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シリウス・フィーナ

 昔のことを思い出した私は、しばらくはそれに浸っていた。
アルバムを見たり、昔読んだ魔術書を読み返してみたり。

 そして、何かを思い出したかのように家から出た。
裏庭の、それは丁寧に育ておいたとても綺麗な白い花を摘んで。

 私の向かった先は、私の家の裏にある森を抜けたこぢんまりとした両親の墓石だった。
最近は日差しが強く、とても外に出られる状態ではなかったので少しだけ荒れていた。
荒れている場所を、綺麗にしてから先程摘んできた白い花を供えて私は手を合わせた。
「父さん、母さん……私は、なんとか元気にやっているわ。
 問題は特にないわよ。気になるのは、兄さんの安否だけ……。
 どうか、守っててね……」
私は、墓石に向かってそうつぶやいた。
私の祈りに優しく答えるように、風がなびき私の髪を揺らした。

その時、砂をザッザッと踏みしめる音が聞こえてきた。
「し、シリウス姉ちゃん!大変!」
慌ただしい幼い女の子の声が、背後からした。
「アニー?どうしてここが……
 ダメじゃない、私となんか関わったらまたママに怒られるわよ?」
私は諭すようにアニーにそう言った。
「あたしは平気……だけど、あたしをいじめっ子のリックから守ってくれたルーラちゃんが……」
アニーは、今にも泣きそうだ。
……あの子、また問題を起こしたのね。あのじゃじゃ馬娘……。

 私は呆れて「はぁ」と少しため息をついた。
そして、アニーの目線に合わせるようにしゃがんで
「大丈夫よ。いつもの『家出してやるー!』でしょ?ルーラはああ見えても図太いんだから」
とアニーに告げた。
「違うの!今回ばかりは……は、早くきてよぉ!」
アニーはぐいぐいと私の手を引っ張ろうとする。
「……わかったわ。知らせてくれてありがとね、アニー。
 もう、日が落ちてくるわ。こんな所を見られないうちに早く家に帰りなさい」
アニーは、私が動きだしたと分かると村の方角へとまた慌ただしく駆けていった。

「さて、と。ちょっくら暴走娘を止めてきましょうか……
 はぁ……、今日はメイリスに会いに行く予定だったのに……全くもう!」
私もアニーを追いかけるようにして、ルーラのいる村の入り口へと歩んでいった。

 村の入り口の方角へと進んで行くと、
とても見覚えのある茶髪のセミロングヘアーの少女が一人唸っている様子で座り込んでいた。
「日も暮れるっていうのに――こんな所で何してるのよ、バカ」
私は腰に手を当てて、茶髪の少女・ルーラを見下ろしていた。
「へっ?」
ルーラは未だに気づいてないようで、気の抜けた返事をして上を向いた。
「シリウスちゃん!?」
 鬼でも見たかのような驚いた顔で、ルーラは私を見つめている。
――失礼ね。
「アンタね、『シリウスちゃん!?』じゃないわよ。アニーから聞いたわよ!
 ほんとアンタって考えなし!大・馬・鹿!」
私はいつもの調子でルーラに叱った。
「ば、バカじゃないもぉおん……バカって言う方がバカなんだよ゛ぉ゛お゛う゛??」
ルーラはどうやらいつもの調子ではない。先程までベソでもかいてたかのように、鼻声でそう言った。
「で?また家出ごっこでもするつもり?」
「ち、違うよ!今度は帰らないもん!」
「アンタねぇ……アンタんとこの親がどれだけ過保護か分かってるの!?」
私は、またルーラを説得する羽目になるみたい……ね。
「でも、もう決めたことだもん!」
ルーラはスクリと立ち上がってそう言った。
「ほぉ~う?村から出ようとしてためらって座り込んでいる上に
 家出を決定事項にしたには随分荷物が少ないようだけど、ルーラさん?」
私は皮肉たっぷりに、ルーラを言葉で攻撃する。
「……あ――っ!す、すっかり忘れてたぁあ!」
「…………そんなことだろうと思った。アンタはいっつもツメが甘いんだから」
はぁ……全く、世話が焼けるわね。

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最終更新:2011年07月15日 20:59