木原円周&バーサーカー

「ありがとうございました~」

自動ドアが開くとともにピロンポロン、と軽快なメロディが響く。
退店する客を見送る店員の明るい声もまた。
人々が寝静まり始める時間帯に、煌びやかに、なおかつ賑やかにコンビニエンスストアが存在感を示す。
現代の都会ではどこでも見られるような景色だ。

「痛って。おいオッサン、気をつけろよ」
「目ン玉どこに向けてんだ?あァ?」

これもまたどこでもありそうな光景だ。
店を出た矢先に接触を起こし、そのことで因縁をつける。
ガラの悪い青少年二人が、人の良さそうな男に絡んでいるのを店の中の客も店員も遠巻きに見るばかり。

「何とか言ったらどうなんだ、おい」
「ビビってんのか、こら」

店員は二人そろって警察を呼ぶような大事になりませんように、と内心祈る。
客の一人、眼鏡をかけた女性は外の景色から目をそらし、弁当の消費期限を何度も見返している。
雑誌コーナーで立ち読みをしている中年男性は、何かに読み入っているのか本当に外の騒ぎに気付いていないらしい。
外からの介入で事態が動くことはまずない。
そのことに思い至ったのか、至ってないのかひたすらに無言だった男がついに口を開いた。

「君たち、学歴は?」
「は?」

およそこの場でするに相応しいとは思えない発言に、何を言っているのかと疑念に囚われる。
しかしそれが聞き間違いでないと確信できると、青年たちは即座に反応を返す。

「ンだこら、高校卒業してすぐ働いてる低学歴には詫びる必要ないってか!?」
「ふざけてんのかテメエ!」

バカにされたと思ったのか二人の青年はヒートアップした。
まさしく火に油を注いだかのように、顔を真っ赤にして怒声をまき散らす。
それを気にかけないように、気づいていないように笑みを浮かべる男。

「高等学校、卒業。それはそれは……」

人の良さそうな、誤魔化しているような笑いに青年の片割れが掴みかかろうとする。
だが腕を突き出そうとした瞬間、横面に何かが叩きつけられる。
触覚から遅れて聴覚、何かが振るわれた音とそれを叩きつけた男の声が聞こえる。

「インテリだな貴様ら」

笑みを浮かべた男の両手には建築用の鉄筋が二つ握られ、そのうちの片方は赤く塗れていた。
その赤い塗料は何だろう、隣に立っているはずの友人は何をしているのだろうと疑問を感じた瞬間に
衝撃。
頭頂部に鉄骨を叩きつけられ、答えを知る間もなく少年は先に逝った友人のもとへと送られた。

突如として殺戮を行った男は血に濡れた鉄骨を両手に持って、ぎろりとコンビニ内を見やる。
週刊誌を立ち読みして背中を振るわせている客に目をつけると

「本を読んでいる!貴様インテリだな!」

右手に持った太い鉄骨を全力で振るう。
店と道路を隔てるガラスごと、男性客の頭蓋を砕いた。
ガラスが砕け散る高い音に交じって、べちゃりと粘着質な音が小さく響く。
レジ内の店員の方へ、スイカ割りに失敗したような歪な赤い球体が、飛んでいって壁に張り付いた音だ。
……中からこぼれ出る赤いモノで粘性を増した頭髪。
一説にボウリングの玉と同じ重量といわれる球体を支えるには強度不足だったらしく、何本かを壁に残して球は床に落ちる。
ごろん、と転がり。
ぎょろり、と魚のようになってしまった目がこちらを見ているのに店員は気付いた。

炸裂するように悲鳴が飛び出す。
店に残った女性客一人、男性店員二人がほぼ同時に声を上げ走り出す。
入り口近くの凶悪人物から離れるために店の奥へ、奥へ。
駆けだした店員は背中越しにガラスの破砕音を聞いた。
ジャリ、と砕けたガラスを踏みしめる音もした。
自動ドアが開く間も惜しんで殺人鬼が侵入してきたのだ、と恐怖した瞬間

ずん、と腹部に衝撃を覚えた。
背筋に冷たいものが走り、それが体の前面までも貫く。
さらに虚脱感と吐き気も起こり、耐えきれず胃の中身をぶちまける。
酸っぱい吐瀉物でなく、鉄臭く赤い液体がまき散らされた。
疑問の声をあげようとするが、全身の脱力がそれも許さない。
膝をつき、前に倒れようとすると、何かがつっかえ棒のようになって支えられた。
口に満ちる鉄臭い液体よりも、鉄の匂い濃い……殺人鬼の持っていた鉄骨が体から生えていた。

「コンビニエンスストア、こんなところで働いているなど貴様もインテリだな」

逃げられる前に鉄骨を投擲した男がゆっくり追いつき、突き刺さった鉄骨を引き抜いて回収する。
支えを失った店員は地に伏せ、ゆっくりと息絶える。

店内に残った生存者は二人となった。
殺人鬼と、取り残されたコンビニの客が一人。
空を走った鉄骨に怯み、発生した血の池に足をとられ、バランスを失って逃げ遅れてしまった。

転倒した女性客の方へと殺人鬼が向き直る。
ひっ、と小さく悲鳴を漏らし後ずさるが当然すぐに壁に突き当たる。逃げ場はない。
……突如殺人鬼がにっこりと満面の笑みを浮かべる。
人当たりの良さそうな、虫も殺せなそうな笑顔だった。

もしかして見逃してくれる?
そんな淡い希望に安堵の涙が浮かぶ。

ぐしゃり、と肉を叩く鈍い音が響いた。

「眼鏡をかけている。貴様もインテリだな」

店に残った生存者は一人になった。
残った殺人鬼がぐるりと店を見渡す。

「まだ、インテリがいたはずだが……」

視認できる範囲に誰もいないことを確かめると、両の手に持った鉄骨を振るい、店の内装を破壊し始める。

「コンビニエンス!怠惰な知性の結晶!こんなものは人の生きる社会に必要ない!
 インテリも!文明も!すべてこの世から消えてなくなれ!!!」

一部の商品は避けつつも、棚や冷蔵庫だけでなく建物自体も攻撃し破壊していく。
……しばらくすると、攻撃に耐えかね建物が崩れ始める。
効率的な発破解体などではない、原始的な暴力による破壊であった。



◇ ◇ ◇

そのコンビニから一人だけ男性店員は逃げ延びた。
バイトの制服そのままで、店内に財布や荷物も置きっぱなしだが、命には代えられない。
どこを終着点と見据えることもなく、ただただひたすら走る。

息が切れ、全力疾走できなくなってきたあたりで中学生くらいの小柄な少女とすれ違いそうになり、あわてて声を出す。

「っだ、だ、だめだ。そっちには行くな!殺されるぞ!」

激しい運動からくる疲労と、殺人鬼から逃げる恐怖に声を震わせながら必死に少女を呼び止める。
これ以上被害を広げるわけにはいかない、と発した呼びかけに応じて少女が歩みを止めた。

「殺される?」

なんで?何に?意味わかんない。
そういわれたような気がして足を止めて必死に話す。
この先にあるコンビニで起きた惨状を。
その惨劇を巻き起こした悪魔のような男のことを。

「人が良さそうに見えたが、あれはバケモノだ。鉄骨をぶんぶん振り回して、何が何だか……ひっ!」

遠くから大きな音が聞こえた。
ガンガンと何かを砕くような音、ガラガラと大きなものが崩れる音。
……逃げてきたコンビニの方からだ。

「あ、ああああれもあいつかもしれない。店のガラスも壊すし、何人も殺された!
 人間のやることじゃない、ヤバすぎる。突然インテリとか訳の分からないことを言い出して何が何だか……」
「そっかあ、それは大変だったね。うん、うん」

少女は呑気そうに答えながらだが、素早く首からぶら下げたスマートフォンを弄り始めた。
警察でも呼ぶのか、確かにそうする必要があると僅かに息をつくが
ずん、と腹部に衝撃を覚えた。

「分かってるよ、唯一お姉ちゃん。辛いけど、本当に辛いけど『木原』ならこういう時はこうするんだよね……!!!」

突如少女が拳を繰り出し、それが男の体にめり込んでいた。
威力自体は少女の膂力で、大したものではない。
だがそれが一瞬で十発、二十発と打ち込まれれば流石に軽いダメージとは言えない。
疲弊した肉体にダメージが重なり、男は地面に倒れ伏す。

「目撃者は生かしておけないのでー、血管の中に気泡作ってくたばりやがれえ!!……っていうのが『木原』らしいので一つよろしくっ!」

場違いに朗らかな声が、朦朧とした男に意識に滑り込んできた。
呆けた頭でこのままでは殺されると理解し、先ほどまでと同等以上の恐怖が体を震わせる。
それでも受けたダメージが大きく、立ち上がることは叶わない。

「あっれー、生きてる?うまくいかないなー?唯一お姉ちゃんは手も足もすらっとしてるからなあ。
 私みたいなちんちくりんの未熟な『木原』じゃあこの程度なのかな?」

何やら生きているのが不満らしく、体をペタペタと触って調べ始める。
その手が左の腰部分に触れたところで男は激痛を覚えた。
男自身、恐怖や生存本能で気づいていなかったが、そこには投げられた鉄骨の余波で裂けた切り傷があった。
そこから流れる血が少しだが泡立っているのをみて少女は納得したような声を出す。

「あー、そっかー。血管の中に作った気泡が抜けちゃってたんだ。失敗失敗」

それなら、と立ち上がりスマートフォンやタブレットを再び操作しようとする……前に血で汚れてしまった手を男の服で拭う。
綺麗になったので改めて端末を弄ると、画面上に表示されるグラフの質が変化する。

「そうだね、幻生おじいさん。せっかくだから練習しておくべきだよね。気乗りしないけど、とってもやりたくないけど、『木原』ならそうするもんね!」

ごそごそと懐をあさり、何やら取り出そうとする。

「ここにいましたか円周。探しましたよ」

そこへ声をかけられ少女…木原円周がそちらを向く。
柔らかい笑みを浮かべた男が歩いてきていた。
左手にコンビニの大きな袋をぶら下げ、右手に少し曲がった、鉄骨を持ってゆっくりと合流する。

「あ、バーサーカー。もー、この人逃げてきちゃったよ?」
「おやおや、これは申し訳ない。ですが食い止めてくれたんですね。素晴らしい、さすがは円周。
 ……それでは後の始末もお任せして構いませんか?」

娘に叱られた父親のような申し訳なさそうな笑みを浮かべながら、右手に持った鉄骨を差し出す。
先ほどまで血に濡れていたそれはすでに綺麗なものになっていた。

「うん、そうだね。分かってるよ」

その鉄骨を受け取ると、また端末を操作し表示されるグラフの質を変える。
それに少しの間目を落とし、頷きながら両の手で鉄骨を握る。
まるで処刑人が斧を握るように高く構え……

「ポル・ポトおじさんならこうするんだよね!!」

がつん!と延髄に的確な一撃を叩きこみ、男の命を一瞬で刈り取る。
己の従えるバーサーカーのサーヴァント、ポル・ポトなら実行できない、人体に精通した技術と知識を披露した木原円周。
その成果を誇るように満面の笑みを浮かべて、ポル・ポトの方を向き、鉄骨を返す。

「よくできました、円周。さあ、帰ってご飯にしましょう。コンビニというインテリの巣窟にあったものですが、食べ物に罪はありません。
 よく食べて、綺麗で純粋な大人に成長するんですよ」
「はあい、バーサーカー」

悲痛な死体が転がっていたが、それがだんだんと消えていく。
バーサーカーの宝具の効果によって背景から異物が消えたことで、二人の異常者のやり取りは一見平和な親子の様にしか見えなかった。





【クラス】バーサーカー
【真名】ポル・ポト
【出展】史実、20世紀カンボジア
【性別】男
【属性】混沌・狂
【パラメーター】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷C+ 魔力E+ 幸運B 宝具C

【クラススキル】
狂化:EX
ポル・ポトは過激な原始共産主義を掲げ、そのために知識層を虐殺してきた。
彼自身もパリに留学したインテリであったため、その知性を真っ先に切り捨てた。
人と同じような言語と所作をしているが、その実人が歴史とともに積み重ねてきた知性の一切を持たず、本質的に他者と理解しあうことは極めて難しい。
親であろうと微笑んで殺し、過去を懐かしんで笑うことも今を拒んで泣くこともない。

【保有スキル】
原始回帰:B-
ジャングルの奥深く、人の手の及ばない一帯には未だ神秘が色濃く残り、常人には認識できない妖精や精霊、幻想種が残っていた。
ゲリラ戦のさなか、そこにおよそ12年とどまったポル・ポトの肉体は朱に交われば赤くなるように、古き時代のものへと還っていった。
現代人にあるまじき異様な身体能力と回復力を誇る、ある種の天性の肉体。
原初の理に触れ、強靭な変化を遂げたポル・ポトからすれば文明に頼るインテリはさぞ惰弱で怠惰に見えただろう。
なお殺傷には耐性を持つが死因とされる病、あるいは毒に対する耐性はない。

加虐体質:B
戦闘において、自己の攻撃性にプラス補正がかかるスキル。
プラススキルのように思われがちだが、これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
ポル・ポトの狂化スキルはこれと似て非なるものであるため、殺傷力は大幅に増す。

情報抹消:EX
原初の時代に還るため、知識など不要とインテリを殺す。
それを批判する者は殺す。
知識を持つものがいなくなったら子供に医者をやらせ、外科手術まで行わせるが当然患者が治るわけもなく死に至る。
手が柔らかいものは農作業をする必要のない金持ちであり、それはつまり稼ぐ手段を持ったインテリだから殺す。
字を読める者はインテリだから殺す。
時計を見ようとしたということはインテリだから殺す。
眼鏡をかけているものはインテリだから殺す。
歌を歌っているものは殺す。
密告があったから殺す。
容姿端麗だから殺す。
…………あまりにも常識から外れた行いに、それが国外に伝わっても冗談だと思って誰も信じなかった逸話の再現。
ポル・ポトの所業は映像や写真などで確認されなければ真実として伝わらない。そんなことが起きているはずがない、と聞き流されることになる。
閉ざされた国から辛うじて亡命した人たちの決死の訴えすら殆どの人に事実と受け入れられなかった、抹消した情報の痕跡すら信じさせない規格外のスキル。
例えば、「どう見ても善人である男が大小の鉄筋を振り回してコンビニを倒壊させ、いたはずの客と店員の死体が消えた」などという話、頓狂すぎてうわさ話にすらならないだろう。

道具作成:E-
ポル・ポトが最も信頼した兵器は地雷である。知識層を失い、子供が殆どを占めていた軍ではそれくらいしか扱えるものがなかったともいえる。
魔力を消費することで地雷を作ることができる。サーヴァントにも効果を発揮する地雷である。
地雷自体は科学技術、魔術問わず見つけることは普通に可能であるが、ポル・ポト自身は探知する術を持たない。
もっとも原始回帰した彼の肉体は地雷程度ものともしないが。

【宝具】
『血に塗れた思想の一族(クメール・ルージュ)』
ランク:D 種別:対国宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:上限なし
インテリに対する探知・虐殺宝具。
虚言でおびき寄せ、密告で情報を集めた彼はサーヴァントとなってからは居ながらにしてインテリの存在を感知し、虐殺する。
インテリがレンジ内に存在する場合それを感知し、それに対して与えるダメージが大幅に向上する。
具体的な居場所は分からず、いるということが分かるのみ。
なお彼のいうところのインテリとは「文字の読める者」「時計を見ようとする意思のある者」「眼鏡をかけている者」「手の綺麗な者」「容姿端麗なもの」である。
ただし高ランクの狂化などで知識はあってもそれを操る術をなくした者、獣や実験動物として育ったために人間的知性に乏しい者、あるいは文字や言葉を操る動物などはインテリとは認めない。
この宝具は一都市を網羅するほどの広いレンジを誇るため、ポル・ポトは街の中に文字を読める知性的な者がいるかいないか即座に分かるのだ。
…………端的に言って現代日本において感知能力は全く役に立たない。
ただしダメージ向上の対象も同様であるため、広範な敵に対して攻撃性が増す、まさしくバーサーカーな宝具と言える。
なお、魂あるいは肉体が14歳以下の子供は感知・ダメージ向上の対象外となる。


『腐ったリンゴの箱(フォービドゥン・ブラックボックス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5~40 最大捕捉:上限なし
自国の民のおよそ四分の一を虐殺し、文字通りの死体の山と歪な人口比を作り上げた逸話の再現。
政権解放直後は14歳以下が国民の85%も占めていたという。
ポル・ポトが殺害した者すべての亡骸を山と積み上げ、敵頭上から叩きつける。
言うなれば死者の人口ピラミッドである。
死体の腹部などは建築用の鉄筋で貫かれ、死体同士をつなぎ合わせることで崩れにくくなっている。
生前に彼の指示で殺害したものに加え、聖杯戦争などで没後殺害した死体も積み重なるためすでにその数は300万を超える莫大な数となっている。
死体の物理的な重さも十分な殺傷手段であるが、悍ましいのはその罪の重さである。
ポル・ポトに殺された者の怨みが呪いと化し、攻撃対象に多大な呪詛・精神ダメージを与える。
正当な英霊であるほどにそのショックは大きいため、属性が秩序や善のサーヴァントには呪詛ダメージが増加する。
なおポル・ポト同様に規格外の狂化スキルを持つものや、精神汚染、精神異常などが原因でその悪性に一切の罪悪を覚えないものなら呪詛の効果は受けない。
それでもおよそ300万の死体による重量ダメージは相当なものであるが。
……晩年のポル・ポトは「自分の良心に恥じることは何一つしていない」と自らの行いを振り返って言ったという。

なお彼が直接手を下した、あるいは彼の指示で殺した死体は即座に血の一滴も残さずこの宝具に取り込まれ消失するため、どんなに虐殺を重ねてもその決定的な証拠を見つけるのは難しい。
神秘の秘匿という意味では優秀な宝具と言えるかもしれない。

【weapon】
  • 建築用鉄筋
日本製の何の変哲もない鉄筋。
宝具『腐ったリンゴの箱(フォービドゥン・ブラックボックス)』で死体をつなぎ合わせているもの。
ポル・ポト政権において最も多くの民を処刑・虐殺するのに用いられた。殺害するのに銃弾が乏しく勿体ないからという理由からであった。
処刑される者は太い鉄筋で殺されるか細い鉄筋で殺されるか選ばされたという。
万を超える人々の血に染まった鉄筋は怨みと憎しみに塗れある種の神秘を纏う。妖刀ならぬ妖鉄筋である。
サーヴァントすら殺傷可能な鉄筋を、殺害した民一人につき大小の二本……およそ600万本保有する。
宝具の真名解放なしに数本の鉄筋だけなら召喚し、武器とすることができる。

【人物背景】
荒く纏めると山育ちの農民、時々宗教家、後に政治家。
フランス領インドシナのそこそこ比較的裕福な農家に生まれ育つ。
幼少期に読み書きを習うために寺院で学び、何年かを僧侶として過ごす。
第二次大戦終了後に宗主国フランスに留学し、共産主義者となる。
帰国後はカンボジアの独立を目指す共産主義ゲリラに参加する。
しかしあまりに過激な思想と活動は独立後の政府に弾圧され、秘密活動を余儀なくされる。
この潜伏期間が知識層の虐殺へと繋がっていく。
ジャングルに残った神秘に触れたことで肉体は先祖還りし、原初の強大なものとなった。
毛沢東の思想に学び、階級のない原始こそ至高と考えるようになった。
つまり神代に存在しなかった知識層もその産物も不要である。と。
そして歴史の混乱に乗じて表舞台に姿を現し、クーデター・内戦からカンボジアの全権を掌握。
そこからが史上類を見ない悪夢の始まりだった。
政権の前任者や反政府的な者を投獄、虐殺することから始まり、通貨の廃止、私有財産の没収、銀行はじめ国家機関の停止、寺院も根絶される。
国民の大半を農作業に無理やり従事させ、それによる過労死者も大量に発生させる。
そしてポル・ポトの行った最悪の所業である知識層の虐殺である。
ベトナムとの戦争によって没落し、その後続けたゲリラ活動も実を結ばず、ポル・ポトが政治にかかわることがなくなった30年後でもその影響は残っている。
インフラは破壊されたために復興は遅れ、高齢者・知識者の命が悉く奪われたために文化の継承者もいなく、そもそもとしてまともな教育を受けていないために働き方も学校の意義も知らない若者が殆どなのだ。

虐殺した数だけならばスターリンや毛沢東に劣るが、彼らは中国やソ連という大国に長年君臨した指導者である。
しかしポル・ポトは当時人口一千万足らずの小国カンボジアに4年間君臨しただけで、数百万という単位の人々の命を奪ったのだ。
その所業は20世紀最悪の独裁者と呼ばれるに相応しい。
それでありながら妻子にとっては優しい夫であり、父であったと語られ、虐殺発覚後にインタビューしたリポーターですらポル・ポトのことを善人と評している。
今回はその在り方を「神代の肉体を手にし、その素晴らしさを世界に広げようとした、善悪の基準が根本的に人と異なる神に近い思考」と解釈した。

【特徴】
現代の人間であるため写真も残っているが、実際に目にする彼は人のよさそうなおじさんにしか見えない。
服装もどこにでもいそうな、ちょっとダサいおじさんそのもの。
実際子供には優しく、妻子にも穏やかに接し、当たり障りのない接触ならば赤の他人にもいたって紳士的な対応をする。
ただし一たび相手をインテリである、あるいは敵であると判断したならば即座に虐殺する。
人のよさそうな笑みと雰囲気そのままに、殺意を迸らせるなどという前兆も一切なく、善性と残虐性を同時存在させている。

【サーヴァントの願い】
一切の知性と文明を放棄し、階級も差別もない世界へ。
人類の強き良き時代、神代へと世界を還す。

【マスター】
木原円周@新約 とある魔術の禁書目録

【マスターとしての願い】
自己を確立し、一人前の木原になる。

【weapon】
  • 携帯端末、スマホ、小型テレビetc
5000近い『木原』の行動パターンを分析し、まとめたデータを保存したものを首からぶら下げている。
画面上に表示されるグラフのような映像からインスピレーションを受け、その性格や戦術を再現することができる。
作中では木原数多や木原唯一の格闘術、木原乱数の微生物操作を披露している。
他の作中登場人物では木原加群、木原病理、木原脳幹、木原幻生、テレスティーナ・木原・ライフラインなども記録されているらしい。
さらに木原一族以外でも上条当麻のヒーロー性も再現可能らしく、格上の『木原』である木原病理をそれで退けることに成功している。
文明の利器ではあるが、画面上に表示されるものの意味を読み取れるのは円周、あるいはそれと同等以上の分析力・発想力を持つ者だけである。
ポル・ポトはちゃちな子供のおもちゃ程度にしか認識していない。

その気になればライターを改造して火炎放射器にすることも、カビを遺伝子操作して殺人兵器にすることもやってのける。
最大の武器は『木原』に恥じないその頭脳と言える。

【能力・技能】
『木原』としての優れた観察力、発想力。
特に彼女は模倣に優れ、人の行動や戦術を積極的に戦闘にも科学にも取り込む。
もしかするとサーヴァントの戦術や思考すら模倣するようになるかもしれない。
原作者曰く、単純な頭の良さなら『木原』の中でも上位らしい。
身体能力においても木原数多、木原唯一の特異な格闘術を再現可能で、作中でもプロの兵隊(というか忍者?)を退ける実力を持つ。
また魔術組織グレムリンに属するある魔術師とは類縁であり、魔術回路も保持している。
魔術師としての才は未知数だが、彼女の書き上げた法則の走り書きは見た者の精神に大きく影響をあたえるという魔導書の原典に近い効力を発揮しており、そちらの方面でも抜きんでた才能を持つ可能性が高い。

【人物背景】
世界より20~30年先を進んだ科学力を保有する学園都市においても隔絶した科学の才を持つ『木原』一族の少女。
彼女は幼少期の頃、ある『正義』を名乗る者達によって連れ去られ監禁されていた。
『木原』という存在に驚異を感じていた彼らは、

「『木原』は『木原』を学ぶから『木原』らしくなる」

と考え、彼女を『木原』から、更に言えば人間としての『学び場』から切り離したのだ。
それも人間としての基本的な情報を大量入力されるべき幼少期に。
そうする事で彼女は『木原』らしくなくなると思っていたのだ。
彼女はそのような環境に置かれたおかげで九九も出来なければ、漢字はおろかカタカナすら読み書き出来ない。
彼女はそんな環境の中でさえ、
『一見落書きにしか見えない冷凍睡眠装置の基礎理論の証明式』を書き上げ、
床に散らばったクレヨンで『完全な黄金比のバランスを超越した美しさ』を描き、
くしゃくしゃに丸められた紙のシワで『並列演算装置のチップの図面』を示し、
フロアランプの光りによってできる影で『見る者の深層心理を浮き彫りにするテスト』を行う
…等々、平然と『木原』を行使していたのだ。
『木原』が『木原』である事に、後天的な情報入力など必要無い。
『木原』は『木原』であるだけで、科学という概念から目一杯愛される。
彼女ら『木原』は科学を他人から学ばずとも世界を構成する物質から科学を読み取る。
部屋を舞う埃や、プラスチックの質感、水の一滴のような些細な物ですら彼女にとって絶好の科学の参考資料となりうる。
『木原』から科学を奪うにはこの全世界を欠片も残さず破壊する以外に方法など無いのだ。
むしろ彼女は何も教育されなかったおかげで善悪のボーダーラインがわからないようになり、その科学には歯止めが利かない。
故に彼女は監禁された事に一切の不満などなく、一方で監禁したものたちを恩人とも思っていない(というか恩人という概念すらわかっていない)。
ある日彼女は一つの実験を思いつく。『自分が今いる牢を壊す素敵な方法』を。
恩を返すでもなく、恨みを晴らすでもなくただ彼女は自らの実験をただ見てほしくて食事を持ってきた男にそれを披露する。
足首に金具と鎖を繋いだ状況にも関係なく(彼女にとってそれもまた拘束具ではなくオモチャの一つに過ぎなかった)、それは実行された。
実験の結果、鎖が蕩けるように破断、男の体は蝋のように変質、円周は姿をくらます。
そして『木原』と合流した円周は未熟さを補うために多くの『木原』の思考パターンを模倣するようになる。

本質的・本能的に知識を求める科学者、探究者であり幼さと純粋さを除くとポル・ポトとの相性は最悪だが本人たちは未だそれに気づいていない。

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最終更新:2017年07月27日 21:29