413 :VIP足軽flash:2006/11/26(日) 00:14:21.36 ID:adMMIq590
俺はすがろうとするミカの手を払い、その場から立ち去る。後ろからミカの泣き声が
聞こえたが、俺は何も感じなかった。
思えばこの時俺はミカよりも
シンヤを選んだのかもしれない。
この日以来、ミカは俺を積極的に遊びに誘うことをしなくなった。
夏休みが終わり久しぶりの登校日、朝の校門を一緒にくぐった相手はミカではなく
シンヤだった。
校門の前でシンヤが待っていて、「おはよう」と声をかけてきた。
俺はシンヤが俺を待ってくれたことと、久しぶりのシンヤの学生服を見て単純に
嬉しいと思った。
『ごめんなさいね。ミカ、先に行っちゃったみたいで…』
あの日からミカは意図的に俺を避けているようで、俺にとってはソレは好都合だった。
おかげでシンヤと過ごす時間が増え、シンヤと居るときだけは空っぽだった俺の心も
満たされ、俺にとってシンヤは何よりも大切な存在になっていた。
「なあユウ。あれミカちゃんじゃないか?」
シンヤが指差した方向にミカが歩いている。隣には中等部の見知らぬ男子が居て、
ミカに一生懸命話しかけているようだ。
414 :VIP村人u:2006/11/26(日) 00:18:20.86 ID:DQ8dLChL0
「彼氏としてアレはマズいんじゃね?ミカちゃん取られちまうぞ」
「いいよ」
「いいよってお前…。ミカちゃんはお前の彼女だろ?」
「…いいって言ったらいいんだよ。行こう」
少し早足に歩き、俺はミカの横を通り過ぎる。
「ユウちゃ…」
通り過ぎるとき、俺に気づいたミカが名を呼びかけるが、俺は聞こえない振りをする。
ミカがまた泣いている気がしたが、俺はそのまま振り向かなかった。
9月もあっという間に終わり文化祭の季節になると、シンヤのテンションは上がった。
どうやら体育館のライブに参加するらしく、ゲストにはシンヤが憧れる「VIPVIP」が
来ると聞き、二倍嬉しいようだ。
「VIPVIPの内藤さんは新都大学に在籍してるんだ!」
なるほど、ソレがシンヤが新都大学を目指す理由か。
キラキラと目を輝かして内藤という男のことを語るシンヤの姿に、俺は面白くないと
思っていたが、そんなシンヤも可愛いとも思った。
415 :VIP村人u:2006/11/26(日) 00:18:55.33 ID:DQ8dLChL0
この時期には俺はシンヤへの恋心をある程度自覚していた。
実る恋ではないだろう。
それでも大学で分かれるまでの間、シンヤと過ごしたい。ただそれだけで良かった。
「なあユウ。お前さ、今週末空いてる?」
「今週末か…」
週末は大抵ミカの家で夕食を食べる日だ。ミカも俺を気遣ってか、この日だけは
俺に普通に接してくる。
言葉を濁しているとシンヤは少し残念そうに、
「ダメか…いやさ、今週末にライブやるんだよ。ちゃんとしたところで」
「初耳だぞ」
「びっくりさせようとしてたんだよ!でも無理ならいいよ」
「…いや、行く」
「え?マジ?来てくれんの?予定とか無いの?」
「予定なんて無いよ。俺、絶対にお前のライブに行くから」
にこっと俺が笑うと、シンヤは感極まってか俺に抱きつき、「ありがとう!」と叫んだ。
シンヤの腕の中に抱かれ、俺は恥ずかしさと安心感を覚える。
そういえばさっき、俺は自然と笑っていた。
俺は「やめろよ」と言いながら緩む口元を押さえられず、歳相応の子供らしくシンヤと
じゃれあった。
最終更新:2006年11月27日 20:37