業をしているスタジオのドアが開いて、一人の人物がおずおずと入ってくる。  「逆襄、ちょっといいかな?」  序列七位、【インフィニティアイズ(無限の瞳)】の恋城・静香は、入り口に背を向けて作業している逆襄にそう声を掛けた。逆襄は振り返ることもなく、声だけで客人が誰だかを把握し答えた。  「あぁ、静香か。別にかまへんよ? ちょっと待っててな、もうちょっとでこっちが終わるから……」  「逆襄が機械の調整してるなんて珍しいじゃない。いつもならみのりちゃんがやってるでしょ?」  「みの...
  • 不夜城の陽気な日常1
    ...車に揺られて20分、へ。 「ココですね、『ル・クルーゼ』。村崎ゆき子嬢がオーナーシェフと言う事デスネ」 「村崎……結構有名な料理人よね? その娘さんって事かしら」 「そのようデスネ。コンテストでも高評価を受ける事が多いようデスヨ」 「だからこんなに並んでるんだね。飯時も過ぎてるってのにさ」 「夜。先に言っておくわ。並ぶのは嫌よ」 我侭にも程がある。 「分かってマスヨ。俺とてこんな炎天下に晒されていたくはアリマセン」 「だよね。ボクも嫌だよ」 「デショウ。となればやる事は一つ、脅迫しかアリマセン」 「やめなさい」 「……冗談デスヨ、そう睨まないでクダサイ」 「今の間は何?」 「何でもアリマセン」 止められなかったら間違いなく脅すつもりだった。間違いない、夜巖はやる時は躊躇わない。 こうして会話している間に、徐々に注目は集まってくる。当然だ、北のトップとその側近、更に急激に頭角を現し...
  • コウノトリシンドローム 後編1
    ...権力を持つ北王夜厳と王逆襄、学園最高位の殺人鬼骸手想月、情報戦で囲い込んでくる乱やスコッチの情報屋メンバーだろうか。戦闘能力が高く嗜虐性の強い不死コンビも入ってくるだろう。  だが、もっとも関わりたくない人物となるとがらりと顔ぶれは変わる。敵にしたくない人物とは転じて味方にしたい人物でもあるからだ。そうなると上がってくるのは、本能的に怖い真っ赤なピエロと緑の怪獣やら、言語が通じているようで通じていない寒い詩人やら、うっかりすると自分が料理の食材にされそうなシェフやらだ。その中でも異彩を放つのが弓納持有華。エイリアスはまだないが、学園内に限定すれば知らぬものはいない腐女子だ。戦闘能力学力ともに並みだが、逃げ足の速さと幸運値は天井知らず。学園内に実在する男性で、男同士のめくるめく愛の物語を捏造するのが趣味という、なぜ生きていられるのか分からない女性である。ちなみに、つい最近もブラック...
  • ties 3
    ...、久しぶり。なに? で爆発事故? 私じゃないよ。学園のすべての厄介事に首を突っ込んでいると思ったら大間違いだ。私を何だと思ってるの?」  明るい口調で不吉な単語が飛び出す。電話の向こうから聞こえる声は分かりにくいが女性のようだ。やたらと間延びした声が、何かを告げる。 「はいはい――え? いるけど。は?」  微妙な顔で珠月は振り返った。足の下にはピーターがまだいる。 「――――ジェイル」  あいまいに珠月は笑った。 「あんたの後輩、爆発事故に巻き込まれた可能性があるみたいよ?」
  • コウノトリシンドローム 後編2
    ...拾うのが趣味のような王や渡り鳥すら、拾う相手は選ぶというのに」  陽狩は本題に切り込んでこない。叩きつぶすための最良のタイミングを見計らうかのように、中身のない問答を続ける。 「道に落ちているなら無視もできる。玄関先に置いてあったんだ。しかたないだろう」  緋月の返事に陽狩は小さく笑った。切り込んでくる。そう確信した瞬間、 「ふうん。けれど、やっぱり馬鹿だと思いますね。そんな過去の亡霊を自ら引き入れるような真似は」  緋月は目を見開いた。それを見て、陽狩はにやりと笑う。 あきらかに緋月自身がついさっき知ったばかりのことも含めて、陽狩は知っている。視線だけで疑問を投げかけると、陽狩は鼻で笑った。 「カルバニアなら分かると思いますが、情報封鎖というものは意外と難しい。誰か知っている人がいる限り情報なんて漏れるものです。伝達を遅らせることならできますがね。今回の...
  • First contact/ミヒャエル・バッハ&篭森珠月
    ...いんだ。東王も西王も王だってお茶を飲みに来る。北王だけは絶対に来ないけどね。何度も誘っているのだけれど、意図的に避けられているみたい」  楽しげに珠月は喉を鳴らした。だが、その楽しげな態度すらもそう見せているものだ。食えない態度に、陽狩は不快そうな顔をする。 「嫌われているんですよ。きっと」 「残念だねぇ。私は彼にどちらかというと好意をもっているんだけど」  珠月は小首を傾げた。 「あれかな? 亡き雨月氏は宿彌が嫌いだったらしいから、同じ宿彌陣営の私が気に食わないのかも」 「貴方の性格が嫌いなんじゃないですか?」 「どうかな? 私の背景を警戒されているのか、私に毒殺されるとでも思っているのか、はたまた私を見ると嫌なことでも思い出すのか。私自身が大嫌いというような感じではなかったけれど、何なんだろうね」  本当に残念そうに珠月は呟いた。コネクションを大事にする珠月にとって、会食やお茶...
  • First contact/時夜夜巖&クロエ
    ... 霧戒も幽那も、今は区各にいるという情報を手に入れている。とはいえ、慎重になるに越したことはない。 気配も感じない。行くなら今しかないのだ。このチャンスは逃せない。 「そうそう、ご主人。知ってる?」 「……? 何をデス?」 「ボクってさ、見ての通り忠実な僕じゃない?」 「エエ、欲望に忠実デスネ。確かに」 一体何度捨てて行こうと思ったことか。 このクロエ、夜巖を主人と呼ぶだけあり、いざという時は忠実だ。律儀といっていい。クローネと対峙した時には助かったし、ウェストミンスター宮殿やバッキンガム宮殿を擁する『グレートロンドンシティ』でのちょっとしたトラブルの時も、大事なところでは必ず夜巖の意思に従っていた。 ただし、普段の奔放さはまるで正反対。どころか夜巖を困らせて楽しんでいる節がある。 「……ちょっと待て、まさかとは思うがクロエ……」 「あはは、ボクがそんな事する訳ないじゃない」 「俺...
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