不信と決意
砂漠の中をはしる一筋の道を、三つの影が移動している。
「でも良かった・・・ラト、貴方が無事で」
「ゼオラこそ無事で良かった。・・・アラドも大丈夫だよ、きっと」
先を行く二機の機体には、楽しげに会話する少女たち。
「・・・・・・・・・」
そして、その後を追う紺色の機体には老齢の男性が乗っている。
彼、タシロ・タツミは殺し合いという現状に、激しい憤りを感じていた。
あの場に居た参加者たちの中には、彼女らのような少女・少年達が大勢、混じっていた。
(彼らを、殺し合わせてはいけない・・・)
タシロは心の底からそう思う。
確かに自分の指揮していた艦にも、うら若き少年少女たちが居た。
地球を守るためとはいえ・・・未来ある若者たちに、辛い戦いをさせていた。
だが、こんな馬鹿げた『ゲーム』を強制するなど到底、許すことは出来ない。
「止めねばならん・・・」
そう、この命が尽きるような事になっても・・・だ。
ただ、その決意とは別に、タシロの胸には一つの不安が存在していた。
と、突然前方の機体から通信がはいる。
「タシロさん、聞いてますか?」
それは銀髪の少女からの通信。
彼は思考を中断させると、二人に聞いてなかったことを詫びた。
「いえ、大丈夫です。それで、ラト・・・ラトゥーニと話し合ったんですけど・・・」
銀色の破壊神の中で、
「東の廃墟を経由して、ハイウェイ沿いに南へ移動しませんか?」
機体と同じ色の髪を持った少女は、
「廃墟に誰か隠れてるかもしれませんし・・・」
自らの本心を隠し続ける・・・
(アラドを早く見つけなきゃアラドだったらどこかに隠れるはずアラドだったらきっとそうする)
「うむ・・・私も、その意見に賛成するよ」
タシロは少女達の言葉に同意しつつ・・・彼は胸の内での不安を大きくさせていた。
その不安とは先程出会った少女へむけたもの・・・
有体に言えば、その少女――ゼオラ・シュバイツァーに対する不信感であった。
無論、少女の恋人を思う気持ちは本物のように感じる。
ただ、彼女の機体につけられた傷と、言動の矛盾。
(その後に、少女は殺戮者に襲われたと説明していたが・・・)
なにより、艦長として幾つもの修羅場を潜ってきた、自分の軍人として勘が・・・
彼女の目つきに、態度に、言葉に危険だと警鐘を鳴らしているのだった。
(いかんな・・・仲間を疑って、どうする・・・)
タシロは軽く頭を振ると、少女達に続いて東へと移動を開始した・・・
【タシロ・タツミ 搭乗機体ヒュッケバインmk-3ガンナー(パンプレオリ)】
パイロット状況:良好
機体状況:良好(ゼオラに不信感)
位置:B-1から移動開始
第一行動方針:湖の廃墟を経由して南へ
第二行動方針:ラトゥーニ、ゼオラと協力しつつ仲間を捜す
最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
(いざというときは、自分が犠牲になる覚悟がある)】
【ラトゥーニ・スゥボータ 搭乗機体V2アサルトバスターガンダム(機動戦士Vガンダム)】
パイロット状況:良好
機体状況:良好
位置:B-1から移動開始
第一行動方針:湖の廃墟を経由して南へ
第二行動方針:タシロ、ゼオラと協力しつつリュウセイとアラドを捜す
最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還】
【ゼオラ・シュバイツァー 搭乗機体:ゼオライマー(冥王計画ゼオライマー)
パイロット状況:身体には異常なし
機体状況:左腕損傷大、次元連結システムは問題無し
現在位置:B-1から移動開始
第一行動方針:湖の廃墟を経由して南へ
第二行動方針:タシロ、ラトを利用してアラドを捜す
最終行動方針:アラド以外の排除(利用可能な者は最大限に利用)】
【初日 14:00】
最終更新:2008年05月30日 03:22