深まる泥沼、信用の価値◆i9ACoDztqc




ここに人が集まったのは、単なる偶然だった。
Dボゥイとプル。
地上戦に特化したガイアガンダムと言えど、険しい山脈地帯を超えるにはあまりに向いてなく、
少なくなりつつあったエネルギーの補充もあって街を西周りに抜けて、北に向かおうとしていた。

テッカマンアックス。
彼は雪原地帯で起こった謎のボルテッカの調査のため光の壁を越え、
ひとまず拠点となる街を目指し移動していた。

ディアッカとクルーゼ。
ダルタニアスを引き上げたのち、一応程度にミユキたちのいた地点を確認し、
ミストたちと合流すべく、この両者もまた街に向かっていた。



赤く、目元をすっぽりと覆う大きなサングラスの下で、クルーゼは眉間に皺を寄せていた。
破壊された街の惨状。放送で呼ばれたことで知れた、ジロンの死亡と――名前を呼ばれなかったミストの生存。
おそらく何者かに襲われ、そのままジロンは死亡。
ミストはあの暴走するシステムのせいか、持ち前の思い込みのせいかは知れないが、とにかくこの場から去った。
せっかくの核兵器も、居場所が分からなければ有効利用は難しい。
どこかで誰かと戦い、衝撃で暴発、相手を道連れにしてくれることはあるかも知れないが、それでは活用したとは言いがたい。
いっそ、ここで起爆ボタンを押し、その後改めて核兵器を補給装置を使い補充しようかとも思い立ったが、クルーゼはギリギリで踏みとどまった。
現状、手駒が少なすぎる。
自分のここに来てからの行動を思い返し、落ち度は自分になかったことを確認する。
ならばミストがここを動いて、誰かと接触した場合、自分を信用できる人間だと知らせるだろう。
そうなれば、信頼を得ることも、行動を共にすることも容易になる。
この先までを見据え、今ミストを切ってしまうのは惜しすぎる。
ミユキ、ジロンが死に、ミストはどこにいったのか分からない。
役立つのは、後ろのダルタニアスに乗るディアッカだが……どうも人の死にショックを受けているのか使いものになるのか怪しい。
所詮赤服と言ってもやはり年相応の連中でしかないとクルーゼと内心吐き捨てた。

とってきたダルタニアスも、確かに強力な機体であることは間違いなかったが、どうもクルーゼにはしっくりこなかった。
元々、空間などを把握し、距離を取って動きまわり戦うことを得意とするクルーゼに取って、
動きがそこまで速くなく、剣戟をベースに接近戦用に出来ているダルタニアスは好みではない。
後ろに徹して守るなら生存率の底上げになるかもしれないが、いざ戦闘になった時、リスクの多い接近戦を強要させられるのは勘弁願いたい。
結果、そのままターンAにクルーゼは乗り続けている。

「なにがあったかは一目瞭然か……仕方ない、我々も移動しよう」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ隊長!」

もうここにいる理由もない。
そう思い移動を提案するクルーゼにディアッカが異を唱えた。

「もしかしたら、まだ周りにジロンたちを襲った連中がいるかもしれない……それに、あのテッカマンとかいう奴も!」
「確かにそうだ。だが、どうするかね? まだ不慣れな大型機と、武器を持たないターンAでは同じことの繰り返しになるだろう」
「だけどさ……」

自分から積極的に仇を討つと言いださないあたり、まだいい。
だが、何かきっかけがあれば相手に落とし前をくれてやりたいと思っているのは明らか。
ニコルが死んだ時も、怒りはしたが後先忘れて相手を殺そうと遮二無二なるようなことはなかったのを思い出す。
あくまで、合理的に、冷静に表面では考えられるタイプだと改めて感じる。残忍で狡猾、という軍学校での評価も分からないでもない。
駒としては、御しやすい部類だ。イザークや、いらないことばかりを考えるアスランより、よっぽど簡単だろう。

「放送を聞き逃したか? これほど多くの人間がもう死んでいる。我々が生きていることも、半ば偶然なのだよ」

そう、生きていること、生まれることも死ぬことも偶然だ。

「だからこそ、我々は他人の分まで生きなければらないのだよ。命を賭けて救ってくれたミユキ君のためにも」

だからこそ、人間に意味などない。

「……分かり、ました」

ミユキの名を出されたのが答えたのか、震えた声ではあるが同意を返してくるディアッカ。
補給ポイントでせめて補給していこうと、クルーゼが言った後は、終始無言だった。

(さて、これでいったいどうなるかな?)

壊滅した街のがれきの中に埋まっていた補給ポイントを見つけ出し、起動させる。
するするとナノマシンが現れエネルギーを回復させてくれるが――ガンダムハンマー以外の武器や、核兵器は補充されなかった。

(どういう基準だ? 火器ならば爆発していることが補給の条件? 
 ビームライフルなどは紛失した場合、本体は補充されない?)

ガンダムハンマーは、鉄球の中に炸薬が入っており、爆破もできる使い捨ての兵器だ。つまり――失えば、その分が使ったと判断され補充された?
なら、核ミサイルやビームライフルが補充されなかったのはどういう違いだ?
主催のきまぐれか、と思いながらも一応その事実を疑問とともにメモへとる。
この世界でも、情報は力だ。情報と交換で引き出せるものもあるはず。念には念をと準備するクルーゼに、ディアッカの声が飛ぶ。

「隊長! 南から何か近付いてくるぞ!」

そこには、蒼い傷だらけの機体が、こちらに向かってきていた。


どうにも拭えない、それでいて発散する方法も分からない感覚。
ディアッカの胸の内にたまっているのは、そんな感情だった。別に隊長の言うことが間違っているわけではない。
だが、どうにもしっくりこない。正しいはずのことを、正しいと受け入れられない。
やもすれば皮肉屋とも思われ、世の中のことを斜に構えて見ていると、自分では思っていた。
だが、いざ相対すれば、そう割り切ることが出来ない。ちょっと前に会ったばかりとはいえ、死が存外に重い。
ジュドーが妹のことを話していたことを思い出し、チッと思わず舌打ちした。
思い出したところでどうすればいいのか。ジュドーに変わって妹さんを探す? ……ガラじゃないし、そんな仲でもない。
だが、かといって何もせずはいさようなら、と出来るのか。いや、しなければいけないと分かっていても、出来そうにない。
ダルタニアスのシートに持たれ、雪で湿り乱れた髪を後ろに撫でつける。
そのまま、掌で眼を覆い、しばらくぼんやりしてた。
どうせ、隊長はあの青いボロボロの機体とまだ話をしている。話の内容を聞くべきとは思ったが、億劫で仕方なかった。
長く話し込んだ後、隊長はこちらに戻ってきた。

「どうやら話を聞くに、我々の戦いを見て助けに駆けつけたようだ」
「俺たちの戦い……?」
「ああ、あのミユキ君たちの戦いの光を見て、止める為に行かなければと思ったらしい」

遅すぎるんだよ、とディアッカは呟いた。
戦いはもうとっくの昔に終わり、ジュドーもあの子も死んでしまった。
助けに来たも何もあったものじゃない。

「なあ、もしかしてそこのそいつがミストたちを襲った……」
「いや、ありえない。あの損傷で、仲間がいることを知って戻ることはないだろう」

ふと、心の端によぎったことを口にしてみる。
あの戦いを見ているなら、奴は雪原周りにいたはず。なら、ミストたちを襲った犯人の可能性もあるのではないか。
口調がとげとげしくなっているとは自分でも分かったが、それでも止められなかった。
だが、クルーゼは首を振ると、何故奴が戦いを見たのか経緯を教えてくれた。
曰く、信じがたいがコロニーを落とそうとしている人間がいて、それを追って宇宙に上がろうとし、それに振り落されて落下。
その落下の最中にこの戦いを見て今度はこっちをどうにかしようとやってきたらしい。
とんだ正義の味方だと思い、ディアッカは鼻を鳴らした。
立派だが、機体はボロボロ。挙句止められず仲間を探しているらしい。言っていることとやっていることがまるで釣り合ってない。

「で、どうするんですか? 連れていくのには俺は反対ですよ」

そんな相手と一緒にいては、命がいくつあっても足りない。
同行は正直避けたいところだった。
だが、そんなディアッカの態度が通信でむこうに伝わっていたのか、

「いや、ついていこうってつもりはない。ただ、礼は言わせてくれ」

そう、声が聞こえてきた。

「礼?」
「ああ、そうだ。ミユキ嬢はどうやら人の目覚めていたらしいじゃないか。人として接してくれて、ってことだよ。
 タカヤ坊がなんでそんなことになっちまったのかは分からないが……そっちは俺がどうにかする」
「……どういう意味だ?」
「……ちょっと長い話になるがな」

そう言って、ゴダードと名乗ったおっさんは簡単に話してくれた。
曰く、おっさんとミユキって子とあの化け物は、宇宙人に改造されて洗脳されてたらしい。
だが、ミユキって子はその洗脳から解放されていた。おっさんもそうだ。
それで、短い間でも、人間として接してくれて感謝している……ということ。

「……俺じゃない」

その、ミユキって子に接していたのは、隊長の仲間たちだ。
自分ではない。自分は、命を助けてもらっただけだ。礼は、このボロボロの機体に乗っていた……
もう死んでしまったジロンという奴が受け取るべきなのだ。
割り切れない気持ちが胸でさらに膨れるのが分かる。

「それでもいいさ。俺は、タカヤ坊を追う。タカヤ坊は洗脳を跳ねのけたはずなんだ。
 どうしてこんなことになったのか……俺は調べてみたい」
「もし、襲いかかられたら? そのボロボロの機体でどうにかできる相手じゃないぞ」

殺してしまうべきだ――そんな言葉をぐっと飲み込んだ。
こちらからすれば単なる化け物、いや殺人鬼でも眼の前のおっさんからすれば違うのだ。
そんな風に言われていい気分がするはずがない。

「なに、その時はこれの出番だ」

そう言ってゴダードが胸から取り出したのは、緑色に輝くクリスタル。

「俺も、テックセットできる。もしものときは、そうやって戦う。
 これでも、タカヤ坊に武道を教えた師匠だ。そうそう遅れはとるまい」
「……そうかよ」

そう言うのが、精いっぱいだった。
自分が崩れる。自分らしくない。そんな態度を無意識に抑えるように口が先に動く。
恨み事をぶつけてやりたい、と思いはしても、ディアッカはそれが出来ない。できない男なのだ。

「ディアッカ、我々はミストたちを探した後宇宙に上がるぞ。
 コロニーなんてものを落とせばどうなるかわからん。連合の核攻撃を超える惨事になる」
「……俺は、隊長に従いますよ」

別に、向かいたい場所があるわけでもない。考えて動くよりも隊長の命令を聞いているほうが楽だ。
そんな考えがディアッカにあったのかもしれない。

「そうか。では、私たちはここで失礼する。そちらの成功を願わせてもらおうか」
「ああ、任せておけ」

ディアッカは、クルーゼを追うように移動を始めた。
胸には晴れないずっしりした何かの重み。それが、彼の気を散らせていることにも気付かずに。



【ラウ・ル・クルーゼ 搭乗機体:∀ガンダム@∀ガンダム
 パイロット状況:良好 仮面喪失 ハリーの眼鏡装備
 機体状況:良好 核装備(1/2)
 現在位置:C-7
 第1行動方針:宇宙に上がるつもりではあるようだが……?
 第2行動方針:手駒を集める(レイ、ディアッカ、カナード優先)
 第3行動方針:手駒を使い邪魔者を間引き、参加者を減らしていく
 最終行動方針:優勝し再び泥沼の戦争を引き起こす(できれば全ての異世界を滅茶苦茶にしたい)】
※マニュアルには月光蝶システムに関して記載されていません。
※ヴァルシオン内部の核弾頭起爆スイッチを所持。


【ディアッカ・エルスマン 搭乗機体:ダルタニアス@未来ロボダルタニアス
パイロット状況:体力消耗中 若干無気力、イライラ。
機体状況:良好
現在位置:C-7
第一行動方針:クルーゼについていく
第二行動方針:……俺にどうしろって言うんだ
第三行動方針:脱出が無理と判断した場合、頃合を見て殺し合いに乗る 】





クルーゼ達が見えなくなるまで待って、ソウルゲインは後ろを振り向いた。
そして、そちらに向けてゴダードはおもむろに口を開くと、

「出てこいよ、タカヤ坊。そこにいるのは分かってるんだぞ?」

そう、呼びかける。
しばらくの沈黙の後、犬の姿をしたロボットが瓦礫の向こうから現れた。
その上に乗っているのは、間違いなくテッカマンブレード、相羽タカヤその人。
そう、テッカマン同士の精神感応で、漠然とではあるがレーダーに映らずともゴダードは知っていたのだ。
タカヤ坊が側にいたことを。
ゴダードはボロボロの機体のコクピットを開くと、胸の飛び出した装甲の上に立つ。

「澄んだ眼をしてるじゃないか。暴走していた男の眼じゃないな。……何があった?」

だが、タカヤ坊は無言。腰を少し落とし、構えていつでも動けるようにはしているが、そこまでだ。
こちらの出方を窺うように見えた。
それもそうだろ。わざわざクルーゼとの通信をオープン回線でやったのは、会話を全て聞かせる為。
『こちらの洗脳がとけている』という演技を事実のように伝え、同時に『自分のやったことの罪悪感』を押し付ける。
どうにも、話を聞くにタカヤ坊が自分の知らない力を抱えていることは分かった。
なら、正面から戦うのはあまりにも無謀。
少なくとも、自分がいるからと考えなしに突っ込んでこないあたり、ラダムへ憎しみ一色でそれ以外考えられないわけではないらしい。
どうやら、心理的にフックを作ることはできたようだ。

「一応、被害者側から話は聞かせてもらった。だが、それだけじゃ不平等ってやつだ。
 もちろん、身内贔屓なのは分かってるがな。タカヤ坊、一人抜け出したお前がそんなことをする奴には俺は思えん」
「……おじさん、誰?」

タカヤ坊の乗る、犬の姿をしたロボットからの通信。
モニターが見れないのでなんとも正確には言い難いが、おそらくそう年のいっていない少女なのは声から分かる。

「いや、そこの――あー、Dボゥイだった、か?の知り合いだ。そいつが小さいときから知ってる」

それからは、無言。
どちらも口をけして開こうとはしなかった。
さて、どうしたものかと悩んでいたゴダードだったが、しばらくたって、タカヤ坊はようやく一言だけ、絞り出すように言った。

「機体から降りて、一緒に来てもらう。……話すのはそれからだ」

ゴダードは、その言葉に静かに頷いた。



「むー、ジュドー死んじゃったのか……」

Dボゥイとゴダードというおじさんが生身で瓦礫の奥に入っていったのを見届けた後、プルはぶすっとした顔でそうつぶやいた。
死んでしまった、ということはいなくなってしまったということ。つまり、ジュドーと遊ぶ機会はなくなってしまった。
それが、どうにももったいない――プルの感覚は、その程度のものであった。
そもそも、基本的な情緒教育ですら、薬物その他の影響で基本的なところをごっそり抜けてしまっている。

プルは、純粋だ。
自分に正直で、そのコロコロ変わる表情は、持ち前の闊達さをよく表している。
だが、それはイコール、普通の少女と同じ感覚を持ち合わせているわけではない。
兵器としての、世俗的な禁忌などを一切持たない故のダイヤモンドのような輝きが、プルの本質。
人が死ねば会えなくなる、ということは知っていても、それが悲しいこと、大変なことという認識を持ち合わせていない。
初出撃の際、その命の感覚の気持ち悪さに引き上げてしまったほどだ。

彼女が命の大切さを学ぶのは、本来の歴史であれば、砂漠を超え、コロニー落としまで辿り着いた時。
それまでの――つまり今殺し合いにいる時間軸の彼女は、
「自分のものにならないならいっそ死ねばいい(=失われればいい)」と考えることすらおかしいとは思わない。
故に、人の死に触れても、そこから先――死の重みと恐怖を実感できない。
これは別にプルがおかしいことではない。遠いどこかでほとんど見知らぬ誰か死んだと言われても、なんとも言えないのと同じなのだ。

むしろ、今のプルの興味関心は、Dボゥイを中心に回っている。
言うなら――あまりに酷な言い方だが、既にジュドーは過去の人になったのだ。
ただ、漠然と嫌な感じが会場に渦巻いているのを感じ、顔をしかめるだけ。

ただ、それでも――

「なんか、よくわかんない」

小さな、死に対する不快さ、恐れを彼女の胸にジュドーの死は刻んでいた。




「それで? まさか、死んだと思ったらここにいた……ってことか?」
「ああ。確かに、あの時俺はラダムの母艦ごと吹き飛ばすため、ボルテッカを使った。それだけは覚えている」

Dボゥイは、ゴダードが眼を見開き驚く顔をまじまじと見つめた。
まだ敵か味方か分からない以上、多くのことは語れないが、それでもDボゥイは自分の戦いのおおまかな経過を説明した。
つまり、アックスが死に、ブラスター化し、ランスを撃破し、
エビル――シンヤのテッククリスタルを受け取り記憶を失いながら母艦へ特攻。
オメガと融合したラダム母艦をボルテッカで消し飛ばし、ボロボロのまま大気圏へ落下した。
ペガスは破壊され、自分のテッククリスタルも壊れたまま。自分も、大気圏突入に耐えられる体ではなかったと。

「……それは道理と合わねえな。確かに、俺のここに来る直前の記憶は――」

ゴダードが語るのは、Dボゥイが知るのとまったく同じ過去。つまり、クリスタルを渡さないためボルテッカで自爆。
問題は、自爆で死んだと思ったらここにいた――こと。

「タカヤ坊、お前さんと俺の話を合わせたら、大変なことになりはしないか?」

Dボゥイは、無言で頷いた。
ランスはもう死んで確認しようがないが、残りの三名のテッカマンの話を総合すれば見えてくる事実。

「俺たちは、もうすでに死んでいる……?」

Dボゥイ自身、肉体もボロボロ、精神も崩壊し大気圏で燃え尽きるばかりと思っていた。
ゴダードは、自分の知る過去通り、自爆を敢行し、その直後からやってきた。
ミユキは、自分が暴走せず、自分を完全に取り戻していたことを知っていた。つまり、元の世界で自分にあったあと、ということだ。

「まさか、死体を回収して再生したってわけがないよな。ボルテッカで自爆した俺が、原形を留めているはずがない。
 留めていなかったからこそ、クリスタルをタカヤ坊たちは回収できなかったんだからな」
「俺は――大気圏落下の最中に呼びだされ、改造されただけかと思っていたが……」

精神がなく、廃人同然だったからこそ暴走する回路を取り付け、バーサーカー代わりにした、とだけ思っていた。
だが、ゴダードの話を聞くと、別の可能性も出てくる。

「どういうことだ……?」
「俺にもそれはわからん。ともかく、俺が元の世界にもし帰ったらどうなるんだ?
 俺が死んだと認識してる時間に飛ぶのか、それともタカヤ坊たちと同じ時間に行くのか……」

ますます深まる主催者の力の謎。
お互いの共通認識、いや自分の存在すら危うくなってくる。

「考えるのはやめよう。考えたところでしょうがない。それより――信じてもらえたか?」

ゴダードのその言葉に、Dボゥイは口を紡ぐ。
情報交換のため敢えて誘いに乗ったが、まだゴダードのラダムの洗脳が解けたか確信が持てない。
まして、最後まで筋を貫き通す性格がそのままラダムにすり替わり、一度は自爆をしたゴダードとなればなおさらだ。
テッククリスタルを確認し、手で握りなおす。

「悪いが、信用はできない」
「そうか。それで、どうするつもりだ?」

ゴダードもこちらの気配を察して、ゆっくりとクリスタルを懐から取り出した。
仕掛けるべきか、相手が馬脚を表し襲いかかるのを待つべきか。
体力はまだ回復しきっていない。ブラスター化できるか、微妙なところだ。
ちりちりと肌の表面が泡立つのを感じる。自然と唾を一度飲む。風も雪の舞い上がる中だと言うのに、心なしか熱い。

「テッ――」

そう、ついにDボゥイが呟いた時だった。

「やめだ。せっかくタカヤ坊の記憶が戻ったのに、ここで殺し合ったら結局連中の思うつぼだ。
 まだ、流石に信頼できないか。そりゃそうだよな、昨日まで殺し合いをしていた俺たちだ」

そう言って、Dボゥイより先にクリスタルをまた懐にゴダードは直した。
その様子を最後まで見届け、確かに懐に入れたのを確認し、Dボゥイも同じようにクリスタルをポケットに戻す。

「だがな、タカヤ坊。昨日は殺し合っていた俺たちだが、そのまた前は手を取り合っていたアストロノーツの仲間だ。
 いつか信じてくれるのを待ってるぜ」

ゴダードが去っていくのを、Dボゥイはただ見つめていた。



【エルピー・プル 搭乗機体:ガイアガンダム(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
 パイロット状態:良好 満腹・お菓子いっぱい
 機体状態:多少の損壊。フェイズシフト装甲のダウンが戻りました。ジンバコート所持。
 現在地:D-6市街地
 第一行動方針:Dボゥイと一緒に行動する。
 最終行動方針:なんでもいいのでおうちに帰る(正直帰れれば何でもいい)
 備考:ミストはある意味危険人物であると判断しました 。放送を聞いていません 】
     ジンバコート所持


【Dボゥイ 支給機体:なし
 パイロット状況:疲労(中) ガイアガンダムの上に乗って移動中。ジンバのマニュアル、地図所持
 現在位置:D-6市街地
 第1行動方針:この殺し合いをとめる
 第2行動方針:どういうことなんだ……?
 第3行動方針アルベルトを警戒。ミストの話す危険人物に対しては…?
 第4行動方針:ジンバコートを装備可能なオーバーマンを探す
 第5行動方針:施設を回り首輪の解除方法を考える
 備考:30分~1時間で原作のように暴走するようになっています
     ミストはある意味危険人物である判断しました 】





まだ、少し足りない。
あの破壊力のボルテッカを止めることは不可能。
なら、撃たせる前に倒しきらねばならない。つまり――信用を勝ち取り、それでいて疲労の瞬間を狙うのだ。

「流石だな、タカヤ坊。まさか、本当に一人でやっちまうとは。ほんと、流石の男だ」

ゴダートは――いや、テッカマンアックスは、テッカマンブレードが成し遂げたことを疑わない。
タカア坊とは、そういう男なのだ。それだけのことを成し遂げるだけの男なのだ。
だからこそ、アックスは定めた。

やはり、優勝を目指すに当たりもっとも高い壁として立ちはだかるのは、他でもない同族、テッカマンだと。

そのためには、力だけでは足りない。若さを持つタカヤ坊に勝てる道理はない。
だからこそ、今自分が使うべき武器は、年経た今だからこそ身につけることのできた老獪さだ。

「悪いな、タカヤ坊。立派になったのは俺も嬉しく思うが――お前は大きくなりすぎだ」

タカヤ坊の性格だ。戦いの中で息絶えることも十分ありうる。
鬼を前にして、下手に仕掛けることは出来ない。だからこそ、自分以外の強者に任せるのだ。

青い光を背負い、ソウルゲインがどこかへ飛んでいく。


【テッカマンアックス 搭乗機体:ソウルゲイン(スーパーロボット大戦OGシリーズ)】
 パイロット状態: 疲労(小) カラスの首輪を所持
 機体状態:両足破壊(一応、立つことはできる)、損傷率70%オーバー  腕は弾薬として補充されました。
 現在位置:D-1 海
 第一行動方針:街に行き、情報を残し、食糧確保。そこを起点にボルテッカの犯人探し
 第二行動方針:ジ・エーデル・ベルナルに復讐する
 最終行動方針:殺し合いに乗り優勝する】

【時刻:16:30】

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最終更新:2010年06月19日 14:32