爆炎のcontinue!!

深く、深く、海に沈んでいくような感覚。消滅とは、死ぬとはこういうことなのだろうか。
思ったよりも悪い気分ではない。自分はなんの悔いもない生涯を送ったのだから。

『ドラゴナイトハンターZ』の竜戦士グラファイト。自分は人間と戦うために生まれたゲームの敵キャラだ。
そしてバグスター――――人類に感染し、現実に現れる人類の敵となった。
現実の世界で、仲間とともに人間と戦うことができる。"心が躍った"。バグスターとして、これ以上の事はない。
最期は仲間に見送られ、二人の宿敵に引導を渡されたのだ。ああ――――思い返しても、素晴らしい生き様だったと思う。

自分がバグスターとして敵キャラに設定されていたゲーム、『仮面ライダークロニクル』は終わりを迎える。
敵キャラとしての役目を終えて―――――自分はきっと、消えるのだろう。何の悔いも残っていない。

……いやパラドは、ポッピーは大丈夫だろうか。同じバグスターであったが、人類の友としての道を選んだ彼らは。
バグスターは人間を消滅させて完全な体を得る存在だ。かならず確執は存在するだろう。
彼らがちゃんと、幸せになれるといいが……

……それとラヴリカは無事だろうか。キャラクターを全うすることも許されず、傲慢なゲームマスターに削除されてしまった彼は。
彼もまた仲間だ。できれば、彼にも満足できる最期を迎えてほしい。
止まった時の中でコンテニューが許されないというのなら、ゲームマスターが打倒され、時が再び動き出したなら……少し、甘い考えだろうか。

自分は役目を全うしたのだが、案外心残りはあるものだ。
だが、"これでいい"。彼らの運命は彼らに託そう。
このまま深く、深く、沈んでいく――――――






「いいや、まだゲームは終わってません。」



「……ここは。」

「『仮面ライダークロニクル』とはまた別のゲームの舞台で御座います。」

真夜中、人一人存在しないアリーナの中心を数個のライトが照らす。
グラファイトの眼前には、黒衣を纏う一人の少年。

「まずは貴方の―――――竜戦士グラファイトの生涯に敬意を」

厳格な、正座の姿勢でグラファイトの前に座す。全身での敬意の表現であった。

「貴様は、何だ?」

当然一切の説明もなく、状況をつかめないグラファイトは問いを投げる。
ここはどこだ、自分は消えるはずだ、さまざまな疑念は浮かぶがまず。
この、人間のはずの少年から感じる異様な気配。その招待を"何だ"と聞いた。

「……その答えは、"之"にて答えるとしましょう。」

そう口にすると同時、立ち上がり腰の刀を引き抜く。
装飾の無い、無骨な日本刀。鈍くうっすらと輝くその刀身は、名も無い業物であるのだと感じさせる。
切っ先はグラファイトに向けられた。この上なくシンプルな宣戦布告の形。

「良いだろう。
 向かってくるなら容赦はしない!」

当然、グラファイトはそれに答える。敵キャラとして"生"を授け、とにかく今この瞬間に意識があるのならば。
向けられた戦闘の意思に答えない理由など存在しない。
同じくグラファイトも刀を―――――"ガシャコンバグヴァイザー"を抜いた。
アルファベットのAが刻まれたボタンを押し、待機音が流れ出す。

「――――――培養!!」



            Infection!!!



Let's Game! Bad Game! Dead Game! What you're name!!!??



――――――――The Bugstar!!……――――――――



全身からあふれ出す炎を振り払い、現れるは真紅の竜戦士。彼は牙、両刃剣の形状を持つ"グラファイトファング"を構えた。
互いに準備は万端、刃の衝突が何時になろうとおかしくは無い。
しかし、沈黙だけが場を満たす。互いに手練れであるのであれば、間合いの計り合いがこうも長い。

沈黙を破ったのは黒衣の少年であった。真っ直ぐに、喉元めがけて放たれた突きを牙で受け止める。
ならばと再度放たれる突きを再度受け止め、何度も、何度も、金属音を響かせる。

「――――――だったらァ!!」

埒が明かないといったん距離を取った少年の輪郭がぼやけ始める。
幻覚の類ではない。ぼやけた輪郭はさらにぶれを増して行き、"分裂する"
六つ、少年から離れた輪郭は、少年とまったく同じ姿をとる。まさしく分身と言える現象が起きていた。
計七人、手数は七倍、迫る方向は前後左右斜め全方位。必滅足りうる七連撃を、グラファイトは

壱、弐、参、肆、伍、陸、漆。

両刃を用いて、その一切を無傷で受けきった。

「多対一なら慣れている。残念だったな」

『ドラゴナイトハンターZ』はプレイヤーがチームを組んで強大な敵に立ち向かう協力ゲーム。
そしてグラファイトはその敵キャラであり、つまりは常に多人数を相手にしてきたのである。
対象法ならすでに体に刻まれているのだ。

「次はこちらから行かせてもらう!……」

一度刃を振り下ろせば、当然もう一度構える隙が生まれる。彼が手練れであれど、そこが変わることはない。
その刹那の間隙に、グラファイトは拳を地面へたたきつける。
響く轟音、芝生の地面に罅割れが走り、揺れる地面は大きな隙を生む。グラファイトを囲む七人が体制を崩し
炎を纏う牙が円を描き、一閃――――――金属音を響かせて、分身は消滅し、少年は地面に倒れる。




「今の手応え……貴様は――――」

「――――ええ。この身は人に非ず、と言うわけで。」

生身の人間を切りつけたはずなのに、その感触は鋼鉄。まるで、"仮面ライダー"達を相手にしていたような。

「急な申し出でありましたが、一切手を抜かずに迎えて下さった。
 やはり貴方は最高の"敵"――――ええ、楽しませていただきました、」

大の字に転がっていた体を起こし、少年は再び正座する。

「語らせていただきましょう。これから始まる"聖杯戦争"というゲームについて。」


□■□■□■□

■□■□

□■

「―――――成程な。」

聖杯戦争。願いを懸けたデスゲームであり、自分はその参加者として選ばれたと言う。
少年に言われたとおり、右の手には令呪が、ゲームの参加者の証が刻まれていた。

「勝ち抜けば、願望器が貴方の元に。
 望むのであれば、バグスターの運命さえも………」

変えられる。そういいかけた少年の声を

「不要だ。
 我等の運命は、既に友に託してきた。」

グラファイトがさえぎる。
自分は既に、役目を果たした上で消滅した身。こんな、"くだらない"方法でバグスターの運命を変えるつもりは無い。
それに何よりも。道こそ違えたが、バグスターの運命を託せる"生涯の友がいる"。
なのに、退場したキャラクターが出て行くのは萎えるものだろう。

「それでは、貴方はこの世界で何を?」

そう問う少年の声は、どこか上ずっているかのような。これから始まるグラファイトの台詞を、待ちきれないと言わんばかりに。

「決まっている。
 俺は俺の生き様を通すのみ!」

バグスターとして。グラファイトとして。人類の敵として。事情はどうあれど、今ここに自分の意思があるのであれば。
やることは何も変わりやしない。自分は"敵キャラ"として、その生涯を生きるのみ。

「ああ、であれば。哀れな"敵"の話を聞いていただきたい。
 魔人として、世界を敵に回せど。その役目を果たせなかった男の話を。」

人に非ず、世界の敵として生きた――――――少年の名を、"平将門"という。
彼は世界の敵としてたたかった。世界を変えるために、そう望まれたが故に。自身を魔人と化してさえも、その道を貫いた。
だが、彼は倒れた。道半ば、世界は変わらず、その役目を果たせなかった。

「貴方の生涯は、まさに俺の理想だった!
 貴方の作る宿命が、あの戦士たちを変えていった!」

対するグラファイトは、敵キャラとしての役目を全うしたと言える。
バグスターが発生した"ゼロデイ"にて、グラファイトは人類の戦士の前に立ちはだかり、打ち負かした。そしてもう一人の戦士の恋人の命を奪うことで、完全な現実の姿を手に入れた。
その因縁を通して、敗北した戦士は最後はグラファイトを打ち倒す程に成長したのである。
それだけではない。彼が人類の敵としていたからこそ、人類の戦士たちは協力を覚え、人類の運命を変えたのである。

自分にも素晴らしい強敵は居た。けれど、自分はあの男の何を変えられたのだろう。世界の敵の米噛みを打ち抜いた、あの藤原秀郷の何を。
彼は自分を打ち倒した後も、変わらず英雄で居たらしい。英雄として、人の願いを聞き続けて、いつの間にか居なくなったようだ。
嗚呼、それは英雄の最後と言うには余りにも。きっと、あの男は見返りなんて何も求めないだろうが、それでも。
嗚呼、自分は世界どころか人一人変えることもできずに。

「俺は今度こそ敵としてありたい!今度こそ敵として、役目を果たしたい!
 だから、貴方の供となることを許していただきたい!!」

「―――――好きにしろ。
 お前も、お前の生き様を通せばいい。」

それは肯定に等しく。共に敵として戦う許可を得たに同じ。
故に、将門の声は赤く、たぎりを抑えきれないその声で誓う。

「これより、"セイバー・平将門"
 人類の敵として、貴方と共に!!」

【クラス】セイバー
【真名】平将門
【出典】平安時代より
【性別】男性
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力:A 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:C++ 幸運:C 宝具:EX

【クラス別スキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:A+
 日本において騎馬の起源となったという逸話より、最高位の騎乗スキルを有する。
 対象が馬の形状をしているかぎり、幻獣種ですらも乗りこなすことが可能。

【固有スキル】

魔人:A
魔人たる将門の魔性をあらわすスキル。
カリスマ、魔力放出、怪力を内包するが、魔性と神性をデメリットとして併せ持つ。
本来持つこの二つのスキルのメリットはもてないが、宝具等の特攻の対象としてのみスキルが機能してしまう。



【宝具】
『日本刀/ひのもとのやいば』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
彼は馬を駆り、日本刀を振るう"侍"という概念の起源となった。
故に彼が振るう刀は"武士、侍"と呼ばれる者が振るう脅威の全てになりうる。
それは"黄金の衝撃"であり、"三千世界"であり、"三段突き"であり、"主砲"にすらなる。
日ノ本が世界と敵対し、"侍"と呼べる者の範囲が大きく広がった結果、侍が駆る戦艦すらも彼は振るう。

『七星鋼躯』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
北斗七星の化身である彼の体そのもの。
その双眸と顎を除いて、彼の体は鋼鉄の如き強靭さを持つ。
矢の雨の中に悠然と歩き、幾百の太刀を跳ね除けたその体は、Cランク以下の攻撃を大幅に軽減する。
また、六人のまったく同じ姿の影武者を擁するという逸話を、零基の複製と言う形で再現する。
複製された霊基は本体とまったく同じステータスを持ち、同様に鋼鉄の体を持つ。
ただしそれらは影を作らず、また魔力の消費も複製の数だけ倍増していく。

【weapon】
『刀』

【解説】
その名が意味するは天に仇なした叛逆者にして、いまだ現世に喰らい付く大悪。
平家の抗争を調停してまわる果てに、最終的には朝敵と化した。壮絶な戦の果てに討たれ首を落とされたが、その首は更なる戦を求めて現代の首塚まで飛び去ったと言う。
史実にはそういう形で残るが、同時に非常に人格者であり、慈悲深い人間であったともされる。
彼自身は高貴な身分ではないにもかかわらず、藤原忠平にその人格を評価され、わずかであるが朝廷とのパイプを所持していた程。

彼の生涯はその大部分を戦が占めるが、彼自身が望んで起こした戦は案外少ない。
その殆どは誰かに依頼されたもの、襲撃を受けた、もしくは自身が調停に乗り出すと言う形で参戦している。
単純な言葉を使って言えば、彼は"放っておけない"性格。おせっかい焼き、もしくはお人よしとも呼べるかもしれない。
彼の戦いは人のためであった。人を愛し、人のために戦い、それ故に彼は"魔人"となった。
当時の東国、将門が支配しようとした地の人々は強い負担を強いられていた。
彼らは望む。理から抜け出す者、天を地に引き摺り下ろし、世界の敵に成り得る者を。
故に将門は世界の敵として、"新皇"を名乗り戦争を始めた。その身が鋼鉄に成り果て、人に非ずとよばれても、"敵"としてあり続けた。
その果てに、彼は真に魔人となった。

奇しくも、マスターと同じく"望まれ、作られた敵"。
違うのは彼には悔いがあると言うこと。彼が死した後も朝廷は続き、世界は変わらなかった。
望まれた"敵"の役目を果たせなかったと、彼は死してなお悔いる。怨念として現世に影響を及ぼすほどに。
【特徴】
腰に刀を挿した黒衣の少年。長髪をなびかせ、言うなれば怨霊のような見た目。
目つきは悪く、纏う皮にすら"敵"を貼り付けている。が、意識してそのような表情を作っているらしい。
気が緩むと本来の人のよさそうな顔が出る。

性格は前述の通りに加えて、武士の気質を持つ。誰かに望まれた戦であろうと、楽しんでいたのは間違いない。

【聖杯にかける願い】
もう一度世界に"敵"として君臨し、世界を変えること

【マスター】
グラファイト@仮面ライダーエグゼイド

【能力・技能】
『グレングラファイトバグスターレベル99』
グラファイトの怪人態。
強力な膂力、装甲を持ち、武装である両刃剣グラファイトファングに炎を纏わせることで威力を増加させることが可能。
必殺技は"紅蓮爆竜剣"。実際に放つときはドドドドドと名前に加え、ドの数と威力が比例する。

【人物背景】
『ドラゴナイトハンターZ』の敵キャラクターであり、人類をのっとり地球の支配者となる事を目的とするバグスターの一人。
武人気質であり、非常に仲間想い。癖の強いキャラクターの多いバグスターの中の保護者的な立場、かもしれない。
本編退場後の出演

【マスターとしての願い】
今一度敵キャラとしてその役目を全うする。

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最終更新:2017年08月03日 20:58