224 名前: 春の始まる日の話 [sage] 投稿日: 2007/02/06(火) 05:15:22 0
男「……なぁ」
クー「……どうした」
男「あたたか、だな」
クー「君がその台詞を言うのはまだ早い。せめて七十年後に言ってくれ」
男「……まさか蒼天航路まで読んでいたとは予想外」
クー「つい先日、漫画喫茶で読破したばかりだ」
男「なるほど」
クー「まぁ……確かに今日は、季節外れと言って良いほどに暖かい」
男「寒い日の合間に、こんな暖かい日ってのもいいよな」
クー「ああ。それに、今日は君の誕生日だしな。天がささやかながら祝ってくれているのだろうさ」
男「ん…………今日、だっけ?」
クー「信じられないのなら、カレンダーを確認してみるといい」
男「あー、確かに今日だな。すっかり忘れてたわ」
クー「全く……だが、君らしいな」
男「お前の誕生日は忘れていないから安心しろ」
クー「分かっているさ。君の場合、自分の事は忘れていても他の人の事は忘れないからな」
男「よく分かってらっしゃる事で」
クー「それでだな……プレゼントを何にしようかと考えたのだが、結局決まらないまま、手ぶらで来てしまったんだ。済まない」
男「気にすんな。俺の誕生日なんて毎年やってくるんだから、一回くらい忘れても何の問題も無いさ」
クー「いや、だから、君の望む事をしてあげたいと思うのだが……どうだろう?」
男「望む事ねぇ……」
クー「耳掻き、膝枕、手料理、あとは背中を洗う位しか出来ないが……」
男「それじゃあ、傍にいて欲しい」
クー「傍に…………こう、か? それとも、もっと密着した方がいいのか?」
男「そういう意味じゃなくて…………まぁいいか」
クー「……?」
男「気にすんな、独り言だ」
クー「そうか…………君の体は暖かいな」
男「……お前もな」
235 名前:
クーがコンタクトを付け忘れたようです [sage] 投稿日: 2007/02/08(木) 02:28:03 0
男「オッス」
クー「やぁ、おはよう」
男「ん……何か嫌な事でもあったか?」
クー「別にそんな事は無いが、どうしてそんな事を聞く?」
男「眉間に皺寄ってる」
クー「コンタクトを付け忘れてしまってな……因みに、今の私はどんな表情だ?」
男「正直言って、メンチ切ってる様にしか見えない」
クー「そうか。ならば別に問題ないな」
男「かなり問題あると思うぞ?」
クー「ならば、その問題とやらを聞かせてもらおうか」
男「友達とか恐がらせるんじゃないか?」
クー「大丈夫。外見で人を判断するような者は、私の友人にはいない」
男「無駄に威圧感あるし……」
クー「私に言い寄ってくる者が減るのならば、それは利点と成り得る」
男「……そうか」
子「ヒック……おかぁさーん……どこぉ……」
男「……迷子か?」
クー「みたいだな……坊や、お母さんとはぐれてしまったのか?」
子「ビクッ……ウエェェェェェン!」
クー「何で泣き出す……男、君からも何か言ってやってくれ」
男「はいはい……少年、このお姉ちゃん目は恐いけど悪い人じゃないよ」
クー「そうだぞ、私は君に危害を加えたりしないぞ」
子「ヒグッ! 恐いよぉぉぉぉぉぉ! おかぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁん!」
クー「…………」
クー「むぅ……」
男「気にすんな。あの子供だって謝ってたじゃないか」
クー「しかしだな、恐いと言われてしまったのだぞ……」
男「コンタクト付け忘れた自分の愚かさを呪っとけ。大体、何で付け忘れるんだ?」
クー「寝坊して、君との待ち合わせの時間に遅れそうだったからだ」
男「……少し遅れたからって、俺が怒るとでも?」
クー「いいや。どんな約束だろうと、君との約束は絶対に破らないと決めているからだ」
男「んー、前もって連絡すれば、何の問題も無いと思うんだが」
クー「余程の事があればそうするだろう。しかし、今回の場合は些事に過ぎないからな」
男「それで……コンタクトはちゃんと持ってきてるのか?」
クー「勿論。ちゃんと鞄の中に…………あ」
男「忘れたな」
クー「……どうやらそうらしいな」
男「ノートは俺が貸すから良いとして……お前、裸眼で視力どれくらいだ?」
クー「確か……0.1前後だった筈だ」
男「じゃあ、俺の右手見てみろ」
クー「うむ。かぶりついていいか?」
男「……指、何本立ててるか分かるか?」
クー「いち、に、さん…………七本」
男「乱視まであるか……よく駅まで辿り着けたな」
クー「電柱にぶつかる事四回、段差でこける事七回。瘤一つで済んだのは奇跡に等しいな」
男「ったく……今日だけは補助してやるから、感謝しとけ ギュッ」
クー「ああ、ありがとう。ところで……」
男「ん、何だ?」
クー「手を繋ぐのも今日だけか?」
男「それは……」
クー「初めて君と手を繋いだが、君の手の感触はとても心地良い。出来れば、今日だけとは言わずにまた繋いで欲しいのだが」
男「……気が向いたらな」
241 名前: ほんわか名無しさん [sage] 投稿日: 2007/02/08(木) 20:12:05 0
つ【風邪をひく】
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男「うーん。ゴホゴホ、まいったな風邪をひくなんて」
ク「男よ。大丈夫か。風邪だと聞いて助けに来たぞ」
男「クー…ゴホゴホ。ありがとう」
ク「辛いなら喋らなくていいぞ。色々なものを持ってきた」
男「もしかして、ケーキはあるかな?」
ク「…君は風邪をひいているんだぞ。薬と雑炊の材料だ」
男「ケーキ無いんだ…ゴホゴホ」
ク「まあ、そう落ち込むな。治ったら、ケーキは一緒に食べよう」
男「わかったよ。楽しみにしておくね」
ク「で、男よ。調子はどうだ」
男「余り良くないんだ。のどは痛いし、熱も結構あるし…ゴホゴホ」
ク「うむ。こんなこともあろうかと、私の開発した風邪薬だ。男の体に合うように調
合には工夫をした」
男「クーって薬剤師の免許は…」
ク「む、危険物と毒劇物なら持っているが…。まあ、そう細かいことを気にするな」
男「いくらクーが頭がいいからって、僕はちょっと不安だよ」
ク「大丈夫だ。基本成分は動物だけでなく人体実験でも安全性は確認できた」
男「…クーなら大丈夫かな…ゴホゴホ。じゃあお願いするよ」
ク「それでいい。さあ、男よ。下を脱げ」
男「えっ!ゴホゴホ…どうして突然」
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ク「何を言っている。これは解熱鎮痛用の坐薬だ」
男「だけど飲み薬じゃなくてどうして坐薬なの?」
ク「男よ。坐薬は経口薬に比べ、様々な長所がある。まず1つ、肝臓を通過することな
く、全身血流に入る。これによって薬効成分を損ねずに素早く効く」
男「……」
ク「まだ不審がっているな。まだ長所はあるぞ。一般的な経口薬は胃腸に負担をかけて
しまう。余りおなかの具合も良くないと聞いていたのでこの選択になった」
男「クー…。そういう理由で坐薬を選んでくれたんだ…」
ク「まだあるぞ。君は苦いのが嫌いだろう。この薬はすごく苦いんだ。坐薬ならば苦味
を感じることも無い」
男「うん。僕は苦いのはいやだよ」
ク「それにだ…男の下半身を見ることで私の好奇心も満たすことができる。これらのこ
とから私は坐薬を選択したのだ」
―――
ク「なあー。男よ。大変だろう。私が手伝ってやるから、トイレの鍵を開けたまえ」
男「ゴホゴホ…大丈夫だよ…。クー」
ク「本当に大丈夫なのか?男よ」
男「大丈夫だから、トイレの前で待たなくてもいいよ」
ク「何かあったら大変なのだが…。分かった。雑炊を作ってくる」
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男「ふー…。トイレまで行って大変だったけど、クーが作ってくれた薬、何か効いて来
た気がしてきたよ」
ク「男よ。ちゃんとベットにいるか?」
男「ちゃんとベットで寝てるよ」
ク「雑炊ができたぞ。そっちに今もって行くからな」
男「いい匂いだな。おいしそう…。あれ、クー?早くレンゲをちょうだい」
ク「だめだ。まだ熱いからな、私が冷ましてあげよう」
男「大丈夫だよ。一人で食べられるよ」
ク「私の大事な男が風邪をひいているのに、さらに火傷をするという事態は回避したい。
さあ、今冷ましてやるからな…フーフー…さあ、口をあけたまえ」
男「本当に一人で食べられるよ。それに恥ずかしいよ…///」
ク「君は病人だ。それに愛する君のためにやっているんだ。私に少しは甘えてほしい」
男「///…分かったよ。じゃあ、今日は甘えさせてもらうね…モグモグ」
ク「男よ。雑炊の味はどうだ?」
男「やっぱりクーは料理がうまいね。すごくおいしいよ。もう一口もらえるかな」
ク「君がおいしいと言ってくれて私はすごく嬉しいぞ。今、冷ましてやるから、少し待
っていてくれ」
―――
ク「全部残さず食べたな。食欲が戻ったのは良いことだ」
男「クーの料理がすごくおいしかったからね。でも、一口ずつ冷ましてもらった上に食
べさせてもらうのはやっぱり恥ずかしかったな…///」
ク「もっと甘えてくれても良かったんだぞ。…そうだ。もう一つ薬があったんだ」
男「何か嫌な予感が…」
ク「大丈夫。今度は飲み薬だ。各種ビタミンや整腸剤、解熱鎮痛剤をミックスしてある」
男「良かった…。じゃあ、水をちょうだい。…ん?苦いよ。クー」
ク「男が飲みやすいように工夫をしたのだが。やはりまだ苦かったか…。すまない男よ」
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男「これくらいなら大丈夫だよ。良薬口に苦し、って言うし」
ク「無理をしていないかね。じゃあ安静にしていたまえ。後片付けをしてくるからな」
男「やっぱりちょっと苦かったけど、せっかくクーが心配して作ってくれたんだから、
多少は我慢しなくちゃ…。満腹になったせいかな、眠くなってきちゃった…」
ク「男よ。何か欲しいものは…おやおや寝てしまったか。無理も無いか。あの薬は眠く
なる副作用があるからな」
ク「寝ている姿も実に愛おしいな。(チュッ)…まあ、これくらいは役得だろう」
―――
男「ごめんね。本当にごめんね。僕の看病のせいで風邪をうつしてしまうなんて」
ク「(ううむ。唾液で感染するということをうっかり失念していたな)…ゴホゴホ」
男「本当にごめんね。クーほどうまくできないけど、雑炊を作ったよ」
ク「君か来てくれただけでも嬉しいのに料理を作ってもらうとは…すまない」
男「謝るのは僕だよ。本当にごめんね。…あれ、クー。食欲が無いの?」
ク「とても熱そうで火傷をしそうだ。フーフーして冷ましてくれるとすごく嬉しい」
男「フーフーしてあげるから、今回のことは許してね」
ク「食べさせてくれないかな。それで許してあげよう」
男「フーフー…はい。口あけて。余りおいしくないと思うんだけど…」
ク「モグモグ…。君が作った雑炊は極上の味だ」
男「おいしいなら良かったよ。クー、もう一口食べる?」
ク「君の手料理なんてそうそう食べる機会がないからな。全部食べるぞ」
男「食欲があって何よりだよ」
ク「しかし、風邪をひくというのもなかなか悪くないな」
男「僕を心配させないでよ。クー。健康が何よりだよ」
ク「冗談だ。男よ。君とケーキを食べるという約束があるからな。早く治すから少し待
って欲しい」
最終更新:2007年02月08日 22:06