憎悪の獣


 ――もしかしたら、その邂逅は“運命”だったのかもしれない。
 碇シンジへの殺意を胸に機体を北上させた惣流・アスカ・ラングレー。
 彼女が憎き紫の鬼、エヴァンゲリオン初号機を見付け出したのは。
「エヴァ……初号機…………」
 ゆっくりとだが、雄々しく歩みを進める鬼神。その見覚えがある機体を前に、アスカは思わず呟きを洩らす。
 その現操縦者である三輪防人もまた、南方に見覚えのある機体が存在するのを見て、機体の中で呟きを洩らした。
「あれは……ダイモス……!?」
 そう、闘将ダイモス。かつて自分の意思に逆らい続けた、憎き竜崎一矢の機体。
 何度、あの機体を破壊したいと思った事か。その操縦者を血祭りに上げてやりたいと、そう夢に見た事か。
 ……かつての自分には、それが出来なかった。状況が許さなかった事もあるが、なにより三輪には力が無かった。
 異星人の侵略兵器すら打倒するダイモスに、一軍人でしかない三輪では対抗する手段など存在しなかった。
 だが、今は違う。
 今ならば、ダイモスを倒す力が存在する。
 この機体……エヴァンゲリオンさえあれば、ダイモスを倒す事も不可能では無い……。
 あの目障りな竜崎一矢を、この手で直接殺す事が出来る……!
「くく……く……く…………」
 笑う。かつてない歓喜と高揚感に身を委ね、三輪は狂った笑い声を上げる。
 だが、それはアスカにとっても同じ事だった。
「シンジ……シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジっ…………!」
 彼女の中で、既に初号機はシンジと同一視されていた。溢れ出る憎悪に身を委ね、アスカは“シンジ”の名前を呟く。
 狂気に支配された殺戮者同士、もはや互いを殺す事しか目に無い。
 今正に、因縁の死闘は始まりを告げようとしていた。


【三輪防人 搭乗機体:エヴァンゲリオン初号機 (新世紀エヴァンゲリオン)
 パイロット状況:憎悪
 機体状況:良好
 現在位置:F-6
 第一行動方針:ダイモスの破壊
 第二行動指針:皆殺し
 最終行動方針:ゲームに勝ち残る】

【惣流・アスカ・ラングレー 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス) 
 現在位置:F-6
 第一行動方針:エヴァンゲリオン初号機の破壊
 第二行動指針:碇シンジの抹殺
 最終行動方針:主催者へと力を示し存在を認めてもらう】

【初日 15:20】





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第7話「レーゾンデートル 惣流・アスカ・ラングレー 第72話「狂気の舞踏会


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最終更新:2008年05月29日 04:24