海底のNext stage!

「つまりはこれも、人間が作り出したゲームだって言うことだろ?」

 冬木市ハイアットホテルの屋上。
 月光が二つの影を照らしていた。その何方もが、人間の形をした、然し人間とは大きく異なる者達であった。

 眼下に広がる冬木市を眺めるパラドは、子供のような笑いを浮かべながら屋上をふらりふらりと歩き回っていた。
 聖杯戦争。英雄を召喚し、その力を以て願いを賭けて戦う蠱毒壺、願望機の争奪戦、殺し合いを以て成立する魔術儀式。命をベットして願いを掴み取らなければならないデスゲーム。
 そして、異世界より招かれ、強制的にそれを演じさせられるパラド……であるが。実のところ、殺し合い自体はそこまでの心労にはなっていなかった。
 彼等バグスターは消滅したところで、データさえ残っていれば復活することが出来る以上、死への恐怖というものが非常に希薄極まりないものであった。
 その上、元の世界においてパラド達バグスターと、その協力者はそれと似たようなものを追い求めていた。願いを叶えるために殺し合いをする……究極のゲーム『仮面ライダークロニクル』。
 最も、それと聖杯戦争は細かく見れば大きく差異がある。ゲームとしてパクリだなんて言うつもりは彼にはなかった。


 それでも、一つ気に入らない部分があるとするならば。


「それに俺は無理矢理参加者として招かれたってことだ。まるで、人間達の玩具みたいに。なぁ、そういうことだろキャスター?」


 また、"人間に良いように使われた"ということだ。バグスターは元々はゲームキャラクターとして、敵キャラクターとして、人間に倒されるためにデザインされた者達だった。
 そして、パラドはそれを良しとしない。バグスターの運命を変える、人間達の手からバグスターを解き放つ……それこそが、バグスター達の"仮面ライダー"であるパラドが戦う理由の一つだ。
 それ故に、この聖杯戦争に参加することになった、という事実よりも、無理矢理参加させられた、という部分があまりにも、気に入らなかった。
 ガシャットギアデュアルを握り締める手に力が入る。そして、キャスター……そう呼ばれた男へとパラドは、その内心とは裏腹に笑顔のまま視線を流した。


「ええ。その通りですとも、パラド。言うなれば、我らはこの聖杯戦争というゲームに設定されたキャラクター」

「我らの役目はこの聖杯戦争に踊ること。数多の棋士達と対局を繰り返し、勝ち抜き聖杯の坐へと辿り着くことであります故」


 その男は、仏僧であった。外見にも分かり易く、剃髪した頭に僧衣を纏っている。ただ、その手の中に握り締めるのは……囲碁扇子、と呼ばれる扇子であった。
 落ち着き払った態度と穏やかな笑みを浮かべる……パラドをマスターとして召喚されたキャスターは、然してその声色、その立ち居振る舞いには抑えきれないまでの『楽しむ気持ち』が含まれている。
 パラドのそれと酷似した、そう、それは幼子が"ゲーム"に取り組むかのような。

「……心が滾るな」

 ガシャットギアを握り締めるその手に力が入る。
 言うまでもないことであるが、戦うことが恐ろしいわけではない。ただ――――パラドには、キャスターのこともまた気に入らなかった。
 彼は現状どうであろうとも、彼は人間の英霊だ。故に、腹立たしい。結局のところ彼もまた人間でしかなく、そしてこの聖杯戦争というゲームに自分を縛る枷でしかないのであり。



――――PERFECT PUZZLE!



 ガシャットギアのダイヤルを回転させると、周囲にゲームエリアが展開され、ゲームは起動する。
 選択するゲームは『パーフェクトパズル』。落ちてくるパズルを崩し、連鎖を狙うパズルゲームであり、そして。





What's the next stage?



「――――変身」



Dual Up!

Get the glory in the chain! PERFECT PUZZLE!!


 蒼き鎧を纏いて、二律背反の仮面ライダー、パラドクスは降臨する。


「俺達バグスターはもう人間の思い通りにはならない……まずはお前からだ、キャスター」


 展開――――パズルピース型の強力なエネルギー弾が、キャスターへと向かっていく。その攻撃は、サーヴァントの魔力放出にすら劣らない。
 対してはキャスターは、扇子を口元に押し当てながら、怒りに震えるパラドを見据え続け。その弾丸が放たれた瞬間――――それを、突き出した。


「むぅ、少々落ち着いてくだされ。私は、私達は、人である前に、サーヴァントである前に」

「――――"ゲーマー"でしょう?」

 放たれた光の弾丸が消滅する。そして、その直後にパラドクスの目前に出現する。
 それらは勢いはそのままに、方向を反転して真っ直ぐにパラドへと向かい――――その強力なエネルギー弾は、パラドクスの装甲へとそのまま叩きつけられる。


「何!?」


 そして、その衝撃でパラドの身体はホテルの屋上から投げ出される。
 パラドクスの装甲は頑丈だ、恐らくこの程度で致命傷に成り得ない……だが、パラドのゲーマーとしての性質が、無論此処で終わらせようとはしなかった。
 周囲のエナジーアイテムが、パラドの正面に集まっていく。この落下の渦中に在りながら、それらは宛らパズルの如く、複数のアイテムを操作し、選択し。


『伸縮化!』


 発動と同時、パラドクスの身体がまるでゴムのようにするりするりと伸びていく。
 ホテルの屋上へとその腕が伸びていき、その端を掴むと、その腕が伸縮する勢いで、再度パラドクスはキャスターの目前へと辿り着く。

「これがサーヴァントの宝具ってやつか……」

「いや、そちらこそ。さすがは『天才ゲーマー』の起点とでも言いましょうか……」

 再度、二人は相対し。


「はは、ははははははは!!!!」


 そして、パラドは笑い声を上げた。
 腰に装填したガシャットギアを引き抜いて、パラドは変身を解除する。
 パラドの中にあった、キャスターへの不満はどこかへと消えて失せていた。パラドクスとは"そういうもの"でもあった。
 冬木の町並みを眺めながら、両手を広げる。そして、実に楽しそうに、笑いながらキャスターへと問いかける。

「なぁ、この街には他にも色んなサーヴァント達がいるんだろ?」

「ええ、そうです。その中で比べたら、私など……いや、とてもとても。最弱と言っても差し支えないでしょう」

 キャスターの返答に、満足そうにパラドは頷くと、足取り軽くキャスターの下へと向かって肩を軽く叩いた。
 そのさまは、正しく新しいゲームを目の前にした子供のそれだ。どんなゲームが待っているだろうか、どんな攻略をしてやろうか、ああ楽しくてたまらない。そんな様だった。
 聖杯戦争、サーヴァント。その存在はパラドの心を揺さぶった。聖杯という存在には興味がない。そんなものを使って願いを叶えるなんて、パラドにとっては「クリア特典を使って二週目を行う」ようなものだった。
 故に、パラドは……無論、そこには『人間の為に作られたゲームをバグスターである自分がクリアして攻略して、鼻をあかす』というものも存在していた、が。
 何より、パラド自身のゲーマーとしての心を、聖杯戦争というシステムは踊らせた。


「――――キャスター、あんたは何を聖杯に願うんだ?」

「いいえ、パラド。私もまたゲーマー。であれば、私はただ、サーヴァントしてこの聖杯戦争を楽しむのみ」

「ええ、今や私は人に非ず、聖杯戦争という碁盤の上にて生きるもの。であれば、攻略できない筈がない」

 パラドはキャスターに問うて、そうしてキャスターは答えた。
 嘘偽りない本性であった。本因坊算砂――――嘗てそう呼ばれていた男は、その生涯を碁という物に費やした、"ゲーマー"であるのだから。
 であるとすれば、最早二人には幾らの言葉が必要であろうか。此処に揃うは天才ゲーマーが二人。ならば、やるべきことはただ一つ。


「仮面ライダークロニクルの前哨戦だ」


「この聖杯戦争というゲーム、超協力プレイで……ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ」










      GAME START! To be continued……



【クラス】
キャスター

【真名】
本因坊 算砂

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:A 宝具:EX

【属性】
渾沌・善

【クラス別スキル】
陣地作成:EX
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
キャスターは本来の陣地作成とは異なり、戦闘開始時に周囲一体を“盤面”とする。
これにより直接的に他者へと影響を与えることはない。あくまでキャスターがそう認識するのみ。

道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
法力によって破邪の力を込めた礼装を作成できる。

【保有スキル】
一世名人:A+++
三人の天下人を唸らせた、碁打ちの最高峰であり名人という言葉の起源である天才。
盤面上の全てを把握し、計算し、先読みする。
また、決して揺るがない盤面への計算と集中はあらゆる精神干渉を遮断する。

怨霊調伏:C
“臨兵闘者皆陣列在前”の九字が成す、邪悪な呪いへの抵抗呪文。
成功すれば敵の魔術を封じ込められる。


【宝具】
『功成らずして、死ぬるべし』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ: 1~50 最大補足:1人

碁打ちの最高峰である、本因坊算砂の対局そのもの。
最早その打ち筋に未知はなく、対局相手のそれすらもキャスターにとっても思うがまま。
周囲一体、盤面となった部分における存在……生命体から物体、魔術、宝具、ありとあらゆる存在を認識し、それらの位置を操作することが出来る。
操作された物体は一切のラグを発揮させずにキャスターが選択する地点へと召喚される。盤面内においては上下左右が思いのままであり、重量にも左右されない。
対サーヴァント戦での攻撃力はこれ単体では一切存在せず、他の攻撃手段との併用によって真価を発揮する。また、サーヴァントであれば対魔力で抵抗することも出来る。

【人物背景】
安土桃山時代から江戸時代において活躍した棋士であり、仏僧。
舞楽宗家の加納與助の子として生まれる。8歳の時に叔父で寂光寺開山・日淵に弟子入りして出家。仏教を修めるとともに、当時の強豪であった仙也に師事して囲碁を習う。
かの織田信長に「まことの名人」と称され、今日まで広く常用され続ける名人という言葉の起源であるとされている。
本能寺の変においては織田信長と対局し、天正15年には徳川家康に招かれ、慶長8年には豊臣秀吉の御前にて名碁打と対局し、これを勝ち抜いた。
また、僧侶としては最高位階級である『法印』に叙せられる等、僧侶としても確かな実力を持っている。

ある意味では、碁というゲームをやりこんだゲーマーといえるだろう。
「碁なりせば 劫(コウ)なと打ちて 生くべきに 死ぬるばかりは 手もなかりけり」……この世界が囲碁/ゲームの世界であったならば、自分は絶対に死ぬことはなかったのに。
死の直前にそう思ったことから、聖杯戦争という『ゲーム』に組み込まれた自分を楽しんでおり、基本的にはマスターと同様、聖杯戦争を楽しみつつ『ゲームクリア』を狙う。
サーヴァントとしての攻撃能力はほぼ皆無であるため、宝具の使用によって戦闘能力が高いマスターをサポートすることを主な戦法としている。

【特徴】
剃髪をし、法衣に身を包んだ初老の男。
常に目の前の出来事をゲームとして楽しむために、穏やかに笑いながらも目の前の光景に対して現実味を一切持たないため、常に感情は一定である。
その口調は高位の僧侶として達観し、また惹きつけるものもありながら溢れ出る『ゲームを楽しむ』という無邪気さが複雑に混じり合っている。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を楽しみ、勝ち抜く。聖杯を手に入れること自体が目的。

【カードの星座】
双子座


【マスター】
パラド@仮面ライダーエグゼイド

【能力・技能】
  • 仮面ライダーパラドクス
二つのゲームが内蔵されたガシャット『ガシャットギアデュアル』によって変身する仮面ライダー。
起動とともに周囲にゲームエリアを展開し、必要ならばステージセレクトによって戦いやすいステージを選択し再現することも出来る。
『パーフェクトパズル』と『ノックアウトファイター』、二つのゲームの力を使うフォームへと変身できる。
また、両フォームに共通する性能として『相手の防御システムを一時的に停止させるプログラムを四肢から流し込む機能』が存在する。

  • パズルゲーマー Lv.50
『What's the next stage?』

身長:200.5cm
体重:110.5kg
パンチ力:59t
キック力:68.5t
ジャンプ力:ひと跳び62m
走力:100mを1.9秒

パズルゲーム『パーフェクトパズル』の力を扱うフォーム。アイテムを全てエナジーアイテムに変換する等、エリア内の物質を操作する能力を持っている。
パズル型のエネルギーシールドやそれを射撃武器として飛ばす能力を持っているが、その最も驚異的な力はエナジーアイテムを自由自在に操作することにある。
本来自分から取りに行かなければならないエナジーアイテムを全て操作し、そして自由自在に操作することも可能。
また本来一度に一つしか使用できないエナジーアイテムを一度に三つまで同時に使用できる。


  • ファイターゲーマー Lv.50
『The strongest fist!』

身長:201.5cm
体重:151.5kg
パンチ力:64t
キック力:68.5t
ジャンプ力:ひと跳び62m
走力:100mを1.9秒

格闘ゲーム『ノックアウトファイター』の力を扱うフォーム。両腕にスマッシャーが装備され、近接格闘戦での攻撃力が向上する。
このスマッシャーの内部には特殊燃焼装置「マテリアバーナー」が内蔵されており、腕を振っただけで火柱を吹き上げる以外にパンチと同時に接触した物体を爆砕することが可能。
格闘ゲームらしく、戦闘スタイルとしては一撃の重さよりも手数によるラッシュを優先した戦闘を得意とする。


【人物背景】
バグスターウイルスによって誕生したゲームの敵キャラクター『バグスター』達のトップ。
幻夢コーポレーション社長『壇黎斗』と手を結び、究極のゲーム『仮面ライダークロニクル』を完成させようと目論んでいた。
その目的は仮面ライダーエグゼイド『宝条永夢』と決着をつけること、そして攻略される側のバグスターから、今度は人類を攻略する側に回ること。
その戦闘力は凄まじいものであり、レベル50の戦闘能力も合わさって登場からマキシマムマイティXの登場までほぼ無敗とも言える程の戦績を誇った。
基本的には戦闘をゲームとして楽しみ、その様はまるで子供のようだが、反面非常に知略家であり、エナジーアイテムを巧みに使い分けてパズルゲーマーの性能を存分に発揮する。

【方針】
仮面ライダークロニクルの予習として、聖杯戦争というゲームを楽しむ。

【聖杯にかける願い】
宝条永夢と決着をつけるために元の世界に帰ること。
また、聖杯戦争を勝ち抜くことで人類が作ったゲームを攻略する。

【参戦時期】
第15話での3ライダーとの戦闘後。

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最終更新:2017年07月25日 18:11