わるいこどこだ

今朝のニュース。全く前兆なくニュースキャスター語られるのは、ありえそうで。
それでいて、ありえない事件。現代社会においては不可能に等しい。謎めいた犯行。
大規模な――連続児童誘拐事件。
現実問題。児童誘拐は今日に渡って、未だ撲滅に至っておらず。

今回の犯行は、冬木市内でも数十件。
テロリスト、犯罪組織の影がちらつき、誘拐犯から正確な身代金要求もないにも関わらず
迅速な捜査本部が設置され、早くも周辺住民への聞き込みを開始している。
シナリオで描かれたような美しい連携体制に、事件解決を願う人々は多いのだ。


一方。
謎の誘拐犯を利用し、子供を持つ大人たちは口々にこう言い聞かせる。


「いい? 悪い事をしたら『怖いお化け』に連れ去られちゃうのよ」


果たして冗談めいた恐怖を、子供は鵜呑みするだろうか?
実際、信じる少年少女は実在していた。
世間は誘拐犯で騒ぎ、彼らが足を運ぶ幼稚園・小学校などでは教員・保護者らが警戒心を張り巡らせている。
雰囲気位、子供は敏感に感じられる。日常じゃない。周囲の様子は不穏で異常だ、と。

悪い人なら、お巡りさんが捕まえてくれる筈。
じゃあ、これが『怖いお化け』の仕業なら誰が助けてくれるのか。

恐怖は『感染』するものだ。
伝承や伝説は、現代みたいに情報が巡り巡るハイテクな世界じゃない。噂が有力な情報の一種に違わない。
過去に遡ると全ての人間が文字を読み書きしておらず。
第一、記録媒体ですら明確な証拠は皆無だ。

ならば――現代はどうか?
情報媒体が豊かで、神秘が希釈され、警察に守られている錯覚を頼りに、安堵に満たされた退屈な世界。
きっと、あらぬ陰謀論がネット上で議論されようが無意味だ。
けれども、安直に『お化け』の犯行を認める声がない。

誰もがテロリスト等の犯罪者が行ったと思いこんでいる。
誰もが自分には無関係だと思いこんでいる。
誰もが『お化け』を信じていない。


子供は恐怖するが、大人は恐怖しない。


また、誰かが居なくなった。



次は子供じゃない。



オマエだ。



□   □   □


ボクはお腹一杯になりそうだった。ボクだってサーヴァントだけど、不思議だね、疲れて来ちゃったよ。
今日もボリボリ、悪い子食べてお終い。
ボクはいいから皆がお食べ。
皆は、夜道を巡回して、色んな家の様子を伺って。
少し力が湧くから、『皆』の誰かが『悪い子』を食べたんだね。

ボクはとてもとても不思議なんだ。
どうして『悪い子』がこんなに沢山いるんだろうって。
まだ大人じゃない『子供』が、真夜中で外出して遊び呆けているのに、大人は知らん顔してる。
悪い子には『ボクたち』がやってくる。そう叱りつけたりしないんだ。


ボクは


ボクたちは


ずっと悪い子ばっかり食べてきたけど、でも、でもでも、漸く分かったんだ。
悪いのは子供だけじゃない。
大人も悪いんだって。


じめじめした川の辺で蹲っているボクのマスター。
ボクを召喚してくれた『とっても良い子』。
マスターは酷い大人のところに居たよ。
お風呂にも入れてくれない。食事もくれない。遊ばせてもくれない。何もしてくれない。

マスターは『悪い』大人を殺した。
ボクは言ったよ。


「マスター。悪い大人は殺していいんだよ。それともボクは食べちゃおうか」


マスターは言う。


「俺は殺したいから殺した」


ボクは「それは駄目だよ」と教えてあげた。


「マスター。悪いヒトを殺しても、誰も何も言わないんだよ」

「悪い奴だから殺したかった訳じゃない」

「うん。マスターは良い子だね。正直者だよ」

「嘘はつかないし、つきたくねぇ」


でも、とっても変な事なんだ。
マスターは本当に良い子なんだけど、やっぱりヒトを殺したくなっちゃうみたい。
昨日は女の人を殺して。
一昨日は同い年くらいの男の子を殺して。
悪い事をしているのが問題じゃない。マスターも急にヒトを殺したくなるんだって。

多分それは病気なんだと思った。
ボクはお医者さんじゃないから、分からないけど。
お医者さんだったら、きっと直してくれるよ。ボクは考えた。


聖杯はマスターの病気を治してくれる。


「ボクはお医者さんじゃないから、何も出来ないや。ごめんね、マスター」

「俺はザックだ」

「じゃあ一緒に遊ぼうよ。ザック」


子供なのに、マスターは遊ばなかった。
どうして?
って聞いたら、遊び方が分からなかったみたい。でも、遊び方を教えても、マスターは僕と遊んでくれなかった。
やっぱりマスターは、病気なんだとボクは納得した。



■   ■   ■



俺の目の前に現れたのは、お化けだった。
針金みたいな化物。
包帯まみれでガリガリなのは俺っぽいなと感じる。多分、俺みたいだから俺の前に現れたんだろう。
お化けは、アホみたいに遊びたがってた。
ムシャムシャ、他人の前で子供とか喰う癖に。
俺と遊びたがってる。やってる事が無茶苦茶な奴。

あいつは俺が病気だと言ってた。
こんな包帯まみれじゃ、勘違いされても仕方ないだろう。
あいつは病気を治す為に聖杯を手に入れよう、って言ってた。
だったら病院に連れて行った方がマシじゃねえか。
金も何もないし、門前払いされる。
大体、聖杯ってなんだ。戦争とか、難しい事はサッパリだから考えないことにした。


とにかくお化けをどうにかしたい。
多分、こいつは俺を殺すんじゃないかと思う。
普通は、自然とそうなる。
俺は訳分からないまま死ぬのは真っ平御免だった。

死にたくない。

俺はゴミ山から食べられそうな物を口に含んで、いつもの河川の橋下で眠りについた。




【クラス】アサシン
【真名】ブギーマン@民間伝承

【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:E 魔力:D 幸運:D 宝具:D

【属性】
混沌・善


【クラススキル】
気配遮断:C
 完全に気配を絶てばサーヴァントでも発見することは難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。


【保有スキル】
怪力:B
 魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
 一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。

気配感知(悪):A
 「悪い行い」をした気配のみ感知する。
 ただし、これはブギーマン本体の「悪」の基準であって
 法律上や倫理上における「悪」は愚か、真夜中まで起きている子供や
 親の言う事を聞かない子供まで対象にされてしまう。


【宝具】
『例えば何処かの隙間から現れる怪物(ブギー・ブーギ・ボギー・ボガート)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1~
 ブギーマンはどこからともなく現れ、そして悪い行いをする子供を攫い、捕食する。
 ひとくくりに『ブギーマン』と称しても、酷似した伝承・怪物・魔物は多く存在しており。
 ブギーマン単体で見たとしても、男性だったり女性だったり。
 姿形は千差万別、十人十色、土地柄や国でも異なる。日本の場合は『なまはげ』がソレである。

 この宝具は様々なブギーマンの側面が分身となって
 広範囲――ブギーマン本体が死亡しない限り――に渡り行動する。
 疑似サーヴァントに近いが、消滅しても魔力が供給される限り、分身らは復活を続ける。



【人物背景】
悪い事をするとブギーマンに攫われるよ!
大人からすれば恐怖を利用した教育。
けどけど、それが形となったのは誰のせい?


【特徴】
ボロボロの包帯塗れの男。
体は針がねのように細く、手足腕も異常な長さで全長は裕に3mあるだろう容姿。


【聖杯にかける願い】
マスターの病気を治す



【マスター】
アイザック・フォスター@殺戮の天使

【weapon】
ナイフ
 孤児院を経営していた夫婦を殺したもの


【人物背景】
後に何人もの命に手をかける猟奇殺人鬼の幼少期。
殺したいから殺す。
火傷を隠す為に、全身包帯まみれ


【聖杯にかける願い】
死にたくない

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最終更新:2017年05月31日 23:24