浦上&アサシン

冬木市に存在する5階建ての宿泊施設。
富裕層が利用するような立派なものより手ごろな、庶民でも手の届く価格設定のホテル。
少なくない数の宿泊客がおり、経営は黒字だ。

「眠…」

早朝にホテルはチェックアウトした若い男は、大あくびを一つした。
疲れは取れているが、なんとなく気分が優れない。
体の内側に、不快なものが漂っている。

――ストレス溜まってんのかなぁ。

若い男は特に疑問に思う事なく、新都に足を向けた。





その地下、およそ50m下に広大な空間が存在する。
ランプに照らされた薄暗い広間の中央のソファに座って、7時の方向に多数の薬品が収められた戸棚。
5時の方向に簡素なベッドが2台。
その奥の手術台に現在、裸の女が縛りつけられている。

女の滑らかな肌に、メスが赤い線が引いていく。
猿轡から声を漏らす女に向かって、手術衣姿のアサシンはにこりと笑った。
彼は慣れた手つきで、作業を進めていく。

その風景を、カマキリのような顔の男がソファ越しに見つめる。一糸まとわぬ彼の腕には、燃えるように赤い髪の女が抱えられている。
抱えられているのは首だけ。その下はベッドの片方の周囲に散乱している。
鋭い目のカマキリ顔――浦上はアサシンから視線を外すと、赤い髪の女を持ち上げて接吻する。
重ねた唇には温かみが通っていないが、それがまた愛おしい。

浦上がこの戦いに招かれたのは、パラサイト狩りが一段落した後だ。
丁度、警察から逃げきるのが難しくなってきた時。

聖杯。くれるというなら是非もらおう。
契約したサーヴァントも中々気の合うヤツ。
首尾よく運ぶかは未定だが、出だしは悪くない。

「ふぅ…」

彼は手際よく肉を削ぎ落とし、しばらく後に骨格標本を完成させた。
アサシンは猫のように伸びをすると、手術衣を脱いだ。

「すんだのかい、アサシン?」

豊かな口ひげが目を引く、二枚目の外国人が二カッと笑う。

「あぁ、興奮で指が震えて震えて…随分かかったな」
「そうかい?俺には、熟練の職人のように見えたがね」
「フフ…ありがとう」

女を殺害した意味は魂喰いではなく、生前から続く欲求ゆえだ。
骨格標本にしたのは、ただの習い性。

「ここ、俺にとっちゃ最高だからこんなこと言いたくないがよ…聖杯戦争には使えないよな?」
「まぁね。ホテルを利用するマスターでもいない限り、掛かり様がないしな」

二人は聖杯狙いだ。しかし、どうしても欲しい訳ではない。
身命を捧げる理想もないし、身を焦がす野望も、己を支える矜持もない。
生きている限り延々と遊び、延々と喰らうだけの薄っぺらい人生。

――だからどうした?

死ぬのは怖くない。
何より恐ろしいのは、退屈。
運悪く敗退した所で、拾ったのが外れくじだった…程度の安い絶望しか感じない。

「せっかく指名手配が解けてることだし、ちょっとぶらついてくるわ」
「私も同行しよう。可能なら陣地を増やしたいしな」

浦上は服を着て、アサシンに外出する旨を伝えた。
そこにアサシンもついてくる。
浦上は相手してもらった女の身体を集めた後、リフトでさらに地下に降り、硫酸槽にまとめて放り込んだ。

「そんな事できるのか?」
「宝具になったからな。発動時の魔力さえ工面できれば、いくつでも作れるよ」
「へぇ~!便利だねぇ…」

二人は肩を並べて、地下室から街に出た。
市内の宿泊施設を見て回り、特にトラブルが無ければそのまま帰るつもりだ。
良さそうな犠牲者候補と出くわしたら、"遊ぶ"かもしれない。

浦上にしてみれば、今回の催しはバカンスのようなもの。
警察の追跡を気にかけなくて済むなど、いつ以来だろう。
敗退すれば死亡するが、逃げ帰った所で、死刑は避けられない。
どっちにせよ死ぬのなら、少しでも楽しんだ方がいい。
聖杯が手に入れば、2人でハッピー。負けてしまっても、一つ足しになる。






【クラス】アサシン

【真名】ヘンリー・ハワード・ホームズ(ハーマン・ウェブスター・マジェット)

【出典】20世紀初頭、アメリカ

【性別】男

【ステータス】筋力D+ 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運A 宝具B+

【属性】混沌・悪

【クラススキル】

気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】

黄金律:B-
人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶりだが、散財のし過ぎには注意が必要。
なお、社会倫理に則ると効果が落ちる。

精神異常:A
精神を病んでいる。
通常のバーサーカーに付加された狂化ではない。
殺人をルーティンに貶めた彼に、他者の痛みを汲む能力はない。
精神的なハイパーアーマー能力。

情報抹消:C
対戦終了の瞬間に目撃者と対戦相手の記憶・記録からアサシンの能力、真名、外見的特徴などの情報が消失する。
ただし機械的な記録に対しては効果が及ばず、自力で削除する必要がある。

陣地作成:B+++
自らに有利な陣地を作り上げる。
工房の形成を可能としているが、ホテルやモーテルなど「宿泊施設」を陣地化する際にランクが大幅に上昇。
下記宝具の展開が可能になる。

【宝具】

『悪魔が住む白亜の宮(ワールズ・フェア・ホテル)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:陣地内全て 最大捕捉:100人
生前に建築し、殺人に利用したホテルを再現する。
「宿泊施設」を陣地化した際にのみ、展開可能。
陣地化した宿泊施設を「殺人ホテル」に作り替える。
維持にかかる魔力はアサシンのほか、施設の宿泊客が負担する。

宝具化した施設は全ての部屋が秘密の通路で繋がっているほか、覗き穴や隠し扉が備えられている。
密閉することでガス室として機能する部屋、部屋を覆う石綿に火を点けて標的を焼き殺す部屋、地下室までの落とし穴を仕掛けた部屋など多彩なトラップが持ち味。
地下室には拷問器具、外科手術用具が備品として存在、これらを用いて解剖した後、証拠を硫酸槽で溶かす。

これらの秘密のギミックは防音・防臭であり、外部に音や臭いが漏れない。
また、軽い暗示の効果が空間全体に施されており、行方不明者の発覚を著しく遅らせる。
暗示は魔術による物でないため、存在を看破する際はBランク以上の直感・気配感知などの知覚スキルが必要。

宝具展開中のアサシン主従は従業員たちから見て「オーナー」にあたり、従業員達はアサシンの不利になる行動を原則とれない。

【weapon】

「凶器」
メスや鑷子など、外科手術用の器具。また返り血を防ぐ手術衣。

「外科知識」
医師免許を取得しており、開業医になれる程度の知識と経験を持つ。



【人物背景】

アメリカ・ニューハンプシャー州で生まれた実業家。
家庭においては父親から暴力を振るわれ、学校ではイジメを受けていた彼は、やがて「死」に対して強い興味を抱く。
成人後、各地で犯罪に手を染めて暮らしていた彼は、シカゴ万博の来場者向けに巨大な宿泊施設を建設。
目を付けた宿泊客を連れ去り、その生命を奪っていく。
"趣味"を"ビジネス"にする事に成功した彼だったが、万博終了後に客足が遠のくとホテル経営からあっさり手を引いた。

犯罪行脚に戻ったのち、保険金狙いの殺人が露見したことで逮捕。
その陣地の全容、犯した大量殺人も公に晒された。
自供による被害者数は27名だが、行方不明者数や遺品から200名以上が犠牲になったと考えられている。

特に信念があるわけではなく、趣味を仕事にしただけの人物。
外見は映画俳優のような二枚目の白人男性。垂れ目、垂れ眉の温厚そうな雰囲気。


【聖杯にかける願い】
受肉。願望を叶える力が余るようなら、それで所持金を得る。



【マスター名

浦上

【出典】

寄生獣(原作版)

【性別


【Weapon】

なし。

【能力・技能】

「人間看破」
人間を使って遊ぶのが好きで、虐殺や食人などの禁忌に耽る。
その経験から、人間に擬態した「人外」を異能などに頼ることなく判別できる。
完全な人外でなくとも、相手が「人間でない部分」を持っている場合、感覚で理解できる。

【人物背景】

人間に擬態し、人間を喰らう生物「パラサイト」狩りに利用されていた死刑囚。
指名手配中の殺人犯だった彼は潜伏中、パラサイトの存在に興味を抱き、彼らの殺人を見に行く。
現場に残された痕跡から自分と同程度と軽く失望した所、その場に現れた警察官に逮捕されてしまった。

市役所において行われた、自衛隊と警察による掃討作戦にも参加。
その際に通常のパラサイトを超えるパラサイト、後藤と遭遇するも運よく生存。
監視役の刑事を射殺して逃亡した。
「最終話 きみ」開始直前から参戦。

人間を共食いする生き物と捉えており、自分こそ本能に従う正常な「人間」と定義している。

【聖杯にかける願い】

自由。さし当っては警察に追われる現状をどうにかしたい。新一と接触するかどうかは、脱出後に決める。

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最終更新:2017年05月20日 21:47