「問おう。君が私のマスターか?」
思考が生じ、霊体が魔力を素として仮初の肉体を形成され、自らの存在を認識する。
この地の顕現した英霊の現身は、目の前の人物にまず初めにそう問うた。
「そうだ。抑止の輪より来たりし英霊よ。私はお前達を憎み、お前を使役する者である」
黒いコートに身を包んだ長身の男だった。恵まれた体格に、皺の刻まれた険しい表情。
顔は永遠に溶けない難問に挑む賢者のように微動だにせず、変わることのない男の貌になっていた。
「……憎む?私を、いや英霊(わたしたち)をかね?」
「左様だ。お前達こそ人類の死の遍歴。人を殺さねば幸福を生み出せない、天秤の傾いた方を捨てることでしか救済を語れぬ蒙昧よ」
男の声は厳粛で重々しい。一言一言が魂を震わせ、屈服させてくるような重み。
それだけで男の積み重ねた年月の長さ、練り上げてきた意思の硬さが窺い知れる。
無論、英霊たる者がこの程度の圧に屈しはしない。しないが……男の言葉にあった奇妙な響きに首を傾げた。
「これは、随分な言い様だな。英霊多しといえど召喚直後に罵倒をもらうのは私が初ではないかな?」
「怨嗟も吐こう。歴史の節目に現れ、人類を押し上げながらも『 』への到達を拒む、矛盾した螺旋を昇り続ける愚劣畜生。これを憎まずしてなんとする」
顔も目も変わらず、声を荒げもせず、ただ男の激情だけが空間に伝播していく。
確かに、そこには剥き出しの憎悪があった。
並の人間、いや、異能なりし魔術を収めた者ですら全身が凍りつく悪寒。死への畏れを感じさせるほどの閉塞感。
まるで、男そのものが、死を蒐集した地獄の具現だとでも主張するように。
それで理解した。
この男は人間を憎んでいる。世界に蔓延る欲望を嫌悪している。
彼は決して聖杯を手にしてはならぬ魔術師であり、己とは相容れぬ、本来敵となって対峙する男であると。
「ならば君はなんだ?人を憎み英霊を憎む君の名は」
問いに男は眉一つ動かさず、つまらなげに答えた。
「魔術師―――荒耶宗蓮」
◇
冬木市新都。
昔ながらの深山町と趣を異にするニュータウンは、平成に入って十数年経ち再開発の波が押し寄せている。
倒されては建てられるビルの林、常に未来のビジョンに合わせて姿形を変えるオフィス街。
街並みは忙殺される社会人達の世相を表しているかのようにせわしなく変化する。
その開発区に立ち並ぶ真新しいマンション地帯、埋立地に出来た林立する四角い建物の群れで、そのマンションだけは綺麗な円形をしていた。
全十階建て、ちょうど円形を半月の形に切った建物が向かい合わせで建っている不思議な構造をしている。
自然、周りのマンションからは切り離されたように浮いて見える。まだ入居者も少ないのか周囲には人気も感じられない。
おかしな仮定になるが、この場に王がいれば、人が暮らす場所でなはなく、静謐を主とした神殿のようにも映るかもしれない。
いま正面かあマンションの中に入っていく、王の如き男がいれば。
背は高く、髪の色は完全な赤よりもややくすんだ橙。
身に纏う衣といい、魚の鱗を象った装飾といい、時代錯誤にもほどがある格好はひと目がないとはいえあまりに場違いである。
なのに憚ることなく在る姿は滑稽ではない。覇気に満ち、威厳に溢れている。
違うといえば、その王者の気質こそが最大の違和感だ。
クリーム色で統一されたロビーの広間。その空間を男は通過して柱のように設置されたエレベーターに向かい下のボタンを押す。
マンション施設の地下には駐車場だが、現在は使われておらず開放もされてもない。
【下」「に」「落ちる】
声がした。
常人が、万物が、深く、深く、自己の存在の根源にまで染み入るような言葉がした。
おーーーーーーーーん。
箱が、ひとりでに動く。地の底に続くような音がした。
動かないはずのエレベーターは言葉のままに機能して地下へと誘った。
今の声に従う、そうプログラムされた機械として。予めインプットされていた命令が上書きされたかのように。
扉が開く。明かりはなく部屋は暗い。
しゅごー、という蒸気の音。部屋の中心にある真っ赤に焼かれた鉄板に水滴が落ちた音だった。
「何をしていた、ランサー」
灼熱の灯りで、男以外の人物の影が浮かび上がる。
長身の黒衣。苦悩の刻まれた貌。
駐車場を隠れ蓑に地下に『工房』を設けた魔術師であり、今は聖杯戦争に参戦するマスター、荒耶宗蓮は目の前の従僕に問う。
「見ていたさ、この世界を」
聖杯戦争の舞台に招かれ魔術師をマスターに定めるサーヴァント、ランサーは答えた。
「この国の成り立ち。民の在り方。行政のシステム。私が楔を打ち込み切り離した人間がどのように広がり栄えたのか。
素晴らしく醜いな。誰もが比較し、妬み合い、憎み合い、争い合う。相互の理解をよしとせぬまま個の欲望の為に他を排斥しながら生きる。
神代には無かった光景。些か以上に歪に膨れ上がってるようだが、今もこの版図を広げていくのは―――ああ、見ていて実に楽しいものだ」
「人の醜悪さを是とするか。他ならぬこの世に混沌(バベル)をもたらしたるお前が」
荒耶の言葉に、ランサーは愉快そうに笑って言った。
「するさ。しないはずがない。神と人を乖離させ地に光を満たす―――それがかつての私(ニムロデ)の本願であるからな!」
ニムロデ。器(クラス)の名で呼ばれるのが習わしのサーヴァントが秘するべき真名。
歴史聖書を読み解いた者であれば、聞いたその名に戦慄しただろう。
旧約聖書、創世記11章に登場するある建築物。
遥かな太古、文明の黎明期において人々は共通のただひとつの言語を使っていた。
言葉が同じということは民族としてひとつであり、意思や解釈が同一だということ。
完全な相互理解を為していた人々は集まった地に等を建てようとした。空を超え、天まで届かんほどに高い神の門を。
その理由が自らが神に届かんとす傲岸なのか、神が地に降りやすくなる為の祭壇だったのか、解釈は多数ある。
だが聖書の記述として、神は人々から共通の言語を奪い、言葉が通じず分かり合えなくなった人はバラバラに別れ塔は崩落した。
塔の名をバベル。人類が開けようと手にかけた、根源(セカイ)に通じる神の門である。
ニムロデとは、その建設の指揮を摂ったとされる王の名だ。狩りの王。傲岸なる王。地上最初の勇士とも呼ばれる。
その為した業の深さ、伝わっている知名度の高さをもってして男は荒耶のサーヴァントとして召喚された。
「……因果なものだな。かつてその言語の唯一の習得者を駒に引き入れ、今度はその言語の破壊者を駒に喚び寄せるとは」
「必要でない限り使う気はないさ。槍(バベル)を打ち出すのに必要な言語だから持ってるが、本来私はこれを否定する側だからな。
それが嫌なら、その令呪で縛ってみるかね?」
試すような挑発的な物言いにも、荒耶は眉一つ動かさず陰鬱のまま返した。
「無為だ。統一言語の効力は体感済みだ。
令呪がどれだけサーヴァントを従わせる機能に特化していようと、『言葉による命令』である以上、お前に通用する道理はない。
この内部の『砲台』を、隠匿していられればそれでよい。」
「よく理解しているじゃないか」
マスターが呼び出すサーヴァントとは、何らかの縁が関わってくるとされている。
荒耶の場合は言語。かつてニムロドが地上から失わせた言語を唯一習得していた魔術師と対面していたという過去。
統一言語と呼ばれるそれは、今現在多数に別れた民族毎の言語以前、バベルの塔が崩れるまでにあったただひとつの言語だ。
世界そのものに語りかけられる高位の言語を持つ者は、持たぬ現代の人間、どころか自然万象を言葉の通りに操れるも同然の催眠術師と化す。
この冬木に飛ばされるまで、ある少女にぶつける為に荒耶が用意した駒が、こうして形を変え従者としてついているのは、運命の皮肉を嗤ざるを得ない。
「人の欲望は素晴らしい。欲望がある限り、何かが変わり、生まれる。今日という日を明日にすることさえ欲望だ。見給えよ外の街を。
神の恩寵も、ソロモン王が世界に残した神秘、魔術の残り香も用いることなく人はここまで繁栄してきた。人間の力だけで!」
暗がりを歩きながら、ランサーは滔々と言葉を口に乗せる。
「バベルは崩壊し、統一言語は失われた。だからこそ人は、自らの意思だけで独自に歩むことを余儀なくされ、我先に生き延びようと欲望を肥えさせた。
それが人を先へと推し進めた。欲望が人を進化させた!」
それはあるいは呪文を紡ぐように、力のある語りだった。
王と呼ばれる者が誰しも持っている、人を引きつける力。その言葉を真実と信じさせ、自らの下に治める統率の能力。
―――それ以外に、言葉そのものが絶対を疑うことなく魂に刻みつけられるような、重厚な響き。
「夜になれば、都市も星が目を眩ませんばかりに輝きを放つのだろう。もはや暗がりに潜む獣に怯えるばかりの日は終わった。天候という神の領域さえ人は支配するだろう。
まさに、地の光はすべて星!やはりあの日、神に弓引いた私は間違っていなかった!」
言葉が物理的な質量を伴って発されていると錯覚するほどの重圧の中で。
荒耶は平然と答えた。その重みを屈服させるという強い意志をこめて。
「聖書の伝承は正しいようだ。確かに、お前は傲岸だ。根源(かみ)との繋がりを断ち切った欲望の王よ。
人間は生きていたいという願望の為に自らの手足を食い千切り脳漿を飲む蒙昧なる下衆である。お前の行いは人の獣性の最後の枷を破壊したに過ぎん」
荒耶の目線は、憤怒と侮蔑に満ちていた。前に立つ英雄―――人類史を掘り起こして出てきた稀代の殺戮者を。
終生に定めた怨敵を見る目だった。
「相容れないかね?」
「相容れはしない。私は人の終末を求め、お前は人の欲望を更なる発展に使う。互いの立場は明白であり、いずれ衝突する定めだ」
「では、この儀式についてはどう思う」
「信には値せん。私が進めていた計画の方がまだ望みがある」
そう。荒耶には計画があった。聖杯戦争なる此度の儀式よりも前に、己が結論を示す祭壇を。
この世の原因。宇宙の真理。全てが流れ出す始まりであり、行き着く終末。『根源の渦』に到達するため十年かけて見つけ出した『 』に繋がる器。
手駒を揃え、状況を最大限調整し、行動を開始しようとした段になって、気づけばこの見知らぬ土地に拉致されていたのだ。
魔術師たる者倫理を問いはしないが、このまま素直に殺し合いに乗って正体も分からぬ賞品に手を伸ばす愚鈍を犯す気はない。
「だが英霊……高純度の魂については私の望みと無関係ではない。
サーヴァントの消滅が聖杯戦争の進行に繋がるというのなら、その魂の拡散の瞬間を観測することは意義あるものとなるだろう。
加えて、お前の宝具を然る条件で十全の状態で放てば確実に根源に孔を開けるだろう。バベルとは神の門を意味する。その門から放たれる槍は必ずや根源への通り道となるのだからな。
万一、聖杯が真なる願望器の力を備えているとしたら、それこそ僥倖だ。本来なら不要な道行き、持ち帰る収穫がなければ釣り合わん」
つまらなげにランサーは溜息をつく。
「そうまでして根源に―――神の頂に辿り着きたいのか。己を満たす欲望もない君が、一体何を望む?」
「―――私は何も望まない」
短い一言。それは望みがない無欲さではなく、『何も望まない』という意味。
荒耶は人間を憎む。生きながらにして殺さねば活動できない人間の矛盾を嫌悪している。
人は死によって完結すべきだ。人の人生は終わる事で完成する。
求めるのは結論。この世から人間が消え失せ、そ歴史に残る価値が醜さだけであったのなら―――人間は救われないものであるという解が置ける。
死んだ人間、無意味のまま終わった全ての苦しみにも、意味が与えられよう。それこそ唯一、共通の救いだと。
世界が果てることでようやく人の価値を検分できると本気で考えている。
……人を汚いと罵る荒耶の思考は完全に固定化されている。変わることなくひとつの方向性を突き進み続けるものは、もはや人間ではない。
200年、荒耶はその思考を続けてきた。既にこの魔術師は固まった概念に等しい。「」に挑む意志、人の死を集める生きた地獄として。
「だから全てを知り得る御座に立ち、結果を前倒しにするというわけか。欲望を削ぎ落とし、誰にも理解されぬ求道の道を歩む。
なんという無欲か。なるほど、相容れないのは道理だな」
ニムロデは荒耶を軽蔑してはいない。どうあれ、ここまで高めてきた意志の強さを素直に称賛したい気持ちですらある。
だが同時に、堪らない嫌悪感を抱いているのも事実なのだ。
結果やその範囲はどうあれ、人間の世界を守り、広げるために戦った英霊達にすれば、荒耶の存在は許容できる枠組みを超えている。
霊長の守護者の責務に沿うならば、この男は今すぐ抹消すべき敵対者だ。しかし―――
「まぁ、いいだろう。それもまた面白い」
あっさりと、ニムロデはその責を放棄した。
「ニムロデは君を否定しよう。だがサーヴァントたる私は肯定しよう。
君という数奇なる魂との出会いを祝して、ここではマスターの意志のまま動く道具の役に徹しようじゃないか」
生前であればまだしも、今の自分は英霊。過去の死者の夢に過ぎない。
それがたとえ、どれだけ歪に固まったとはいえ今も生きる者の意志を始まる前から摘むなど、そんなつまらない真似を犯せるものか。
「二言はないな、ランサー」
「君がその意志の濃度を薄ませない限りはな。まあそんな心配は無用だろうが。覚悟を見せるのは君の方だぞ?」
「無論だ。我々は相棒でなく、敵として互いにとっての障害を砕くのみでしかない。
お前が此度の抑止力だというのなら――――退くことなく打ち砕くのみだ」
男の貌は変わらず陰鬱なままだ。苦悶に満ちた哲学者の顔を崩さない。
しかし眼だけは、炯々と燃える烈火を湛えて、英霊に頑として感情を叩きつけていた。
こうして、闇の底で或る主従は契約を結んだ。
此れより二者は信頼なく、信用もなく、だが硬い契の下に動き出す。
何よりも敵である者を隣同士に、己の強さを相手に証明せんが為に。
矛盾という混沌を目指して螺旋の塔が伸びて行く。
まるで、果てのない空に孔を穿つ杭のように―――――――――
【クラス】
ランサー
【真名】
ニムロデ
【出典】
旧約聖書
【性別】
男性
【身長・体重】
185cm・78kg
【属性】
混沌・善
【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具EX
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
【固有スキル】
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。
暴君と伝えられるニムロデだが、紛れもなく人を統べる力量を備える王でもあった。
陣地作成:A
純然たる魔術師ではないが生前の逸話により例外的にこのスキルを所持する。
統一言語:EX
マスター・オブ・バベル。神が言葉を乱す以前に世界に共通していた、たった一つの言語。
世界そのものに話しかけて意味を決定させる神代の言葉は、同じ統一言語を持たない相手には絶対の命令となる。
人や動物、岩にでも話しかけられ、その言葉を真実にする、万物に共通する催眠術師ともいえる。
ただしサーヴァントの身である劣化に加え、同じく高次元の座と繋がる英霊に対してはやや効果が薄い。
本来は捨て去るスキルであるが、宝具のプログラミングに不可欠な言語であるので仕方なしに保持している。
【宝具】
『地の光はすべて星(カ・ディンギル・メロダク)』
ランク:EX 種別:対国、対神宝具 レンジ:30~99(縦に) 最大捕捉:1人 、900人
バベルの塔。
神の門を貫く柱にして、人が地上を統べる玉座。
塔は螺旋状に回りながら天に向かって伸びていき、ニムロデの支配域と化す。
真の機能は内部に搭載された超巨大対粛正破壊槌(バベル)の発射台。
威力は塔の全長により決定し、最大限まで昇ればそれは文字通り神殺しの域に至る。
天地の理の乖離、世界―――神から人間を脱却させる″地の楔″。
通常宝具として使用する場合、ミサイルのように地上に落下する対国宝具として扱われる。
『大千渦巻く波濤の竜(カスカシーム・クシュ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~9 最大補足:1人
纏った者を無敵にする、といわれた海の神獣リヴァイアサンの裘(かわごろも)。
衣から剥がれた鱗は所持者を中心に渦を巻くように分離し、近づく者を切り刻む攻防一体の結界を形成する。
全長1500kmに及ぶリヴァイアサンの体表を覆う鱗の枚数は数千万を超える刃の海と化す。
驚異的な防御力を誇る宝具だが、神性スキルを持つサーヴァントに対しては著しく硬度を下げてしまう。
これはリヴァイアサンが最後の審判で神に殺され、民に肉を与えられる逸話のためである。
【Weapon】
超巨大対粛正破壊槌(バベル)のレプリカ。
優れた狩人であるニムロデは武器の扱いにも長けている。
【解説】
旧約聖書に登場する人物。ノアの子孫、クシュの子。
アッシリア全土を支配した王であり、優れた狩人でもある。
そして増上慢から神へ叛逆し崩れ落ちた逸話―――バベルの塔を建設させた者として伝説に残っている。
確かにニムロデはバベルの塔を作らせた。神への叛逆を企てた。
しかしそれが自身を神に置き換えた傲岸からくるといえば―――否である。
遥かな神代。人種に動植物、自然とすら言葉を通じられる唯一の言語は、誤解なく他者と分かり合える世界を構築した。
そして上に立つニムロデにとっても彼らは統治しやすく平和な時代を見ていた。
だがニムロデは知っていた。今よりも過去に起きた、地上の悪を一掃する神による大洪水。
時代を越えて世界を見渡す千里眼こそ持たぬものの、眠れるヒトの悪性、人類が目指すべき地平を悟った。
ヒトは神(おや)の元から羽撃かねばならぬ。そこがどれだけ危険のない、安穏な場所であっても。
自由な荒野に雛を送り出す、過酷な旅路だとしても。
世界には混沌が必要だ。求められるのは賢君ではなく暴君、北風という試練。
その為に作り上げたのが、世界と人を切り離す柱―――即ちは混沌(バベル)。
天に昇っていくバベルに対してとうとう、神は統一言語を奪い塔を崩壊させた。―――ニムロデの予測通りに。
バベルはその為の塔だった。崩れる事で意味を成す呪詛。かくして神は、地上からの更なる撤退を余儀なくされる。
統一言語を失い多様な言葉を使うようになった人類は、誤解し、争い、別れ、世界に散らばって各々の文化を築いていく。
ニムロデを人々は暴君と畏れ、同時に神の理に挑んだ挑戦者として語られている。
傲岸だが理知的な性格。
基本方針が「人の世界を広げる」事で、欲望を肯定する。その為に神が邪魔とあれば殺しにかかる反抗心の持ち主。
安定した秩序より、先を開く混沌をよしとする。崖に突き落として我が子を育てるタイプ。君主というよりは開拓者に近い。
現世の繁栄と混沌ぶりには割りと満足。
【特徴】
ややくすんだ橙の短髪。歳は20代後半程。体格はガッシリしてあり、魚鱗の装甲を身に纏い、宝具の裘を体に巻き付けている。
【方針】
アラヤにはサーヴァントとしての立場を崩さない。
人間の醜さを憎むアラヤとは相容れないが、その精神の強さは評価しており、彼の最期を見届ける。
【マスター】
荒耶宗蓮@空の境界
【マスターとしての願い】
根源への到達。
【weapon】
【能力・技能】
魔術師としての能力は穴が多いが、結界作成に関しては突出している。
通常場に固定する結界を自身の周囲に、しかも三重に連れて歩く。結界に触れた者は動力が止まったように停止する。
人工的に己の心象風景を模した空間を作成し、その中でなら空間転移・空間圧縮の高度な魔術も使用できる。
人形作りにも長じており、これまで幾度も肉体の複製に意識を移している。
自己の強さは心身共に並外れ、銃弾を見てからでもよける運動能力を持ち、左手には仏舎利を仕込んでいる。
【人物背景】
かつては台密の僧であった男。人を救おうと全国を行脚してきたが、その度に人間の醜さと愚かさ目の当たりにする。
人間には、誰も救えない。命の意味はいかに苦しんできたかでしかない。
人の死を蒐集し、結論として人の意味を求めて根源の渦への到達を目指している。
起源『静止』に覚醒し200年の時を生き、既にその意志は人間を外れ、ただ根源を目指すという概念にも近しい。
最終更新:2017年07月06日 22:22