558 :ワンダと俺と妹と(作引き出し) ◆49cq481bMY :2006/11/28(火) 15:21:37.98 ID:f8Dw6XGu0
「あと15分くらいで始まりか。妹は確かトランペット担当のはずだ」

妹達の演奏が成功するように祈っているとピローンというメールの着信音がした。
開くと妹からだ。

「どうしよう。すっごい緊張してきた」

そうメールには書かれていた。何か緊張をほぐすメールでもするか。

「こんな時に悪いが、最近1枚下着がなくなったって言ってたろ。あれ、犯人俺だ。
変態兄ですまん・・・・・・・orz」

本当は風で飛んだだけなのだが。
すぐに返事が来た。

「なんかさ、最近お兄ちゃんの本当の意図が色々分かるようになってきたんだよね。
笑わせようとしてくれたんでしょ今のメール。ありがとwwwww何か元気でてきた」

そのメールを見て俺は一瞬固まった。本心を見抜かれているのだろうか。
やっぱり兄妹だなあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・一応次のようなメールも送った。

「いやマジだ。ちなみに、はいてはいないから安心汁」

癖で語尾を「汁」で送ってしまった。

「どんだけ変態なんじゃwww伸びてたら弁償だよ!!」



559 :ワンダと俺と妹と(作引き出し) ◆49cq481bMY :2006/11/28(火) 15:23:15.35 ID:f8Dw6XGu0
なぜかその返信を見てほっとする俺だった。というか、本番前に準備は大丈夫なんだろうか。
しばらくすると吹奏楽部の部員が続々ステージの上に出てきた。妹もその中にいた。
妹は俺の方を見て手を振ってきた。これだけ人が居るのに一発で俺を見つけるのが凄い。

まずは主将の挨拶からはじまる。

「本日は我が吹奏楽部の演奏を聴きに来てくださって、本当にありがとうございます。
今日は最後まで楽しんでいってください」

一曲目は何だろうか。案内には演奏曲目が載っていない。妹曰く、「サプライズ効果だよ!」
との事だった。意味が分からなかった俺は「小泉首相と同レベルか」と返しておいた。
そしていよいよ演奏が始まる。このドキドキ感が俺は好きだ。

一曲目はドラゴンクエストの「序曲のマーチ」だった。しかもロト編だ。
これは恐らく知らない人はいないだろう。演奏がホール全体に響きわたる。
こじんまりしているこの体育館ではミスはすぐ分かる。
だが、一曲目を聴いてそれもいらぬ心配だったのかもしれないと思った。

高音のメロディーラインを思い切って、だか丁寧に演奏している。かなりのハイレベルな演奏だ。
「甦る力」まじで期待できる。この演奏なら。
妹、吹奏楽部の部員達。頑張ったんだな。
絶対に成功させてやるという心意気が、一曲目から全て伝わってきた。

一曲目が終わると拍手の嵐が起こった。体育館からもれる音に引き寄せられ席は満席になっていた。
体育館いっぱいに人がいて、立って聴いている人もかなりの数だ。

続いて演奏された曲は「ゼルダの伝説」のメインテーマ曲だった。これもかなり有名な曲だ。
楽しい。楽しすぎる。本当にいい妹を持った。こんなにワクワクドキドキするのは何年ぶりだろう。
ずっとこの演奏を聴いていたい。俺は心からそう思った。



563 :ワンダと俺と妹と(作引き出し) ◆49cq481bMY :2006/11/28(火) 16:01:26.34 ID:f8Dw6XGu0
ステージの妹はいつも家で見せる顔とは違っていた。真剣な顔。あんな顔もするんだな。
そんな事を考えていると曲が変わっていた。ドラクエ3のゾーマ戦の戦闘曲だ。
これは実は妹に無理に頼んで入れてもらった演目だ。いい。やばい。テンション上がってきた。

その後も、けしてマニアックではない曲が演奏された。たとえばマリオとか。
ゲームミュージックというのは結構、根付いているんじゃないだろうか。
演奏後の拍手の嵐と、観客の楽しそうな顔がそれを物語っている気がした。

1時間ほど経った頃、一人の部員がステージで立ち上がりマイクの前に立った。
妹の夏美ではないか。

「みなさん。いよいよ次で最後になります。この曲はもしかしたら知らない方も多いかもしれませんが、
私達がこの2ヶ月間、一番練習した曲です。ラストを飾るにふさわしい一曲だと思います。聴いてください。
ゲーム『ワンダと巨像』から甦る力です」

妹はずっと俺を見ながら喋っていた。

そしていよいよ最後の演目が始まった。
凄いデキだった。これは相当練習したのではないか。各楽器が見事に調和している。
バランスがいい。大抵失敗するのは特定の楽器が音を出しすぎて目立ちすぎて、他の楽器のいい部分が
殺されてたりするものだ。だが、妹達の演奏は見事に調和している。いい!!やべえ、よすぎる!!!!

その最後の一曲で会場と演奏が一つになった不思議な感覚がした。不思議な連帯感とでもいうのか。
とても幸せな感覚だ。ずっとこの場にいたい。そう思わせる感覚だ。
夏美相当練習したんだろうなあ。もっと、肩揉んでやればよかったなあ。

気が付くと何故か涙が出ていた。

「あれ?」



564 :ワンダと俺と妹と(作引き出し) ◆49cq481bMY :2006/11/28(火) 16:03:09.54 ID:f8Dw6XGu0
ハンカチがないので服の袖で涙をぬぐう。その涙は、妹に対する思いと演奏の素晴らしさから来るものだった。
曲が終わる。

「本日は本当に我が吹奏楽部の演奏を聴いていただき、本当にありがとうございました」

主将の終わりの挨拶と共に盛大な拍手が巻き起こる。俺も負けじと手が痛くなるまで拍手した。
皆がやめても叩いていたため、周りから変な目で見られたが関係ない。

いい演奏だった。これほど感動したのは初めてかもしれない。
しばらく席で放心していると妹がやってきた。

「お兄ちゃんどうだった?」

「夏美!良かったよ!本当に良かった!俺感動して泣いちゃったぜ。お兄ちゃんを泣かせおって!
悪い妹だwwwwww」

「そうwwwよかったあ。練習きつかったけど頑張ってよかった。私、お兄ちゃんのその一言が聞きたかった」

「そういえばラストの前、喋ってたな」

「うん。本当は主将がやる予定だったんだけど、無理言って代わってもらったの」

「感動した!!」

「小泉首相wwwww」

「国民栄誉賞ものだ!!!」

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最終更新:2006年11月28日 16:48