想い彼方へ◆RxTE70tJn6
奴とのファーストコンタクトとはいつであったか
放送後にガトーは考えを巡らせる
試作二号機を奪取した時?
違う、それは形式的にすぎない。
敵軍の将に敬語で話す未熟な彼ではない。
僕などと甘えた口をきく男ではない
戦士として覚醒した奴と出会ったのは星の海。
(死んだか……ウラキ!!)
宿敵の死にガトーは動揺を隠せない。
認めた者の死とは常に受け入れがたいものであった。
腐敗した連邦に属する骨のある男
食らいつけばどこまでも追ってくる男
たとえ連邦の将校であろうと見込みのある者が死ぬのは惜しい。
宿敵と見定めた男をこの手で討ち取れなかったことも口惜しい。
しかしコウの死を口汚く罵ることで、彼を貶めるつもりも無い。
ガトーは幾多の戦いを経て、己に刻まざるを得なかった名前を想う。
(貴様の仇はとろう。私の優勝という形でな!!)
誇り高きジオンの戦士は邁進する。
ただ信ずる正義、課された義務に生きる。
宿敵の死を聞いても、理想を盲信するために。
小休止を取り、基地の設備を用いて先ほどの戦果、ウイングガンダムゼロカスタムのツインバスターライフルに処置を施す。
そういった分野において造詣が深いとは言えぬガトーであったが、本人の予想を裏切り容易に完了した。
サイジングなどの懸念も存在したが、本来両手で持つところを片手で持ち、ビームライフルのように扱うことに成功する。
これは彼自身には知りえぬことだが、規格外のアクエリオンが使用できることには理由がある。
それは例を挙げれば静かなる中条、中条静雄に支給されたダイモスという機体に関連する。
ダイモスにはマグネットコーティングが施されている。
整備士も要らず施設を利用すればまるでテレビゲームのように、これは譲渡が可能である。
シャドウミラーのパーツという概念の導入、そしてそれに伴う整備の簡略化を考えたものだ。
今回の場合、パーツだけではなく開発コンセプトが根幹から異なる武装にも適用された、それだけだ。
またパーツというと、第一回放送後に支給されたゴッドマーズに装備された異世界の技術が結集された特殊なサイコフレームに関しても言えるのだが……それはまた別の話。
無論、限られた情報のみを有するガトーは
己の掠奪行為が、シャドウミラーの指す永遠の闘争の世界ではありふれたものなのだな、と考え
シャドウミラーの技術力に感嘆するに留まったのだが。
兎にも角にも、ソーラーアクエリオンはツインバスターライフルを撃てるようになった。
ここでツインバスターライフルに関して話したい。
2挺のバスターライフルを平行連結した大型ビームライフル。
2挺に分割する事で別方向への同時射撃も可能な上、出力の調整や連射も出来、ウイングガンダムゼロの最大出力でスペースコロニークラスの重質量物を破壊することも可能である。
大気圏内では流石に減衰してしまうとはいえ、3度射つことでシェルターシールドをも貫くその威力、並大抵のものではないことが分かるだろう。
それ以上に注目したい点として、ツインバスターライフルの場合、機体ジェネレーターから直接エネルギーを供給する方式であるということだ。
ある世界では、5機のガンダムが力を渡すことで巨大な脅威を滅したほど。
ならば、そんな代物をソーラーアクエリオンのような機体が扱うとしたら?
ウイングガンダムの全高が16mであるのに対し
ソーラーアクエリオンの全高48mはおよそ三倍。
重量88tは重量8tのおよそ十倍である。
当然、両者の構造も違えば、エネルギーの貯蔵量は違う。
最大出力で放てばウイングゼロのそれ以上、核など比べ物にならぬその威力。
空を焼き、地を焼き、全てを焼き滅ぼす力。
シミュレーターがこの結果を導き出したとき、ガトーは打ち震えた。
思えば、1年戦争末期より恥辱に満ちた3年であった。
潜伏し、死んだように生き、死の商人であるアナハイムと手を組むこともあれば、
時には連邦の制服をその身に纏う屈辱を味わうこともあった。
この施設を見れば、己を宇宙に送るための礎となった者達の事を自然と思い出す。
ビッター准将や多くのジオンの兵、多大な犠牲を払い、得たガンダム試作二号機であった。
ジオンの遺志を受け継ぎ、星の屑成就のため奔走し、グワデンに持ち帰った核であった。
今、ここでそれ以上の物を得られようとはなんたる偶然、なんたる僥倖。
ガトーとて自軍の状態が分からぬほど馬鹿ではない。
裂帛の意思をもって望めば、己の信ずる正義が通じると思っても、
それでも連邦を相手にするのは厳しいというのが一級の軍人としての彼ならば理解できる。
座して死を待つという訳でもなく、
己を犠牲にして我らの信念が後の世代に伝えれば、と思っていた。
しかし、一年戦争時にすでに死んだようなものである彼とて
生きていたくない訳ではない。
できることならば、共に飲み交わしたい者もいる。
死なせたくない部下も、上官もいる。
――――――――このアクエリオンならば可能だ。
何も裏づけの無いそれは彼の中で確信へと変わりつつあった。
UC史のMSとは一線を画すテクノロジーを有するアクエリオンと
ツインバスターライフルを持ち帰りさえすれば、
単機でジャブローを焼き尽くす事も夢ではない。
間違いなくジオン永劫の繁栄の実現も可能だ。
――――――ジオン再興もスペースノイドの真の開放も当然可能
自然と笑みが零れる。
その顔には欠片も悪意はなく、希望に満ちている。
コロニー落としを試みるジ・エーデル・ベルナルの操るガンバスターなど、
熱が周囲に拡散せぬ真空の宇宙空間では恐るるに足らず。
活路を見出だした戦士が、決意新たにその身に刻む
南方より反応がある。
己と機体の補給と同時に索敵を行っていたが、1エリア跨いでの索敵も基地の施設ならば可能であった。
状況は正に混戦。
7機が入り乱れている。
1機がまるで霊と戯れるように動いているが、有事であることは想像がつく
ならば……待つ。
補給は既に済んでいる。
ツインバスターライフルの射程範囲まで近づき、待ち、傷つけあい互いに消耗したところを殺す。
先程のような情けをかけることなく、ジオンの意志のもと。
ツインバスターライフルの限界を見極め、ただ狙い撃つのみ。
堕天翔を抹殺するはずのアクエリオンが、人々を抹殺するために動き出す。
彼が向かう場所には皮肉にも本来の乗り手、アポロニアスが転生したアポロがいる。
ガトーとアポロが出逢えば何が起きるか、太陽の翼に何が起きるか、それはまだ分からない。
ガイが残した正義は、デラーズの漢気、あるいは盲執、狂気に感化された正義に変化を遂げた。
少女を手にかけ、関わった少年が死すとも変わらぬ決意。
正義は形を変え、受け継がれる。
そこに悪などありはしないのだ。
【アナベル・ガトー 搭乗機体:ソーラーアクエリオン(創聖のアクエリオン)
パイロット状況:良好
機体状況:両腕に傷 エネルギーMAX ツインバスターライフル使用可能
現在位置:F-2基地
第1行動方針:機体に慣れた後、F-4の状況に応じて強襲をかける
第2行動方針:カナードとはいずれ決着をつける
最終行動目標:優勝し、アクエリオンと共に一刻も早くデラーズの元に帰還する】
【一日目 14:40】
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最終更新:2010年05月08日 04:53