ラ・ピュセル&ライダー

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『たとえこの身が滅びようとも、貴女の剣となることを誓いましょう。我が盟友、スノーホワイト』



あの夜、泣き顔の白い少女に誓った言葉が、今のラ・ピュセルにはひどく昔のことのように感じられた。

何の前触れもなく始まった、魔法少女同士によるサバイバル。
毎週、蹴落とされた魔法少女がひとりずつ死んでいく。
そんなあまりにも理不尽な現実を前にして泣く幼馴染を、ラ・ピュセル――岸部颯太はなんとしてでも守りたいと思った。
正しい魔法少女としての夢と理想を抱いた彼女、スノーホワイトだけは、なんとしても失ってはならないと思った。
彼女を悲しませるようなこの世界のあらゆる残酷を、自分が握る剣で斬り払ってやりたいと思った。

その思いに、嘘はない。
嘘はなかったはずだと、今でも思う。

だが、ラ・ピュセルという魔法少女には、あるいは岸部颯太という少年には、足りないものがあった。
アニメのヒロインのような邪悪を打ち砕く力も、己を犠牲にして愛する者を守る覚悟も足りなかった。
もっとも足らなかったのは想像力だろう。
「生き残るための奪い合い」が「殺し合い」へと繋がるという想像力が、ラ・ピュセルには決定的に足らなかった。
ラ・ピュセルにとって戦いとはおとぎ話の騎士のような「誇りある真剣勝負」であり、命を奪うことも、奪われることも、想像していなかった。

だから死んだ。

森の音楽家クラムベリー。
殺し合いを愉しむ魔法少女との戦いに破れ、ラ・ピュセルは死んだ。
あの夜の誓いを果たすことなく、あまりに無為に、あっけなく、岸部颯太の人生は幕を下ろした。
幕を下ろした、はずだった。

ラ・ピュセルは、アイシャドーと長い睫毛で彩られた瞼を開けた。
夜空に輝く月も、頬を撫でる夜風も、スノーホワイトと二人でいる時と同じもののように感じた。
ここ冬木市と、岸部颯太が生まれ育った北陸の名深市では随分と空気が異なるが、そんなことは重要ではない。
共通しているのは、生の実感だった。「確かに今生きている」というリアルな感覚だった。
死んだはずの自分が、全く知らないはずの街で生きている。
その事実を、鋭敏になった魔法少女の五感が確かに伝えていた。

この世界には魔法があるのだから、死者が生き返ることだってある――なんて楽観的に考えられるわけもない。
とはいえ、生きている以上、やらなくてはならないことがある。
この街で目覚めた時にいつの間にか植え付けられていた知識によれば、自分がここにいる理由はただひとつ。
曰く、聖杯戦争。
万能の願望機を懸けて古今東西の英雄たちが競い合う、誇りある魔術儀式――だというが。

「そんな、わけないよな」

今のラ・ピュセルは知っている。
どんな理想を掲げていても、奪い合いは容易く殺し合いへと堕することを知っている。
またか、という気持ちは無いでもない。
だけど、「また」という言葉は、以前の出来事を過去に葬った者だけが使える言葉だ。
ラ・ピュセルにとって「魔法少女育成計画」は、「まだ」終わっていない。
終わってなどいないのだ。

「……このあたりでいいかな」

常人を遥かに凌ぐ身体能力で屋根から屋根へ飛び移った末に、ラ・ピュセルは街外れの森の中へ踏み込んでいた。
竜の角と尻尾を持つラ・ピュセル自身の姿もそうだが、これから呼び出す相手も、人目に晒すわけにはいかない。
ラ・ピュセルは念話で「彼」を呼び出した。
魔法少女は本来ひとり一種類の魔法しか使うことが出来ない。ラ・ピュセルの魔法は自分の剣の大きさを変化させるものだ。
念話のような「いかにも」な魔術を使うのは不思議な感覚だったが、心はそれほど浮かれなかった。

すぐに返答がある。
いつも通りの「彼」らしく、自信に満ちて気取った声だった。
あれは激動の生涯を駆け抜けて、そのことを死後も誇りにしている人間の声だ。
同じ「一度死んだ人間」のはずのラ・ピュセルには、自分の人生を誇ることなど出来そうにないのに。

そろそろ来るかな、などと思う間もなく、ラ・ピュセルの鋭敏な聴覚はこちらへと向かう「音」を聞いた。
それは蹄が木の枝を踏み砕く音であり、その蹄の持ち主の雄々しい嘶きだった。
ああ、と嘆息する。
そういう大袈裟な演出は、別にいらないんだけどなぁ。

「――ハァッ!!」

掛け声と共に力強く蹄が大地を蹴る音が聞こえ、月光を遮ってラ・ピュセルの頭上を影がよぎった。
着地点へと振り向くと、月明かりに照らされて、影の正体が露わになっていた。
まず目に飛び込んでくるのは、美しくも逞しい赤毛の馬。
馬の良し悪しに疎い人間の目にすら並のものではないと、まごうことなき「英雄」であると、そう印象づける勇姿だった。
それもそのはずだ。
この馬はラ・ピュセルのサーヴァント「ライダー」の宝具にして、座から呼び出された英霊なのだから。

人類史において、英霊の座にその名を刻む名馬は数多くいる。

例えば、アーサー・ペンドラゴンの「ドゥン・スタリオン」。
例えば、北欧の英雄シグルドの「グラニ」。
例えば、征服王イスカンダルの「ブケファラス」。
例えば、三国志の梟雄、呂布奉先の「赤兎馬」。
例えば、皇帝ナポレオン・ボナパルトの「マレンゴ」。

その中で最高の名馬を決めろと言われても、答えは容易く出るものではないだろう。
だがしかし、その中で必ず名前が上がるであろう馬がいる。

――曰く、シャルルマーニュはふたつの宝を持っている。ひとつは聖剣デュランダル。もうひとつは、名馬バヤールである、と。

中世の英雄叙事詩で幾度となく語られた、騎士と馬との伝説(ものがたり)。
シャルルマーニュ伝説において世界最高の名馬であると讃えられる、駿速の伝説。
それが、今この瞬間にラ・ピュセルの目の前で現界している、勇ましきバヤールである。

「――我が主! 剣持つ竜の少女、麗しの乙女(ラ・ピュセル)よ! 貴女の騎士、サーヴァント『ライダー』、此処に!」

その馬上から颯爽と舞い降りた鎧姿の騎士もまた、伝説に名高い英雄だった。
シャルルマーニュ十二勇士のひとり。誉れ高き聖騎士(パラディン)。
激動の中世ヨーロッパを駆け抜けた騎士の中の騎士。

その真名を『ルノー・ド・モントーバン』という。

この国ではイタリア語読みの「リナルド」と呼ばれることが多いらしく(ラ・ピュセルは図書館で調べるまでどちらも知らなかった)、
その物語に描かれていた姿はまさしく英雄そのものであるように感じられた。
義に篤く、卑怯な行いを嫌い、女性に優しく、どんな敵にも決して臆することがない。
まさしく騎士の中の騎士。英霊と呼ぶに相応しい、誇り高き精神の持ち主だと。
その印象は、こうして相対しても少しも揺らぐことはない。
すらりと高い身長。程よく鍛え抜かれた四肢。精悍で整った顔立ち。
たびたび口にする芝居がかった言動が空回りせずサマになる男だ。
まさに物語から抜け出してきたような騎士――彼らの生き様が物語になったのだから当然ではあるのだけれど。

「さて、主よ。こうして俺を呼び出したからには、覚悟を決めたものと見てよろしいかな?」

答えようとして咄嗟に声が出ず、ラ・ピュセルは頷いて肯定の意志を示した。
そうだ。その通りなのだ。
召喚に応じたライダーに対して「少し考えさせてほしい」と言ったのは自分であり、答えが出たからこうしてまた顔を合わせている。
ならば、告げなければならない。
この冬木で、ラ・ピュセル/岸部颯太がどう行動するのかを。

「ライダー。僕の事情はもう全部話したはずだよね」

結論を話す前に、確認の意味を込めてそう問いかける。
ライダーと話す時に女騎士の口調は使わないことにした。
変身前の姿を知られているので気恥ずかしいのもあるが、本物の騎士を前にすると……ひどく、滑稽だから。
ラ・ピュセルの胸中を知ってか知らずか、ライダーは「無論だ」と首肯した。

「主が男児の身でありながら魔法少女なるものとして、乙女(ラ・ピュセル)を名乗っていることは承知しているとも!」
「名前はどうでもいいんだって!」
「はは、冗談だ。ここでの事情とは――『聖杯に懸ける願い』と言い換えられるもの。そうだな、主」
「……うん」

ライダーの声色が真剣なものへと変わり、思わず気圧されないようにみぞおちに力を入れる。
「僕の事情」とは言うまでもなく自分自身が命を落とすことになった「魔法少女の死のゲーム」のことであり、
それはそのまま「聖杯に懸ける願い」とイコールだ。

「僕はたぶん、あの夜クラムベリーに殺された。それは悔しいし、やり切れないし、未練だってある。
 だけどさ……気付いたんだ。多分、もう一度生き返っても、僕はスノーホワイトを救ってやれない」
「主がその仇敵を超える力を手にして、雪辱を果たすというわけにはいかないのか」
「それも考えたよ。でもさ、きっとそれじゃ、スノーホワイトの涙はなくならないんだ。
 小雪にとっては、大事な友達の魔法少女が、互いに憎み合って殺し合うことが、辛くて仕方ないんだから。
 あいつをこれ以上傷つけないためには、正しい魔法少女でいてもらうためには、聖杯の力で救い出すしかない」

それが、考えに考えて出した結論だった。
聖杯が万能の願望器なら、あのデスゲームがどんな魔法のシステムだろうと、それを破ることは可能なはずだ。
ねむりんや、ルーラや、他ならぬラ・ピュセル自身が死んだという事実は覆せないが、仕方ない。
スノーホワイトが――姫河小雪が、これ以上の涙を流さないで済むのなら。

「僕は、聖杯を獲る」

そう言い切った。
ライダーは言葉を噛みしめるように何度か頷いてから、満足そうに笑みを浮かべた。

「――良し、良し! 騎士が命を懸けるに値する願いだ、乙女の涙を拭うためというのが特に良い!
 ならばフランス一の騎士たるこの俺も、主の願いのためにひと肌脱がせてもらうとしようじゃないか!」

受け入れてもらえたようだ。
良かったという安堵はあるが、しかしひとつだけ今のうちに聞いておかなければならないことがある。
ラ・ピュセル/岸部颯太の願いは確かに定まった。しかし、ライダーの願いはどうなのだろう。
与えられた知識によれば、サーヴァントは彼ら自身も願いを持つからこそ召喚に応じるのだという。
それを知らなければ、安心して背中を預けることなどできそうにない。
しかし、ライダーの答えは意外なものだった。

「願いか。あいにくだが、俺の願いは既に叶っている」

ライダーは、隣に並び立つ彼の宝具、名馬バヤールの体を撫でながら言った。

「俺の願いは我が生涯の盟友、このバヤールとまた一緒に風を切って走ることだった。
 こいつと一緒に戦うことこそが俺の生涯の喜びであり、取り戻したい過去だった。
 だがこうしてサーヴァントとして召喚された時点で、俺はこいつともう一度巡り会えた」

鼻先を寄せて信頼を示すバヤールに応えてから、ライダーは凛とした面構えで向き直る。

「ならば、俺は召喚者たる主に大恩があるということになる。それは忠義を誓うに十分な理由だ」

ライダーは前触れ無く剣を抜き放った。
そして名高き名剣、円卓の騎士より受け継いだという波打つ刃を地に突き立て、柄に両手を懸けて跪く。
それはかつてラ・ピュセル自身がやってみせたのと似た姿で――だけど、これは、本物だった。

「我が主、麗しの乙女(ラ・ピュセル)に、ルノー・ド・モントーバンが誓う!
 我が父祖より受け継ぎし、この身に流れる誇りある血統に懸けて!
 我が聖剣フロマージュと、盟友バヤールの誉れ高き名に懸けて!
 そして栄光あるシャルルマーニュ十二勇士、その一人たる矜持に懸けて!
 たとえこの身が砕けようとも、貴女の剣であると誓いましょう!」

騎士の中の騎士、伝説のパラディンが、本物の言葉で忠義を示している。
今のラ・ピュセルにはただ頷き、手を差し伸べることしか出来なかった。

「――もちろんだよ。一緒に戦おう、ライダー」
「ああ。この真名に恥じない戦いをすると約束しよう!」

何故なら俺はフランス一の騎士なのだからなと笑ってみせるライダーに、ラ・ピュセルは笑顔を作ってみせた。
大丈夫だろうか――ちゃんと笑えているだろうかと考えながら。


                    ▼  ▼  ▼


霊体化したライダーの気配が遠ざかり、もう近くにはいないだろうと確信して初めて。
ラ・ピュセルは、ずるずると崩れ落ちるように、その場で尻餅をついた。
人間の時よりも精神的に強くなっているはずの魔法少女の体だが、心臓が高鳴っているのを感じる。
さっきのライダーの言葉が、胸から離れない。
何度も何度も、木霊のように心のなかで反響して、ラ・ピュセルを揺さぶってくる。

”たとえこの身が砕けようとも、貴女の剣であると誓いましょう”

奇しくもそれは、ラ・ピュセルがスノーホワイトに告げた誓いと同じ言葉だった。
同じだったからこそ、その違いは鮮烈だった。
これが、本物の騎士の誓いなのか。
生涯を忠義に捧げ、数多の戦場を駆け抜けてきた、本物の英雄。
まがい物ではない、英霊そのものだからこそ確かな重みをもって告げることが出来る言葉。
率直に言って、打ちのめされていた。
彼の心の中には一点の曇りもなく、本気で自分への恩を返すために戦うつもりなのだろう。
それこそが騎士、それこそがパラディンなのだから。
跪く彼の姿は輝いてすら見えた。本物だけが持つ輝きだった。
そんな英雄の輝きを目の当たりにして、ラ・ピュセルは――。

「――あ、あぁ、ああぁぁぁあっ…………!」

今になって、ようやく、その両目から涙が溢れ出した。
声にならない呻きを上げ、両手で地面を叩いて、嗚咽した。

”あんなもの”は、見たくなかった。
正しい騎士の在り方なんて、知りたくなかった。
否応なしに「これが本物だ」と理解させられてしまう、そんな輝きを目の当たりにしたくなんてなかった。
だって、だって、そんなものを見てしまったら――。


――自分が今までやってきたことが、あまりにも惨めじゃないか。


本物の騎士道を知るたびに、自分の騎士道がいかに「騎士ごっこ」だったのかを思い知った。
思い描いていた「かっこいい騎士」の姿に、中身がまるで伴っていなかったことを自覚した。
ライダーには一切の悪意がなく、本心から忠誠を誓ってくれているということが、余計に苦しかった。
自分を傷つけようとしてやっているのならば、そのほうがよっぽどよかった。
善意の振る舞いだからこそ、それに接しているだけで、自分とのギャップをまざまざと知らされてしまうから。
彼の騎士道は眩しすぎる。眩しすぎて、目がくらんでしまう。

(……だけど、それじゃまるで、僕の誓いには、何の重みもなかったみたいだ……)

心をよぎった考えを、思い切り頭を振って否定する。
それでも湧き上がる暗い考えを押さえつけながら、ラ・ピュセルは涙を拭った。
あの夜の誓いが、物語の騎士の真似に過ぎなかったとしても。
あの夜に抱いた想いだけは、嘘じゃないはずだから。
そう。
まだ、嘘じゃない。
あの想いだけは、本物にしなければならない。
だって……何の意味もない人生なんかじゃなかったと、信じたいじゃないか。

「……僕は偽物でいい。正しい騎士にも、魔法少女にも、なれなくていい。
 だけど、小雪……スノーホワイト、君だけは本物だから。君の夢だけは、僕が守る」

うわ言のように呟き、拳を握りしめ、ラ・ピュセルはよろけながら立ち上がった。
あの騎士が正々堂々と戦いたいなら、それはいい。彼は正しい騎士だから、そうする権利がある。
だけど、自分のおぼつかない理想では、きっとその隣に立つことは出来ない。
それでも負けられない。あの夜の誓いをごっこ遊びで終わらせないためには、戦うしかない。
……だったら、正しくなくていい。
この戦いの果てに、スノーホワイトが正しい魔法少女として笑える未来があるなら、それでいい。
その過程で、自分に忠義を誓ったライダーの誇りや理想を踏みにじることになろうとも――。
――かまうものか。
最後に、この手に聖杯が残れば、それでいい。

「とっくにこの身は砕けたけれど、今でも僕は貴女の剣だ。スノーホワイト」

その日、魔法少女ラ・ピュセルは、ようやく聖杯戦争のマスターとなった。



【クラス】ライダー

【真名】ルノー・ド・モントーバン

【出典】シャルルマーニュ伝説

【性別】男

【身長・体重】182cm・74kg

【属性】秩序・善

【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具B 


【クラススキル】
騎乗:A-
 乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
 Aランクでは幻獣・神獣ランクを除くすべての獣、乗り物を乗りこなせる。
 しかし後述のユニークスキルにより、ルノーは宝具以外に騎乗するとステータスがダウンしてしまう。

対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
 Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 マスターを失っても、Bランクならば2日は現界可能。

怪力:C
 本来は魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
 一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間はランクによる。

無窮の武練:B
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
 心技体の完全に近い合一により、いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
 ルノーは十二勇士の中でもローランに次ぐと称された武勇を持つ、当時のヨーロッパ最強の騎士のひとりである。

手綱の誓い:EX
 愛馬バヤールの死に際してルノーが立てた、生涯バヤール以外の馬には乗らないという誓い。
 ルノーがバヤール以外の対象に騎乗スキルを発揮した場合、筋力・敏捷・幸運のステータスが1ランクずつダウンする。
 逆にバヤールに騎乗している間は、あらゆる行動判定に有利な補正が加わる。



【宝具】

『鋭々たる致命の剣(フロベージュ)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大補足:1人
 別名フスベルタ。文献によってはフローレンベルクとも呼ばれる。炎のゆらめきのように波打つ刃を持つ名剣。
 遠くブリテンの円卓の騎士から、時を隔ててシャルルマーニュ十二勇士が受け継いだ『五遺剣』の一振り。
 ルノーのフロベージュは本来マーハウス卿の剣であり、一説によればフランベルジュ(波形剣)の原典であるとも言われる。
 その特性は「不可逆の切断」。
 盾であれ鎧であれ一太刀で打ち破った逸話と、癒しにくい傷を負わせるという波型剣の特徴とが合わさったもの。
 真名開放を伴う斬撃が何かを切り裂く時、その切断力は爆発的に増大し、またその傷を修復するのは通常より遥かに困難となる。

 ……ここまでが本来の能力なのだが、宝具として成立するにあたって原典を取り込んだ結果、この剣は新たな特性を得ている。
 それは本来の所有者マーハウス卿がトリスタン卿との決闘で用いたという、刃に毒を塗った剣の逸話の再現。
 持ち主の任意で刀身に纏わせた魔力を毒素に変換することができ、治癒困難な斬撃との相乗で相手の肉体を内部から蝕むことが出来る。
 もっとも、ルノーはこの力を「騎士道に背く戦法」として快く思っておらず、例え窮地に陥っても自ら使おうとはしないだろう。


『蹴破る剛蹄(バヤール)』
 ランク:B+ 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1~30 最大補足:50人
 バヤール。ルノー・ド・モントーバンの生涯の盟友にして、聖剣デュランダルと並び称された名馬の中の名馬。
 名はその赤毛に由来し、伝承によれば黄金の心臓と狐の知恵を持つとされる。
 聖杯戦争においては宝具として現界しているが、英霊の座に登録されたれっきとした英霊である。
 気性は非常に荒いが、ルノーとは固い絆で結ばれており、離れ離れになった時も決して主人のことを忘れることのない忠義に篤い性格。

 宝具としてのバヤールは、並の騎乗物では追いつくことすら出来ない加速力と、あらゆる障害をなぎ倒して走破する怪力を誇る。
 また『乗る人間の人数に応じて自在に巨大化出来る』という伝承に由来する、擬似的な質量増大能力を持つ。
 真名開放により、外見上の大きさは変わらないにも関わらず、山のように巨大な獣と同等の大質量を伴った突撃を行う。
 あたかも巨大化しているかのように、障害物を蹄のひと踏みで叩き潰し、体当たりで壁を打ち崩し、一蹴りで敵を鎧ごと打ち砕くのだ。

【weapon】
『無銘・馬上槍』
 バヤールでの突撃に耐えうる強固な構造のランス。
 取り回しが悪いため、敵と切り結ぶ際は『鋭々たる致命の剣』を抜剣する。

【解説】
ルノー・ド・モントーバン。
シャルルマーニュ伝説に名高き十二勇士に数えられた『聖騎士(パラディン)』のひとり。
日本ではフランス語読みの『ルノー』よりも、イタリア語読みの『リナルド』という名前のほうが定着している。

シャルル大帝の甥であり、ローランやアストルフォとはそれぞれ従兄弟の関係にあたる。
強者揃いの十二勇士の中でも特に武勇に優れ、騎士としての実力は十二勇士筆頭のローランに次ぐとされる。
もっともローランは戦士としては優れていても素行に問題が多かったため、ルノーこそ騎士の中の騎士と呼べるだろう。
義に篤く、卑怯な行いを嫌い、女性に優しく、どんな敵にも決して臆することのない、パラディンの理想形といえる性格。
もっとも、貧乏な領地に持ち帰ろうと自分を捕虜にしていた城から調度品をちょろまかそうとしたりと、真面目一辺倒な男ではない。
とはいえローランを筆頭にアクの強い面子の集う十二勇士では、オリヴィエに次いでまともな部類である。

一連のシャルルマーニュ伝説においては、ルノーはローランやアストルフォと並んで準主役級の活躍を見せる。
数々の冒険や恋の鞘当て(これに関しては全部マーリンのせいだが)を繰り広げ、愛馬バヤールに乗って世界を駆け抜けた。
後半の山場となる『ロンスヴァルの血戦』にも、弟リッチャルデットと共に参戦し、絶望的な戦況の中で奮戦する。
しかし十二勇士の生還者は彼ら兄弟だけで、ローラン、オリヴィエ、テュルパン、アストルフォと名だたる勇士達は皆戦死してしまう。
彼らの死に意気消沈したシャルル大帝は息子の傀儡となり、疎んじられたルノーは止むなく大帝と対立する。
しかしルノー達のモントーバン領とフランク軍ではあまりにも戦力が違い、領民のためにルノーは恭順を誓わざるを得なくなる。
降伏の条件として大帝の息子が提示したのは「見せしめとしてバヤールをルノーの目の前で溺死させる」というものだった。
唯一無二の盟友を失ったルノーは領地を息子に譲って信仰の道に入るが、その欲の無さに嫉妬した民衆によって殺される。
パラディンとして輝かしい冒険譚をいくつも遺した男には似つかわしくない、あまりにも寂しい最期であった。

【特徴】
金属鎧の上からマントを纏った、精悍な顔立ちの美丈夫。
肩ぐらいまでの髪を後ろでひとつに纏めている。

性格は常に自信満々、自分をフランス一の騎士であると公言して憚らない。
これは生前の実績に裏打ちされたものであり、自信に相応しい実力を備えている。
もっとも内心では武勇ではローラン、知略ではオリヴィエ、機転と前向きさではアストルフォのほうが優れていると思っており、
彼がもっとも怒るのは自分ではなく掛け替えのない友人達が愚弄されたときである。

【聖杯に懸ける願い】
 愛馬バヤールともう一度共に駆け抜けたい。
 つまり、サーヴァントとして現界した時点で既に願いは叶っている。

【カードの星座】
 乙女座。





【マスター】
ラ・ピュセル(岸部颯太)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
スノーホワイトをデスゲームから救い出す。

【能力・技能】
魔法少女への変身。
魔法騎士ラ・ピュセルに変身することで身体能力を大幅に向上させる事ができる。
また、魔力量も増大し、サーヴァントが全力で戦闘するに足る魔力を供給できるようになる。

「剣の大きさを自由に変えられるよ」
彼の固有魔法。持っている剣と鞘をその時々で最適な幅、厚み、長さに変える事が出来る。
ただし、自在とは言っても自分で持つことが不可能なサイズにすることは出来ない。
剣は非常に頑丈にできており、傷をつける事さえ困難。

【人物背景】
数少ない「変身前が男」の魔法少女で、姫河小雪(スノーホワイト)の幼馴染の中学2年生。
小雪とは中学校が別だが、小学生時代は魔法少女好きの同士として良き友人だった。
学校ではサッカーに打ち込む一方、周囲の人間には内緒にしながら魔法少女作品の鑑賞も続けている。
マジカルキャンディー争奪戦が始まってからはスノーホワイトを守る騎士として奮戦するが、森の音楽家クラムべリーとの戦いで敗北。志半ばで斃れた。

【方針】
聖杯を獲る。
手段は選ばないし、正しい魔法少女であろうとも思わない。
あまりにも正しい騎士であるルノーに対しては複雑な感情を抱いており、彼に対して本心を明かすつもりはない。

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最終更新:2017年07月21日 08:39