レーゾンデートル


原色ばかりの悪趣味な色合いをしたコクピットの中で、惣流・アスカ・ラングレーはため息をついた。
EVAのパイロットの座を失い、
プライドを粉々にされたアスカにとって“ロボット”のコクピットは傷に塩を塗りこむものでしかない。
崩壊した街の浴槽から空を見上げていた瞬間―――彼女の意識はあの部屋へと飛んでいたのだ。
でも・・・アスカは顔を上げて呟く。
「私は、死ぬわけにはいかない」
全てを失ったアスカにとって、この世界こそが存在を認めてくれる唯一の場所。
例えそれが唐突で馬鹿げた殺し合いの世界であっても・・・

あの始まりの部屋には私から全てを奪ったサードチルドレン、碇シンジもいた。あいつだけは許せない。
私を馬鹿にして、EVAを私よりうまく使って・・・“私”を滅茶苦茶にしたあいつだけは許せない。
だから、碇シンジを倒す。あいつがEVAに乗ってようが、他の何かに乗ってようが私の手で倒す。
そしてこの世界に見せ付けてやるんだ、私の力を。
「戦って、戦って、戦って、戦って、私を認めさせてやる」

崩れかけた精神を異常な状況のおかげで危ういながらも回復させたアスカは支給された機体の把握に勤しんだ。
「機体名は・・・ダイモス?ダサいわね。そもそもこのパイプとかヘルメットが鬱陶しいのよ!」
ダイモスは体の動きと脳波をロボットの制御系に直結させることで滑らかな動きを可能にしている。
LCLに包まれたEVAのコクピットとはあまりに違う乗り心地である。
「内臓武器が妙に多いわ・・・えーっと、足の裏にあるのはダイモシャフト?
 これは薙刀か・・・弐号機で使っていたし、これはラッキーかな。
 胸にあるのは双竜剣、腰にあるのは三竜棍っていうのかしら?
 ダイレクトに動きが伝わる制御系といい、この機体は格闘戦使用っぽいわね」
本来アスカは英才教育を受け、天才とも呼ばれた少女である。
EVAという特殊な兵器に乗っていたことで、その能力はダイレクトには発揮されていなかったのだ。
「射撃武器は・・・ミサイル、投げナイフ、腰部のマシンガン―――、
 それと耳にあるフリーザーストームと胸部のファイアーブリザードね。
 この二つを使えば相手の機体が何らかの金属製ならば、続けて当てれば金属疲労を起こせるんじゃないかしら?」
並外れた飲み込みの良さで大方扱い方をマスターしたアスカは足を踏み出す。

まずはシンジよ。シンジを見つけて、そして倒す。
「行ってくるわ、ママ。」
ダイモスは地を蹴り、烈風のように駆け出した。

【惣流・アスカ・ラングレー 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス) 
 現在位置: F8から移動を開始
 第一行動方針:碇シンジの発見と打倒
 最終行動方針:主催者へと力を示し存在を認めてもらう】





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最終更新:2008年06月02日 21:01