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REVELLION 第三章 策士篇 - (2010/10/18 (月) 16:41:44) のソース

 傭兵集団シュトゥットガルト。その集団は国を自ら作り、誰にも縛られぬ道を選んだ。 
 封鎖された国は独自の技術を身につけ、エッセンに次ぐ技術国としても名高い。 
 だが、一年前に謎の部隊の奇襲により、国は弱体化していた。 
 地下に潜り、息を潜ませて戦力を蓄え、ようやく復活したシュトゥットガルトを狙う国は少なくない。 
 その国の一つ要塞都市ミュンヘン。世界の五分の一を占める大国がシュトゥットガルトを狙う理由は一つ。 
 国主ガイの強かさだ。その男、死んだ魚のような目をしているが、それは裏を返せば瞳から心が読めないということだ。 
 若さのみの王。他国からそう揶揄されても知る者は知っている。 
 ガイの恐ろしさを。 

 一面を木が覆う深い森林。上空から見れば永遠に続くとも思われる木の支配する土地にぽっかりと空いた穴。 
 木が抉り取られ、土色の大地が覗いている。 
 クレーター。天体の衝突によるものなのか、古代の大戦が残した傷跡なのか知れないが、円状の空間が森林の街でその存在感をアピールしている。 
「ふん。ガイめ―――。こんな場所にゼノスを誘き出してなにをしようというのだ」 
 オルトが吐き捨てる。 
 ガイとはまた違う意味での死んだ瞳。冷酷で残忍さを醸し出しているその眼に映るのは、窪んだ大地の中央に存在しているある物だ。 
 クレーターの真ん中でデンと腕組みをし、威風堂々と君臨するガイの乗機ダモクレス。 
「あら、ヤマトくんだっけ?今回彼は連れてこなかったの?」 
 妖艶な女の声。振り返るとそこには案の定、最近何かと接点の多いネリーがまるで我が領地とばかりに扇子を仰いでいた。 
「……あの男なら独房で悲鳴でもあげてるんじゃないか?」 
「相変わらずの鬼畜さん。これでケルンは将来安泰ね」 
 ミュンヘン特使。それが天空都市ケルンでのオルトでの役割である。ミュンヘン属国のケルンを実質支配しているのはこのオルトだ。 
「ふん。それで……ゼノスの裏切りで未だに混乱収まらぬハンブルクの復興に勤しむネリー嬢。貴殿はこの地に何用か?」 
 説明口調で嫌味を吐く。皮肉には皮肉を、それがオルト流のやり方である。 
「あら、私はハンブルクの人間じゃなくってよ?」 
 彼女は涼やかな顔で返した。実際彼女の母国はハンブルクではなく、ブーステッドの作り上げた自由都市ローテンブルクである。 
 ローテンブルクは現在、ハンブルクと同盟を結んで支援を行っている。 
 云わば、ネリーの目的はハンブルクの復興であり、こんな場所にその復興の糸口があるとは思えない。 
「ここに着たのはあの人に言われて……ガイの力量を計ってきなさいとのことよ」 
「あの人?ああ……キースのことか?」 
 キース。ゼノスの昔暮らしていた都市ハンブルクの現在の国主だ。オルトは一度だけ逢ったことがあるが、正直なところその器ではないというのが第一印象だった。 
 だが、他国の人間であるネリーを従えている辺り、思ったより切れ者だったということだろうか。 
「……あんな気持ち悪い男の命でこんな辺境まで来るわけないでしょ?私が従うのはヴァース様だけよ」 
 キースを気持ち悪いと吐き捨て、即座にヴァースの名を上げる。本音を隠す事に長けるこの女が珍しい反応をする。 
 ヴァースとはそれほどの男か……。キースの背後に居た男を思い出す。 
 黒いコートにフードを深く被った男、オルトは初めて邂逅した時キースではなくその男に底知れぬ何かを感じた。 
 敬愛するヒルダと似ている、覇道を成せる者が放つ独特の殺気とオーラ。 
「それで、どんな見世物が始まるのかしら?」 
「……ガイから直々に連絡があった。ゼノスをここに呼んだ……とな」 
「あら、大胆ね……なにをしようというのかしら……あの子は」 
 オルトは機嫌の悪さを隠すことなく舌打ちをし、踵を返した。 
「ヒルダ様の威光に怖気づいて擦り寄ろうとしているだけだ。ゼノスの首を土産にな」 
 だけどオルトはそれを許さない。ガイは一度ヒルダからの降伏命令を無視した。 
 その事実だけで万死に値する。ここでゼノス共々粉砕してくれる。 
「今回はケルンの附ぬけ共ではなく、本国よりわたしが選りすぐった戦士を連れている。今度こそ……リベリオンとエクスカリバーをヒルダ様に捧げてみせよう」 
 オルトが右手を振った。それを合図に木々の隙間に赤い光が無数に光り始める。 
 AFのメインカメラが光り、無数のそれはオルトの力の証明。 
「幕がもうじき上がる、正義が悪を下す王道が……な」 
「……」 
 一方。ゼノスはリベリオンでガイの指定した場所に向かっていた。 
「不便だな……」 
 素直な感情を口にする。 
 それは移動手段としてOFを使用することだ。基本的にOFやAFに空中戦闘や移動などは不可能なのだ。 
 現状外付けのエア・スラスターを使用することで空中で浮き続けながらの移動は可能だがそれはあくまで移動手段でしかない。 
 リベリオンの空中浮遊は多少は可能だが、それはスラスターで飛び上がりゆっくりと降下しているだけなので、厳密には空中に浮いているわけではない。 
 要するに移動手段としてOFを使用することは実に効率が悪いということだ。 
「……ガイ」 
 考え事をしているうちに目的地付近まで着たようだ。あの森林の中にガイが居る。 
 彼との出会いは二年ほど前だろうか……ナチの騎士として同行し、なぜか新人と間違われて戦闘に引っ張り出された。 
 なぜか将棋をさせられ圧倒してやったが、あろうことか将棋盤をひっくり返して無理矢理に引き分けにされてしまった。 
 そこからなぜか殴り合いになり、結果ゼノスとガイは友人となった。 
「……く」 
 顔半分を覆う仮面の瞳から赤い雫が零れ落ちた。 
 何を昔を懐かしんでいるのだとか云わんばかりのタイミング。 
 リベリオンが言っている。何時でもお前を喰らう準備は出来ていると……。 
「拒否反応か……く」 
 拒否反応。それはゼノスの生まれが原因だ。彼はヒューマとブーステッドの混血児なのだ。OFはヒューマが作り上げた兵器だ、もちろん敵のブーステッドの強奪も想定されある機能が実装されている。 
 それが拒否反応だ、詳しくは解明されていないが体組織が破壊されてしまう。 
 混血児のゼノスに流れる血の半分が否定される。顔半分を隠す仮面はその拒否反応を抑える為のもの、そして罪の象徴でもある。 
「そうだ。痛みを伴わない力に意味などない……だから突き進むしかないんだ。今の俺には」 
 それしかない。 
〈お~。こいつがリベリオン……俺様の無能なダモクレスとは大違いだな〉 
 漆黒の外装、身の丈を超える鎌、機体が揺れる度に振り子のように揺れる尻尾。 
 死神。そう表わされるのも頷ける。 
「相変わらずのようだな。ガイ―――」 
 リベリオンの進行を止める。今度はこちらが観察する番だ。 
 ガイの乗機ダモクレス。黄色のパーソナルカラー、レールガン、肩のランチャー、左腕を覆うシールド、そのシールドの内側に装備されているガトリングガン。 
 いかにもな重武装。ただこれは本来のダモクレスの武装とは異なっている。 
 ダモクレスの剣……本来のダモクレスの装備は凄まじく刀身の大きな剣なのだ。 
 以前の戦闘でダモクレスの戦いぶりは見ている。その時は剣を使っていた。 
 それを知っているゼノスに今更隠しても仕方がない。何らかの理由でその剣を封印しているのだろう。 
「それで、こんな所に呼びだして……なにが聞きたいんだ?」 
〈ずいぶんと饒舌に喋るようになったな……驚いたぞ〉 
「はぐらかすのもいい加減にしろと……言わせたいらしいな」 
 リベリオンの肩に漆黒の鎌を乗せる。そして姿勢を低くさせ威嚇する。 
〈折角のデートだ。楽しく行こうぜ〉 
「気色悪い!」 
 ゼノスが吐き捨てると、電気弾が飛んできた。 
「ちぃ!」 
 咄嗟にリベリオンを横に飛ばす。ワンテンポ遅れて動く尻尾の先が電気の塊に掠りバチバチと音を立て焼かる。 
〈俺様の目的は一つだよ。一年前の奇襲……仕掛けてきた奴に落とし前を付けさせる〉 
 それだけだ。 
 ガイにしては珍しく負の感情を包み隠さない言葉。それだけにガイの本気が伺える。 
「それと俺に何の関係があると言うんだ!」 
 八つ当たりのように飛んでくる電気弾を飛び退き回避する。 
 さらに続けての電気弾にさすがに回避できないと判断し、鎌を振って叩き切った。 
 いや切れたというのとはいささか違う、鎌の中に吸収されてしまったかのように吸い込まれたのだ。 
〈あの時、一番奇襲がし易いのは誰だ?お前だよゼノス。お前の要請で俺様は動いた。つまり……俺様の行動の予測が一番容易いのはお前ってこった!〉 
「だが俺はハンブルクに居た。アリバイはあるんじゃないか?」 
〈確かにな。実行犯が別にいた。家を狙う奴らに金利目的で情報を提供。俺様の才能に恐れをなして消そうとした〉 
「こじつけだ!」 
 反撃の時間だ。横を掠める電気弾を確認し、やや大振りで鎌を振るった。 
 鎌の先の軌道に合わせて生まれるカマイタチがダモクレスに放たれる。 
〈予測通り!〉 
 ダモクレスがカマイタチを左腕の大きめなシールドで受け止める。そのモーションの間にリベリオンの背面のスラスター全てを吹かし懐に飛び込む。 
「強引すぎないか!」 
 鎌を振り下ろす。黒い軌跡が残像となり、遅れてダモクレスに傷が刻まれる。 
 浅い。ダモクレスの胸部に熱を残すだけだった。 
 直後にリベリオンの頭部に細長いガトリングガンが押しつけられる。 
 ダッダッダッダッ!。短い間隔で銃声が粉塵の巻き上げと共に響いていく。 
〈俺様は本気だゼノス。必要とあらばお前も殺す……〉 
 通信越しとはいえ殺気は充分。ガイの激情が伺える。 
「お前も地獄を見たようだな……だが俺の絶望も負けはしない!」 
 ビリビリ。聞きなれた電気の悲鳴……その音の元はダモクレスからのものではない。 
 瞬間。視界を閉ざす粉塵をかき分け電気弾がダモクレスに向かって飛んで着た。 
「外したか」 
 機械音と着地音。遠くで弾ける電気の音にゼノスは外したと、舌打ちする。 
 粉塵が晴れて行き、リベリオンとダモクレスの姿が露わになっていく。 
〈ひゅ~。怖い怖い……あれ?あれれ~?〉 
 ガイが驚いたのは双方の手には同じレールガンが握られていたからだ。 
〈何所で手に入れたんだ?こいつは家の得製でね……お外には出回っていないはずだが〉 
「考えろ。得意だろ?」 
〈リベリオンの能力か……電気弾の一撃を鎌が吸収したからそれが能力かと思ったけど〉 
「そうだ。リベリオンの能力は二つ……鎌に触れたエネルギー体の吸収と、触れたOFやAFの武装のコピー……OFの固有の能力は劣化か、なしかのどちらかだがな」 
 触れたOFやAFの武器に鎌を変形させる。使いようによっては最強の武器となるが、使い方を間違えば自滅する。 
 エネルギー吸収もOFやAFの燃料を奪うことはできないが、熱、電力、ビームなどのものを吸収できるだけなので盾代わりにはちょうどいいがそれだけしか使いどころがない。 
「ついでに言うと機械に直接差し込むとその機械を掌握できたりする」 
〈いいのかな~。自分のマシンのスペックを簡単に披露しちゃって〉 
「したり顔のお前が説明しちまう前に披露したまでだよ」 
 リベリオンの構えるレールガンを鎌に戻し上部を肩に乗せる。 
〈な~る。ではでは……お互いに手の内は披露されたということで、ここからは本気で行くとしようか!〉 
 ゴトン。とダモクレスがレールガンを地面に転がし、両の手を前方に向かって差しだす。 
〈踊れ、死神……〉 
 宣言し、力を行使する。十本の指からワイヤーが放たれる。 
「嬉しいよ。これから本気のヤマトと戦う羽目になりそうだからな。前哨戦としては申し分ない」 
 ワイヤーの先端のダガーが代わる代わりにリベリオン目掛けて飛んでくる。厄介なのは回避しようと動いてもそれに合してワイヤーの軌道も変わることだ。 
 ならばとリベリオンに鎌を大きく横薙ぎに振らせる。生まれた衝撃波がワイヤーを蹂躙する。 
 だが、蜘蛛の巣のように張り巡るワイヤーの隙間を縫って閃光が飛んでくる。 
 ビームランチャーによる大質量のビーム攻撃。ワイヤーの動きを妨げず且つワイヤーはランチャーの攻撃を妨げないように、絶妙に狡猾に強かに……考えつくされた攻撃。 
(研ぎ澄ませ……) 
 軌道を読み、前進する。飛んで来る電気弾はスラスターを吹かし縦横に移動し、張り巡るワイヤーは鎌で薙ぎ払う。 
「取った!」 
 スラスターを止め、地面を踏みしめるリベリオン。そして高く跳躍し両手で鎌を持ち斜めに構える。 
 ガトリングガンの空中砲火を外装で弾きながら黒き死神が仕舞を告げる。 
 しかし勝利を確信したゼノスの耳に信じられない声が聞こえる。 
〈ゼノス―――。貴方は私の騎士、私の誇りです〉 
 ナチの声。声色や口調……まさにナチだ。そのゼノスの動揺は寸でのところでリベリオンの手元を狂わせた。 
 ひょいっと、軽く後ろに飛ぶダモクレス。鎌切り音だけ残し虚しく地面に突き刺さり、その鎌の切っ先にワイヤーが巻きついていく。 
「えぐいな……ガイ。そんな芸当ができるとは知らなかった」 
〈へへ~ん。俺様のスペックを推し計るなど一万年早いのだよ……ゼノス〉 
 おそらく声の変成機などは使っていない。恐ろしい男だ。 
〈勘違いしないでよね、あんたの事が好きで隠してた訳ではないんだからね!〉 
 今度はミナモの声。ただ彼女はツンデレではない―――おそらくゼノスの言葉の答えをミナモの声で言っただけだろう。 
「ちぃ……」 
 会話の途中も縛りを強めるワイヤー。それは鎌からリベリオンの腕まで伸び、動きを封じて行く。 
「なら、俺も隠し玉だ!」 
 ゼノスが宣言した瞬間、ワイヤーが強引に引きちぎられる。何重にも重なるワイヤーの中から飛び出たのは蒼穹の刀、ヤマトの乗機ムラマサのメインウェポンだ。 
 能力は『呪い』触れた物の強度を下げる効果がある。 
 細いが強度だけは高いワイヤーを切るにはわざと密着させて十二分に強度を下げてから切るしかなかった。 
 能力の劣るコピーでは尚更その必要がある。 
〈どわ!〉 
 急に力の向く方向を変えられ、尻持ちを付くダモクレス。その間に残ったワイヤーを引き千切り、蒼穹の剣を漆黒の鎌に戻す。 
〈ひぃ~。これじゃあ何時まで経っても決着がつかんな。なら……最後の確認と行きますか〉 
 いや。ここは俺の勝ちだろう……このまま突っ込んでしまえばいいのだから。 
 内心思うが留めておく、ここには戦闘に来た訳ではない同盟を申し込みに来たのだ。 
〈ゼノス、俺様はお前を友だと思っている。対等にものを言えるからだ……だからその目を見せろ。お前の心を晒せ〉 
 ダモクレスの胸部が開きガイが姿を現す。 
「……」 
 それを見て、ゼノスもコックピットのハッチを開いた。 
「ふん。愚かなり……ガイ、ゼノス共々一網打尽にしてくれる」 
 ガイとゼノスが戦っているクレーターより少し離れた場所、窪んだ大地を見降ろす形でオルトが手を振った。 
 二人の戦闘中にクレーターの外側に部隊を配置し完全に包囲した。 
「幕を上げろ。悲劇と喜劇を演出しろ……今宵の主役はわたしだ!」 
 合図と共に一斉射撃が開始される。抉れた地面をさら抉り、粉塵が大火事の煙りのように噴き上がる。 
「止めだ。全部隊!射撃を停止し、クレーター内になだれ込め!」 
 粉塵の鎮静を待たぬままにミームング部隊がクレーターの中に突入する。 
「くふふ……ふ、はは!」 
 オルトの脚本通りだ。粉塵が収まる頃には躯と化したリベリオンとダモクレス、そして部下にそこを包囲させ万が一生存していた場合に備える。 
 OFには再生能力があるとの報告を受けているので完全に破壊さえしなければ問題ない。これが終わればその勢いのままエッセンを侵略してやろう。 
「愉快だ、実に愉快だ!最高だったよガイ、ゼノス!」 
 嗤いが止まらない、無能なヤマトとは違う、自分の力で敵を薙ぎ払うこれほどの快感はそうはない。 
〈ずいぶんと機嫌がいいみたいだね?何かいい事でもあったのかい?〉 
 オルトの顔から笑みが消えていく。驚き見開かれる瞳に映るのは黄色の機体ダモクレス。 
〈無駄弾だったみたいだね。ざっと見積もって二百発ってところかな?〉 
「な……な」 
〈驚くことないだろ?俺様は最初から誰の味方でもない。俺様の目的は一つ……家を奇襲した奴を見つけ出し抹消すること、第一容疑者のゼノスは今回の件でシロと判断した。 
あと思い当たるのはあんたらミュンヘンの連中だが、もしミュンヘンが仕組んだことなら同じ人間をぶつけてくるはず、でも……あんたは無能。よってシロ。ただ働きで終わりそうだよ〉 
〈なに、偉そうにしているんだ?ガイ、俺にも説明願おうか〉 
 ダモクレスの横から起き上がる黒き死神リベリオン。小枝と砂塗れのその姿は伝説のOFも形無しに無様だ。 
〈およ?砲撃が開始されたからワイヤーでお前さんを飛ばして〉 
 その結果リベリオンはクレーター外に投げ飛ばされ木々に激突し横転。 
〈俺様もクレーターの外にワイヤーの先を刺し、巻き取ることで機体を外に出した。クッション代わりにリベリオンを使ったのは悪かったと思っている。反省〉 
 この世で一番心のない反省。なぜなら彼は全て知っていて『知らぬ顔』をしオルト、ゼノスの両名を計りに掛け騙したのだ。 
(手玉に取られただと、このわたしが!) 
 ゼノス共々、手玉に取られた。嘔吐感すらもようしそうなほど不快感にオルトは歯噛みする。 
「ではでは、ご登場願おうか!」 
 コックピットの中から顔を出し、ガイが指を弾く。 
 ゴゴッ!。クレーターの中央部の地面の下から何かあの音。 
 砂の霧の晴れ始めた大地に、ミュンヘンのミームングが音の元を探して彷徨う。 
 一機が音の元を発見し手招きするとぞろぞろと中央部に集まっていく。 
「レディースアンジェントルマン!」 
 両手を広げ憎たらしい笑顔を張り付ける。策は成った。 
 地面が盛り上がる。ぽかりと穴が開き地中から砂の竜巻が巻き起こる。 
 刹那。クレーターの中央部分の底が抜け奈落と化した。 
 遅れて暗き底より現れる鋼鉄の山。回転しながら上から降り注ぐ岩を粉々に砕きながら太陽に向かっていく。 
 ―――ガリガリ。逃げ遅れたミームングが回転に巻き込まれ機械片を内部から吐き出しながら砕かれていく。 
「壮観。絶景。壮絶」 
 遂に姿を大地に表わす巨大なドリル。張り付くゴミを払いながら聳える姿は圧巻の一言に尽きる。 
「御開帳で~す」 
 ドリルが真っ二つに割れて引っ込んでいく。中から現れてのは高層ビルや一般的な民家などまさに国そのものだった。 
 ただ今は人の子一人としてその姿は見えない。他に見えるとすれば円状の街の枠を占拠するシュトゥットガルトの主力AFルーン。 
「起立ッ!礼ッ!発射ッ!」  
 ルーン部隊が一斉に銃を構え、間髪いれずに発射する。辛うじて奈落に落ちることを逃れたオルトのミームング部隊が次々に破壊され屍を晒していく。 
「あとは有能な部下に任せて、後は……」 
 ゼノスを見る。もはやガイの意図など承知しゆっくりと頷くのを確認し、今度はオルトを見る。 
「今回は見逃してやる。勘違いするなよ……お前が死ねばケルンに何が起こるか知れないから逃がすんだ」 
 ふざけた口調ではない、これは脅しだ。命を握り慈悲深く見逃してやるのだ。 
 オルトは唇から滴る血の味を噛み締め、その場を逃げ出す。 
「ふ~。ではゼノス……交渉の続きだ。俺様の目的は知ってるな」 
〈ああ。お前等を襲った連中を見つけ出し、最高のリベンジマッチを演出する〉 
「さすが心の友、なら俺様は……今はシホちゃんだっけか?あの子を護ればいいんだろ?」 
〈……そうだ。俺はあいつの傍に何時までも居る訳にはいかない……だから〉 
「あ~もう。ここは頼むの一言でいいんだよ……エッセンには補給と支援。お前にはリベンジマッチの演出。俺様達にとっては一番の報酬だよ、気に入らないなら対価として受け取ればいい……俺様の好意ってやつをな」 
 嘘だ。好意なんて言葉がこの男の口から出るなんて絶対に嘘以外の何物でもない。 
 ただ……強い味方を得ることは出来た。 
 ようやく物語が動き出す。 


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