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**シナリオ

*家族編
なんであいつに外へ追い出されたかは忘れた。
その時はママの帰りが遅かったからだったか
お酒がなくなったからか
よくは思い出せない。
あたしは玄関の前で寒さに震えていた。
道行く人たちは暖かそうな毛皮のコートを着て
だけど、あたしを無視して
道を歩いていってしまう。
あたしは裸足だった。
悲しいほど冷たかったので
片足をもう片方の足の上にのせて寒さをしのいでいたんだ。
何度も繰り返した。
だけど、誰もあたしに声をかけてくれる人はいなかった。
だれもあたしを見つけてくれない。
あたしはこのままあいつにいじめ殺されるだろう。
誰にもみとられず
誰にも悲しまれず
誰にも・・・・・。
あたしの境遇を分かってくれる人なんて
始めからこの世にはいなかったんだ。
あたしは誰にも理解されずに
苦しむだけ苦しんで死ぬ、それだけのもの・・・。
そう思い、あたしは目を閉じたんだ。
この世にすべての希望を捨てるように。
 ・・・・・・
 ・・・・・
 ・・・・
 ・・・何だろう、声が聞こえる。
暖かい、優しい声だ。
あたしは声のする方へ行って良いんだろうか。
また、期待を裏切られるんじゃないか。
だけど、あぁ・・・。
あたしは目をそっと、開けた。
目の前に人がいる。
そして、その人の綺麗な両目にはあたしが映っている。
あたしはその人を知っている!
優しくて暖かいその人を!
ママ!!

*家編
依頼を終えたあたしはいつも通り家に帰る。
普通の人間は家に帰るのが楽しみらしい。
家に帰ると暖かい夕ご飯ができていたり
家族と今日会った出来事をはなしたりと
とても嬉しい事があるそうだ。
だけど、あたしにとって
家は食べて寝るだけの孤独な場所でしかない。
「ミィヤァ」
あたしがそんな事を考えて街路を歩いていると鳴き声が聞こえた。
見ると子猫だ。
首輪が付いていない。
きっと野良猫か捨て猫だろう。
ほっといたら冬は越せずにのたれ死ぬに違いない。
でも、それはあたしには関係ない事だ。
あたしは急いでその場を後にするでもなく
子猫を待ちながら歩くでもなく
ただ、無関心に家へ向かう。
そうして、家に着いたあたしはベッドに倒れ込んだ。
仰向けになる。
石造りの天井が見える。
左を見る。
一日中付けっぱなしの石油ヒーターとキッチンが見える。
誰もいない。
あたしは急に家に息苦しさを感じた。
と、ガリガリガリ
「!!!!」
扉の方で音がした。
驚いたあたしはベッドから飛び降りた。
サブマシンガンを手に取ると扉の近くに慎重に歩を進めていく。
ダンッ!
思い切り扉を開けた。
開けている途中で物がぶつかった音が聞こえた。
あたしは銃を音がした方へ向けた。
すると、そこには街路で見た子猫が転がっていた。
「なんだ、あんたっだの」
あたしはほっとして、扉を閉めようとした。
でも、あたしは扉を閉めている最中に子猫の様子が変な事に気が付いた。
子猫は立とうとはするもののうまく立てずによろめいて倒れてしまう。
そんな実りのない動作を何度も繰り返す。
扉に激突したときにどこか悪くしたのだろう。
「あんた、災難ね。でも同情はしないわ。勝手についてきたあんたが悪いんだから」
あたしは扉を閉めようとした。
でも、閉められなかった。
あたしの心に何か得体の知れない何かがそうさせなかった。
「・・・気が変わったわ。入っていらっしゃい。簡単な手当とミルクくらいならあげるから。・・・といっても、今のあんたじゃ家にはいるのも難儀そうね」
あたしは子猫のもとへ行き抱きかかえると、家に入った。
なんでこんなお節介を焼こうなどと思ったのかは分からない。
ただ、もしあの時、子猫を見捨てていたら
あたしは自分の中のなにかを失ってしまう。
そんな気がした。

家に入ったあたしは子猫の具合を見る事から始めた。
慣れない手つきで子猫の体を触ってみる。
「骨には異常なさそうね。打ち身かしら。よく分からないわ。あたしバカだから。ごめんなさいね」
あたしはすぐに子猫の具合をみるのを止めた。
「ベッドの上で休んでいなさい。いま暖かいミルクを作ってきてあげるわ」
子猫をベッドの上に置くと、あたしはミルクを温めにキッチンに行った。
コンロの鍋にミルクを注いで火を付けた。
ガタン
後ろの方で何か落ちた音が聞こえた。
子猫だ!
「まあ!あんた無茶したわね。素直に休んでいればいいのよ」
「ベッドの上は暑かったのかしら。あんた毛がふさふさだものね」
「いいわ。好きなところにいなさい。あんたも野良の端くれだものね。自分の居場所は自分で決めなさい」
そういって、あたしはすでに湯気を出している鍋の元へ戻っていった。
火を止め、鍋のミルクを床に置いた皿に注いだ。
子猫はミルクに興味がありそうだったが
なかなか口を付けようとはしなかった。
「あら、そういえばあんた、猫舌だったわね。待っていれば、そのうち冷めるからいい加減になったら、自分で飲みなさいな」
あたしはベッドに再び倒れ込むと
そのまま眠りに付いた。

カーテンのすき間から日の光が差し込む。
あたしはぼんやりと目を覚ました。
今日も孤独な一日が始まる。
うつぶせになっていた体を転がす。
仰向けになる。
石造りの天井が見える。
左を見る。
一日中付けっぱなしの石油ヒーターとキッチンが見える。
何も変わらない、無感動な部屋があるだけ・・・だと思った。
そんなあたしのあきらめた気持ちをぬぐい去る存在がそこにはあった。
子猫だ。
あたしは起きあがった。
子猫は部屋の隅で体を丸めて眠っていた。
あたしは立ち上がった。
子猫はあたしが立ち上がった音で目を覚ましたようで体をググゥッとのばして、あたしの方へ寄ってきた。
「ミィヤァ、ミィヤァ」
あたしは足に体をこすり付けようとしている子猫を軽くよけながら話しかけた。
「あら、あんた元気そうね。もうけがの具合は良いのかしら」
子猫を抱き上げて様子を伺おうと顔を見た。
その黒く大きな瞳にはあたしが映っていた。
胸になにかがこみ上げてきたあたしはとまどい子猫を床に降ろす。
「・・・あんたに見つめられていると、変な感じがするわ」
しばらく子猫を見下ろしていたあたしだったけど、仕事をもらいに行かなければならない事を思い出した。
「あたし、これから仕事をもらいにいかなきゃいけないの。あんたは元気になったみたいだし、出ていってもらうわ」
あたしは子猫を抱いて外へ出すと扉を閉めた。
あたしはこの事を後になって後悔するのだけれど、このときは仕事の事で頭がいっぱいになっていて、それどころではなかったのだ。
あたしは子猫とのやり取りで遅れた時間を取り戻すように機敏に行動した。
キッチンへと戻る途中に見つけた子猫が飲んだろう空の皿を流しに投げ込み、棚からパンを取り出した。
ナイフで一切れ切った。
コップにミルクを注ぎ、パンと一緒にテーブルへ運ぶ。
これがあたしの朝食。
1年近くこの朝食を続けている。
味を感じないので特に不満はない。
パンを2口で食べ、ミルクで流し込む。
食器はそのままにブローカーとの待ち合わせ場所へ向かった。

依頼を終えたあたしは子猫を追い出した事を後悔していた。
なぜだか分からない。
だけど、あたしは取り返しの付かない事をしたんじゃないかという訳の分からない焦燥感に駆られていた。
イライラが募る。
子猫が死のうとどうでも良いと思っていたけれど、子猫に見つめられてからあたしは変になってきた。
子猫の事が気になりだして、辺りを探していた。
子猫を見つけた街路を探した。
普段は絶対に行かないような人混みの多い場所も探した。
だが、見つからない。
周りの人があたしの物(サブマシンガン)を注視しているのに気が付いた。
あたしは一旦戻って、それを置いてこようと思った。
家に帰ったあたしは短機関銃を置くと、急いで外に出た。
「ミィヤァ」
子猫だ。
子猫の声がする。
周りを見回す。
子猫がいた。
よたよたとあたしの方へ歩いている。
よかった。
あたしは心から思った。
「あんた、のんきなものね」
子猫はあたしの元へ来て体をこすり付けてこようとする。
あたしは家の中へ再び戻った。
子猫が扉にあたらないところまで入ってきたのを確認して、扉を閉めた。
「あたし、あんたのこと気に入ったみたいよ。世話してあげるわ」
あたしは流しに投げ込まれた皿を洗い、まだ濡れているそれにミルクを注いだ。
「まずは飲みなさい。あんたのようなチビじゃ、えさもろくに得られていなかったのでしょ」
あたしは子猫の前に皿を差し出した。
子猫はそれをぺちゃぺちゃと飲み出した。

夜中、寝ていたあたしは目を覚ます事になる。
子猫が吐いたのだ。
「まあ、あんた大丈夫なの。どうしたっていうのかしら」
あたしは途方に暮れた。
今まで子猫に限らず動物を飼った経験がないのだ。
あたしは無い知恵を絞って、あれこれ考えた。
その甲斐もあって、一つ心当たりを思い出す事ができた。
夕べやったミルクを温めていなかった事だ。
「あんたって野良のくせに華奢なところがあるのね。体を温めたら楽になるはずよ。いらっしゃい」
あたしは丸っこい子猫を抱いてベッドの中に入れた。
子猫はベッドから出ようともがくがそうさせずにしばらく温めていた。
次第に子猫もあきらめたのか大人しくなり小さないびきをかきながら眠った。
「あら、やだわ。猫っていびきをかくものなのね。一つ賢くなったわ」
あたしは意外と人っぽいこの子猫を見守りながら、時を過ごした。

気づいたら、朝になっていた。
朝まで見守っていようと思っていたのだけれど、眠ってしまったようだ。
子猫はいつの間にか部屋の隅で丸くなっていた。
寝ている間に暑くなったのかも知れない。
あたしは子猫の様子を見ようと立ち上がり近づく。
子猫があたしに気づいて、昨日と変わらずにググゥッとのびをして頭をこすり付けにやってくる。
「ミィヤァ、ミィヤァ」
あたしも変わらずに子猫を軽くよけながら、挨拶をする。
「具合はどうなの。おなかのゴロゴロは治ったかしら」
「ミィ、ミィヤァ!」
あたしの挨拶にひときわ嬉しそうに答える。
あたしは子猫の返事に満足して、キッチンに向かった。
鍋を火にかけて、ミルクを注いだ。
ミルクの表面に膜ができた頃を見計らって火を消した。
棚からパンを取り出し、一切れ切った。
コップと皿に鍋のミルクを注いだ。
皿を床に置き、パンとコップをテーブルに運ぶ。
あたしが椅子に座る前に子猫はミルクをなめる。
「あんたってしょうがないのね。主人よりも先に食事を取るなんて。でも、まあいいわ。あたしも頂きましょ」
あたしは気を取り直すと朝食を食べた。
食事を取り終えたあたしは自分と子猫の分の食器を流しに運んだ。

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