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187 :ThankYou! ◆NN1orQGDus :2008/10/12(日) 21:00:07 ID:F6bo2TUy

“あねもえ”

「アイス買ってきて、ハーゲンダッツね」
 人が宿題をしていようがお構いなしにベッドに寝転んで(しかも俺のだ)マンガを
読んでいた姉は、傍若無人にも俺に命令してきた。
「やだね。俺、宿題してるし」
 その一言だけで姉を無視して、俺は宿題を進める。宿題を忘れて大目玉を食らうのだけはいやだ。
「ねえ、アイス食べたいー」
 と、今度は間近で声がした。間近なんてもんじゃない。背中にはポニョポニョした
柔らかい二つの何かが当たっている。さらに首に手を絡められて、温かい吐息を耳に感じる。
「ちょ、姉ちゃん! 何すんだよ!」
「だからさあ、アイス食べたい」
「アイスだったら冷蔵庫に入ってるだろ?」
 俺はジタバタ暴れて姉貴を振り払う。なんでこの人は俺が勉強するのを邪魔するんだろう。
多分、アイスが食べたいからだろう。姉貴はそういうヤツだ。
「ハァ? なんで私がガリガリ君なんて食べなきゃイケないわけ? あんなのアンタ専用じゃん」
 怨みがましい目で睨まれる。ガリガリ君のどこが悪いんだろう。
「とにかく。私はハーゲンダッツを食べたいの。だから買ってきてよ。――バニラね」
 ああ、なんでいつもいつもこの人はマイペースなんだろう。
「だ、か、ら! 俺は宿題してるんだよ!」
「だ、か、ら! アンタにサービスしたじゃん!」
 姉貴は頬をぷくっと膨らませている。アレをサービスと自信を持てるのは何故なんだろう。
でも、ちょっと気持良かったから否定はしない。
 仕方ないから俺はお気に入りのデニムのジャンパーを取り出して袖を通す。
「買いに行くから金出しな!」
 姉はキョトンとしている。まるで信じていたものに裏切られたみたいな顔だ。
「え? さっきのサービスに料金含まれてるよ? まさか足りない?」
 しなを作って上目遣いで俺を見上げて来た。
「足りるも何もない!」
「アタシ今月金欠なのよぅ……。だから出して」
「出してじゃねえよ! 社会人が高校生にたかるな!」
 叫びすぎたのか喉が痛い。母ちゃんが「「静かにしろ」って怒っている。
「分かった。じゃあこうしよう。私が大声で助けを呼ぶ。そして服を乱す」
「ハァ? 何言ってんだよ」
 姉貴の言っている意味が全く解らない。どうかしてしまったんだろうか。
「つまり、この部屋には飢えたアンタと魅力的なアタシだけ。そしてアンタは私に……
アンダスタン?」
 ああ、どうかしちゃったんですね、姉上。本当にどうしようもなくて仕方がない。
「分かったよ、もう! そんかわし貸しだかんな!」
 俺は諦めてさっさとアイスを買いに行こうとドアノブに手をかける。
「ああ、このマンガの続き読みたいんだけど、ドコ?」
「まだ出てねえよ! つか、人の本棚を勝手に漁るな!」
 なんで人が隠しているマンガを好んで読むのだろうか。小一時間問い詰めたい。
 いや、そんな事をしたら実も心も持たないかもしれない。
「じゃ、ハーゲンダッツヨロシクね。ラムレーズンとストロベリーだからね」
「増やすんじゃねえっ!」

 ああ、なんでこんな目に遇うんだろう、俺。嘆くと一滴の涙が零れ落ちた。
「姉萌えの弟持って幸せだわぁ」

 ――俺は姉属性じゃねえ!

《続く》






189 :ThankYou! ◆NN1orQGDus :2008/10/12(日) 21:01:41 ID:F6bo2TUy
投下終了。

【キャラ設定】

有賀丁【ありがとう】
高杜学園高等部2年。いたって普通の高校生。ややオタク気味

有賀琉那【ありがるな】
OL。幸二の姉。スタイルは結構良い。普通な美人。性格に難あり。



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最終更新:2008年10月17日 01:37