寝起きはいいほうだ。
ああ、朝だ、と思った次の瞬間にはちゃんと起きている。
特に、ここに泊まった日は茜に付き合って長く眠るので、いつもの休日のように二度寝の必要がない。
ちらりと時計を見た。
9時。
茜が起きるまであと1時間。
退屈だ。
寝転がったまま頬杖をついて、じっと綺麗な寝顔を見つめた。
マスカラを落としてもまだ長いまつげ。
うっすらと開かれた、赤いくちびる。
滑らかな肌。
白いあご。
さらさらの髪。
こうして改めてまじまじと見つめると、茜は本当に綺麗だと、心底思う。
はだけかけた羽毛の布団を、肩にふわりと掛けてやると茜が小さく身じろぎした。
猫のように肩をすくめると、総一郎の方へずるりと身体をすりよせる。
その様子は、今はもう生意気になってしまった弟がまだ上手く喋れない頃の寝姿にそっくりだった。
にやにやと笑って、茜が寝返りをうった拍子に顔を覆った髪を、そっと掬ってかきあげた。
「……ん、」
悩ましげな声音に、どきりとする。
寝惚けている時の茜は本当に色っぽい。
はっきりとした意思を持って総一郎とイタしている時は、いかに理性を保っているかがよく分かる。
たまらなくなって、くちびるをそっと重ねた。
触れた瞬間に、ぴくりと茜の柔らかなくちびるが動いた。
一度離して、すぐにまた吸い付いて。湿った音をたてながら、幾度も繰り返す。
薄い隙間から舌を割り入れてみるが、茜は目を覚まさない。
額、まぶた、こめかみ、ほほ、鼻の頭、あご。
思い付く限りの場所に、愛しさを込めてキスを落とす。
くびにかかる髪も払い除けてやると、総一郎の好きなすっとしたくびすじが露になる。
耳たぶを甘く噛んで、舌先でねっとりとそのラインをなぞった。
ついでにきつく吸い上げて、赤く痕を残す。
自分をないがしろにして眠り続けている茜に、抗議をこめたちょっとしたいたずらだ。
茜の寝息が、時折乱れるたびにヒヤリとして顔をあげるが、多少眉間にしわが寄った程度で起きる気配はない。
こんな所で起きてしまったら、後でなにを言われるか判ったもんじゃない。
もう辞めるべきだ、と判ってはいるのだが、嫌がられずに好きなだけ触れられる、絶好の機会なのだ。
あと少し、ちょっと触るだけ、と誰かに言い訳をしつつ、寝間着のすそから手を差し入れる。
すべすべとした腹を撫であげて、右の膨らみにたどり着く。
普段はくすぐったいとあまり触らせてくれない乳房の、ふにふにとした柔らかな感触を存分に堪能した。
時折、指の腹が敏感な頂きに触れると、茜がごく小さく身を捩って逃れようとする。
無意識のその仕草に、心底感動を覚えて、硬くなり始めたそこを指で挟んで刺激を与えた。
まだ目を覚まさないのだろうか?
試してみたくなって、布団をはだける。
くびすじをゆるく撫でて、寝間着のボタンを両手で丁寧に外した。
ゆっくりと下までたどり着いて、前をくつろげてしまう。
にも関わらず、相変わらずの穏やかな寝息に、総一郎は安堵と驚きを同時に感じた。
そういえば、明るい場所で茜の身体を見るのは初めてだ。
クリーム色のカーテンから淡く透ける朝日の中で、白い茜の肌はぼんやりと浮かび上がる。
先ほど総一郎がこね回した突起は、淡く色づいてぷっくりと存在を主張していた。
思い余って、その先端に吸い付いた。
「んっ……」
ぴく、と細い肩が揺れる。
日ごろの不満足を解消するかのように、思う存分にその形を楽しむ。
舌で転がし、くちびるで挟むたびに、茜の息が荒くなる。
「……センセイ?」
小声で呼ぶと、茜の瞼がちいさく震えた。
「……あ、さお?」
呼んだものの、息を吐いてまた眠りに落ちてしまったようだ。
本当に、茜の眠りは深くて頑固だ。
ふと思いついて、下肢に手を伸ばす。
下着の中に手を入れて秘部を探ると、そこはうっすらと湿り気を帯びていた。
眠っていても感じるようだ。
人体の不思議をここに見た。
「ぅ、ん……?」
違和感に、茜が抗議のような声を上げる。
「起きて」
こんな小声では起きられないだろう、という程度の大きさで囁く。
「……あー」
「まだ寝る?」
「うん……」
「じゃあ腰、ちょっとあげて」
まるで催眠にかかったかのように、茜が素直に軽く腰を浮かせる。
その隙にさっと下肢の寝間着を下着ごと剥ぎ取ってしまう。
むき出しになったふくらはぎから順番に、ひざの裏とももの内側を撫でながら自分の衣服も脱ぎ捨てる。
くすぐったそうにこすり合わせたひざを開かせて、間に身を置いた。
もう止まらなかった。
まじまじと茂みの奥の秘所を眺める。
いつも、軽く触るだけでびくびくと身体を震わす性器はこれか。
ぺろりとそれを舐める。
こういう日の為に、健全な青少年のための本で勉強を重ねてこの行為を知った。
実行しようとすると茜に頑なに拒否をされ続けたために、そんなことをするのは初めてだった。
妙な味がする、と思ったが、構わずに犬のようにぺろぺろと舌を蠢かした。
よく茜の柔らかなくちびるにそうするように、時折吸い付いて、くちびるで甘く噛み付いて。
繰り返すうちに、そこからはとめどなくぬるぬるとした蜜が溢れ出した。
「……っ、あ、んんッ……?」
まだ茜は夢の中だろうか。
夢の中で、総一郎に抱かれているのだろうか。
「……っ、いや、だ……あ……」
途切れ途切れに喘ぎながら、その手が何か掴むものを求めて彷徨っていた。
舌で花芯を転がしたまま、秘部に指を沿わせた。
そこは唾液と蜜で充分すぎるほど濡れて、総一郎の指を簡単にくわえ込んでしまう。
抜き差しをする度に、くちゃり、と湿った音が響いた。
その音を楽しむかのように、くちゃくちゃと内部をかき回す。
「んんんっ! ぁあ、あっ……んッ!!」
意識がなくてもやはり控えめな嬌声を上げながら、茜の細い体がしなやかに逸れた。
指を受け入れている入り口が、びくびくと収縮を繰り返す。
眠っていてもイクんだ、と半ば関心しながら、その手を引き抜いた。
「んー……?」
息を乱しながら、茜が薄く瞳を開く。
前髪をそっとなでて、くちびるに軽くキスを落とした。
額はうっすらと汗ばみ、総一郎の手よりも熱くほてっている。
「……ん、ぅん?」
軽くくちびるを食んでキスに応えながら、何が嬉しいのか含み笑いの様な息を漏らす。
今ならうんって言ってくれそうな気がして、気持ちよかった? と聞きたかったが、辞めにした。
ちょっとそれは不毛だ。
「……入れていい?」
耳元でささやく。
息がかかりくすぐったかったのか茜は、頬を枕にうずめた。
「……ぅうん……」
うんって言った? 今うんって言ったよな。よし。
身勝手に解釈して、枕元から避妊具を取り出した。
すっかり慣れた手付きで手早く自身に被せると、白い膝裏を持ち上げて更に足を開かせる。
手を沿えて、先端を差し込むと、細い腰がびく、と震えた。
縋るものを求めて、茜のすらりとした右手が空を掴む。
その手に指を絡ませて、枕の隣にすとんと置いた。
左手も同じように、ぎゅっと握る。
「センセイ」
ハッキリと呼んで、茜の反応を待たずにくちづける。
さすがにそろそろ起きてもらわないと、一人でバカみたいだ。
呼吸を奪うように激しく、夢中になって舌を絡ませながら、ぐっと腰を押し付けて一気に奥まで貫いた。
「んッ! む、んん!」
くぐもった悲鳴を上げながら、顔を逸らそうと茜が暴れる。
素直にくちびるを解放して、荒く息を吐く彼女の顔を覗き込んだ。
ゆっくりと頭を振って、ぼんやりと目を開ける茜ににっこりと笑いかけた。
「おはよ」
「ん、浅尾……え? な…ん、んん!」
前触れもなく腰を揺らす。
何が起きたか判らないまま、茜は突然の刺激に余裕なく甘い声を漏らした。
「あ、まて、……んッ、あ、いや、ああっ」
頬を上気させ、ぎゅっと閉じた目じりにかすかな涙を滲ませながら、性急に与えられた熱に浮かされて、珍しく我を保てずに言葉にならない悲鳴を上げる。
「……あさ、お! んっ、て、あ……はなし、んっ、手!」
手?
手を放せってことか、と冷静なもう一人の自分が判断して、絡めた右手を解放する。
冷静でないほうの自分は、本能のまま腰を振ったままだ。
ぱっと自由になった左手で、茜は拳を作ってくちもとを塞いだ。
ああ、声を抑えたかったのか。
でも、これされちゃうと、キスできないんだよな。
顔を近づけてもくちびるは白い手で覆われて、うーん邪魔だと冷静なほうが思った。
握りこんだ指が緩んだスキに鼻先を差し込んで開かせて、手のひらにくちづけた。
ついでにぺろりと舐めると、びっくりしたように茜の両目が開いた。
いつも茜がよくそうするように、くちびるの端を上げてにやりと笑う。
左手をすばやく攫って、再びシーツに縫いとめてしまった。
「や、浅尾! あぁっ! だめ、だ……はっ」
焦ったように首を左右に振りながら、下くちびるを噛んで声を堪えようと試みて、すぐに耐えかねてまたくちびるを開く。
何度もそれを繰り返す茜の、白い喉にかみつくように吸い付いた。
「ん、いやだ、やめ……ッ! やだ、やっ……!」
あまやかな声音に、拒否の言葉が増えてきて、ちょっと面白くなくなった。
そういえば、普段は寛容なのに、している間はあれはだめだこれはイヤだとずいぶんと注文が多いよなと気がついた。
ドSでヘンタイのくせに受身で押しに弱くて、クールで鉄仮面で照れ屋で、エロが好きなわりに、どこかいつも冷静で。
ああ、もう、矛盾だらけでワケが判らない愛しのセンセイにこんなにも夢中だ。
もっと、彼女が乱れる様子が見たい。茜が理性をどこかへ飛ばしてしまったらどうなるのか、知りたい。
いつの間にか冷静な自分はどこかへ行ってしまっていた。
「んっ、ぅんんー! ふ……あ、んん!」
乱暴に重ねたくちびるから、相変わらず嬌声が漏れ続ける。
普段のアルトより幾分も高いその声に、総一郎はますます我を失った。
身体がぶつかりあう度にどんどん追い詰められていく。
余裕なく乱雑とも思える動きで快楽をむさぼり、総一郎はとうとう精を吐き出した。
茜の肩に額を埋めて、余韻に浸りながら息を整える。
熱い吐息が細い肩に落ちるたびに、胸の下の茜の身体がぴくと震えた。
深呼吸を3度繰り返したころ、ぐず、と鼻をすする音が聞こえて慌てて身体を起こした。
顔を目一杯逸らした茜が、表情を変えずにぽろぽろと涙をこぼしている。
え、泣いてる?
おろおろと顔を覗き込むものの、すべきことは何も見つからなくて、とりあえず絡めた手を放して指の背で拭った。
「ご、ごめん……センセイ、大丈夫?」
「……………………どけ」
低く、簡潔かつ乱暴に命じられて、背筋が冷えた。
「はやく」
身動きできないでいる総一郎の胸をぐいと片手で押しやって、茜はその軽い身体をずるりとずりあげて身を起こした。
慌てて、避妊具の中身が零れないように自身の根元を押さえた。
その様子をちら、と氷のようにつめたい瞳で確認して、ベッドから降りてしまう。
寝間着のズボンとそれに絡まっていた下着を掴むと、すたすたと歩き出した。
「え、どこ行くの?」
「………………シャワー」
こちらをちらりとも見ずにそう告げると、さっさと出て行ってしまった。
――ああ、やばいかも。
総一郎は茫然とその背中を見送った。
汗で身体に張り付いた寝間着のすそから覗く白い太ももに、不謹慎にもドキドキしながら。
*
シャワーの水音が止まると同時にコーヒーメーカのスイッチを入れた。
こぽ、と穏やかな音が響く。
寝起きのコーヒーが欠かせない茜のために用意するのだが、シャワーの後にホットでいいものか、と逡巡する。
だけど浴室の中の茜に声を掛けるのも憚られ、まぁいいかと結論づける。
これで茜の機嫌が少しでもよくなるといいのだけど。
部屋中に心地よい芳香が漂うころに、髪を乱雑に拭いながら茜が戻ってきた。
枕元に置いた眼鏡をかけると、やはり総一郎の方を見ないままベッドに背を預けて床に座り込んだ。
「…………コーヒー、どうぞ」
恐る恐るマグカップを差し出す。
いらない、と言われるかと思ったが、茜は無言でそれを受け取ってそのまま口をつけた。
湯気で眼鏡が曇った。
「……起きました?」
「………………」
無視された。
「………………ごめんなさい」
「………………」
やはり無言だ。
ちらりともこっちを見てくれない。
「怒ってます?」
「当たり前だ」
ですよね。
ぴしゃりとした冷たい声音に、びくりと肩をすくめた。
怒られるのは予想の範囲内だったが、泣かれるとは思っていなかった。
泣き顔を見られてラッキー、などと不謹慎にも考えた。
が、非常事態だ。
帰れ、と追い出されてしまうかもしれない。
今の総一郎に出来るのは、ただ、誠実な謝罪と反省だけだ。
そっと茜の前にひざを突いて、頭を垂れる。
「その、ごめんなさい。許してください」
「…………君は、最低だな」
「はい」
「寝込みを襲うなんて」
「襲ったのは寝起きです、いてっ」
枕元を飾っていたうさぎ(小)が飛んできた。
幸い、自分のカップはテーブルに置いたままだったので、じゅうたんを汚さずにすんだ。
いかん、口が滑る。
許してもらうのにこの態度はないだろう、と内省する。
「ケダモノ」
「……はぁ、本当に、その通りです」
「サル、ゲス」
素敵な暴言だ。
ああ、だんだん心地よくなってきた。
もしかして自分は真性のマゾになってしまったのだろうか。
「ヘンタイ、ロクデナシ、ばか、あほ、すかぽんたん、あー……ばか、ばーか」
貧弱なレパートリーの罵り言葉に、神妙に俯きながら笑いを噛み殺した。
「じ、自分の欲望を押し付けて、最低だ」
「でもセンセイもちゃんとイってたし、あたた」
今度はうさぎ大・中と、枕が立て続けに飛んできた。
茜の握るマグカップの中身が揺れている。
大慌てでそれを奪って、ローテーブルの上に避難させた。
そのうちにこれも投げつけられかねない。
むくれた表情の茜の顔を覗き込む。
一瞬目が合うと、顔を真っ赤にしてすぐに逸らした。
立てたひざを抱えて、総一郎から距離を取るように、ず、と身体をずらした。
おや、と首をかしげた。
殴られるかと覚悟を決めていたのに、茜の手は飛んでこない。
「センセイ?」
「お、起きたら、突然、あ、あんなことになっていて、その、心の準備が何も出来てなかったのに、」
「……ハイ」
「寝ている間に、み、見ただろう?」
「…………何を? つめたっ」
今度は濡れたタオルが飛んできた。頭を拭いていたやつだ。
返答をどうしようかと思い悩んだ挙句、これ以上怒られるのは嫌なので、子供のようにしらをきることに決めた。
「見てません」
「うそだ」
「見てないってば」
「う、うそだ」
「何でうそって言うんですか」
もごもごと、だってと口の中で繰り返す茜の濡れた頭に、さっきのタオルをふわりとかぶせてやる。
ついでに、機嫌を取るようにうさぎ(小)を手渡すと、それを受け取って抱きしめた。
鼻先を耳の間に埋めるその仕草は、まるで子供のようだ。
「寝てたでしょ?」
「寝ていたけど、へ、ヘンなゆめを見た」
あー、そう。
怒られているにも関わらず、珍しく優位に立ててにやにやと笑う。
こんなに余裕のない茜はめったに見られない。
「ヘンなゆめって?」
「き、みが……」
俺が? と意地悪い声音で聞き返した総一郎の顔をばっと仰ぎ見られた。
しまった、にやにや笑いを隠すひまがなかった。
「――ッ! もういいっ」
また濡れたタオルで殴られて、いててと呻く。
もう一度殴ろうとふりあげた手首をぐっと掴んだ。
肩を震わせて、放せ、と弱々しく呟いた茜の、眼鏡をすっと奪い取る。
額をぶつけて、泣きそうに潤んでいた瞳を覗き込んだ。
「さっきも、わ、私を押さえつけて」
「だってキスしたかったから」
「……待ってくれと、何度も言ったのに」
「すっげー気持ちよかったんだもん。センセイは? 気持ちよくなかった?」
「っ!」
「そういえば気持ちいいって一回も言ってくれないよなー。俺ばっかり」
「言えるわけ……ない、そんな、」
「俺とするの嫌なんだ……」
顔をしかめて傷ついた顔をしてみせた。
いや、実際には少し傷ついていた。
茜は免許皆伝かも知れないが、こちらはバリバリの若葉マークだ。自分のしていることが正しいのかどうか、全然判らない。
たまには褒めてもらわないと、自信喪失で、いつか勃たなくなりそうだ。
「い、嫌じゃない」
「ほんと?」
「ああ……でも、さっきみたいなのは嫌だ」
「さっきみたいなのって?」
「寝起きで、わけが判らないまま押さえつけられて、こ、声も抑えられなくて、隣に聞こえないかヒヤヒヤした……」
「声、我慢できないぐらい気持ちよかった?」
どうしても言わせたい。
どうしても彼女の口から言ってもらいたい。
追い詰めてる、という自覚はあるものの、止められなかった。
「センセイ、ちゃんと言って。気持ちよかった?」
「――――っ、………………うん」
ついに茜が小さく頷いた。
やったぜ、と眼鏡を握ったままガッツポーズを取ったら、手のひらが飛んできて頬をぱちんと殴られた。
全然痛くなかったけれど、反射的にいててと呟きながら、眼鏡をベッドに放り出して殴ったほうの手も握った。
ちゅ、と軽く音を立ててくちびるに触れた。
茜も大人しく目を閉じて、総一郎のくちびるを受け入れてくれる。
お互いの身体の間で、うさぎがころんと転がって床に落ちた。
「もうしません、誓います」
「……当然だ」
「まだ怒ってる?」
「怒っている。睡眠時間が15分足りない」
「ごめんなさい。オムライス作るから許してください」
む、と茜が唸った。
しばらく悩んだあと、判った、手を打とう、と頷いた。
オムライス様々だ。
うんと手間をかけて茜の好きなクリームソースまで作って、二人でオムライスを食べた。
茜の機嫌が治ったと思った頃に、くびすじへのいたずらが見つかってまた激怒された。
もうオムライスでは釣れないから、「ごめんなさい何でもします」と謝ったら、「何でも」という言葉に茜の瞳がきらりと光った。
しまった、何でもは言い過ぎたか、と思ったが取り消すことも出来ず。
「そうか、何でも、か」
ドSの恋人は、くちもとをにやりと歪めて笑った。
そんな顔も素敵だ、なんて、相当ヤられている。
真性のマゾになる日は案外近いかもしれない。
2007/12
最終更新:2008年12月31日 15:56