※前提妄想。
仙人だけに性欲薄くて、業を煮やしたお姉さんが襲いかかるのがいい。
「いやいやいやいやマズいだろこれ、立場的にも心情的にも」
「なにもマズいことなどありません少佐。わたしは貴方に抱かれたいのです」
「落ち着け中尉」
「わたしは落ち着いていますが」
「そうだな、確かに落ち着いているな、腹立たしいぐらいに。俺のほうが動揺してるぐらいだ」
「その動揺は性的興奮と解釈してよろしいでしょうか?」
「よろしくない! まてまて年頃のむすめがそんなとこ触るもんじゃない!」
「少佐、生憎ですが年頃と言うにはわたしはトウが立ちすぎていますし、生娘でもありません。
事後に責任を追及したりはいたしません。だから、お願いします…一度だけ、抱いてください」
「そういうことが言いたいんじゃなくってな。まあ逃げねぇから、そのどっかり下ろした腰をあげてくんねぇか」
「嫌です。少佐はお優しくて嘘つきですから、信用なりません」
「そうかい、じゃあ力づくだな」
「あっ!!」
「ハナっから女に組み敷かれるのは好みじゃねぇんだ。悪いな」
「……すみません」
「それにだな、どうせなら責任ぐらい取らせろってんだ……ったく、こっちが何のために我慢してきたか、知りゃしねぇんだから」
「少、佐?」
「もう一つ。押し倒す前に言うことがあるだろうが」
「……」
「ほれ。言ったら抱いてやる」
「あ、う……」
「ほれほれ。ちゃんと言ってみろ」
「……少佐……………………す、すき…です」
「よし、いい子だ。一度で終わると思うなよ」
少佐40歳、中尉27歳ぐらい。
っていう妄想をふくらまして勢いだけで書いた。
以下本編です。
ベッドカバーをめくり上げて、真っ白なシーツの上に腰を掛ける。
己の右手を、くちびるの上にそっと乗せてぺろりと人差し指を舐めた。
ぞくり。官能的な期待が沸き上がり、熱っぽい息を吐いた。
わたしはこれから、性欲を持て余した身体を慰めるべく、はしたなくも自慰行為に耽る予定である。
身体に巻きつけたタオルをはらりとベッドに落とすと、首筋を撫で筋肉ばかり多く柔らかみに欠けた胸へと手を伸ばす。いつも、少佐がそうするように。
ぐい、と乳房をしたから持ち上げるように掴んだ。
少佐の手つきをそっくり真似てみるものの、わたしと少佐では指の太さも加える圧力も、てのひらの温かさも何もかもが違う。
所詮、疑似体験でしかないのだが、わたしは手を止められない。
こんな破廉恥な行為だって、あつくなりすぎた身体には必要なものなのだ。放っておけば眠れなくなるほど、熱を持て余しているわたしは、性欲が少々旺盛すぎるようだ。
己の指先だと思ってしまうと興奮も半減をするので、両眼をきつく閉じ少佐に愛されているという精一杯の妄想に浸り、まだ柔らかなままの乳首をぎゅっとつまみあげた。
「あっ、少佐……!」
高い声が漏れる。わたしに与えられた居住空間は一人部屋であり、ベッドを配置した壁の向こう側は幸いにも空き部屋であるから、騒音公害にはならない。
入口までは距離があるから、多少の声音は外部に漏れたりはしないだろう。
「少…佐ぁ……んっ……」
遠慮なく漏らした甘ったるい声に、羞恥と戸惑いと、妙な興奮を覚える。
片方ではちっとも足りなくて、空いたほうの手も胸の前で交差させるように肌に触れ、爪の先ではじくように豆粒程度のサイズの乳首に刺激を与えた。
「あ、んっ! んん……!」
単調な刺激ではすぐに身体が慣れてしまうので、柔らかとか、ふくよかといった表現からほど遠い残念な乳房も、パン生地をこねるように手のひらで愛撫を加えていく。
ずくん、と自らの中心が脈打った。
早く刺激がほしくて、腰がくねる。我慢できずに下肢へと手を伸ばした。
少佐はもっと、気がふれてしまうほど執拗で粘着質な前戯を行う。
いつも、わたしが音を上げるまで、悪くすると堪えきれずに泣き出すまで焦らす愛撫を続ける。
――エロ親父。
毒づく胸の内とは裏腹に、わたしの身体はどうしようもないところまで追い詰められて、少佐の筋肉質な二の腕にすがりつくことになるのだ。
少佐が触れる頃には、すでにどろどろに濡れているらしく、毎度のことなのに少佐はオーバーに驚いて見せる。ニヤけた表情がまたわたしの羞恥を煽るのだ。
いたたまれなくなったわたしはとっさに足を閉じようとするが、屈強な少佐に力で叶うはずもなく、いともたやすく秘部を彼の眼前にさらけ出すハメになる。
でも今日は、平素の少佐ほど丁寧な触り方をしたわけではないので、性器はまだ全くと言っていいほど潤っていなかった。
下ろした右手を一旦引き揚げて、くちもとに運ぶ。
舌を出して、固い人差し指を舐めた。濡れた指先でくちびるを撫でると、ぱくりとそれを咥えて前歯で甘噛みをした。
捉えた人差し指を、舌の先でちろちろとくすぐる。
鋭敏になった指先から、悪寒にも似た快楽が全身へと伝わり、足の先がぴくりと震えた。
たっぷりと唾液が溜まった口内に中指も差し入れて、二本の指で舌を挟み、押しつぶし、口外へと追い出されてはまた押し入りを繰り返し、水分を乾いた肌に染み込ませていく。
少佐との熱いキスを模倣したようなその愛撫に満足をして、わたしは濡れた指先をふたたび下肢へと這わせた。
唾液の水分を借り、ぬるり、と指が肉壁の間をすべりぬける。
「ああっ」
濡れた声とともに、上体がびくりと震えてくびを仰け反らせた。
腹筋だけでは上半身を支え切れなくなり、胸に添えていた左腕をベッドに下ろし支えにする。
「ん……ん、あっ」
性器への愛撫の手は止まらない。
割れ目から溢れだした蜜が、指先の動きを助けてなめらかにする。
目の前が白くなる。快楽のこと以外、何も考えられなくなる。
一瞬だけ、まるで動物のような自分を愚かしく思ったが、すぐに直情的な官能に脳全体を支配されて、何もかもどうでもよくなってしまった。
とろけた亀裂を割り裂き、鋭敏な尖りをむき出しに空気へと触れさせる。
そこをぴん、と指先ではじくと、息の詰まるような清冽な快感が全身を駆け抜けた。
「ひ、ぁ! やっ……!」
いや、と言ってみても快楽を与えているのは自分自身である。
矛盾した言動にふと冷静になったが、もう一度そこへと触れると、本能が理性を食い荒してくれる。
「や、ん……だめ、だ、め……」
あつい指先を想像する。
少佐に触れられている錯覚を抱いたほうが、何倍も何倍も気持ちよくなれる。
経験からそれを学んだわたしは、思うままに声を上げて快楽を貪った。
剥き出した性器をさすり、つまはじくたびにどろりとした愛液が内部から分泌をされる。
腰が逃げるようにくねり、膝や肘がびくびくと震えて制御がきかなくなる。
快楽をやり過ごすため知らずに足を閉じようと動く膝を、必死で押しとどめた。
少佐に、抑えつけられている妄想をたくましくすれば、割に容易いことではあった。
そのうちに肘ががくんと折れて、しわのより始めたシーツに身を沈ませた。
溶けてしまう。
肩を清潔なシーツに擦りつけながら、そう思う。
自慰のときだって性交のときだって、いっそ溶けてしまえたらといつも思うのに、実際に人の身体が溶けてしまうことなんてあるはずもなく。
またその熱で脳が焼き切れてしまう、なんてこともない。ひどく残念だ。
「……くっ、んん!」
空いた左手で、再び胸を揉みあげる。
爪の先で、引っ掻くように乳首を摘まみながら、性器に触れていた方の指先を自分の内部へと侵入させた。
複数個所への愛撫は、信じられないほどの快感を呼び起こす。少佐が教えてくれたのだ。
「しょうっ、さ……や、うんっ、ああ、少佐!」
ゆっくりと侵入を果たしたわたしの膣内は、溶けたゼリーがまぶされたようにぬるぬるとしている。
奥までたどり着く前に、くいと折り曲げて内壁をさすった。
「少……っ」
ぐるりと内部をかきまわし、再び挿入を続ける。指一本をまるまると飲み込んだところでゆっくりと引き抜いて、またゆるゆるとした挿入を果たす。
溢れた蜜が食指に絡んでぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てた。
「あ、あ、ああっ……」
羞恥を刺激するその音を掻き消すように声を上げ、下肢をくねらせ衣擦れの音を立てるがそれらの響きすら官能の呼び水となり、ますます指を濡らすこととなる。
もっと、もっと欲しい――。
埋め込んだ指先は熱を感じるものの、わたしの細い指一本では満足な快楽が得られず、一旦抜き出して二本の指を挿入すべく入口に這わせる。
が、差し込む直前で、あつく大きな手のひらがわたしの手首をぐいと掴みあげた。
「……もう、いい」
突然、刺激を奪われた衝撃に両眼を見開く。
与えられるはずだった快楽を受け損ねた膣口が、物欲しげにひくひくとうごめくのが判った。
眉間にきつく皺を寄せ苦悶の表情を浮かべた少佐は、わたしの膝の間にその大きな体躯を収めると、胸に置かれたままだった左手首も少々乱暴に掴み、両腕をシーツに縫いとめた。
「……っ」
握り込まれた手首が痛い。肉が足りず骨が圧迫される。
だけどわたしは少々乱暴にされると、ますます興奮をしてしまうのだ。
ドライな少佐に求められている実感を得られるからだ。
少佐の、精悍な顔が迫ってくる。そのまま、乱暴にくちを塞がれた。
「んっ……ぅ、んんっ」
荒々しく口内を這いまわる少佐の舌に懸命に応えるうちに、頭の中が真っ白に濁り、なにも考えられなくなる。
少佐が自身をわたしの下肢に押し付けてくる。
もっと、と刺激を欲して腰をくねらせた瞬間に、とつぜん熱い少佐自身がわたしの中に押し入ってきた。
「んんっ!」
一気に最奥まで辿り着くと少佐は動きをぴたりと止めて、やっとわたしのくちびるを開放した。
「……っは、」
生ぬるい空気が肺いっぱいに入り込んでくる。
でも息を吸うたびに、結合部がひくりとうごめいてわたしの内部にいる少佐を意識させられて、切ない充足が身を走る。
汗で張り付いた額を、少佐の手がそろりと撫でる。
いつも、きれいだと褒めてくれる硬いばかりのサンディ・ブロンドを、少佐の指がそっと通り抜けた。
ゆっくりと両眼を見開いた。少佐の、熱っぽい瞳がわたしをじっと覗き込んで捕えている。
「……少、佐」
ひっそりと呼んだ声音は、みっともなく掠れ、なんとはなしに気恥かしくなる。
少佐は、ん、とだけ短く答えると、熱のこもった眼をすうっと細めた。
「お前さん……俺の存在忘れてただろ」
「…………………………いえ、そんなことは」
「なんだその間は。肯定してるようなモンじゃねぇか」
まあ、確かに。
当てつけのように始めた自慰行為だが、ちょっと夢中になりすぎた自覚はある。
しかしこの件に関しては少佐が悪いのだ。
ほんの十五分ほどまえのことだ。
「そういえばお前さん、少佐を思い我が身を慰める日々を過ごし云々……って言ってたよな」
シャワーのあと軽く髪を乾かし、少佐の待つベッドへいそいそと舞い戻ったわたしに掛けられた甘いはずのセリフは、そんな内容だった。
「……ええ、言いましたが」
少佐を押し倒したはずが逆に押し倒されて、朝までかかって愛を確かめ合ったあの日、少佐に馬乗りになる少し前にそんなようなセリフをわたしは確かに吐いた。
酒は少々入れたもののわたしも少佐も酔っていなかったし、わたしは少佐の優しさにつけ込むためのセリフを何通りも用意して来るべきチャンスに備えていた。
前出のそれは用意したなかで、最も不要なセリフではあったけど、少佐の無反応ぐあいに多少焦っていたわたしは珍しく多弁になり、うっかりそのようなことを口にしてしまったのだ。
わたし以上に動揺をしていた少佐が、そのような戯言を頭に入れているとはとうてい思えなかったので気に病むことはないと判断していたのだが、甘かったようだ。
「見せてくんねぇか」
「は?」
「だから、お前さんが我が身を慰めているところを」
少佐はときどき、奇妙なものに性的興奮を覚えるようだ。それは往々にしてわたしの理解の範疇を超えている。
一言二言は反論をしてみたものの、少佐の意志は変わらないようであった。こうなってしまうとわたしが折れるのが最善である。
部下であり年下であり平和主義であり日和見であるので、少佐と諍いを起こすよりは、己がこの程度の恥辱を味わうほうがマシなのだ。
多少ためらいはあったものの、自分のことは気にしなくていいからという少佐の一言がダメ押しとなり、わたしは自慰行為に励んだのだ。
「……お言葉ですが。ご自分のことは気にするなと仰ったのは少佐です」
「確かに言ったけどよ。俺が要求したのはショウであって、何も本気で耽ろとは言ってねぇんだよ」
ショウ。
頭のなかで疑問符が立ち並ぶ。
またわたしの理解の範疇を超えた要求だ。
「ショウ、とは?」
言葉に乱れた息がまじり、気恥かしい。冷静でない自分は嫌いなのだ。
「……だから、お前さんが、俺の視線を気にして恥じらったり、見られてるっつー辱めに不本意ながら興奮したり、俺の知らない性感帯を自分で見つけたりとか、そーゆーのが見てぇんだよ俺は」
「はぁ、」
そういった少佐の主張を聞いていると、わたしの求める快感はとても即物的だと感じる。
会えば速効でキスをしたいし、触れるだけのキスではすぐに物足りなくなる。太ももを撫でる暇があるのならもっとあついところに触れてほしいと思ってしまう。
焦らされるのは、からかわれているようで好きではないし、いつも余裕かましている少佐が憎らしくなるときもある。
その差異が産まれるのは、重ねてきた年齢の差のためなのか、生来の気質の違いなのか。
時々判らなくなり、無性に寂しく虚しくなる。
いつかわたしが少佐の今の年齢になったとき、理解ができるのだろうか。
「ったく一人で気持ちよくなりやがって……、……ッ!」
じゃあ一緒に気持ちよくなってほしい。
抗議をこめてぐっと下腹部に力を込めて少佐を締め付けた。
眉根をきつく寄せて低く呻いたその声に、なんとも言えない充足を覚えた。
「……少佐、もう待てません…………はやく」
手をのばして、少佐の筋張った首筋を撫でる。
その、女にしてはたくましいわたしの手を取って、少佐はそっとくちびるを寄せた。
指の背にあつい息がかかり、肩が震えた。
こんな些細な刺激にも欲情をするわたしは、ひょっとして淫乱というやつなのか。
「エルヴィア。欲しいか」
「ほしい、です……」
「なにが欲しい。言ってみろ」
――エロ親父。
いつもの罵り文句がのどもとまで浮かび上がる。いつもこうだ。
わたしの、不要だったはずの女の部分を曝け出させようとする。
あいにく直接的な卑猥な言葉なら、いくらでも言える。
――少佐の逞しいペニスで、わたくしめのいやらしいヴァギナを突いてください。
一度よどみなくそう言ったら、少佐のモノが萎えてしまった。
デカいなりと立派な息子をお持ちなのに、意外にデリケートである。
少佐いわく、それは最終手段だから初期段階でテンプレート的にすらすらと言われると、我に返ってしまう、とのことだ。
またわたしには理解のできない理屈であった。小説などを読みふけり懸命に勉強をしたというのに、報われなかったのである。非常に残念だ。
その後少佐はわたしが意識的にせよ無意識にせよ可愛らしく振舞うとお悦びになる、と知った。
でも、少佐が望む「可愛らしいエルヴィア」はどうにもあざとく思えてしまって苦手なのだ。
自分にそういったことを求められても実に不毛であるので、諦めるか別の女性を探してくださいと進言をしたら、「普段クールなお前さんが俺の前だけで見せるっつー特別感がほしいんだ」と言われてしまった。
実にややこしい趣向をお持ちだ。
恋愛に慣れていそうな割に独身なのは、この辺が原因ではないかと勝手に想像してしまった。
「エルヴィア」
少佐の、低い声が響いて脳内が揺さぶられる。
「……っ、しょう…さ…………お願い、します」
「なにが『お願い』なんだ? ん?」
「……もっと……」
「もっと…なんだ? ちゃんと言え、エルヴィア」
もうだめだ。わたしが観念するよりほかはない。これ以上、強情も張っていられない。
ぺろりと乾いたくちびるを舐め、軽く開く。細く息を吐く。その一挙一動を、少佐の熱のこもった瞳が観察をしている。わたしの身体が、どうしようもなく疼く。
「少、佐……おねがい、めちゃくちゃに、してくださいッ…………ああっ! んっ! ぅんんッ」
わたしが言い終わらないうちに、少佐の律動が始まる。
激しく揺さぶられて、ああ、やっとわたしは少佐を満足させることができたのかもしれない、と安堵した。
若さだけが取り柄、というにはトウが立ちすぎた。なのに年齢にふさわしい目立つ特技も自信もない。
感情を表に現すことが苦手で、他人の気持ちを慮ることも苦手で、総じて人づきあいや立ち回りが上手でないわたしをあるがまま受け入れながら、
自分でも知らなかったわたしを少佐は上手に引き出してしまう。
たぶんそれは、両親と離れたときや、伯父のような軍人になると決めたときに、どこかへ置いてきてしまった自分なのだと思う。
ずいぶんと屈折をしていて扱いづらいであろうわたしを、少佐はその大きな身体と心で丸ごと抱きしめてくれる。
ただでさえ苦労をなさっている少佐に、またわたしという重い荷物を背負わせてしまったと心苦しくなる夜もあったりする。
でもそんなわたしの不安さえ、快活な笑顔ですべて吹き飛ばしてしまう少佐の度量には素直に尊敬をしてしまう。
少佐にせめてセックスの時ぐらいは何も考えずに欲望のまま動いてほしいと希っても、彼はわたしを追い詰めることに躍起になる。
己の体力の減退に負い目を感じているのかもしれない、とは先日にやっと思い至った。
たびたび口にする「俺ァもうおっさんだからよ」とは、冗談の混じっていない自虐なのだ。
「少っ、佐……!」
律動が激しくなった。
連れて行かれる、と思う。いつもそう感じる。
どこに、なんて判らない。終わってしまえばなくなる焦燥だ。
こらえようとしても、はしたない喘ぎ声を押さえられない。頭の中が白んでくる。
邪魔な理性を、活性化した本能が食い荒らしてくれた。
わたしは思うままに声をあげ、少佐に縋りついて官能を享受する。
限界を超しても尚、少佐に攻められて敏感な部分を撫でさすられて全身をくまなく愛撫されて、また今日も酔ってもいないのに意識を飛ばしてしまった。
――自分の出演している如何わしいビデオを見せられているようだった。
事後の少佐の言である。
如何わしいビデオに出演したことがおありで? と聞き返したら少佐は黙ってしまった。
また見当はずれなことを口にしてしまったか、と不安になったがすぐに少佐は、ねぇよ、心配すんなと言ってわたしの頭をなでてくれた。
そんな心配をしたわけではないのだけど、面倒なので訂正はやめておいた。
代りに身体を擦りよせて、分厚い胸に頬を寄せる。
「お」
少佐が嬉しそうな声を上げる。
セックスが絡まない密着がお好きな少佐はわたしよりもよっぽどロマンチストだ。
あくびが漏れた。わたしのつむじの上で、少佐も大きなあくびを漏らす。
明日は二人とも休暇である。
心ゆくまで朝寝坊を楽しもうと決めて、わたしはそっと目を閉じた。
心地よい疲労がすぐにわたしたちを眠りの世界へと連れて行ってくれた。
2009/06
最終更新:2010年05月07日 00:27