その空間を見て諸人が真っ先に思い描く二文字の言葉は、『宇宙』、であろうか。
光を差しても、その光自体が吸い込まれてしまいそうな程、空間に満ちている闇は、黒く、深く、広大であった。
宇宙と言うにはその空間は、宇宙を象徴するべきものがなかった。
『星』である。強く輝く恒星の煌めきも、烈しく燃え上がる太陽の焦熱も、色彩の鮮やかさを見せる惑星のグラデーションも、この宇宙にはない。
代わりに、この空間に漂っているものは、残骸……敢えて酷い言い方をするのであれば、ゴミ、であった。
幾千ものパーツに分解されこそすれ、辛うじて『軍艦』だと解る、船に似た巨大な鉄の塊が浮いている。
機銃やミサイルの直撃を受け、完膚なきまでに破壊されこそすれ、翼に似た形状から、戦闘機だと解るものもある。
使い古され、砕け散った自動小銃や拳銃に、錆び付き折れてしまった剣の類も、空中の埃のように漂っている。
人骨や獣骨すら、この空間では珍しくなく、普通であるかの如く漂流している。此処はまるで、宇宙の一角にあるゴミ捨て場のようであった。
およそ、生命の気配が欠片とすら感じられないこの空間に、一人、男がいた。
縦に走った深い切り傷のせいで右眼の視力を失った事が解る、青みがかった緑色の長髪を持った青年である。
斯様な傷がなければ、暗い雰囲気を纏いながらも、それが何処か、男の生来の物と思われる陰性の美を際立たせる美青年として女性が放っておかなかったろう。
そんな男が、一人の男を抱きながら、遠い所を見つめていた。緑髪の青年に抱かれる男は、全身黒ずくめ、黒髪をオールバックにした成人男性だった。
眠る様に、その人物は瞳を瞑り、緑髪の男に背を預けている。いや、眠っていると言う割には、寝息の一つも、そのオールバックの男は立てていなかった。
さにあらん、その人物――『仙水忍』は当の昔に殺されていた。彼の後輩、三代目の霊界探偵に当たる、浦飯幽助との、全力の戦いを心行くまで楽しみ、
後悔も何も無く、満足で心と身体を満たされたまま果てた。それを象徴するように、仙水の表情には、苦しみも怒りもない。安らかな死に顔が、いつまでも刻まれていた。
時間や空間の概念がない、この亜空間を一人と一個で漂い始めてから、一体どれ程の時間が経過したであろうか。
十年経ったのかも知れない。百年以上かも知れない。事によっては、一ヶ月、いや、一日すらまだ、と言う可能性すらあろう。
緑髪の青年は、何も語らない。仙水……、死臭を放つ、己の相棒にして、恋人、己が死ぬまでその様子を眺めていたいと思っていた人物。つまり、『全て』。
そんな男が死体になっているのだ、話し相手になどなれる訳がない。だがそれでも良かった。仙水の冷たい身体を、その手で抱けているだけで、彼は安心出来た。
それは、実に虚しい安心だった。もう何も、動的な反応を示さない男と一緒にいるだけで得られる安心感に、如何程の価値が、あると言うのだろうか。
「仙水……お前の魂は今、何処を彷徨っているのだろうな」
嘗て、男は仙水に殺されかけた。
彼は、霊界探偵として既にその勇名を馳せていた仙水のターゲット、つまり、殺されて然るべき妖怪であったのだ。
だが何の偶然か、偶然にも彼は仙水の気まぐれで助けられ、そしてそのまま何の因果か、彼のパートナーとして活躍した。
男は仙水の事を、時限爆弾だと認識した。そして、恋人だとも思うようになった。
彼は、嘗て仙水に殺されかけた事など微塵にも恨んでいないし、寧ろあれは、必要な出会い方であったとすら思っていた。
そうと思っていても、彼は、仙水が傷付き、堕ちて行く様子を見たいと願った。魂が俗世と悪徳の塵埃で汚れ、擦り切れて行く様子を見て絶頂に浸りたいと思った。
人間の醜さ、露悪さ、愚かさを見て、仙水は嘗ての姿から変わって行った。それで良いと思っていた。新雪のように無垢で、汚れないキャンパスの様な可能性を持った男。
そこに、自分だけのイラストを描けると言う自由を、彼は、何よりの褒賞であると思った。
――その褒賞と満足の果てが、これであった。
仙水の肉体は、醜さと死の象徴である腫瘍と病でこれ以上となく汚されきった。
それなのに、男が汚したと思っていた仙水の魂は、その実、初めて邂逅した時純白さからずっと変わっておらず――永遠の白を保ったまま、何処かにふらりと抜け出て。
結局、男に残されたのは、死臭を放ち、体内の汚れた聖者の亡骸だけで。それはまるで、一人の男が汚れ堕ち、魔道に逸れて行くのを楽しんでいた男に対する罰であるかのようで。
「お前は結局、俺の事をそんなに信用していなかったのだな」
病魔が齎す想像を絶する痛みにも、仙水忍は弱音を吐かず、仙水忍を演じきった。その気高さに、男は悔しさを覚えた。
そして、純粋さが失われて行くフリを演じつつも、仙水忍の魂はその実、無記のノートのように真っ新で。その事に気付いた時、男は、自分の愚かさを知った。
仙水の恋人としても、仙水を堕落させる悪魔としても。男は――『樹(いつき)』は、落第点を割っていたのである。
死臭の聖者を抱いたまま、樹は、ふと、眼前に現れた、一枚のカードを取り出した。
残骸と廃墟のみが漂うこの亜空間の中に在って、新品同様の煌めきを放つそのカードに何を見たのか。男は、すっと其処に手を伸ばした。
◆
「防腐処理、終えましたよ。マスター」
「ああ、すまない」
中央の未遠川を境界線に、東側が近代的に発展した新都と、西側が古くからの町並みを残す深山町とで分けられた地方都市。そこが、冬木市である。
その、冬木市は新都の存在する東側、その外れも外れには、打ち捨てられて百年以上は経過しているのではないか、と言う時の重みを感じさせる、
廃洋館が存在していた。只ならぬ妖気を常に発散し続け、夜になれば鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)や幽霊(ゴースト)の類が、肩で風切り闊歩しそうな雰囲気が、
割れた窓ガラス、表面の剥げた外壁、壁面を伝う植物の蔓等の小道具(アクセント)が強く発散していた。余りにも無気味なので、近隣の住民は近付きすらしない。
大学生が時折度胸試しがてらに足を運ぶ事もあるが、只ならぬ妖気を彼らですら感じ取るのか。内部がどうなっているのかを確認して来た者は一人もいない。
こんな調子であるからか、付けられた名前が幽霊屋敷である。余りにも直球であるが、その名前が伊達でも何でもない程、成程、
その建物の雰囲気は幽霊屋敷のそれそのものだった。遥か昔に死んだ屋敷の主人の亡霊が、今も屋敷の中を彷徨っている、と言われても、大人ですら信じてしまいそうなオーラを、この建物は発散していた。
其処が、樹と、彼の召喚したキャスターの居城であった。
聖杯戦争。それについての知識は既に頭に刻み込まれている。突飛で、あり得ぬ話だと鼻で笑わない。
そもそも樹は、魔界で生まれ育った妖怪であり、人間ではないのだ。こんな、普通の人間ならあり得ない話だと一笑に附すような事でも、すんなり受け入れられる。
そして、この催しが、自分以外の全ての主従を殺して初めて完遂される、と言う血塗られた催しである事も、然り。妖怪であるからこそ、樹は、人間を殺す事に何の躊躇いもないのであるから。
「マスター」
「何だ?」
樹の召喚したサーヴァントは、控えめに言っても、美しい女性だった。
露出の少ない黒いモーニングドレスに、黒いトークハットを被る、水色の姫カットの淑女。
まるで、喪に服しているかのような、黒尽くめのその恰好。ベッドの上で、仰向けになっている、恋人だった男を、樹は思い出した。
美しいばかりか、纏う雰囲気も、その言葉遣いも、淑女として洗練されている。常日頃から、このような立ち居振る舞いと口調でなければ、此処まで磨かれた女性らしさは演出出来ないであろう。
「其処の殿方は、既に亡くなっておられるでしょう?」
「ならば、防腐処理などもする必要がない、とでも?」
「ええ、まぁ」
モーニングドレスのキャスターは、次に自分が言う筈だった事を樹に取られ、歯切れの悪い返事をするしかなかった。
「解ってるさ。其処にいる仙水忍は、もう動く事もないし、言葉を発する事もない。正真正銘、仙水忍であった物に過ぎない」
目線だけを、キャスターに樹は送る。
「解っていてどうして、埋葬なりなんなりしてやらない、とでも言いたそうだな」
「ええ。然るべき所に、魂を導かせて上げてもよろしいのでは?」
「その導かれる所に行きたくない、と言うのが忍の遺言なんだ」
直に、樹は反論した。
「忍を埋めてしまえば、その亡骸も、魂も。霊の国へと行ってしまいそうでね。其処には絶対に導かれたくない、と。彼は俺に言っていた。ならば俺は、彼の遺言に従うしかないじゃないか」
「――だが」
「彼の身体が、朽ちて行くのを見るのは俺は耐えられない。だから、お前に命令して、腐らないよう処理して貰ったんだ。すまなかったな」
仙水の身体がこれまで全く腐る素振りすら見せなかったのは単純な話。
樹達のいた、あの次元と次元の間に存在する亜空間が、熱もなく、細菌も存在せず、何かを腐らせる要素が欠片も存在しない世界だったからである。
それが、冬木市と言う空間に来てしまえば、どうなるか。当然、死体である仙水忍の身体は、朽ちて分解される。それは、樹には許せない事柄である。
自分と一緒に仙水の亡骸までこの世界に導かれてしまったのは、正直樹としても予想外のエラーであった。だからこそ、彼は真っ先に、
己の召喚したキャスターに、仙水の防腐処理を命じた。幸いにも、死体の見つかり難い幽霊屋敷と言う場所もあり、その儀式は目立たず終える事が出来た。
これでさしあたって、樹の憂いは消えてなくなった、と言う訳である。
「この、忍、と言う方は、お友達ですか?」
「恋人さ」
ピクッ、とキャスターが反応した。
「俺は、忍の全てを独占したかった。喜びも、哀しみも、強さも、弱さも、醜さも美しさも。全て、俺は見ていたかった。そして、堕落して行く様もな」
「狂っていますね」
「同じような言葉、言われた事があるよ」
「いいえ、貶した訳ではありませんわ。愛に狂ったからこそ、その愛した者に世話を焼き、奉仕し、時に、破滅させる。私はその事に理解がある方ですの。貴方の愛は、とても、私達寄り。好感が持てますわ」
そう淀みなく口にするキャスターの瞳を、樹はジッと見つめた。
この目は、憶えがある。いつか鏡で見た、自分の瞳と、全く変わらない目であるからだった。
「貴方は、忍と言う方の愛を独占出来たのですか?」
「……ふっ」
思わず、そんな笑みを零してしまう樹。それは彼なりの、得られなかった、と言う意思表示。キャスターも、その意を得たようである。
「私にも、貴方と同じように、恋をしていますの。そしてその人物は、私の統治する妖精境で、今も大人しくしていますわ」
一呼吸、其処でキャスターは置いた。
「でも、私がどんなに睦言を投げても、彼は心無い相槌を打つだけ。言葉は私に向かって投げられているのに、瞳と意識は、何時だって私に向けられない。向けた事がない。それが、私にはとても悔しい」
「そして何よりも――」
「彼――『マーリン』が何処かに行ってしまいそうで怖い。私の統治する世界にあの時フラッと立ち寄った時みたいに……、私の妖精境を、フラッといつか立ち去りそうで……私は、気が気でならない。私は――永遠に彼を、独占していたい」
瞳が、狂愛の色を帯びてきた事を、樹は見逃さなかった。
目の前の女性は、正味の話、B級妖怪に過ぎない自分よりも遥か上に位置する存在である事を、樹は初めて見た時から気付いていた。
自分の様な男に、彼女が何故宛がわれたのか、今の今まで樹は理解していなかったが、今になってその訳を樹は理解した。
この女性――『ヴィヴィアン』と呼ばれる妖精の女もまた、自分と同じく、一人の男の愛に狂って焦がれているのだ。
彼女と彼の違いは、その恋人が生きていると言う事。樹は、仙水に対してやれるべき事は全部やれたと、仙水が死ぬ直前までは思っていた。
だが、そんな物はまやかしであった、勘違いであったと気付いたのは、彼が死んでからだった。死んだ今、樹は初めて気付いた。やれていない事の方が、寧ろ多すぎた事に。
仙水を、もっと堕落させたかった。汚したかった。綺麗にさせたかった。喜ばせたかった。
聖杯の知識が頭に刻まれた瞬間、その思いはより一層強くなって行く。自分は今、忍ともう一度、映画を見る事が出来るのだ。
ヒットスタジオに出ていた戸川純を一緒に心待ちする事も出来るのだ。そう、万能の願望器である聖杯があれば。死者が蘇る、と言う奇蹟ですら。不可能ではない。
「キャスターは、聖杯をどうしたいのだ?」
「星が定めを終えるまで、マーリンを独占します。私は、彼に何処かに行って欲しくありませんから。貴方は? マスター?」
「俺か……俺は……」
顎に手を当て、考え込む。瞼の閉じられた仙水の方に目線を向け、樹は、口を開く。
「……忍の魂が、何処に逝ったのか。その行方だけを知りたい」
忍を蘇らせたい、と口元にまで出かけた所で、樹は思い直した。
仙水は、人間が嫌いな男だった。人の醜さと悪を憎悪した、そのせいで世界を破滅させかけたピュアな男。そうなるべく、誘導したのは樹の方である。
皮肉であった。そう言う人物になるまで放置したせいで、樹は仙水をこの世に蘇らせると言う事が出来なくなっていた。
仙水が、自分の嫌いな人間達の世界に再び十全のコンディションで蘇生させて、喜ぶ人間ではない事は他ならぬ樹がよく知っている。
知っているからこそ、復活させられない。だからこそ、仙水忍の魂が何処で何をしているのか、と言う事を知りたいと言う慎ましやかな願いしか願えない。
そう、全ては樹自身の身体から出た錆であった。仙水忍と言う個人を放置し続けたツケを今、この聖杯戦争でも樹は支払わねばならないのである。
「忍さん、という方の愛の割には、大人しい願いですのね」
「……そうだな」
悪意を込めた訳でもない、ヴィヴィアンのその一言に、樹は、少しだけ哀しくなった。
これが、カルマか。仙水の方を見て、樹は思う。安らかな、眠るような仙水の死に顔だけしか、今の樹には映っていなかった。
【クラス】キャスター
【真名】ヴィヴィアン
【出典】アーサー王伝説、或いは妖精伝説
【性別】女
【身長・体重】162cm、53kg
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:EX 宝具:EX
【クラス別スキル】
陣地作成:EX
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。固有結界そのものである"妖精郷"の形成が可能である。
道具作成:A+++
魔力を帯びた器具を作成出来る。キャスターは妖精文字を完璧に扱える為、そのランクは破格の値。
このランクになると、材料次第であるが、宝具の作成すら可能となる。かのエクスカリバーやアロンダイトを作成したのは他ならぬ、このキャスターである。
【固有スキル】
妖精文字:EX
妖精郷で使われる、妖精の一族のみが知る文字・文法・刻印の習熟度。言ってしまえば、世界の触覚たる妖精達との意思疎通手段である。
呪文・魔力回路を介さず直接世界に干渉し、魔術以上魔法以下の奇跡を体現する。ランクEXはAランクの更に上と言う意味でのEX。このランクであれば昔話・御伽噺で語られる様な奇跡ですら当然のように発動させられる。
魅了:A
魔性の美貌により、老若男女を問わず対象の精神を虜にする。ここまでくると魅惑ではなく魔術、呪いの類である。対魔力で抵抗可能。
英雄作成:A+
英雄を人為的に誕生させ、育てる技術。このランクになると、後世広く名の知られる万夫不当の大英雄の作成すら可能となる。
スキルとして発揮した場合は、任意の相手に戦闘に纏わるスキルをE~Aランクの習熟度でそのスキルを習得させる事が可能。
キャメロットが誇る騎士であるランスロットを育て上げたのは誰ならんこのキャスターである。但し、その教育はスパルタを旨とする。
妖精の加護:A+(EX)
妖精境からのバックアップ。危機的な状況に陥った際に妖精からの支援を受ける事が出来る。
後述の宝具を発動している場合には、そのランクはカッコ内の値へと修正される。
【宝具】
『天上楽土・瑠璃宮殿(ニニュー・ド・ヴォワルル)』
ランク:EX 種別:固有結界 レンジ:- 最大補足:-
キャスターが統治する妖精郷の一部、即ち、キャスターの拠点となるガラスの宮殿とその敷地を固有結界として展開させる宝具。
固有結界内は魔術に長け、戦闘にも造詣の深い数多の妖精達がひしめき合い、異物たる他のサーヴァントを排除しようと動き始める。
また、この宝具を発動している間はキャスターの妖精の加護スキルがEX相当にまで跳ね上がり、キャスターを害しようとするあらゆる攻撃現象を
時に遮断し、時に不可解な程大きく逸らさせ、時にそもそも初めから存在していなかったように消滅させてしまう。
ガラスで出来た宮殿内には、キャスターが戯れに作り上げた、エクスカリバーやアロンダイトと言った、凄まじい性能を誇る聖剣が何本も格納されており、
これを振ってキャスター自身が戦ったり、これらを釣る瓶打ちにして戦ったりと言う芸当も可能。
この固有結界は『巨大なガラスの宮殿を基点』とした世界であり、この宮殿を破壊されれば直ちにこの固有結界は消滅する。
だが、妖精文字でその強度を極限まで高めさせられた宮殿を破壊するのは、生半な対城宝具では不可能な程であり、最も現実的な手段としては、固有結界維持に必要な莫大な魔力の消費を逆手に取った、魔力切れしか事実上方法はないに等しい。
『永久なる愛の楽園(ウィッカーマン)』
ランク:EX 種別:結界宝具 レンジ:1 最大補足:1
キャスターが花の魔術師を永遠に幽閉する為に編み上げた、他ならぬ花の魔術師から伝授された魔術を、自分の狂愛を以ってオリジナルに昇華させた大魔術。
その正体は、四方一mと言う超ミニマムサイズの理想郷(アヴァロン)。この宝具は、キャスターの視認している任意の四方一mの空間を、
現世から隔離された理想郷として設定。五つの魔法や神霊級の魔術をシャットアウトする究極の護りの空間として機能させる。
内部にいる限りあらゆる生命は、老化が停滞し、あらゆる傷が一瞬の内に癒え、如何なる呪いをも癒してしまう、まさに理想郷とも言える空間になる。
この宝具の弱点は、理想郷は一つしか作成出来ない事の一点であり、複数作成する事は不可能。
宝具の中に己のマスターを入れ込む事で、絶対にマスターを護り通す究極の空間にさせる事も可能だが、この宝具の真の使い方は『幽閉』である。
この宝具は敵サーヴァントをも入れ込ませる事が可能であるのだが、この究極の護りは『外』のみならず『内』においても完璧。
つまり、この宝具に匹敵する神秘の宝具でなければ、この理想郷は破壊不可能であり『当該サーヴァントは永遠に其処に幽閉され続ける』。
この宝具の最も恐るべき点は、キャスターが聖杯戦争から退場しても、この『宝具は舞台に残り続ける』と言う一点。
理想郷に幽閉された敵サーヴァントは、戦闘も不可能の状態に強制的にさせられる為、事実上の退場扱いになり、魔力切れを以ってしか消滅出来なくなる。
今も花の魔術師であるマーリンを幽閉させ続ける、理想郷と言う名の牢獄。愛し、恋する男を逃さぬ為の、天国と言う名の地獄。
【Weapon】
エクスカリバー、及びアロンダイト等の聖剣:
固有結界から自在に取り出して、現実世界でも応戦する。
但し、本来の担い手であるアーサー王やランスロットのそれと比べれば、扱う技量は当然の事ながら、遥かに落ちる。
【解説】
ヴィヴィアン、と言う名前が厳密に彼女の真名であるのかどうかは解らない。
ヴィヴィエン、ヴィヴィアンヌ、ニニアン、ニムエ、エレインなど多数の名前が伝わっており、どれが本来の名前であるのかは不明。
だが、例え名前が多くとも、彼女がダム・ド・ラック(湖の貴婦人)と呼ばれる程の高位の妖精である事には代わりはない。
アーサー王伝説に曰く、ヴィヴィアンは彼のアーサー王にエクスカリバーを手渡した人物であり、また稀代の騎士であるランスロットを養育し、
武芸の何たるかを教授したとされる名コーチであったと言う記述がある。物語には彼女と思しき人物がサー・ベイリンに殺されたと言う記述があるが、
後々当たり前のように登場する所からも、恐らくはベイリンが殺したのは影武者だったか、書き手が疲れて眠ってしまって設定を忘れたかのどっちかだろう。
ヴィヴィアンはアーサー王のキャメロットを分裂させた原因の一人であると槍玉に上げられる事が多い。
と言うのも、キャメロットの参謀役であり、ヴィヴィアンの師匠である魔法使いマーリンを、己の世界に幽閉してしまったのである。
彼を閉じ込めた事が原因で、キャメロットの崩壊が加速して行くのは、最早言うまでもない事柄なのであった。
とは言え、元々気まぐれで、心変わりを起こしやすく、時には人に関わり益を与え、時には人間に悪戯をする妖精一族。
その中でも王とすら称されるヴィヴィアンを、アーサー王に起った悲劇の黒幕と称するのは酷であろう。人と妖精では、そもそも価値観も生き方も違うのであり、事実ヴィヴィアンは、エクスカリバーやアロンダイトを与えた事で、キャメロットの栄光を確かにした時期もあったのも、事実であるのだから。
本来の性格は礼儀正しく、淑女の鑑とも言うべき女性であるが、根っこの所は流石に妖精である。
そもそもランスロットを育てたのは、彼の母親であるエレインがたまたまヴィヴィアンの湖で休んでいたから拉致した、と言うとんでもねー経緯がある。
ちなみに妖精伝説においては子供を攫って妖精の世界で育てると言うのは珍しい事ではなく、寧ろ普遍的な設定であり、これを『チェンジリング(取り替え子)』と呼ぶ。
拉致した理由も、『魔術で自分好みの青年になりそうだと解っていたから』、らしい。妖精らしい性格ではあるが、その一方でブリテンに根付く妖精の女王の側面もある。
アーサー王に関して言えば、本当にこの人物はブリテンにおいて比類なき国王となるだろうと言う期待を抱いていた為、惜しみなくエクスカリバーとその鞘を与えた。
この人物ならばブリテンを任せても問題ない、自分達妖精も楽しく暮らせるという打算があった為だが――偶然妖精境にマーリンがやって来たのが運のツキ。
ナンパ感覚で魔術を教えてくれたり、何だかんだあって一夜を共にする内に、ヴィヴィアンはマーリンにガチで惚れてしまう。
マーリンがキャメロットに於いてとても重要な役割を果たしていた魔術師であるとはヴィヴィアンも解っていた為、返すべきだとは思ってはいたが、
『アーサーにはエクスカリバーを渡してあるしカリスマも凄いし、私が育てたランスロットがいるのですから、マーリンがいなくても平気っしょ(笑)』と思う。
結果、ヴィヴィアンは己の妖精としての全ての力を用い、マーリンを幽閉してしまう。要するに、愛が行き過ぎて自分だけの物にしたかったのである。
……ちなみにヴィヴィアンが、マーリンがいなくても別段大丈夫と思っていたキャメロットが、ランスロットの不貞をきっかけに破滅の道を転がる事は、今更説明するまでもない事だろう。
性格自体は気まぐれだが礼儀正しい淑女。が、マーリンが絡むと途端にヤンデレとしての側面を見せ始める。
私と一緒にいるのが彼にとって一番の幸せなのです、と大真面目にぐるぐる目で主張するし、毎日毎日欠かさずマーリンの下に通い数時間は会話するのだと言う。
だが同時に、マーリン程の魔術師ならば、自分の仕掛けた結界から容易に抜け出せる事をヴィヴィアンは知っており、
いつかマーリンが心変わりを起こして自分の世界から消えてしまうのではないか、と言う事だけが非常に気がかり(実際にはマーリンには抜け出す意思はない)。
その為、聖杯にかける願いは、『自分の生み出した結界を強固にし、星の命が尽きるまでマーリンが自分の世界から消えられないようにする』、と言うものである。
【特徴】
露出の少ない黒いモーニングドレスに、黒いトークハットを被る、水色の姫カットの美女。胸の方は、普通め
【聖杯にかける願い】
マーリンを閉じ込める結界を更に強固な物にする事
【マスター】
樹@幽☆遊☆白書
【マスターとしての願い】
仙水忍の魂の行方を知りたい
【weapon】
【能力・技能】
闇撫:
樹は人間ではなく、影ノ手と呼ばれる手段で次元を行き来し、其処に関わる下位妖怪を使役する闇撫と言う希少種族の妖怪である。
攻撃には一切向かず、防御寄りの妖怪で、これを用いて亜空間に潜航したり、相手を此処に幽閉させたりも出来る。
今回の聖杯戦争についても、問題なく亜空間に潜る事が出来るが、樹の元いた世界とは勝手が違うらしく、能力を使うと魔力を消費するようになっている。
ちなみに彼のペットである裏男は、桑原の次元刀で斬り殺され、使用が不可能となっている。
【人物背景】
影ノ手を用いて次元を自由に行き来し、次元に関わる下位の妖怪を使役できる『闇撫』の一族。
霊界探偵時代の仙水に一度殺されかけるも、ふと見せた人間くささに仙水が殺気をそがれた為、殺される事なく、それ以降、仙水のパートナーとなる。
変貌を遂げゆく仙水の様相を静観し続け、人間に仙水が見切りをつけた後も、終始彼の忠実な補佐を務める。
満足に死んだ仙水の亡骸を抱き、最期は亜空間へと二人で消えて行った。
【方針】
優勝狙い
最終更新:2017年06月10日 16:16