若葉&ライダー

艦娘と呼ばれる存在には、様々な解釈や考察が飛び交うが、自然として戦艦の擬人化と捉えるのが
正常であろう。『さそり座』のカードを手にする艦娘・駆逐艦の若葉もその一人。
彼女は、何故自分がここに居るのか記憶が曖昧だ。
メジャーな艦娘同様。若葉も某鎮守府に所属しており、確か、提督から出撃命令を受けた。
『さそり座』のカードをどこで拾ったか。

若葉の前には幻想的な河川が広まっている。
水晶細工の銀杏並木を通りぬけて、海岸へ到着すると砂浜の砂は全て月明かりで輝く。
若葉が砂をすくってみようとしたら、『さそり座』のカードが手元に無いのを自覚した。
落としてしまったのか。若葉が振り返ようとしたが、砂を観察してみると、砂も水晶で構成され、
中で炎が命の輝きめいて燃え盛っていた。


「こんばんは」


いつの間にか、若葉の隣にいた少年が話かける。
驚かない若葉だったが、それは特別に少年が異常だった訳でも、敵意が垣間見えた風でもない。
美しい銀河に満ちた夜空のお陰か、若葉も警戒心はない。
若葉は会釈だけし、沈黙する。
元より彼女は無口無言だった訳じゃないが、言葉短いのが常だ。
少年も困ったようで、若葉はどうにか話す。


「カードを探している」


目をぱちくりさせ「カード?」と少年が繰り返して、若葉が「さそりが描いてある」と付け加えた。
少年は空を眺め、思い出したかのように語る。


「蠍の火って知っているかい」

「いや」


少年が簡単に「蠍の火」を説明してくれた。成程、と。若葉は納得する。
確かに自分もかつて戦争で必要とされた兵器でしかなかった。
今は『艦娘』として人々と世界の為に戦う。
誰かのために生きる。
誰かの幸せを守るため。
嗚呼、きっと自分もそうだった。そうだと、信じたい。
煌く水面を観察する若葉に、少年は尋ねた。


「ぼくはカムパネルラ。君は?」

「若葉だ」

「君がぼくのマスターだよね」

「……ああ」



☆   ☆   ☆   ☆



聖杯戦争か。若葉は、先ほどの幻想的な光景が己のサーヴァント、ライダーの宝具による物だと知った。
あの『さそり座』のカードが、ライダー・カムパネルラを召喚する切っ掛けだったということを。
若葉は、少しだけ体を震わせていた。
戦争――即ち、死者が必ず出る。若葉の手には、砂浜で拾った水晶の砂が残り、爛々と炎が燃え続けていた。
若葉が送られた戦場の舞台・冬木市に明かりは充実しており。
もし、水晶砂粒の炎の真価が発揮するとなれば、きっと世界が暗黒に飲み込まれた時だろう。

ここでは普通に人々が暮らしている。
何故だろうか? 若葉が思うに、冬木市民の様子は息抜きでも、作られた平和じゃない。
自然と都市が両立した世界と、そこに生きる者は仮装でしかないのか。
同じように聖杯戦争へ参加されたマスター達の動向は、どうだろう。

聖杯という願望機を考えれば若葉がしばし光景へ視点を向ければ、無辜の人々の様子がうかがえる。
若葉は、カムパネルラのことを脳裏に浮かべて、また体を震わせた。
平静を装っているが、どうも最悪の可能性を過らせる。
なんでか自分がここに居る過程が漠然で、ひょっとしなくても酷い事が起きたんのではないか。
自分と一緒に出撃した仲間たちも。
大体、生きているなら鎮守府に戻らなければ申し訳ない気持ちで一杯になる。


「ライダーはどうする」


カムパネルラが『聖杯のこと?』と確認して唸った。焦りはなく、どこか恥ずかしい様子で。


『ぼくは「蠍の火」になりたいよ』


成程。若葉は納得する。最初から答えは一つだけだった。
若葉は一方で、呆気ないほど単調に言う。


「生きる人を助ける」


現在を生き続ける冬木市民と自分と同じマスター達。
どういう人間で、どんな者であれ、誰かの幸せの為に体を燃やす『蠍の火』に魅入った。
それが自らの使命だと信じる。
冬木の空にも星の煌きが美しく栄えていた。





【クラス】ライダー
【真名】カムパネルラ@銀河鉄道の夜

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:A 宝具:A

【属性】
秩序・善


【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:B
 大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。


【保有スキル】
蠍の火:A
 このスキルを持つカムパネルラが居る周囲の精神干渉を無効化する。
 効果範囲はレンジにしては1~10ほど。

エンチャント:C
 概念付与。他者や他者の持つ大切な物品に、強力な機能を付与する。
 カムパネルラが施すと、銀河幻想世界染みた煌びやかな雰囲気が漂う。


【宝具】
『銀河の海を往く天の国』
ランク:C 種別:結界宝具 レンジ:1~500 最大補足:1~100
 カムパネルラが視た、それとも彼の友が視た、銀河の海に広がる幻想世界を再現する固有結界。
 水晶の砂粒のある河川。お菓子みたいな鳥。思わず讃美歌を唄い出す幻惑など。
 固有結界にあるアイテムなら、宝具を解除した後も持ち出しが可能。
 (登場する者物については原作参照)


『不完全幻想第四次銀河鉄道』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:50 最大補足:1~100
 幻想第四次とは物理学的なものではなく、夢の中ではあらゆる意識が過去・未来の時間を超越し、出現する意味。
 所謂、この列車は「どこにだって行けてしまう」を実現できる代物。
 列車として現実世界に出現させられる。水面や上空を物理を無視し、走行することが可能。
 マスターがライダーと意志を合わせ、夢の中でのみ特定の事象を観測できる。
 ある程度の未来観測。あるいは、英霊の過去を観測する事も可能だろう。
 ただし、マスターが途中で眠りから覚めてしまう等で観測が中断される。


【人物背景】
誰かの幸いの為に死んだ一人の少年。

【特徴】
カムパネルラはイタリア語圏の人名。恐らくイタリア系の少年であろう。
短髪で穏やかな雰囲気を漂わす。

【聖杯にかける願い】
蠍の火のように、マスターの為に行動する




【マスター】
若葉@艦隊これくしょん

【weapon】
12.7cm連装砲

【人物背景】
初春型駆逐艦3番艦『若葉』の擬人化に当たるような存在。
某鎮守府に所属し、出撃したはずだが……

【聖杯にかける願い】
今を生きる人々を守る

【星座のカード】
さそり座

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最終更新:2017年06月05日 23:01