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山形新幹線庄内延伸

2026/03/02 一応完結しました。が、気が変わったら更新するかもしれません Panzerfalcon
 陸羽西線を電化・標準軌化し、山形新幹線を新庄からさらに酒田へ延伸する、という構想があります。相変わらず「構想」だけで、では、実際にやるとすればどうするか? という点は、例によって誰も考えていません。このページではその検討を行っています。

1.現状

図1 山形新幹線庄内延伸工事案 現状の線路配線

 この妄想プロジェクトについて、設備の状況だけ述べますと…陸羽西線新庄~余目間は、国道47号高屋道路「(仮)高屋トンネル」の施工に伴い、2022年5月~2026年1月16日の間は運休し、バス代行輸送を行っていました。陸羽西線のトンネルの天井からわずか約3m上に道路トンネルを通す、ということで、施工途中の安全確保のための処置です。約4年間、沿線住民が大きな不便を強いられたわけですが、社会科的にそれが許容される路線である、ということは頭に入れておかねばならないでしょう。
 逆に言えば、このプロジェクトは、施工環境の面では非常に有利と言えます。少なくとも陸羽西線の区間43.0kmは、数年間完全に路線を運休しての施工が可能であり、ミニ新幹線直通化に必要な改軌工事および電化工事は、営業列車を気にすることなく一気に進めることができます。
 運転再開後は、羽前前波・高屋駅は全列車通過の扱いとなっており、いずれ正式に廃止されるでしょう。

2.線路配線計画

図2 山形新幹線庄内延伸工事案 完成形

 本稿では、先に線路配線計画を示します。

2-1.新庄駅

 早速悩んだのが、新庄駅の配線です。現状、同駅は同一平面に5線の着発線を設け、上下移動が無い理想的なバリアフリー構造となっています(歩行距離は長いですが)。しかし、山形新幹線をここからさらにスルー運転するとなると、現2・4・5番線のホームを島式に戻し、1・3番線ホームとの間に跨線橋を設け、新幹線駅として相応しくエレベータおよびエスカレータを整備しなければなりません。同駅は雪対策としてホーム上に強固な屋根を被せているので、施工自体もかなり大変です。
 また、狭軌の在来線の着発線が現5番線1線のみになるのも問題があるので、長いホームを生かして、5番線を起点方(新3番線)・終点方(新4番線)に分割して縦列停車できるように改良します(こういう設備は京成成田空港駅にあります)。
 終点方では、引き上げ線を延伸して奥羽本線に接続し、配線改良の工事量を減らします。こういった工夫をしても、同駅に関する工事コストは大きなものになるでしょう。

2-2.陸羽西線区間

 過去には升形・津谷・高屋・清川・狩川駅でも交換ができたそうですが、現状、陸羽西線区間の交換駅は古口駅しかありません。古口~余目間は26.0km、快速で24分かかりますから、同方向の列車を余裕時間無しで最短48分間隔で運転できる設備、ということになり、同線を東北新幹線に直通するミニ新幹線路線にグレードアップするにはダイヤに弾力性が無さすぎます。そこで、清川駅の交換設備を復活させます。

2-3.余目駅と羽越本線区間

 陸羽西線と羽越本線を分離し、羽越本線の現上り線を標準軌化します。羽越本線余目~酒田間12.3kmは単線となり、途中に交換設備無しではダイヤ構成がキツいですから、砂越駅を交換駅化し(下り線を高速通過できるようにする)、その東側に標準軌線を新設します。よって砂越駅に標準軌の列車は停車できなくなるので、ついでに北余目と東酒田の旧上り線ホームも撤去し、標準軌の列車は3駅を通過させます。現状、陸羽西線の列車が3駅に停車するのは2〜3往復程度ですから特段の問題は無いでしょう。
 なお、余目駅では、鶴岡駅からの利用客が陸羽西線のミニ新幹線に階段の上り下り無しに乗り換えられるようにできればベストですが、本案ではそこまでは考えません。

2-4.酒田駅

 酒田駅は上り線側に車両基地があり、上り線を標準軌化すると配線変更の工事量が大きくなるため、駅の起点方で標準軌線と狭軌線を入れ換えるクロッシングを設けます。同様の設備は山形駅の2駅北の羽前千歳駅にもあるので新規のものではありません。
 同駅の狭軌線のホームは島式1面2線のみとなり、特急「いなほ」と接続するローカル列車の運転など、輸送サービス上の制約事項を増やすことになってしまいます。この点も、このプロジェクトの副作用と言えます。

3.電気設備工事

3-1.電化工事

空頭離隔の確保

 このプロジェクトのネックは、陸羽西線43kmの電化工事です。本来、非電化区間で、電化を前提としていない建築限界で造られた路線を交流20kVで電化するのは簡単ではありません。Youtubeで同線の先頭動画を見たところ、古口~清川間にあるトンネルは馬蹄形で、それなりに空頭が確保されているので、羽越本線や田沢湖線の電化工事の先例に倣って、トンネル内に電車線(架線)とATき電線を通すことは何とかできそうです。しかし、トンネルの前後にあるスノーシェッドやロックシェッドは、トンネル内よりも空頭を確保しない形で設けられており、電化の際には造り直しが必要になります。また、厄介なのが、線路上を道路がオーバークロスしているところで…ここは明らかに空頭不足なので、改軌工事の前に路盤を下げる工事を先行させねばなりません。

電車線路設備

 架線は奥羽本線・羽越本線と同様に、ちょう架線=St90張力1.0t、トロリ線=GT-Sn110張力1.0tの、可動ブラケット支持のシンプル架線。陸羽西線の線区最高速度は95km/h(ローカル線としては意外に速い)であり、集電性能的には十分です。豪雪地帯なので線路と電柱の間隔は除雪車のウィングに支障しないように拡大する「ラッセルゲージ」とします。用地幅が不足する場合は用地買収や占有などの手続きが必要になるでしょう。

き電系統

 陸羽西線の電化に際しては、奥羽本線羽前千歳以北および羽越本線と同じATき電方式を採用します。AT(単巻変圧器)は、既存のものが新庄SP(き電区分所)および余目にあるので、おおよそ10km間隔となると、順当に羽前前波駅・高屋駅・狩川駅付近に設けることになります。
 東北地方の交流電化区間のき電系統については、こちらのサイトを参考にしていただきたいのですが、もともと、奥羽本線(南線)のATき電区間の変電所は羽前千歳、院内、秋田にあり、羽前千歳SS(変電所)電源と院内SS電源の区分は新庄SPで行っていました。新庄SPは、新庄駅のすぐ南にあり、奥羽本線は同駅が標準軌と狭軌の境界で電車が直通することはあり得ないため、交交デッドセクションが無く、ATと、トロリ線・ATき電線の回路を区分する遮断器のみがある、という特殊な回路構成になっています。
 ところが、2024年の暴雨災害で奥羽本線新庄~院内間が被災し、2025年4月に復旧した際に新庄~院内間の電化設備を撤去したことで、院内SS(変電所)から「山形新幹線」に電源を供給することはできなくなっています(そもそも電化設備撤去の目的は、275kV受電で大コストを要する院内SSの撤去だった)。つまり、新庄SPは不要設備になってしまったのです(少なくとも遮断器は無用で、ATは必要)。
 本プロジェクトで、陸羽西線を電化してき電系統を羽越本線に接続するとなると、変電所の位置やき電距離を考慮すれば、酒田SSと羽前千歳SSの電源を新庄SPで突き合わせるべきでしょう。もちろん、羽前千歳SS・酒田SSのどちらかが電源供給力を喪失した場合は、新庄SPで延長き電できるようにします。
 そのため、新庄SPを復活させねばならないわけですが、山形新幹線を陸羽西線に直通させるに際しては、現在の新庄SPの近傍(つまり新庄駅の南側)に設けた交交デッドセクションを惰行で通過させるのは困難で、十分に速度が出る区間にデッドセクションを設けなければならないでしょう。このコストは結構大きなものになります。
 ただ、2026年2月現在、山形新幹線の羽前千歳以北は、院内SS電源が無くなったことで冗長性が心もとない状況であり、陸羽西線電化によって酒田SSの電源を供給できるようになるのは、電源確保のうえでは大変有意義と言えます。あとは、既存の酒田SSで、新規電化区間の電源供給力を確保できるか、の検討が必要でしょう。もしそれがNGであれば、新庄にはSPではなくSSを新設することになり、プロジェクトの工事費はいよいよ膨張することになります。

図3 山形新幹線庄内延伸工事案 き電系統の変更

 なお、陸羽西線の電化に際しては、古口駅の余目方、および、余目駅の新庄方にエアーセクションと遠制動力断路器(それぞれ古口DS・余目DS)を設けます。古口DSは、古口~清川間の最上川沿いの区間で災害が発生した場合に同区間を区分するためのもの。余目DSは、陸羽西線区間内で電気的な事故が発生した場合に、羽越本線を巻き添えにしないよう区分するのが目的です。

3-2.信号設備工事

信号保安装置

 現状、山形新幹線用の車両に搭載しているのはATS-Pですので、陸羽西線の信号保安装置を現行のATS-SnからATS-Pに更新します。

連動装置・自動信号設備

 羽越本線の余目~砂越、砂越~酒田間は、改軌工事の前に単線、改軌工事完成時点で単線並列とします。
 新庄駅・余目駅・酒田駅の連動改修はそれぞれ2回必要です(電化・改軌工事に着手する前と、ミニ新幹線の入線確認試験を行う前)。特に最初の連動改修は、果たさなければその先の工程に進めませんから、プロジェクトが立ち上がったら真っ先にできるよう、準備しておきたいところです。
 酒田駅については、標準軌線と狭軌線が交差するため連動装置は1つ、余目駅についても構内踏切があり標準軌線と狭軌線の設備を完全には分離できないので同じく連動装置は1つです。

CTC/PRC

 羽越本線余目~酒田間単線化の際に、砂越駅が連動駅となるため、羽越本線のCTC(列車集中制御装置)およびPRC(自動進路制御装置)の非制御駅に砂越駅を追加する改修が必要です。

踏切設備

 陸羽西線区間の線区最高速度は95km/hで、現状でも結構速いので、山形新幹線の延伸に際しては速度向上は行いません。よって陸羽西線区間での踏切改修は、遮断桿の視認性向上などを行うのみです。
 羽越本線区間では複線が単線並列になり、踏切のロジックは全面的に変更となります。しかも、単線化の際に1回、標準軌化完了の際にもう1回改修を行わねばなりません。また、単線並列化を果たすと、当該区間の踏切はこれまでとは異なる列車の見え方をしたりするので、通行者・通行車(のドライバー)への注意喚起が重要です。

列車無線設備

 山形新幹線用車両の無線機を、陸羽西線・羽越本線の列車無線に対応させなければなりません。地上側の設備そのものには改修は必要ないと思われます。

4.施工方法

図4 山形新幹線庄内延伸工事案 施工中

4-1.工程の概略

  1. 新庄駅・余目駅・砂越駅・酒田駅の連動切換の準備工事(現地の分岐器事前挿入、現場機器設置など)
  2. 陸羽西線全線使用停止(新庄駅の連動改修、余目駅陸羽西線方出発・到着進路の使用停止)・ダイヤ変更
  3. 陸羽西線のスノーシェッド撤去・新設、跨線道路橋付近の盤下げ施工
  4. 羽越本線余目~酒田間単線化(余目駅・酒田駅連動改修、砂越駅の連動駅化)
  5. 陸羽西線および羽越本線余目~酒田間旧上り線の標準軌化工事
  6. 陸羽西線電化工事(電柱建て込み、架線新設など)
  7. 陸羽西線・羽越本線余目~酒田間の信号設備改修工事(ATS-P化、踏切改修など)
  8. 全線通電試験、完成検査
  9. 入線確認試験→試運転→訓練運転
  10. 山形新幹線庄内延伸区間使用開始・ダイヤ改正

4-2.電化工事と改軌工事の進め方

 陸羽西線区間では、電化工事は新庄方から、改軌工事は余目方から進める、という具合に共に反対側から押していきます。片方がもう片方を追いかける、という構図にすると、搬入路などのスペースの取り合いの調整に手間取ることになるからです。両方の施工部隊が出会うまでは、電化工事に使用する軌陸車等は狭軌仕様を使用し、出会った後は標準軌仕様のものに切り換えます。
 羽越本線区間では、砂越駅に標準軌線を新設する際に電化工事も必要になりますが、その他は改軌工事のみなので工程は軌道側主体で組みます。

5.ダイヤについて


図5 2026年2月現在の山形新幹線・陸羽西線ダイヤ

 図5のダイヤは、山形新幹線・陸羽西線のダイヤを1枚にまとめたものです。このようにして見ると、新庄駅での両線の接続関係はあまり考慮されていないことがわかります。ただし、新庄発着の「つばさ」と陸羽西線の列車本数はほぼ同じなので、「つばさ」を酒田まで延伸するようにダイヤを再構成し、陸羽西線区間のローカル輸送を「つばさ」に担わせるように考えます。陸羽西線区間の各駅の利用はいずれも1日あたり2桁で、都市間輸送とローカル輸送を別建ての列車で分担するのは非効率に過ぎます。よって、陸羽西線区間にはE723系5000台や701系5500台といった、標準軌仕様のローカル輸送用車両の乗り入れはできれば無しにしたいところですが…その場合、特急料金の制度設計をよく考えねばなりません(後述します)。

 肝心の想定ダイヤですが、現時点で詳細に考えるのは止めておきます。というのは、今後、福島駅の上りアプローチ線の使用開始(2027年3月)でダイヤ変更が見込まれること、また、本プロジェクトが、庭坂~関根間の板谷峠短絡トンネル(いわゆる米沢トンネル)の構想から派生し、これによる10分程度の所要時間短縮を織り込んでの話となっているなど、不確定要素が多すぎるからです。 

 なお、新庄~酒田間の所要時間は、現在のダイヤで設定されている余目→新庄間の快速が所要39分、酒田~余目間は「いなほ」で8分なので、余目での停車時間や酒田駅での速度制限(標準軌と狭軌のクロッシング通過のため新たに発生する)を考慮しても、最速50分は見込めるでしょう。大半の列車は陸羽西線区間の各駅に停車しなければならず、新庄→酒田間快速の余目~酒田(中3駅は通過)間を11分から9分に短縮して同区間は標準で55分といったところでしょうか。米沢トンネルを考慮しない最速のケースは、つばさ131号で新庄まで3時間7分+新庄の停車時間1分+前述の50分で3時間58分となります。
 また、このプロジェクトは山形県内の交通事情の改善が目的なので、上り最終の「つばさ160号」の後に、山形に22時台に到着する酒田→山形間の上り「つばさ」を設定するなど、政治的な配慮も必要になります。

図5-1 2026年2月現在の上越新幹線・羽越本線ダイヤ

 図5-1には、上越新幹線・羽越本線経由での概略ダイヤを示しています。本プロジェクトでは、こちらの新潟ルートとの関係性も考慮しなければなりません。下り方向について、新潟ルートで最速となるのは、上越新幹線内で速達運転を行うとき312号といなほ3号の接続で東京→酒田間3時間51分。対する山形ルートは乗り換え無しの直通で、例の米沢トンネルでの10分短縮を見込めば十分に勝負になる、という話になっています。
 また、早朝・深夜時間帯の利便性も、特に東京滞在可能時間について、新潟ルートに対して遜色が無いように確保したいところです。

6.特急料金の考え方


 ダイヤのところで述べたとおり、本プロジェクトでは「つばさ」に都市間輸送とローカル輸送の両方を担わせるため、延伸した区間は基本的には快速にすべきところですが、それでは直通化という利便性アップの代価を徴収できず、プロジェクトに要したコストを(部分的にでも)回収するのは不可能になってしまいます。
 そこで「つばさ」はやはり全列車を特急とし、新庄~酒田間については15・16・17号車の座席指定を解除したうえで、同区間内限定で利用できる格安の特定特急料金を設定します。通学定期券所持者については特定特急料金も免除する、ということにすれば、この手の問題に介入したがる教育関係者からの非難を回避できるでしょう。

7.まとめ


 本件に関する検討事項はこのようなところです。本当は山形新幹線全線のダイヤを仮構成して、新庄駅の着発線が不足しないか確認するところまでやりたかったのですが、今後、東北新幹線のダイヤがどのように変わっていくか、先が見通せないため、ここまでにしておきます。しかし、それでも、陸羽西線区間はローカルを含めて全列車を「つばさ」の延伸という形にすべきこと、そのための運賃・料金の制度設計が必要であること、羽越本線余目~酒田間について狭軌単線+標準軌単線の単線並列にしなければならないこと、酒田駅の大きな連動改修が必要になることなど…は示せたかと存じます。各方面の皆さんの参考になれば幸甚です。

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最終更新:2026年04月10日 15:49