「うふ」
くらいくらい屋敷の一室。
牢獄のようにくらぁい部屋。
そこに、一人の女王様が居ました。
なぜその人が女王様だと分かるのかと言うと、彼女が着ている衣服があまりにも美しく、豪華で、きれいな、黒のドレスだからです。
おおきなおおきな鋏で星空を切り取り、針と糸で縫って作りあげたかのように美しい輝きを纏った、黒いドレス――そんな物を着ているのは、女王様くらいしかありえないでしょう。
しかしながら、そんな美しい衣装を見ても、誰もが彼女を女王様だと思えるかと言うと、そうではありません。
精々一割程度しか、そのような感想を抱かないでしょう。
何故なら、彼女の肩から上には、顔が無いのですから――まるで、ギロチンで断頭されたかのように。
彼女は女王様は女王様でも、首無し女王様なのです。
そんな彼女の姿を見ても、九割の人はこわくて恐ろしい、怪談に出てくるおばけの類だと思うでしょう。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
女王様は笑います。
今この状況がおかしくておかしくて仕方がないと言うように。
この世全てが愉快で愉快で素晴らしいとでも言いたげに。
自分の周囲で起きている事が、すてきなすてきな舞台劇であるかのように。
女王様は、笑います。
首無し女王様の周囲――彼女がいる屋敷の周辺にいる多くの人々は、数時間前から体の具合が悪くなり、今では決して少なくない人が昏倒し、病院へと運ばれていきました。
倒れた人たちの顔は皆まるで生気を吸われたかのように青白かったそうです。
「もっと、もっとよ。みんなの富を! 富(まりょく)を! 富(ちから)を! もっと頂戴! これだけじゃまだ足りないわ!」
深山町の一区画に住む人々から、現在進行形で魔力を吸収している女王様は、ケーキのように甘い声で叫びました。
「『まだ足りない』か――」
女王様の言葉にそんな台詞を投げたのは、ハンチング帽を被ったおじいさんでした。
おじいさんは室内にあるフワフワのソファに腰掛け、女王様へと語りかけます。
「きみは富やら魔力やらを集めて、何かしたいことでもあるのかい?」
「ええ!」
そう言って、女王様はおじいさんの方へと振り向きます。
彼女の口調はいかにもご機嫌という感じです――彼女に首から上があれば、そこには眩しい笑顔が存在していたでしょう。
「わたしを悪だと定めてくれたフランスの為に、たっぷりの悪を成し遂げるの! だってわたしは、フランスのみんなが大好きなんだから! その思いに応えなくちゃいけないでしょう?」
女王様は、まるで夢を語る少女のように語ります。
「これからもっと広い範囲から富(まりょく)を奪って、たくさんの人を苦しめるの! わたしが直接出向いて、人々を殺すのも良いわね! あるいは、元のわたしでは想像も出来ないほどに残虐な行為もしてみたいわ!」
うふふふふふふふふふふふふふふ!
女王様は笑います。笑います。笑います。
これから、自分がする悪行を想像するだけで、笑いが溢れるそうなのです。
そして。
女王様につられるように、ハンチング帽のおじいさんも、ニィッと口の両端を上げて笑って、
「いいね」
と、言いました。
おじいさんは女王様の夢に満ちた悪に心から共感していたわけではありませんが、少なくとも、彼女の言う通りに事が進めば、面白いことになりそうだと思ったのです。
女王様がこれからも周囲に被害を齎せば、いずれ、そんな迷惑な行為を許せない聖杯戦争の他の参加者たちが、女王様を倒す為にこの場にやって来るでしょう。
そんな、許しがたい悪に立ち向かえる気力と力を持つ人間がいる事を、おじいさんは知っています。
策と力を携えてこの場に訪れる参加者たちを、どう攻略して倒すか――それを考えるだけで、おじいさんは笑みを隠せません。
「魔王の立場に立つドラクエみたいなものか……面白そうだ」
「ねぇ、ところでマスター?」
「なんだい、アサシン」
「どうしてあなたは、富(まりょく)を吸収されて死んでないの?」
アサシン――女王様が周囲から魔力を吸収しているのは先ほど言った通りです。
しかし、それならば、ハンチング帽のおじいさんも魔力を吸収され、倒れているはずなのです。
だけど、今おじいさんはソファに腰掛け、女王様とおしゃべりをしています。
何故なのでしょう。不思議ですね。
だから、女王様はおじいさんに質問したのでした。
「ああ、それは――」
そこまで言いかけて。
おじいさんは死にました。
身体中から魔力が枯渇して、死んだのです。
じわ……
おじいさんは生き返りました。
「ほら、私は『亜人』だから、死んでも生き返るんだ。と言うより、死なないんだね。だからアサシン、君とは『魔力枯渇で死にながら』お話が出来るわけなんだよ」
おじいさんはタネを明かす手品師のように、そう言いました。
途端、女王様はパァッと顔を輝かせ――たかのように見えるくらい、愉快げな声で、
「死なない体!? 聞いたことのない、不思議な体質ね! まあ、素敵!」
そんな言葉を一気に吐き出しました。
「死なない貴方と死んでるわたし――わたし達って、相性ピッタリな主従なのかもしれないわ!」
「ああ、そうだね」
首の無い女王様――アサシン、マリー・アントワネット。
死なない生物――亜人、佐藤。
規格外にも程があるこの二人が、これから何をやらかすかは、予想がつきません。
ただ一つ言える事があるとすれば――彼らはこの冬木の街に混乱と騒乱を齎すという事でしょう。
【クラス】
アサシン
【真名】
マリー・アントワネット
【属性】
混沌・悪
【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A+ 幸運D- 宝具A++
【クラススキル】
気配遮断:E
【保有スキル】
悪の女王:A
無辜の怪物と精神汚染の複合スキル。
『このような悪女は革命で殺されて当然だ』という革命の正当性を高める為に民衆がマリー・アントワネットに浴びせた悪評が、本来のマリー・アントワネットの霊基に干渉し、変質させた結果、『数多くの国民を苦しめ殺した悪女』というあり得ない姿でのアサシン、マリー・アントワネットが誕生した。
このスキルにより、アサシンは下記の宝具を獲得している。
陣地作成:A
自身に有利な陣地を形成する能力。
本来はキャスターのクラススキルであるが、マリー・アントワネットはキャスターへの適性が高く、また下記の宝具『忌むべき輝きはいずれ砕け散る(クリスタル・ドレス)』で魔力吸収陣地を作成できる為、例外的に獲得した。
神の恩寵:B→C
最高の美貌と肉体、『王権の美』を示すスキル。
断頭された姿で召喚されている為、美貌は失われているが、首から下の体だけでも多くの人間を魅了するほどに美しい。
断頭された当時の姿で召喚されているアントワネットは、ライダーやキャスターの彼女よりも、成長した大人の魅力に満ちた豊満な肉体を持つ。
【宝具】
『忌むべき輝きはいずれ砕け散る(クリスタル・ドレス)』
ランク:B 種別:対軍・対民宝具 レンジ:100 最大捕捉:レンジ内全て
黒い十字の輝きをきらきらと――ぎらぎらと放つ、豪華なドレスの形で現れる宝具。
というよりも、このドレスを身に纏ったアサシンの存在そのものがこの宝具の正体である。
マリー・アントワネットは『民衆から富を絞り取った悪政』の象徴とされた。
この悪評に霊基が干渉されている彼女は、存在するだけで周囲の人間・サーヴァントから富を――魔力を吸収する。
アサシンがその場にいるだけで、彼女の周囲の存在は魔力が吸収され、生物ならば昏倒の後に死亡、サーヴァントならば魔力枯渇による消滅に追い込まれるのだ。
つまり、広範囲に根を張る魂喰いのようなものである。
この宝具の吸収効果は魔術や呪術によるものではない為、対魔力で軽減・無効化する事は出来ない。
また、遠距離からの魔術攻撃も、弾がこの宝具の範囲内に突入した途端魔力を吸収され、マリーに届く頃にはすっかり無力化される為、殆ど意味をなさない。
この宝具を発動しているマリー・アントワネットを倒すには、吸収しきれないほどに超膨大な魔力の遠距離・広範囲攻撃を用いるか、或いは、一人か二人は魔力枯渇で戦闘不能になっても問題ないほどの大人数で、マリーの宝具範囲に革命のように攻め入るしかない。
ドレスが放つぎらぎらとした黒十字の輝きは、吸収した魔力のほんの一部を光の形で放出しているものであり、当然ながらこれを用いた攻撃や防御をするのも可能である。
『黒百合の王冠に枯朽あれ(ブレイキング・ギロチン)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:50 最大捕捉:50
当時の革命派の人間達が、最終的にマリー・アントワネットへと行った所業――ギロチンによる断頭。
フランスを愛する彼女は、その悪意すらも平然と受け入れ、自分の宝具へと組み込んだ。
この宝具はそのような経緯で生まれたもの。
断頭された黒馬を召喚し、騎乗して戦場を駆け抜ける。
召喚後、硝子黒馬は首の切断口部分から徐々に崩れ、細かな硝子の粒子が撒き散らかされてゆくのだが、この粒子一粒一粒には、マリーが受け入れ、宝具に組み込んだ『ギロチン断頭』の概念が含まれている。
つまり、このぎらぎらと輝く粒子に触れると、その箇所に切断ダメージが与えられるのだ。
硝子の粒子数粒を浴びる程度なら、深めの切傷を受ける程度で済むが、黒馬の突進の直撃を食らえば、余程耐久ステータスが優れていない限り、スッパリと、まるでギロチンを落とされたかのように両断される事は避けられまい。
この切断ダメージを受けないのは、この宝具の所有者にして、既にギロチンで断頭されているアサシンだけ。
黒馬は数分で完全に崩壊し、消滅する。
【人物背景】
本来ならばあり得ないマリー・アントワネットの側面がサーヴァントとなった、オルタナティブのような存在。
アサシンは『こんな悪女は殺されて当然だ』と革命の正当性を高める為に当時の革命派の民衆達がアントワネットに浴びせた悪評が、アントワネットの霊基に干渉し、変質させた結果、生まれたサーヴァントである。
混沌にして悪と定められたアントワネットであるが、その精神の根本には未だにフランスへの愛が満ちている。
だが、彼女の行動原理は『わたしが愛しているフランスは、わたしを悪だと定めた』『ならば、彼らの期待に応えて、悪らしい振る舞いをするしかない』という考えに則っている。
詰まる所、善性の悪であり、愛溢れる悪。
【特徴】
断頭された大人のマリー・アントワネット。
頭はないが、周囲の状況は見聞きしているかのように把握できるし、喋る事もできる。
骨のように白い肌に炭のように黒い豪華なドレスを纏っており、首の切断口の上には赤黒い血が王冠の形で固まっている。
史実に則り、胸は三桁レベルの超巨乳。
【サーヴァントとしての願い】
わたしを悪だと定めた国民たちの為に、精一杯の悪を尽くすわ! だって、わたしはフランスが大好きなんだもの! ヴィヴ・ラ・フランス!
【マスター】
佐藤(サミュエル・T・オーウェン)@亜人
【能力・技能】
切っても沈めても埋めても絶っても焼いても折っても潰しても締めても轢いても撃っても爆破しても毒を盛っても刺しても刻んでも落としても吊っても絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に死なない。
復活の際に、傷や病は綺麗さっぱり完治する。
体をバラバラにされて殺された時は、一番大きな部品を基点に再生し、復活する。
佐藤はこの『絶対に死なず』『復活の際に傷や病が完治する』という亜人の性質をフルに活かした戦闘を得意とする。
【weapon】
元軍人である佐藤の銃の腕前は見事なものである。
亜人が持つもう一つの力。
亜人が遠隔操作で操ることができる人型の物質で、透過率100%の未知の物質でできている。
そのため普通の人間の目にはまず見ることができない。
だが亜人には黒い幽霊のような姿で見える。
ラジコンのように遠隔操作をするため、雨の日は情報伝達が妨害されてうまく操ることができない。
一日に出せるのは二回が限度。
本来この世にあるはずのない、不安定な物質なので、しばらくすると消えてしまう。
また、佐藤の亜人は『放任』した結果、本体が麻酔銃で眠らされても高い戦闘力と判断力で自発的に動けるようになっている。
【人物背景】
テロリストの初老の男。
亜人であると発覚する前から精神に問題があり、他者に対する共感力が決定的に欠如しており、幼少の頃から動物虐待をしており、父に咎められても理解できなかった。
リスクのある戦いを好んでおり、どれくらい好んでいるかというと、かつて軍に所属していた際、極秘作戦の最中にわざと発砲して敵兵を呼び寄せたほど。
頭が良く利己的な内面を持つ永井圭の言動や戦闘における作戦を気に入っており、彼との殺し合いを非常に楽しんでいる。
原作コミックス10巻の時点から参戦。
【マスターとしての願い】
聖杯戦争というゲームを楽しむ。
最終更新:2017年07月12日 06:57