────武道の本質は〝人殺しの業〈わざ〉〟である。
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自分の愛する人のいないこんな世界になんて要らない。
これからは血腥い殺し合いが始まる。それは構わない腹もくくって覚悟も出来ている。
だが、どうせならせめてもう一度会いたかった。
脳裏によぎる彼女の顔。会えない。話せない。
園子さんに会いたい。 園子さんに会いたい。 園子さんに会いたい。 園子さんに会いたい。 園子さんに会いたい。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。 園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
園子さん。
園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。園子さん。
一時を忘れ、フラストレーションを発散されることが出来るのは彼には空手しかなかった。
だが、自分より強いやつも拮抗しうる者もここには誰もいない。
今、彼の頭の中で考えられるサンドバッグは自らのサーヴァントだけ。
千年不敗?面白い。
ここなら人の目も気にしないで済む。彼ほど空手に入れ込む空手莫迦もいない。事実、皆辞めていった。
ここ穂群原学園・空手部はこの男、京極真〈きょうごく まこと〉の個人稽古場と化していた!
「ッてぇえぇぁぁぁぁッ!!」
風切り音と共に引き締まった唇から吠える。
少年のその浅黒い肌から流れる汗。叫ぶ間にも廻り続ける蹴撃は宙を疾っていた。
その前方にいたのは左袖だけがない奇妙な着物を纏う先ほどの青年よりも身長はふた周りも小さな男。
男は青年を見たまま、冷笑を浮かべ軽業を続ける。
しかし、少年は如何な動きを停めなかった。
そして、フルスロットルのまま回し続け、五分以上経過した。
膝から先の視えない少年の放った蹴撃は只の一度も当たりもかすりもしない。
吹き荒ぶ右回し蹴り。続けざまに跳ね上がり、後ろ回し蹴り。
ただ空気を斬り刻む音が駆け抜ける。
砂塵を巻き上げて荒ぶるその少年の姿はまるで抜き身の真剣を振るう侍そのものだった。
次に放った前蹴りが垂直に脚を振り上げて顎を当てにいく。が、そのまま男は反り返り、後方一回転して着地した。
「はぁぁあぁぁぁぁッ!!」
間髪いれずに顔面へ右正拳突きからの腕を返しての肘打ち、全部見切っている。
一つも入っていない……。
暴風になびく男の髪の毛一本も持っていけない……。
全て1センチ以下の見切り。瞬き一つせず、その眼前を通り過ぎる蹴撃と拳。そしてこちらを視る。
まるで急流に浮いた木の葉が岩にぶつかる寸前に流れのままに紙一重ですり抜けるようなその様は───とても美しかった。
半歩下がると突如、真の脚がまるで発条の化し、弾けた。
一瞬、遅れて男も飛翔する。
空に舞う二つの残像が螺旋を描きつつ絡み合う。
──自分の方が疾い。
真はそう確信した。
────だか、
風鳴りをあげて右から飛び込んできた蒼い旋風を捉えることはできなかった。
……何だと!?
後から飛んだのにあちらの方が数倍疾かったのだ。
条線が激突した瞬間、朱く染まった。
小さな塊が真をはたき落とし、その身体を吹き飛ばした。
三メートルほど向こうに落ちて転がる。すぐさま立ち上がった。
二人の踊り狂う狂乱が終わると小さい男は静かに言葉を紡ぐ。
「どうした息が切れたか?」
まだ肌に残る血を拭うと、
「……くっ!まだまだぁあぁッ!」
小さい男に組みにいった。
真の肉が震えるが、男のその身体と脚は根が生えているかのようにびくともしない。
「……くっ!」
「もう終わりだ───いくぞ」
瞬間、真の膚〈はだ〉が粟立〈あわだ〉ち恐怖を感じた。身構える。
来る…え?──疾……
突如、彼の視界が反転する。
直前に鳩尾に肘が入り、身体を二つに折って、遅れて来る甲高い嗚咽。
小さい男は続けざまに青年を投げた。
その様は洗濯機の中で回転する洗濯物に似ていた。
頭頂部から垂直に地面へと落下する。
───だが、
今、一体何が起きた!?
頭が地面に衝突する前に、首筋に異様な感覚が襲ったのだ。
最初は感覚の正体もよく解らなかったが、気づいたら畳の上に背中から倒れこんでいた。
まるで腰が抜けたようにみえる。
しかし、それを以て彼の醜態を笑える者はそうは多く無い筈だ。むしろ顔面は蒼白になって、身体は凍りつく。
なんと!?脳天が地面に衝突する前に、彼の頭をその脚で刈ったのだ。
苛烈、凄絶としか言いようのない打極投の完全一体。
さっきは脚で自分の頭を刈ったが、今ので本当にやるべき事は……。
この少年・京極 真の脳裏に雷鳴が轟く。寒気がする。こんな業〈わざ〉が本当に可能なのか!?
嘘もヘチマもない……。無手で不敗なんて……。作り話だと……。
自分は日本一になって、もっと強い奴を探して国を出た。なのにこんな方が実際に生きていたなんて……しかも、この日本に……!灯台下暗しとは正にこの事だ。
これがあの……。
──陸奥圓明流。それは武術界に伏在する伝説。
その無手の業〈わざ〉を以て、宮本武蔵に勝っただの、新撰組の土方を倒しただの、千年不敗を誇るというが真実かどうかは定かではない。
だがもし…それが真実なら、武術の祖に相違ない。
そして日本最強のこの男を完膚なきまでに組み伏せたのだ。
恐怖と驚愕に気死せんばかりの主人〈あるじ〉を見下ろしたまま、男は小首を傾げると笑った。
「気が済んだか、真?終わりだ。飯にするぞ」
地べたに額をこすりつけたまま動かない。
「何だ?それは?」
無表情に訊ねた。
「お願い申す!この男、京極 真に!自分に……稽古を!……いや、せめてあなたのその鬼の力をもっと見せてほしい!頼む!」
血痰が喉に絡んでいるのか、聞き取りにくい声だ。
しかし、サーヴァント・アサシンの答えは否。
「労は別に多くは無い。だが、そんな刻〈とき〉も無い。 オレ達は聖杯の約定〈やくじょう〉に従い、必ずお前を守〈も〉りする。生きて帰りたいなら、黙って観ているだけで十分だろう?」
「そこを何とか!」
アサシンは苛立たしげに舌打ちした。
訝しさ半分、不快感半分で問い返す。
「──なら訊く。何故だ、真?今の平和な日本で何故その身を剣〈つるぎ〉と鍛える?人を斬らない剣に一体何の価値がある ?そんなに人を殺したいなら銃を使えばいいだろう?俺たちは死人だ、死んだ後もくだらねぇ事に執念を燃やして動きまわってる亡霊だ。死に損ないの死人なんだ。お前もオレ達の戦場〈いくさば〉に付き合う必要も本当はない」
慌てたように目を上げた「お願いします。そこを……」 耳元で低い声が、静かに囁いた。「もう二度は言わぬぞ。真」
ふり向いた。誰もいない。
だが、右手がとられ、重みが肩の付け根に集中した、と思った刹那、肩の肉がねじれ小気味よく骨が鳴った。
喚き出したい衝動を抑えてガックリと首を折って呻く。
「この戦いが終わるまで布団で寝ていろ。邪魔立てするなら貴様から殺す」
アサシンの言葉に偽りはない。きっと令呪の発動する間もなく、彼を絶命させられるだろう。
「頼む」
些かの躊躇いもなく訴える。
「───このうつけが、どうやら見せ方が足らないらしいな……次は折るぞ。その脚も…その頸〈くび〉も…」
疲労と心労で目をしょぼつかせて、ボロ布のような風体でも、真のその眼は力を放つ。
再び、小気味いい音とともに、真は肩を自分ではめ直し、立ちあがる。
やがて、思い切ったように口火を切る。
「何故……剣と鍛えるかと訊いたな?」
声を出す力があったと我ながら不思議だったが、ほとばしり始めた言葉は止まらない。
「自分は───空手家だからだッ!!その業を自分の血と肉にする」
「きっと、あの世で後悔するぞ」
「それだけは決してしない」
その時、真は笑っていた。 彼は産まれて初めて化物〈けもの〉の血をたぎらせたのだ。
暫く思考を巡らせていたがやがて、虎彦はぼそりと唇を開く。
「解った」
「虎!」
慌ただしい声でマスターとサーヴァントに割って入ったのは、アサシンと瓜二つのもう一人のサーヴァントだった。もう一人のアサシン・狛彦は目を瞠ることとなった。
「どうせ暫くは物見だ。暇潰しに付き合ってやるよ」
「ありがとうございます!」
しかし、虎彦は指を三本立てて
「──但し、オレの飯は三倍」
「……押忍!!」
次の瞬間、糸の切れて落ちたような人形のように真は気を失った。
「あらま」
二人の長いため息の音が聞こえる。二人は全く同時に頭を掻いた。
狛彦は真を背負う。
内出血や生傷だらけの真のその顔はとても安らかだった。
「本当にそれでいいんだな?虎?」
振り返って、軽く肩をすくめる。
「ああ。狛……」
鏡像の暗殺者は困っていたが、同時に楽しみでもあった。
彼等一族に仇なすかもしれない存在に……。
そして天はそれが運命〈さだめ〉であってかのように、賽を振る。
はたして、この男たちはここ冬木に如何なる疾風〈かぜ〉を吹かすのか。
続く……!!
【出典】修羅の刻
【SAESS】アサシン
【真名】虎彦と狛彦
【属性】中立・悪(虎彦)中立・中庸(狛彦)
【身長】167㎝【体重】65㌔※二人とも
【性別】男性
【ステータス】※二人とも同じ
筋力C+ 耐久C+ 敏捷A+
魔力E 幸運B 宝具EX
【クラス別スキル】
気配遮断:B(-)
自身の気配を消す能力。
だが、彼らの場合、修羅に入るとたちまち闘気が放出して他のサーヴァントにも存在を察知される。要するに彼らの戦い方は悪目立ちするのだ。
単独行動:A
彼ら一族は基本的に単身で行動する事に由来する。
エミヤ〈アサシン〉などが例だ。
マスター不在・魔力供給無しで一週間現界していられる能力。魔力消費量に応じて多少上下する。
【保有スキル】
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場に残された活路を導きだす戦闘論理。
最期まで闘う意地。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
アサシンの特殊スキルで、彼等の宝具の一端でもある。
使用する『武器』の対人ダメージ値にプラス補正をかける。
アサシンの本気。発動すると幸運以外のステータスを2ランク上昇させ、精神耐性状態付与。この状態に戦闘中移行すると、誰の言うことも聞き入れないため、彼らとの意思の疎通はほぼ不可能。相手か自身どちらかが手折れるまで戦い続ける。
縮地:B
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
最上級であるAランクともなると、もはや次元跳躍であり、技術を超え仙術の範疇となる。
相手が『神性』『神秘』のランクが高い者、体制の守護者たる英霊などであればあるほど有利な補正が与えられる。
織田信長だけが持つ特殊スキルだが、近親者であり共に生きた彼等もランクが落ちるが持つ。
【宝具】
『陸奥圓明流』
ランク:無し 種別:対人魔業
レンジ:時と場合 最大補足:1~1000人
正確には宝具ではない。一子相伝・門外不出。人の身とは思えぬその絶技の数々。それは多対一や対剣術のみならず、対銃器の状況をも想定されている謎の活人。宮本武蔵、柳生十兵衛、土方歳三、ワイアット・アープ……数多の英傑を破る、その千年不敗の伝説。
『■■』
ランク:EX 種別:? レンジ:?最大補足 :?
それは神を凌駕しようとする試みに他ならない。
その門を通〈くぐ〉る時──……
【 weapon 】
【人物背景】
双子の暗殺者。
歴史の狭間に生き、血にまみれて時代を駆け抜けた影の一族。
──時は、混沌とした戦国時代。
梟雄・織田信長は腹違いの妹・琥珀を『鬼』との血縁を求めて、当時の継承者に嫁がせた。その子供が彼等だ。
武田信玄を葬り、雑賀孫一と合間みえ、本能寺の変の後、歴史の闇に飲み込まれて消えた正真正銘の英雄殺したちだ。
アサシンとして彼らが現界したのも頷ける。
年齢は物語後半の二十代前半から後半。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯に興味 ──自分の方が疾い。 。
真の兵〈つわもの〉たちと戦う為だけに参戦した。
そして──名を継ぐのは…
【出展】名探偵コナン
【マスター】京極 真
【人物背景】
杯戸高校出身。空手部主将。実家は静岡県で旅館を経営している。
十八歳。身長184㎝ 体重79㎏
空手公式戦四百戦無敗の『蹴撃の貴公子』またの名を『孤高の拳聖』と人は呼ぶ、日本最強の男。
普段はメガネをかけ、『空手』をする時のみ、眼鏡を外す。
丁寧な言葉遣いと古風な価値観をもち、恋人の園子を大事にしている大変真面目で硬派な男。だが、少し天然気味。いや、かなりか。
【 weapon 】
【能力・技能】
至近距離から発射された銃弾をかわす眼と動き。
腕をナイフで刺さったままの状態で犯人を倒し、それを
傷と思わない強靱さ。
恋人・園子に化けた怪盗キッドの変装を彼女とは指の長さが違うという理由で見破るほどの観察力。しかしこれは空手の試合での延長線のようだ。
主に空手。
彼の空手に先手なし、後の先だ。ノーモーション・ノーガードから放つカウンタースタイル。
だが、劇中一般的な空手
ルールで禁じ手とされる技を多様することに加え、格闘技の造詣に深いことから、時と場合によってはその限りではないようだ。
また、武器を持った五十人以上のヤクザを毛利蘭と共に、園子やコナンを守りながら10分で葬ったことから見ても、一人対多数戦でもその業前は何ら問題ないと思われる。
彼の苦もなく建造物を破壊できる正拳突きと刃物を逆に切断するほどの蹴り。
それと同じの毛利蘭とは数段実力差がある描写が多いことから見ても彼の戦闘能力がいかに凄まじいことがわかるだろう。
それに加え、並々ならぬ闘争心を秘めている。
【マスターとしての願い】
園子さんにまた会う為に、生きて帰る。
そして、空手家の血が騒ぎ……。
最終更新:2017年03月16日 16:25