七不思議(仮)
Author:◆NN1orQGDus
98 :七不思議(仮) ◆NN1orQGDus :2008/10/04(土) 00:08:06 ID:pln23l2+
草木も眠る丑三つ時。
高杜学園では覇権を握る戦いが繰り広げられている。
「――これで詰みだ、カエサルッ!」
二宮金治郎像が背中に背負った無線誘導兵器――“薪【マキ】”を放つ。
幾何学的な軌跡を描いて薪はカエサル像を取り囲む様に殺到する。
「甘いな、金治郎! このカエサルは――ローマそのものなのだっ!」
顔と上半身のみのカエサル像は、圧倒的な推力で急上昇する。
薪はそれに追従するが、カエサル像が目から放つビームによって一基、また一基と撃墜されていく。
金治郎はその光景に歯噛みをして薪を呼び戻した。
「毛唐風情がっ!」
「倹約しか出来ぬ俗物が何を言うっ!」
金治郎は宙を駆けてカエサル像を追うが、胸像であるカエサルに比べると鈍重な為に近付く事すら出来ない。
「倹約は美徳だ!」
「貴様のそれはエゴに過ぎん!」
カエサル像はビームを放ち牽制する。
石像である金治郎像に比べて石膏像である為に耐久力は劣る以上、攻め手に回らなければならない。
金治郎像の一撃は容易くカエサル像を粉砕するのだ。
「お前はこの世界に何を望むっ!」
「――知れた事、カエサルの物はカエサルに!」
「民の心が解らぬ暗君が! 私には守りたい世界があるんだっ!」
「人の業、人の罪、全てを飲み干す度量がない貴様に語る舌は持たぬ!」
カエサル像の嘲笑が校庭に降り注ぐ。その威信はまさに皇帝の物であり、サッカーゴールはそれに喝采を送る。
「貴様には解るまい、金治郎! 余はカエサルなのだ!」
「戯れ言を!」
「悔しければ!」
「お前に一太刀っ!」
刹那、背負った薪の推力を利用し、カエサル像に肉薄する。
「奢るカエサル久しからずっ!」
「ば、馬鹿な……このカエサルが負けるとは……」
一瞬の交錯。鈍い音と共にカエサル像は力なく地に墜ちる。
金治郎像もまた、全ての力を使い果たし、墜落した。
両者相討ち。両雄並び立たず。
戦いは終わる事を知らない。
高杜学園七不思議(偽)
夜な夜な戦いを覇権を巡って激戦を繰り返す二宮金治郎像とカエサル像。
最終更新:2008年10月04日 22:25