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正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 第2話 1/2 - (2010/08/28 (土) 00:25:12) の編集履歴(バックアップ)



正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 第2話 1/2




―拝啓、父上様。
あなたの娘の佐貴子です。お元気でいらっしゃいますでしょうか?
私の体調は非常に良好、毎日快便過ぎて全国の便秘を患う方たちに申し訳ないくらいですわ。
早いもので、機関に配属されてからもう三年が経ちますが、こちらは慣れぬことばかりでございます。寝る時間も起きる時間も疎らバラバラまちまち不規則。
そのうち昼夜逆転の生活習慣になってしまうと父上様は危惧なされるでしょうが大丈夫です。一周回って元の生活リズムに戻りましたわ。
最近は大体二ヶ月の周期で昼と夜が逆転しますの。面白いでしょう?四季で日照時間が異なるに等く、私の睡眠時間は常に推移しますの。
それをグラフにしたものを一度見てみたいと気まぐれに思い、毎日日記帳をつけようと思いましたが二日目、異形討伐の際、意識重体に陥ってしまったのでそれきりですわ。
異形と戦うべく機関に入った私ですが、やはり異形といえど相手を傷つけるのは気持ちが良くありませんし慣れません。この先も慣れることはないのでしょう。
慣れたら最後、あの武藤玄太のようになってしまいます。ああ、すみません父上様。武藤とは私の同僚であり、けっして父上様がご想像するような
間柄ではないと言うことを断っておきます。寧ろ、私はあの男苦手な口でして…というのもあの男、気が触れているのでございます。ええ、そりゃぁもう。
ですが不運にも今日はあの男と共に異形どもの討伐をしなくてはなりませんの。陣という同僚も一緒ですが、こちらも少し情緒不安定なことがあり、
実質今回の討伐メンバーでまともなのは私だけです。今もこうやって異形達相手に…


 「ふむ…30、40…いや50か」
 「数なんて…問題じゃ…ないよ。英雄が…負けるわけ…ないんだからさぁ…!」

 「って、囲まれているではありませんことッッ!?」


絶体絶命の危機に追い詰められているところです。

 「ふん…コイツらの中で一番強いのは…アレか…?」
 夜。何処かは定かではないが、草木覆い繁る森林の丁度中心部に当たるであろうその場所。そこだけは木が立ってはおらず、
円を描くようにポッカリと穴が開いている。いや、よく見るとそこには物見遊山するには程よい平野が広がっているではないか。
 … そういえば、世間様ではもう開花前線の足音を聞いているとか?
ならば彼らは花見に来ているのでしょうかと。彼ら…平野に並び立つ三の人影と五十もの邪な影は仲良く酒盛りでも始めるつもりだろうか?
もうすぐ桜が咲く季節ですねと?いやまあそりゃ花見もいいですけど、彼らを見るからにそんな風には見えません。
勿論です。彼らは殺し合いを始めるのですから。異形達のぎらついた目が人間達を舐め回すように見、その口からだらし無く垂れた舌を這いずり回している。

ああ、人間の一人は北条院ですね。目印のリボンが暗闇でも映える。おやおや、陣までいます。もう一人の男は…
 「貴様…名はなんという?」
 五十もの異形…それも猪なんだか、熊なんだかわからなような異形の中でもとびきり顎に携える牙が鋭い者が陣でも北条院でも無いもう一人の、蓬髪の男に言います。
 男は言った「名など聞いてどうする」と。するとその異形はふっ…、と不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。
 「俺は今まで倒した奴の名前をこの手帳に記録するようにしている…そして今回刻まれるのが…貴様だあ!!」
 案の定下衆た、つまらない理由。対して、男はニィ、と口元を吊り上げます。
 「そうか…それは残念だったな…」
 「なにぃ…?」
 「この武藤…武藤玄太…貴様のような下種に負けてやる義理はないんでな」
 男の名は武藤 玄太(たけふじ げんた)。第九英雄の問題児。三十代の問題児と言うのもなかなか滑稽な気がしないでもない。
 「何を巫山戯た事を…おいお前ら、いちもうだじんだぁぁぁーー!!」
 どうやらこの異形はリーダー格と見ても良いようだ。周りの雑魚共がリーダー格の異形に呼応して雄叫びを上げる。五十もの雄叫びが空気を震わせ、
その轟声は月まで届いてしまいそう。
 「おい貴様ら。周りのクズ共を殺っておけ。この武藤は一番骨がありそうなアレの相手をする」
 そう言ったかと思うと、武藤は二人の返事も聞かずに異形の軍団へ突っ走る。走る。いくら異形が詰め寄ってこようとも構わない。周りの雑魚は既に武藤の眼中になかった。
 「装着…『玄武』…さぁ、戦え!!」
 武藤はオープンデバイスを投げ、一瞬にして武装に身を包む。腰周りに装備された複数の武器。腕の入力デバイス。耳から眉間中頃まで伸びた
銀と赤の色彩が特徴的なゴーグル。ここまでが基本的な武装であるが、ここで更に個々の武器が付き、武装一式となるのだ。
 「全く…これだから嫌ですわ殿方は…女性もいるというのに…だいたいですよ…」
 「システムオープン『勾陣』!」
 愚痴る北条院を尻目に陣も武装を展開する。彼の主要武器は…その長く鋭く尖った槍。それも二本。
引き裂いたトマトから零れた出た果汁のような赤と稲妻ように躍動感のある青…二色の鬼を彷彿させる傾いたデザインである。
 「早く…君も…武装展開したら?こいつら…一撃でくたばるような…雑魚…だよ?」
 陣は急かすように言った。全然急かしていないように思える。
彼はあまり激情を表に出す事はない為非常に伝わりにくい…が、つまるところ自分の身くらい守れるよう早く戦闘出来る状態にしろ…ということである。
 「言われなくてもッ…言われなくてもわかっていますわ…」



 「ハァッ!やぁッ!」
 「ギャヒー!?」
 ズバ!肉の裂ける音。陣の二槍が異形達を引き裂いていく。薙ぎ倒しながら異形達の真っ只中直進して行く。
もっと多く、もっとたくさん、敵を倒した分だけ英雄になれる。陣はそう信じて止まなかった。
 「なんだこいつ!?なんと妖面な得物を…」
 「妖面なのは…君達の…顔だよ」
 『"フレイム""ランス"』
 『"ライトニング""スピア"』
 コードを入力。後に機械音が鳴る。陣の右手の槍が赤く発光してきたのに対し、左手の槍は電流を帯びている。
 「まずい!逃げ…!」
 「はは…遅いよ、君達」
 振り下ろされる二本の槍。そこに一瞬の躊躇いさえもなく、為す術も無く異形達は炎と稲妻に飲まれていく。炎は肉を燃やし、稲妻は骨を砕いた。
後に残ったものは…塵のみ。

 「数が多いですわ…やぶさかではありませんが…」
 そうして北条院はのデバイスにコードを入力する。彼女の得物はその身の丈ほどある大きな剣。北条院はそれを振り回す…というより振り回されるようにして戦う。
 『"エナジー""ソード"』
 「正義の名の下に、倒させていただきます!!」
 少しキメ台詞じみたチープな台詞を北条院は吐く。時と場面を違えれば赤っ恥間違い無しの台詞も、今はさして気にはならない。
 振り切った剣先から放たれるは光の斬撃。異形達の体を横に割るように通った後、後ろの木を薙ぎ倒す。ワンテンポ置いて異形達の上半身と下半身が
ずれ、ぼとりと地に落ちた。
 「いたた…」
 一方、北条院は剣の重心に耐えきれず前のべりにコケていた。彼女曰く、この技を使うと二回に一回はコケるのだと言う。何と不憫な。
隙ができると言うレベルではないだろうに。予てより炎堂にその事を指摘されていたが、全くと言って治る様子がない。だって女の子だもん。
 「ど、どうです、私の力は!」
 全く決まっていないと言わざるを得なかった。



 「どうした?立て、立てよほら、まだ準備運動も終わってないぞ?ん?この俺、この武藤をよもやこの程度で満足できるような器だと思ってか?
全くもって遺憾。」
 武藤の体には傷ひとつ付いていなかった。傷が付いていないと言うことは攻撃を受けていない…つまり圧倒的優位で戦闘を進めていたと言うこと。
ならば武藤と対峙する異形がボロボロになっていることもごく自然な状況と言えよう。
 「うぐ…く…」
 異形のほうは立っているのがやっとであった。股がガクガクと悲鳴をあげる。もう限界だと体が警告している。だがそんな異形を見ても武藤は
「まだできるだろう?」
 だなんて、もはや鬼畜の所業である。ああ、周りの仲間たちのように一瞬で逝けたらどんなに楽だったことだろう、異形は武藤と対立する中で思った。
しかしである。彼も異形。プライドが有る。人間に舐められては名が廃る。汚名を被ったままでは終われなかった。
 「そうだ、その目だ。まだやれる。そうだな?ははッ!誠に結構、そうこなくてはな殺し合いは。さあ行くぞ、今武藤が行くぞ。せいぜい俺を愉しませろ!
さあさあ!ほらどうした、来ないのか?棒立ちているだけでは話にならんぞ?さあさあさあ!」
 武藤のその言葉に、異形は確かに恐怖と言うものを感じた。目にうつるのは絶望そのもの、絶望が向こうから向かってくる…恐怖するのも無理はない。
 他の異形達を一掃した二人は、最も早く決着が着いたのにも関わらず未だに戦い続ける武藤を見て口々に呟く。
 「また…始まったよ。武藤玄太の…悪い癖」
 「これじゃあどっちが悪者かわからないですわね…」
 武藤には困った癖があった。もう決着がついた相手でも武藤が満足しない限り戦闘をやめようとはしないという容赦ない癖である。
 「う…うわああぁぁぁぁぁぁっ!!」
 いよいよやけになって突撃する、異形はもう止めをさしてくれと懇願しているよう。口で語らずとも雰囲気がそれを示していた。
 「それでいい…」
 『"グラビティ""フット"』
 「!?」
 武藤は異形を一瞥した後、トンッ、と軽く飛び上がる。その身のこなしは軽く、スライドするように異形へと飛んでいく。
 「はあぁッ!!」
 武藤の蹴りが入る。異形の松風のツボ、胸板の辺り。
 「ッッッ!?!?!??!?」
 みしっと、
 異形の胸がへこんだ。武藤が蹴りを当てた部分を中心に。まるで惑星のクレーターのようだ。まもなく異形の体は原型を保てなくなった。
瓦解したそれを見て武藤はふと呟く。
 「まぁ、準備運動にはなったぞ…?」

 「先程の… あそこまでやる必要がありましたの?」
 「英雄は異形を倒すのが仕事なんだろう?この武藤はその通りやっただけだ」
 異形達をひとり残らず討伐した一行…帰還の路につく。いつもは会話など皆無な組み合わせであるが、この日は珍しく北条院が武藤に話しかけていた。
 「それにしてもやり過ぎではない事?見ていて気分が悪かったですわよ」
 「やりすぎ…か。ならば今度は質ではなく量でいくか?」
 「そういう意味じゃありません!」
 全くもって常識が通じない男である。この男の深層に何があるのか…非常に気になるところある。
一体この男は何を考え、何を以てこのような発言をしているのか?常人には理解不能である、と北条院は思った。
 「じゃあどういう意味か簡潔に述べるといい」
 武藤は北条院に訪ねる。返ってきた答えはこうだ。
 「異形相手といえど、ただ私欲のために殺戮を尽くしていては快楽殺人者となんら変わりがなくってよ」
 道徳的だ。モラルも糞もないこの時代では蔑ろにされがちな、ごく当たり前の事。
 「一般論だな。面白味のない答えだ。一人殺せばただの殺人犯でも、千人殺せば英雄になるんだろう?奴等を殺すのに、過程は問題じゃない」
 武藤はそんな言葉で北条院の答えを一蹴する。むっと北条院が眉間にシワを寄せるも武藤の知る所ではない。
 「人の根本には常に闘争本能が渦巻いている…人は他者を蹴落とし奪い辱めることで自己の存在価値を噛み締め、それが進化につながる訳だ
あぁ、英雄が他者より優れているのはそういう訳だからか。他人を守ると言いながら、その手で守る対象の何倍も犠牲を作っている。
滑稽だな、だが筋は通っているだろ?千人殺せば英雄と言う言葉も、案外間違えではない。」
 「…そんなの、違います!」
 北条院は否定した。武藤は…肯定も否定もしなかった。ただ黙って前へと歩き続けるだけ。最早話の論点に興味が失せたといった具合に。
 「…あの男に…何を言っても…無駄だよ。考えが君とは…根本的に…違うんだから」
 黙っていた陣が急にしゃべりだす。
 「でもある意味…正義を貫いているとも…とらえられないかな…?彼の中の…正義があれなんだろうから…ふふ…」
 「理解できません…」
 北条院は心底このメンバーとはもう一緒になりたくないと思った。


第二話
    ―【妖怪コンビニ24時/前編】―


―前回までのあらすじ
異形の、読みを(作者が)、間違えた。
レジェンドロリータ幼女、トエル。

※前回、低能な作者が異形の事を"いけい"と呼んでいたことに対し、お詫び申し上げます。
聡明な皆様は"いぎょう"とお読みください。
~あらすじ~
ロボで幼女が再生機関にやって来た。
金髪ツインテ幼女とかあかざわR○Dかっつーの!

…それでは今回のお話。


 「ふえぇ!」
 十二英雄トエルの伝家の宝刀「ふえぇ」。その完成されたふえぇはこの地球上のどのふえぇよりも深く、親しみのあるふえぇと言える。
 「ふえー!」
 対してこちらはどうだろう?白石のふえぇはふえぇそのものを愚弄するふえぇであった。何だこの中途半端なふえぇは。語尾を伸ばしきっているではないか。
何と愚かな。後ろは小さい「え」で終わるのがふえぇの美学であり、基礎である。それを伸ばし棒などと言うふざけた真似をされた日にはもう…
 「何やってるの…二人とも…?」
 ふと、陰伊が二人、トエルと白石のそばを通りかかると何やらおかしな光景が繰り広げられたいたので問いかけてみる…
 「ふえぇだけで会話出来るか確かめてたんだべさぁ~」
 なんとも馬鹿な遊びをしていることがわかった。
 「ふぇ!ふぅふえふえええふえっぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 トエルは真剣に陰伊に話しかけた。ふえぇだけで。陰伊はトエルの頭のネジはどこに落ちているのかと辺りを見回した。


 「あー…何でオフの日に働かなきゃいけねえんだよ!」
 炎堂はイラついていた。今日の彼は非番である。機関に非番なんてあるのかと甚だ疑問ではあるが、この炎堂に限っては有無を言わずに休みをとっている。
働けと言っても彼は強引に休むだろう。今頃は自室で爆睡している筈。公私は混同しない主義なのである。そんな彼が何故施設内を歩いているかと
言うと、話は数分前に遡る。
 その日、炎堂はベッドで熟睡していた。娯楽が少ないご時世だ、この歳にもなって今更没頭できることも無い。
従って、日またぎ寝るというのが炎堂のスタイルになる。
子供の頃、父親が休みの日。自分が朝起きると決まってソファーでパンツ一丁になって爆睡している父親がいた。
その光景を幼き日々に幾度となく見てきた…と言う方も多いだろう。前日の仕事で疲れて休日は誰にも邪魔されずずっと寝ていたいという
不況を戦うリーマンならば誰しも持っている願望だろう。炎堂もそんなおっさんのように、誰にも邪魔されずに眠っていたかった。
 しかしそうは問屋が許しません。炎堂の部屋に鳴り響く内線のアラーム。ビービーウルサイ音に睡眠を邪魔されただけでも許せないのに
内線の内容が局長からの臨時の機関活動ときたものだからたまったものではない。炎堂はどうにかならないかとあの手この手を考えそして現在に至る。
 「誰か適当な奴いねぇかな…」
 言葉の内容から察するに炎堂は他人に面倒事を押し付ける気満々である。ふと、炎堂の目に丁度いいカモが映った。
 「おい、北条院。お前丁度いいところに…」
 「炎堂…あなた…」
 言いかけたところで北条院の様子がおかしいことに気がつく。彼女の体中から溢れる負のオーラ。炎堂は慄然した。この威圧感は何だ?
果たしてこれは北条院なのか?まさか異形なのではないか…?と、炎堂は思わずにはいられなかった。それと同時に背筋も凍るような嫌な感じがした。
 「いや…はは、どうしたお前。顔色ワリィぞおい~…」
 とりあえず一緒に居たくなかった炎堂は話しかけたことを後悔しつつ何とか適当に話を切り上げられないか、みたいな事をそのずる賢い頭で考えていた。
 すると、北条院は抑揚のない声で話し始めた。
 「あなたが勝手に休まなかったら…一週間もあの方達と一緒になることも無かったのに…!」
 「あ…?もしかして怒ってる…?」
 「あったりまえですわ!このサボリ魔!!」
 感情を爆発させる北条院。彼女はかれこれ一週間"問題児"と一緒に活動してきたのである。しかももう一人のメンバーは何を考えているか分からない
陣だ。それはそれは酷いものだった。いくら小心者でヘタレな本性を表に出さぬよう務める北条院でも、今回ばかりは泣きたくもなる。
 「いやー、あまり組まない仲間同士の交流も大切だと…」
 「嘘おっしゃい!」
 「あーわるかったわるかった。ごめんなさいねー」
 「心が全く籠っていない!!」
 「うっせ!ばーかばーか!」
 責任を逃れる良い年こいたおっさんがそこにいた。

 結局、あの後北条院にボロクソ言われておっさんの僻心が持ちそうに無かったので逃げるように炎堂はその場を後にした。この年にもなると、若い連中に
酷く言われるのは余計に堪えるのだ。完全に自業自得ではあるが。そんな目にあってもおっさんは懲りずに押し付ける相手を探す。
皆はこんな大人になってはいけないよ。しかしこんなのが英雄であるという事実。現実って怖い。
 「ここがトイレットだべさ。シャワートイレは男女1つづつしか無いから気を付けるよーに」
 「ふえー」
 ふと、トイレの前を通りかかると某の女子供達が何かを話していた。女ってのはどうして連れションが好きなのかと炎堂はつくづく思った。
トイレくらいどう考えても一人で落ち着きたいものだろうに。おっさんの身である炎堂にはどうも理解し難かった。
そもそもトイレ前に集まる女子達を凝視するのは色々と誤解が生じそうな気もしないでも無い。女の子に道を教えただけで逮捕される時代もありましたから。
よく見ると、トイレ前にいるのは陰伊、白石、トエルの三人であった。これはチャンスと炎堂は彼女達に近づいていく。
 「よぉーお前ら、何してんだオイ」
 「炎堂さん…私たちはそのっ…」
 「トイレの場所をトエルちゃんに教えてたんでしょや~、緊急時にトイレだけは知っておかないと困るしねぇー」
 「ふぇ!」
 ロボなんだからトイレは必要ないだろうが、と炎堂は白石の説明にツっコんだ。
 「シャワートイレの強さを強にすると簡易浣腸ができるよ」
 「強にしてるの幸ちゃんだったの?いっつも水出るとき威力強いなあって思ってたんだけど…」
 「大丈夫、お尻が徐々に開発されていくだけだべさ」
 これまたどうでもいい事を話し始めた白石。話が変な方向に行きそうなので炎堂は二人の会話を無視して喋る。
 「んで、お前ら暇かー?」
 さり気なく三人の予定を聞き出す炎堂。三人とも少し悩んだ(ホントは予定など全く無いが何も予定がないのも恥ずかしいので悩む振り)後、
「まぁ…別に急ぎの用事は…」といった曖昧な返事を呈す。あぁ、暇なんだなと炎堂は確信し、ニヤリと目を光らせた。
 「よーし、じゃあお前ら、ちょっとここまで調査に行ってこい」
 「調査…?外ロケ?」
 「ふえ…」
 「お前はふぇ以外何か言え…」



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