第2章(8)

第2章(8) 呪いと黒騎士と魔物(前編)


エフィータ達がある場所に着くと、黒騎士が立っていた

それは、愕然としているようにも見えた

そして、エフィータ達も、同じようにあっけを取られたような表情を見せた

彼らの目の前に広がっていたもの、それは城というより、瓦礫の山で城といえる部分は何とか残っている錆びた城門と、奥の方に見える一回り大きく作られた部分、それだけ

ほかは、もう城とも言えないものとなっていた、ある場所は通路が壊されていたり、ある場所では壁が壊され、またある場所では、もうそこがもともと部屋だったことを忘れさせるほど跡形が無くなっていた部分もあった

屋根なんかもうなく、地面は毒の沼で所々侵食されている場所、ここが、エフィータ達が目指していた最終地点だった

エフィータは、愕然とした表情から、必死に言葉を言った

「これが…ルディアノ城…」

レオコーンが一歩踏み出し、城門の前で膝ま付いた

「…これが…ルディアノ城だというのか…?私は…私は城がこのようになるまで、いったい何を…ッ!?」

当の本人も、記憶が曖昧で、頭を抱えて悩んでいる様子だった

そして、レオコーンは何かを思い出したように立ち上がり

「…メリア姫は…?メリア姫…姫ーーーーッ!!」

レオコーンは大きく叫んだ、城の上には黒雲が渦巻いていて、そこから青白い光が地面に落ちる

そんな風な音に、黒騎士の叫び声がかき消された

「うわぁっ?!」

たった一人、こんな状況でも雷を怖がる少女、フィリムが声を上げた

そして、震える声で、必死でこう言った

「で…でも…、こんなところに…お姫様…いるのかな…?」

涙ぐんだ様子だったが、必死でそう伝えたのは、ちゃんと黒騎士の耳にも聞こえたらしい

「…ああ、そうだな…メリア姫を…探さなければ…ッ!!」

そう言い、黒騎士は寂れた城の中に入った

「ああ!!ちょ…行っちゃったよ…」

ヴェルンが、心配げに言う、本人もこの時はさすがに「ざまあみろ」とも言えない気分になっていた

「うん、レオコーンが心配だ…僕らも行こう!!」

4人はアイコンタクトを取り、場内に突入していった



王の間のような部屋の中では、レオコーンともう一人…いや、もう一匹といった方がいいのだろうか、それが対立していた

玉座に座っているのは、赤目で長いうす紫の髪をしたこうもりのような翼を負い、紅いローブのような服を身にまとっている女の魔物だった

その魔物に剣を向ける、剣士レオコーン

しかし、その魔物は剣を向けられてひるむどころか、ニタリと笑い、レオコーンにゆっくり話しかけた

「ククク…お帰りなさい、レオコーン…ずいぶん探したけど、やはりここに来たのね…」

額に紋様が書かれた魔物が不気味に笑う、尖った耳がかえって不気味さを思い立てる

「貴様は…イシュダル…ッ!!」

そうレオコーンが言うと、膝からがくりと落ち、少し笑いを出したかと思うと

「…そうか…そういうことか…今、すべてを思い出した…」

と言い、重々しく、次の言葉を言った

「私は…貴様を討つべく、このルディアノ城を飛び出し…」

そういうと、イシュダルは玉座から立ち上がり、不気味に微笑みながら

「そして、私に敗れ…」

そうイシュダルがいい、レオコーンに近づき、レオコーンの顎を少し持ち上げ

「永遠の口づけを交わした…」

というと、不気味にイシュダルは小さな声で笑った

レオコーンは顎を持ってるイシュダルの手を振り払い、代わりにイシュダルの首に剣先を向ける

だが、イシュダルはまだひるむ様子もなく、不敵に微笑み

「あなたと私は、数百年の間、闇の世界で二人きり…あなたは私のしもべ…そうでしょ?レオコーン…」

と言い、「フフフ」と鼻で笑った

さすがのレオコーンも、もう我慢していられなくなったらしく

「黙れぇッ!!」

といい、剣を自分の横に向けた

「貴様のせいで…メリアは…メリアは…ッ!!」

そういうと、イシュダルの懐に飛び込んだ

だが、イシュダルの赤い目から放たれる赤い光線を、しかも防御も何もできない状態でレオコーンはくらってしまった

空中を舞い、地面を転げるレオコーン

「く…このぉ!!」

何とか立ち上がり、反撃しようとするが、からだから黒いオーラがわき、それがレオコーンをしびれさせる

「う…ぐああああああああああああ!!!!!!!!」

レオコーンが、立った状態で体がむしばまれる、腕は後ろの方に反り、足も言うことを聞かない

その様子を見て、さぞ面白がっていそうに、イシュダルは微笑んだ

「ククク…馬鹿な男、あの大地震のせいで、私の呪いは解けてしまったけれど…いいわ、もう一度かけてあげる、二人きりの闇の世界にいざなう、あの呪いをね…」

そう言い、またレオコーンにゆっくりと近づく

もう駄目だと思った…その時!!



バン!!



と、王の間の扉が強く開く音が聞こえた

そこには、ぼろぼろの姿のエフィータ達が立っていた

「レオコーン!!」

そうエフィータは言うが、当の本人は体の自由が利かなくなっている

そのためか、返事もできない

「…おい、レオコーンに何をした!!」

エフィータが、イシュダルに鋭い口で言う

「ククク…ちょっとした呪いをね…まさか、あんた達、レオコーンを助けようってんじゃないんだろうね?」

そうイシュダルは言った、するとエフィータが言う前に、ヴェルンが素早く

「そうだといったらどうする?」

といった、本人はやはりレオコーンのことが心配でたまらないのだろう

「ククク…あんた達も馬鹿だねぇ…この男に掛けられた呪いの威力、見てわからないの?」

意地悪くイシュダルは言う、エフィータ達は後ろをちらっと見て

「でも…助けたいんだ!!」

「…そう、いいわよ、それじゃああんた達にもかけてあげる…私のとびっきりの呪いをねッ!!」

そういうと、目から再び赤い光線を出し、それを薙ぎ払うようにエフィータ達にあてた

エフィータ達はよろめき、何とか立ったかと思うと、すぐに苦しみが体を走る

「ぐ…ああああああああああ!!!!!!」

それぞれの叫び声が、部屋にこだまする

しかし、エフィータは違った、からだを必死に自分について行かせて

「く…負けるかあああああああああああ!!!!!!!!」

というと、腕を目の前でクロスさせ、腕を薙ぎ払うと、一気に呪いを解いた

「な…何?!…まぁ、あんただけだろうねぇ、そんなのできるのは」

一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに平常心を取り戻したようで、高笑いを出した

しかし、その高笑いも、すぐに終わってしまった

なぜなら、呪いを自力で解こうとしてるヴェルンを見つけたからだ

「フン…エフィータにできて、俺に出来ねぇはずねぇもんな…うおりゃああああああああああ!!!!!!!」

と叫ぶと、腕をそれぞれ払い、少し時間はかかったものの、呪いを自力で解いた

「私も…これくらいの呪い、自分で解いて見せます!!」

そういうと、ミリアも腕を払い、足に残った呪いを腰をひねり自分で解いた

「あたしだって…あたしだって…ッ!!」

フィリムがそういうと、ほかの3人より時間がかかったものの、呪いを解いて見せた

「クッ…な…何故っ?!何故私の呪いが効かないッ?!お前らは…お前らは何者だッ!?人ならば、私の呪いにかかるはず…もしやお前らはっ!?」

「…うん、僕こそが…守護天使、エフィータ!!」

エフィータが、大声で答えた

「まぁ、ほかの俺らは、その辺にいそうな普通の奴だけどな」

ヴェルンが、片目をつぶりながら言う

「クッ…こうなったら…」

そう言い、イシュダルは腰につけている短剣を引き抜き

「…私、イシュダルのこの手で、お前らをズタズタに切り刻んであの世へ葬ってやるッ!!しねえええええええええ!!」

と言い、エフィータのもとに突っ込んでいった

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最終更新:2009年12月01日 20:29
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