不思議の国の……

平凡な日常。聖杯戦争の舞台として設置された冬木市は、無縁の人々が住処通う場所でもある。
これより始まる非日常など知る由も無く。
または、自分たちが巻き込まれる事を夢にも思わず。


普通の。
ありふれた。
いつも通りの生活を。

朝も、昼も、夜も。学校も職場も道楽も食事も、家事も会話も、勉強も犯罪ですら。
幾度も、何度も、何篇だって繰り返す。
彼らは知らないから。
知らなくとも、強烈に違和感を与えてくる。


狂ってる。
彼らはきっと狂ってる。少女は思う。
だから少女が「こんにちは」と誰かに声をかけてみるのだ。
そして、誰に対したって少女が真剣な、それでいて、どこか遠くを眺める眼差しで口を開く。


「突然、ごめんなさい。大事なお話しがあります。ここで聖杯戦争が行われるんです。だから早く逃げて下さい」






―――からん、からん。



ここは冬木市の一角にある喫茶店。年季の入った独特の趣を漂わすここは、夜間はバーとして経営されている。
正直、あまり景気の良い感じはしない。
むしろ、バーの方が評判で、折角手伝いをしている少女が哀れに思える。
扉が開かれたベルに、少女が「いらっしゃいませ」と大人しい声色で挨拶をした。
歓迎するべきお客様かと、少女も内心期待を秘めて居たが。

実際に現れたのは、金髪に青い瞳の外国人。
青いワンピースに白のエプロンドレスという現代では奇抜ながらも、違和感なく着こなす少女。
丁度、店番をしていた少女と同い年くらいだろう彼女は。
何を隠そう、聖杯戦争で召喚されるサーヴァント・バーサーカーである。
疲れ切った様子で近くの席に腰掛けるバーサーカーを、ポカンと眺めるはマスターの香風智乃だ。


「バーサーカーさん、どうしましたか」

「ねえ。マスター。私、今日も色んな人に声をかけたの。聖杯戦争のことを教えたくって」


でも、とバーサーカーが異国ならではのオーバーリアクションの素振りで嘆く。


「やっぱり誰にも信じて貰えなかった。それどころか、お巡りさんを呼ばれて質問攻めされたわ!
酷いわ。私の事、頭のおかしい子って……変な病院に連れて行かれそうになったの!!」

「えっと……」

「私は嘘を言っていないし、ちゃんと真実を伝えたつもりなのに」


気を紛らわせようと、智乃がカプチーノをバーサーカーに差し出しつつ。
平静に答えた。


「無理に頑張らないでください。聖杯戦争なんて、現実じゃありえないことですから」

「だけど。どうして誰も私の話を聞いてくれないのかしら。
ねえ、マスター。この世界は――思ったのだけど、大分おかしいわ! 絶対に変よ。
ここに居る人たちは悪口を平気で言いふらすし、暴力だってそう。狂ってるのよ」


バーサーカーは決めつける。
皆、狂っている。
だけど、一番に狂っているのは、やっぱりバーサーカーだった。
彼女は勇敢で、礼儀正しく、真実を語るが、要は現代の世界を理解せず。
典型的な「空気の読めない人間」と化している。


「マスター。もし、戦う事になったらどうすればいいのかしら。誰も町から避難してくれなかったら……
いくら頭のおかしな人達でも、誰も巻き添えにしたくないの………」

「……そうですね」


だけど、バーサーカーの言葉に正解もあった。
聖杯戦争が逃れられないと知った智乃は、バーサーカーと同じ考えだった。
一体どうやって町の被害を抑えれば……自分が、ここから離れれば良いかもしれない。

それは簡単な方法だが、智乃は一人孤独。当ても無い放浪をするのに不安を覚えた。
情けない、少女らしい恐怖だ。
しかし、当然のことで恥じることはない。


「私は聖杯が欲しい。これは確かなことなの、マスター」

「はい。分かっています……」

「ごめんなさい、マスター。こうでもしないと……パパやママ
ううん。お父さんとお母さんのところに帰れないみたい。どうしても帰りたいわ」

「私も同じです」


智乃は人知れず頷いた。
元居る世界に。家族や友人たちの、平凡な世界へ帰る為に。
バーサーカーの心情は、どこか悲しげな表情を浮かべる少女と自分は同じだと思う。


「帰る為に頑張りましょう、バーサーカーさん」

「ええ。ありがとうマスター。一緒に帰りましょう」







ここはどこ? 帰れない。
帰りたいの、帰れなくなってしまったの。
体も痛い。さっき、首を切られたせいで、痛くて痛くて痛い痛い痛い。
こわいよう。つらいよう。たすけて。


パパ、ママ、お姉ちゃん…………



だけども、私はこの狂った世界から逃れたいの!!






【クラス】バーサーカー

【真名】アリス@不思議の国のアリス

【ステータス】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:E 宝具:A

【属性】秩序・狂

【クラススキル】

狂化:EX
狂ってない!狂ってない! 狂っているのは私じゃあなくって、お前らだ。
アリスは相手を狂っていると思いこんで、自身は正常だと訴える。
相手が狂人の場合は、不思議とアリスは正常になる。

【保有スキル】

戦闘続行:A++
往生際の悪さ。ハートの女王に首を刎ねられてもなお、元の世界に帰りたい一心で
彷徨い続けている、最早屍。死に底ないの魂。

反骨の相:C
権威に囚われない、裏切りと策謀の梟雄としての性質。
同ランクのカリスマなどのスキルを無効化する。

【宝具】

『大なり小なりは掌で踊る』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~300 最大捕捉:500人
不思議の国で拾った様々なアイテムで巨大化したり、逆に豆粒程度になったりと体を変化するもの。
アイテムはマスターも使用可能なのだが、一度使ったアイテムは今聖杯戦争において使用不可となる。

『言語の秩序を齎す剣(ソード・オブ・ヴォーパル)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~300 最大捕捉:500人
理解不能の怪物・ジャバウォックを葬ったとされるヴォーパルの剣。
アリス曰く、いかれた世界を彷徨う最中に発見したらしい。
超巨大の特攻を持っており、宝具名開放と共にセイバーの剣定番の強大なビームを放つ。

【人物背景】

不思議の国のアリスの主人公。
彼女は所謂、平行世界の存在であり。現実に帰れなかったIFのアリス。
ハートの女王に首をはねられ、永遠に不思議の国を徘徊する怨霊に近い。
礼儀正しく、良くも悪くも秩序的。確かに正論を言うのだが、いつも空回りする。

【特徴】

外見は絵本でも有名なアリスの容姿。智乃程度まで成長している。

【聖杯にかける願い】

家族のところに帰りたい



【マスター】

香風智乃@ご注文はうさぎですか?

【weapon】

コーヒーに詳しい程度の能力

【人物背景】

感情表現が乏しい、クールで大人しい中学生。
ごくごく普通の少女で、喋る兎が身近にいる以外は何らおかしいなことはない。
平凡な日常を謳歌していた。
不思議の国のアリスのように、ある日突然、聖杯戦争へ巻き込まれる。

【聖杯にかける願い】

生きて帰りたい。

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最終更新:2017年05月20日 22:45